学位論文要旨



No 117110
著者(漢字) 洪,樟連
著者(英字)
著者(カナ) コウ,ショウレン
標題(和) 希土類元素添加窒化珪素セラミックスの高温機械的特性
標題(洋) High-Temperature Mechanical Properties in Rare-Earth Densified Silicon Nitride Ceramics
報告番号 117110
報告番号 甲17110
学位授与日 2002.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第5251号
研究科 工学系研究科
専攻 材料学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 佐久間,健人
 東京大学 教授 林,宏爾
 東京大学 助教授 幾原,雄一
 東京大学 助教授 榎,学
 東京大学 助教授 山本,剛久
内容要旨 要旨を表示する

 セラミック材料は一般の金属材料と比較して比重が小さく、高硬度、高耐摩耗性、高融点等の特長を有していることから、特に耐熱構造材料としての実用化が期待されてきた。中でも窒化珪素(Si3N4)セラミックスは、耐食性・耐酸化性に問題があるものの、その焼結体は室温から高温にわたり高強度を示し、また他のセラミックスと比較して靱性に優れるといった機械的特性を有することから、高温構造材料として実用化が以前から有望視されてきた。窒化珪素セラミックスは一般に難焼結性材料とされてきたが、適切な焼結助剤を添加し、ホットプレスもしくはHIP焼結によって十分緻密で高強度・高靱性の材料が得られるようになっている。この焼結過程においては、SiO2を主成分とするガラス相を生成させ、窒化珪素粒子間の物質移動を促進させる液相焼結と呼ばれる過程が必要であるとされている。液相焼結は緻密な焼結体を得るためには有効な手法であるが、一方、窒化珪素粒界にはガラス相が焼結後も残留するため、窒化珪素セラミックスの高温における機械的特性を著しく劣化させる原因となっている。高温強度特性を要求される窒化珪素セラミックスの製造手法においては、粒界のガラス相の量を焼結後いかに低減するが重要となる。近年では、希土類酸化物(Re2O3)を焼結助剤とし、焼結後に適切な熱処理を施すことで、粒界ガラス相をRe-Si-O化合物へと結晶化させる手法が注目されており、1400℃までの高温強度・耐酸化性及びクリープ特性において他の焼結助剤を添加した窒化珪素と比較して優れた値を示すことが知られている。しかしながら、その材料製造プロセスは経験則に依存しているのが現状であり、高温機械的特性および焼結過程に及ぼす希土類元素の影響については未だ解明されていない点が多い。そのため、機械的特性を記述する一般的なパラメータも得られておらず、その高温機械的特性を制御することは困難であるのが現状である。そこで本研究では、高温耐熱材料として期待される窒化珪素セラミックスの焼結や高温機械的特性に及ぼす希土類元素の影響を解明するとともに、その高温機械的特性評価のためのパラメータを見出し、材料設計の為の基礎的知見を得ることを目的としている。

(1) 希土類元素を添加した窒化珪素の焼結過程

 高温高強度窒化珪素の製造の為には、通常焼結助剤としてY2O3が選択され、更に粒界結晶相としてY2Si2O7の結晶化を図る努力がなされて来た。しかしながら、その焼結過程並びに粒界ガラス相の結晶化過程について調べた詳細な報告は少ない。また窒化珪素の焼結過程は高温機械的特性との相関があると考えられるため、高温機械的特性の評価解析の為の基礎データとなると考えられる。そこで本章では、異なるイオン半径を持つ希土類元素(Nd, Sm, Y, Yb)を系統的に助剤として添加し、焼結における収縮挙動と形成相を調べるとともに、焼結過程における希土類元素の影響について基礎的知見を得ることを目的としている。

 本研究では、原料粉末85mol%Si3N4-5mol%Re2O3-10mol%SiO2の組成で混合し、N2雰囲気中1750℃×2hで20MPaの圧力ホットプレスにより焼結し、その後、1450℃の高温で20MPaの圧力をかけて4h熱処理することにより、高融点相であるRe2Si2O7を粒界結晶相としてほぼ完全に結晶化させることができた。昇温速度10℃/minで、N2雰囲気中、20MPaの圧力下でホットプレス焼結を行った場合の各試料の収縮速度を時間に対してプロットしたものを図1に示す。いずれの助剤に対しても、急激に収縮速度が上昇する段階が三箇所認められる。最も顕著な収縮過程を示す最終段階においては、Si-Re-O-N系の液相が生成していると考えられ、収縮の開始点温度を液相生成温度とみなすことができる。この液相生成温度は添加元素によって異なるが、その変化は添加元素のイオン半径等の従来のパラメータでは整理できず、むしろシリカガラス中の不純物陽イオン周囲での化学結合力に対応すると考えられるField strengthと相関が認められた。SmにおいてField strengthが小さな値をとることは、Smが窒素雰囲気中で+2価をとることに依るものであり、これはXPS分析により確認されている。図2に示すように、液相生成温度はField strengthの増加と共に上昇しており、ガラス中のRe-Oイオン間結合力が強いほど、シリカの綱目構造を維持する力が高く、その結果ガラス相の融点が高くなると考えられる。即ち、焼結過程における希土類助剤Re2O3の影響は、Re-Oの化学結合力と相関があると考えられる。

(2) 窒化珪素の高温曲げ強度に及ぼす添加元素の影響

 希土類元素を助剤として添加し、粒界ガラス相を結晶化させた窒化珪素セラミックスにおいて、高温強度の向上の機構については、助剤として添加した希土類を含む粒界シリカガラス中の融点及び粘性の観点から議論がなされてきた。本章では、焼結助剤として希土類元素((Nd, Sm, Y, Yb))を添加した窒化珪素を用い、高温機械的特性を曲げ強度試験によって調べるとともに、高温曲げ強度に及ぼす添加元素の効果を明らかにすることを目的としている。

 高分解能透過型電子顕微鏡を用いた微細組織観察の結果、二粒子界面には約1nm厚のガラス相が残留するものの、粒界多重点の大部分は高融点相であるRe2Si2O7へと結晶化していることが確認された。また、焼結温度を1725℃-1750℃に変化させることで結晶粒径がいずれの添加元素についてもほぼ同じ試料を作製した。

 室温-1600℃における曲げ強度の結果は、室温付近では各試料とも約800MPa程度の強度を示すものの、1600℃の高温では約200MPa強度が低下することがわかった。ただし、高温での強度には添加元素依存性が認められ、Y>Yb>Nd>Smの順で大きな高温強度を示した。液相生成温度が高い材料であるほど各試験温度での高温強度がを維持することが明らかになった。このことは、窒化珪素セラミックスの高温強度と焼結中の液相生成温度が相関性を持つことを示唆しており、高い高温強度もつ窒化珪素セラミックスの開発の重要な要因と考えられる。

 高温曲げ試験後の破壊面の観察結果から、高温の破壊は粒界破壊を主体として進行していると考えられる。これらの結果から、高温曲げ強度は粒界ガラス相の強度により決まるものと考えられる。図3に、1200℃、1400℃及び1500℃における曲げ強度を室温曲げ強度で規格化した値σ/σRTを、各試料の液相生成温度に対して、プロットしたものを示す。液相生成温度が高い、σ/σRTが大きい値を示しており、さらに、液相生成温度と助剤のRe-O強度の相関性から、粒界ガラス相の機械的特性が粒界ガラス相中のRe-O結合強度に支配されると考えられる。換言すれば、希土類元素を添加した窒化珪素セラミックスにおいて、粒界ガラス相のRe-Oイオン結合力が高温強度の向上に重要な因子であると結論できる。

(3) 希土類元素添加窒化珪素セラミックスの高温クリープ特性

 材料の高温における機械的特性評価には、高温クリープ特性に関する知見が重要である。窒化珪素セラミックスにおいては、粒界の残留ガラス相が、高温クリープ特性を支配していると考えられる。本章では、高融点もつRe2Si2O7を粒界結晶相として有する窒化珪素セラミックスの高温クリープ特性を調べ、その特性に及ぼす添加元素の影響を明らかにすることを目的としている。その結果、Re2Si2O7を結晶化させた窒化珪素セラミックスは、1400℃で応力200MPa定常クリープひずみ速度が約1−5×10-9s-1程度と、いずれの添加希土類元素においても極めて高いクリープ特性を示したが、この変形速度は添加元素によって大きく異なった。図4にクリープ変形初期からのひずみ速度をひずみに対して両対数プロットしたものを示す。今回調べた希土類元素では、特にY添加窒化珪素セラミックスが高温クリープ特性の向上に有効であり、ひずみ0.2%における変形速度は7×10-10s-1にまで抑制されている。

 また、いずれの材料においても、希土類元素添加窒化珪素セラミックスにおける粒界ガラス相の見かけ上の粘性は、粒界ガラス相の厚さを考慮すると1014Pas程度と見積もられる。応力付加とともに、圧縮応力下の粒界ガラス相が、引っ張り応力下の粒界への流動する挙動が遷移クリープ段階に対応するとしたモデルに基づき、ガラス相の厚さが0に近づいていくと仮定すると、見かけ上の粘性増大によって、ひずみ速度が変形とともに急激に低下する理論曲線を描くことができる。変形前のガラス相厚さとガラス相の粘性を用いて描いた、各試料における遷移クリープ理論曲線を図4に実線で示す。理論曲線と実験結果とがよく一致することがわかった。つまり、粒界ガラスの粘性と厚さが分かれば、遷移クリープ特性を予測することが可能となる。

(4) 窒化ケイ素における応力緩和の解析と高温二次クリープ変形速度の予測

 試験時間が短時間で済む応力緩和試験は、従来ガラス材料の高温変形挙動の研究によく使われてきたが、窒化珪素セラミックスに対して適用された解析は少ない。本研究では、応力緩和試験を行って、窒化珪素セラミックスにおいて新しい解析方法に基づき、その高温変形挙動を解明することを目的とする。窒化珪素セラミックスの応力緩和は、残留ガラス相における粘性緩和(viscoelastic)と粒界における拡散緩和(plastic)によって進行すると考えられることから、通常ガラス材料において適用される時間関数σ/σ0=exp(-(t/τ)b)と粒界における拡散緩和を表す時間関数σ/σ0=exp(-(t/τ))の線形和として、σ/σ0=αexp(-(t/τ))+(1−α)exp(-(t/τ)b)なる応力緩和方程式を提案した。この式により、0.2%変形後の拡散緩和における粘性が求められる。二次クリープが粒界を拡散経路とする拡散クリープであると仮定すれば、この粘性から二次クリープのひずみ速度が見積もられる。このひずみ速度は、高温クリープ試験から得られた値とよく一致する。また、応力緩和試験から求められるガラスにおける粘性は1015Pas程度で遷移段階の粘性が一致することがわかった。応力緩和試験より窒化珪素セラミックスの高温クリープ変形挙動を記述するのに有効なパラメータを評価できることがわかった。

 本研究で、窒化珪素セラミックスに各種希土類元素を系統的に添加し、Re2Si2O7を粒界結晶相とする材料を作製した。焼結過程で生成するガラス相の生成温度と高温曲げ強度がガラス相中のRe-O結合力と相関性が認められた。また、従来のガラス材料の応力緩和方程式に基づいて、窒化珪素セラミックスの粒界における緩和機構を考慮した応力緩和方程式を提案した。短時間で二次クリープに対応する粒界におけるひずみ速度が求められることが可能であり、さらに、一次クリープ変形挙動は粒界ガラス相の粘性と厚さの変化から予測することができる。こうした基礎データをもとに、長時間にわたる高温変形挙動を現象論的に予測することが可能となる。窒化珪素セラミックスの高温機械的特性は粒界における微細構造や特性に関連しており、これらの結論は実用上有益な成果であり,窒化珪素セラミックスの高温機械的特性を制御するための新たな指針をもたらすことが期待される.

図1希土類元素を焼結助剤として添加したSi3N4-Re2Si2O7(Re : Nd, Sm, Y, Yb)の昇温中における収縮速度曲線。

図2液相生成温度とRe-O結合のField strengthの関係(Re : Nd, Sm, Y, Yb)。

図3希土類元素を添加したSi3N4-Re2Si2O7(Re : Nd, Sm, Y, Yb)各試料の高温曲げ強度と室温曲げ強度の比と液相生成温度の関係。

図4 希土類元素を添加したSi3N4-Re2Si2O7(Re : Nd, Sm, Y, Yb)各試料の高温クリープ曲線と材料の粒界ガラス特性から得られたクリープ理論曲線との比較。

図5 Si3N4-Y2Si2O7の1400℃、初期応力50MPa応力緩和曲線。

粘性緩和(viscoelastic)及び粒界における拡散緩和(plastic)に基づく応力緩和方程式を用いたフィッティング曲線を併せて示す。

審査要旨 要旨を表示する

 セラミック材料は一般の金属材料と比較して比重が小さく、高硬度、高耐摩耗性、高融点等の特長を有していることから、特に耐熱構造材料としての実用化が期待されてきた。中でも窒化珪素(Si3N4)セラミックスは、室温から高温にわたり高強度を示し、また他のセラミックスと比較して靱性に優れるといった機械的特性を有することから代表的なエンジニアリングセラミックスとなっており、高温耐熱材料としての実用化が期待されている。しかしながら、窒化珪素は難焼結性であるため、液相焼結による製造が主であり、焼結後に残留する粒界ガラス相が窒化珪素セラミックスの高温における機械的特性を著しく劣化させる原因となっている。そこで、希土類酸化物(Re2O3)を添加し、焼結後適切な熱処理条件を行うことにより粒界ガラス相を結晶化させる技術が利用されている。このようにして得られた窒化珪素は、優れた高温強度・耐酸化性及びクリープ特性を示すことが知られている。しかしながら、その材料製造プロセスは経験則に依存しているのが現状であり、高温機械的特性および焼結過程に及ぼす助剤の影響については未だ解明されていない点が多い。そのため、機械的特性を記述するパラメータも十分に把握されておらず、その高温機械的特性を制御することは困難であるのが現状である。本論文では、窒化珪素セラミックスについての焼結や高温機械的特性に及ぼす希土類元素の影響を解明するとともに、その高温機械的特性評価のためのパラメータを見出し、材料設計の為の基礎的知見を得ることを目的とし、全6章より成る。

 序論である第1章では、窒化珪素セラミックスの構造や物性の特徴、多結晶材料における高温クリープ変形について概説した。また、窒化珪素セラミックスにおける高温クリープ変形の機構や、機械的特性向上の従来の手法など、本研究の背景となるこれまでの研究の進展を要約するとともに本研究の目的について述べている。

 第2章では、異なるイオン半径を持つ希土類元素(Nd, Sm, Y, Yb, Lu)を系統的に添加し、焼結過程に及ぼす希土類元素の影響について述べている。いずれの助剤に対しても、昇温中急激に収縮速度が上昇する三つの段階からなることを見出している。このうちの第一及び第二段階は化合物相の生成に起因するものであり、一方第三段階は最も顕著な収縮を伴う、液相生成温度であることを見出している。この液相生成温度は添加元素によって異なり、シリカガラス中の不純物陽イオン周囲での化学結合力に対応すると考えられるField strengthと相関が認められた。液相生成温度はField strengthの増加と共に上昇しており、ガラス中のRe-Oイオン間結合力が強いほど、シリカの綱目構造を維持する力が高く、その結果ガラス相の融点が高くなると考えられる。即ち、焼結過程における希土類助剤Re2O3の影響は、Re-Oの化学結合力によって記述できることを明らかにしている。

 第3章では、窒化珪素の高温曲げ強度に及ぼす添加元素の影響について述べている。従来、高温強度向上の機構については、助剤として添加した希土類を含む粒界ガラス相の粘性という観点から議論がなされてきた。本研究では、高温での曲げ強度には添加元素依存性が認められ、Y>Yb>Nd>Smの順で大きな高温強度を示すことがわかり、液相生成温度が高い材料であるほど各試験温度での高温強度が維持されることが明らかになった。窒化珪素セラミックスの高温強度と焼結中の液相生成温度が相関性を持つことを示唆しており、高い高温強度もつ窒化珪素セラミックスの開発には粒界における液相生成温度が重要な要因であることを示している。さらに、液相生成温度と助剤のRe-O強度の相関性から、粒界ガラス相の機械的特性が粒界ガラス相中のRe-O結合強度に支配されると考えられる。換言すれば、希土類元素を添加した窒化珪素セラミックスにおいて、粒界ガラス相のRe-Oイオン結合力が高温強度を支配する重要な因子であることが述べられている。

 第4章では、高融点のRe2Si2O7を粒界結晶相として有する窒化珪素セラミックスの高温クリープ特性を調べ、特にクリープの遷移段階特性に及ぼす添加元素の影響について述べている。いずれの添加希土類元素においても極めて高いクリープ特性を示したが、高温での遷移段階の変形速度は添加元素によって大きく異なることがわかった。また、応力指数と活性化エネルギーの結果から、高温クリープの遷移段階挙動が粒界の残留アモルファス相に起因するものであることを示している。実際に応力付加とともに圧縮応力下の粒界から、引っ張り応力下の粒界へのガラス相の流動が遷移クリープ段階に対応するとしたモデルに基づき、アモルファス粒界相の厚さ及び遷移クリープ挙動をうまく記述できる。換言すれば、粒界ガラス相の厚さ、粘性と平均粒径が分かれば、窒化珪素の遷移クリープ挙動を予測することが可能である。

 第5章は、応力緩和試験により、高融点のRe2Si2O7を粒界結晶相として有する窒化珪素セラミックスの粘弾性挙動を調べた結果である。本研究で新たな窒化ケイ素の応力緩和挙動の解析方法を考案すると共に二次クリープ変形速度の予測について述べている。窒化珪素の応力緩和は、粒界における拡散緩和と残留ガラス相における粘性緩和によって進行すると考えられる。本研究で提案した新しい応力緩和方程式は、粒界における拡散緩和を表す時間関数と通常のガラス材料において適用される時間関数の線形和として応力緩和を記述するものである。この式により、0.2%変形後の拡散緩和における粘性が求められ、この粘性から計算したひずみ速度は高温定荷重クリープ試験から得られた値とよく一致した。また、応力緩和試験から求められる残留ガラスにおける粘性は1015Pas程度であり、遷移段階で得られるガラスの粘性と一致し、合理的なガラス粘性挙動を記述出来る。本研究結果は、応力緩和試験よって窒化珪素の高温変形挙動を有効に評価できることが明らかにされた。

 第6章は本論文の総括である。

 以上、本論文は、窒化珪素セラミックスの高温機械特性の向上に関して、粒界構造という立場から実験と解析を行ったものである。中でも、各種希土類元素を系統的に添加し作製した窒化珪素セラミックスの高温曲げ強度ならびに焼結過程で生成するガラス相の生成温度がガラス相中のRe-O結合力と相関性をもつことが初めて明らかにされている。また、粒界ガラス相の流動を仮定したモデルを用い、一次クリープ変形挙動は粒界ガラス相の粘性と厚さの変化から予測することができることを示している。さらに、窒化珪素セラミックスの粒界における緩和機構を考慮した新しい応力緩和方程式を提案した。これにより、短時間で二次クリープに対応するひずみ速度を見積ることが可能であることが示された。これらの基礎データをもとに、長時間にわたる高温変形挙動を現象論的に予測することが可能とった。これらの結論は実用上有益な成果であり,窒化珪素セラミックスの高温機械的特性を制御するための新たな指針をもたらすことが期待される。

 よって、本論文は博士(工学)学位請求論文として合格と認められる。

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