学位論文要旨



No 117194
著者(漢字) ナシール マハムッド カーン
著者(英字) Nasir Mahmood Khan
著者(カナ) ナシール マハムッド カーン
標題(和) 半乾燥灌漑地域の塩害・湛水害に起因する農地環境劣化の分析
標題(洋) Analysis on Environmental Land Degradation Caused by Hydro-salinity in Semi-Arid Irrigated Regions
報告番号 117194
報告番号 甲17194
学位授与日 2002.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(農学)
学位記番号 博農第2390号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 佐藤,洋平
 東京大学 教授 田中,忠次
 東京大学 教授 宮崎,毅
 東京大学 教授 大政,謙次
 東京大学 助教授 塩沢,昌
内容要旨 要旨を表示する

 塩害は半乾燥地灌漑の農業地域における環境的土地劣化の主な特徴である。これは半乾燥地気候によるものであり、持続的な農業のためには半乾燥地に対する情報を通じての効果的な土地改良の適用および計画が必要である。塩害は人間の活動、主に不適切な排出システム、または塩分を多量に含んだ地下水による灌漑拡大、そして、地球上でその面積は954.8Mhaに達している。パキスタンでは、水食と塩害によって全灌漑地面積の26%(4.22Mha)が影響を受けている。後に、新しい技術である「タイル灌漑」は解決策として紹介された。その結果、巨大な投資からの期待よりもまだはるかに下回っている。地下水面はある程度減少したが、塩分はインダスたらいシステムの大部分における分配されたパッチでまだ残っている。

 SCARPプロジェクトの部分的な失敗の主な理由は次のように確認された。広大な地域に使われる塩分調査方法は、保証された密度と頻度で情報をよく発生させることができない。それらはかなり任意で、手間がかかっていて、困難で高価である。衛星遠隔探査のテクニックは素晴らしい代替手段として、マイクロレベル研究に提供する。遠隔探査とGISによって水力塩分を検出して、写像するのは、頻繁に適用されたテクニックではない。ほんのわずかな研究で、このようなダイナミックな対象を扱うような、塩害地域におけるモニターの方法になっている。遠隔探査データとGISと統合するのにより、土と植物状態に分類と空間的そして、一時的なダイナミックな現象の評価のためのデータベースおよび情報のアップデートは土地表面の特徴のための役に立つガイドとして役目を果たす。

 灌漑の重要性と排出、酸性化、地下水面そして地下水の質は関係が密接であり、モニターおよび評価は、酸性化の被害が起こる地域における灌漑システム管理とリハビリテーション政策のための重要であると考慮される。水塩水の地域の評価のために費用対効果が良いGISに結合された遠隔探査の高度なテクニックを使用することで方法論として開発された衛星データを使用することは、重要である。本研究では、作物の生産性に与える影響を把握するため、一定の地下水で、パラメタテーブルの上で異なった塩分において、作物の生産性を実験室での実験で把握した。

 本研究の第一の目標として、ファイサラーバードの近く72,000haを対象にした第4段階排出SCARPプロジェクトのSummundary-IIユニット地域がパキスタンの研究対象地域として選択された。SCARP-IVプロジェクトの総領域の中、全体の77%と43%がタイル排出システムを導入する前は高い地下水面状態と塩分にあった。平均年の降雨は2,100mmの平均した年蒸発の300mmと、ほぼ平坦なスロープである(平均0.02%)。36.25mの空間的解決は4wavebands(B1: 0.042-0.52mm、B2: 0.52-0.59mm、B3: 0.62-0.68mm、およびB4: 0.77-0.86mm)のIRS-1B LISS-II(自己スキャン分光計の線イメージ)解決が異なった期間に使用される1992-1997の数年間(季節風の前・後)取得した。1:5万スケールのパキスタンの調査による地形図を、衛星イメージの登録およびベース地図として使用した。運河排水、土壌および地下水の水質パラメータ(ECe、SAR、およびRSC)のレイアウト地図、およそ200ピエゾメーターに関する地下水面データ(1990、93、96))は、水浸しと危険な地域を知るために使用した。対象地域での調査は、色々なGPSデータ、土壌標本、視覚による対象地域観測および農業従事者とのインタビュである。様々なディジタル画像処理(DIP)のテクニックとGIS分析は、全体で研究の目的を満たすために必要である。

 本研究の最初の部分は、対象地域の水塩分検出と分類の問題を扱う。分析はインディアンのRemote Sensing(IRS-1B)衛星のセンサであるLISS-IIによって受け取られるデータに基づく。地理情報システムであるIDRISIを用いて、対象地域を土壌の分類のための異なった遠隔センサインディケータを調べるそして、問題解決のための新しいアプローチを模索する。スペクトル反応パターンは、塩の影響を受けている土地が植物の最大になるNIR−範囲を除外しての全て見える反射率の範囲の中、高い値を示した。

 渇水期(3月−4月)において最も良い結果は、他のクラスの特徴で混乱に数回を引き起こす恐れがあるものの、多湿または、高い温度際には達成できない。この手順において、一番難しい部分は、土壌が影響をうける地域および乾いた痩せ地のような泥々の屋根を持っている居住地/人口密集地域との差である。これを解決するためは、2つの方法がある。もし地図およびイメージデータを使用し、都市居住地域を除去することができたら、両方クラスの間の差は3月のように、かなり明確になる。塩で影響を受けている地域の示す問題は、しばしば地下水面のリスク地域を判断する際にも使用される。

 次の分類アプローチで、非統轄な分類基準を使用した満足な結果をどのように得るかを説明した。明らかに、他のベースの上で合成物を作り出すことができる。塩が影響を受けている地域は白い色で明確にイメージで区別される。説明された手順の主な利点の1つは成功率が高く、正しく水の目的を分類することができることである。結果は、排出運河に沿って深刻な状態の水食と塩分問題の大部分が同時に起こっているのを示した。塩類土壌が対象地域の7.15%であることがわかった。灌漑排出ネットワークに沿ってNDVI分析を使用するバッファリング分析は、植物活力に関して生産性への水力塩分の影響を把握するために実行された。NDVI値は、対象地域における画素の割合における排出により低く、灌漑運河に沿って高くなる傾向がある。それは不公平な水の分配、比較的低い地域域および高い地下水面の深さに起因する。

 対象地域の近く企業農場モデルの対立の例では、残っている塩分問題を解決する可能性に向かった表示の休閑中の土地を除いて競争できる高いNDVIは農業地帯の上で説明可能な灌漑供給の需要に起因する。灌漑水の不足は生産性を支えを制限する重要な要因として確認された。また、水浸しの土壌(£200cmのきわどい深さの地域)の範囲はGIS分析の属性データベースを通して対象地域に属す200ピエゾメーター位置にあることが見積もられた。1990年から1993年の間、観察された低い傾向は、1990年の値を1996年の値と比較すると著しい(39%)増加し、結構危機的な状況であった。灌漑のための地下水の使用に伴う既存の排出システムは、水浸しの土壌の範囲を減少させるという証拠を提示した。しかしながら、下流の農業従事者による補足灌漑物資への不十分な上質の水の再利用といくつかの排出穴の失敗は、対象地域で地下水面と塩分の増加するリスクから水のバランスを妨害する結果を引き起こす恐れがある。

 研究の最後部分の主な目的には、塩分に影響と関連がある地下水の質による地下水面の危機の下、地域の評価および表すことと、空間的・時間的に水塩分による土壌劣化の情報を提供しIRS-1Bデータの可能性(パキスタンに最初のケーススタディを行う)を見るためである。水浸しと地下水の水質の関係とそれが発生する確率に対する情報によるGIS分析の水塩分の範囲の結果は統合された遠隔センサーにより、可能になった。塩の影響を受けている土地の確率密度は、対象地域での積極的な改善を評価して徐々に減少傾向を見せながら塩分地域の40%の確率で発生することに基づいている。塩で影響を受けている土地の割合は、地図に示されている地域の7.55%であることがわかった。

 次に、費用対効果に優れたIRS-1B LISS-IIデータ使用で、両方のテクニック(GISとRS)を融合し、説明して、プロジェクトレベルの地下水面の深さに関しての塩分地域の特徴と地下水の品質を説明する。浅く塩成分の地下水の生産性への影響の把握のため、すべての土水、気候そして、異なった地下水の塩分レベルを提供する農業的なパラメタを55cmの深さである一定の地下水のテーブルの実験を行われた。

 3つの処理、(制御(T-1)、3dS/mのECe(T-3)、および6dS/m(T-6))の3つの模写をそれぞれ春小麦作物の4つの植物で行った。成長期間の作物反応と算出パラメタへの相対的な影響は、収穫の後、分析された。結果は、処理T-1とT-2は重要ではないが、T-6によって地下水の塩分変化の粒利回りと乾いたバイオマスパラメタが非常に重要であることを示した。植物の高さはそれほど違いが確認されなかったが、T-6のスパイクのNo.の違いがあった。最大の水消費量は徐々にT-3の減少でのT-1とT-6処理によって観測された。より高い塩の濃度はT-6とT-3において、30〜40cm深さの範囲で観測された。

 この研究から、小麦のように4dS/m未満のECeの浅い地下水のテーブルで生存できるのが耐性作物であることが結論づけられた。しかしながら、本研究ては適切な土壌・水管理により、環境的面も確かめられることを提案した。対象地域で水供給の不足から、敏感な作物ステージの間には適用可能であるが、排出の流れの再利用は、表面灌漑としては避けるべきである。

審査要旨 要旨を表示する

 塩害は、半乾燥灌漑農業地域において農地を劣化させる大きな問題である。乾燥地や半乾燥地においては、河川水の灌漑とともに行われるべき排水が十分でなければ、灌漑によって地下水位が上昇して地表面まで達し、湛水害をもたらすとともに、地表面からの高い蒸発速度により塩分が集積し、塩害が生じる。灌漑面積の拡大によって、地球上で湛水害や塩害を被っている面積は54.8Mhaに達し、パキスタンでは、全灌漑面積の26%(4.22Mha)が影響を受けている。

 リモートセンシング(RS)をGISとともに用いて湛水害・塩害地域を判別し地図に描くことは、これまであまり行われてはいない。潅漑管理と劣化した土地を回復させる政策に利用するため、コスト効率の高い衛星画像データとGISを組み合わせて、時間とともに変化する塩害地域の分布をモニタリングする手法を確立することが重要である。

 本研究は、パキスタン・ファイサラーバード近郊72,000haを対象にしたSCARPプロジェクト地域を研究対象として、RSとGISを統合することにより、塩害および湛水害地域の地理的分布をモニタリングする手法を確立することを目的としている。

 研究対象地域は年平均蒸発量2,100mm、年平均の降雨量300mmで、ほぼ平坦である。衛星RSデータとして、インドが打ち上げた低コストの衛星IRS-1BのセンサーLISS-IIの4つの波長バンド(B1、B2、B3、B4)の反射特性について1992-1997の6つの異なった時期のデータを用いている。排水路、土壌および地下水水質パラメータ(ECe、SAR、RSC)の分布図、および湛水害危険地区を知るために約200地点のピエゾメーターによる地下水位データ(1990、93、96)を使用している。現地調査では、GPSデータ、土壌調査、視覚による観測および農業従事者とのインタビュをおこなっている。地理情報システムであるIDRISIを用いて、RSデータによる判定と地上土地分類との比較をおこなっている。

 まず、塩害地区(ピクセル)と相関の高い分光反射特性を見つけるため、分光反射データから得られるいくつかの指標(SI、NDSI、B3および植生指標のNDVI)を試した結果、いずれの指標も正解確率は季節に大きく依存している。ここで一番難しいのは、塩害地区を建物密集地や乾いた荒地と区別することであるが、事前に市街地を除くとともに、3月のRSデータを使うのが最も良いことを明らかにしている。湛水害危険区は水指標(WI)で区別している。6つの異なる時期のRSデータによる土地分類手順に各バンドを組み合わせたCOMPOSITE関数とSTRETCHモデルを用いて、塩害ピクセルを色分けしている。この結果、塩害ピクセルは対象地域の7.15%で、湛水害と塩害は同時に、しかも排水路に沿って多く生じていることが明らかにされた。また、NDVI指標からみた植生密度も用水路に沿って高く、排水路付近で低く、湛水害・塩害は標高が低く地下水位が地表に近い所で生じていることが示されている。

 次に、RSデータと、現地測定の土壌溶液の水質および地下水の水質データの分布図をGISによって統合して分析し、塩害・湛水害の危険度の分布図を作成している。この結果、塩害地区の土壌はアルカリ・塩類土壌に分類される劣化土壌が多く、塩害の影響圏地区でも62%において、地下水の水質が悪く、今後、アルカリ・塩類土壌になる危険度が高いことが示され、排水システムの整備等の必要性を述べている。

 研究の最後の部分では、浅い地下水の塩濃度が作物の生産性に与える影響を把握するため、地下水位を一定に維持した実験室のポットで春小麦を栽培する実験を行っている。ポットの下から供給する水の濃度(EC)を、水道水、3dS/m、および6dS/mの3つとして比較している。蒸散速度は給水濃度の高いほど小さくなり、最終のバイオマス量にも明確な差が出たが、収量の違いはバイオマス量の差ほど大きくなく、小麦のような比較的耐塩性のある作物では、4dS/m程度までの地下水の灌漑は、やり方次第で収量に大きな影響はないことを示唆している。

 以上を要するに、本研究は、衛星画像データとGISを組み合わせて、時間とともに変化する塩害地域の分布をモニタリングする手法を構築したものである。以上の結果は、半乾燥灌漑農業地域において潅漑管理と劣化した土地を回復させるという政策課題に関して新しい知見をうるものであり、学術上・応用上の価値が高いものと評価できる。よって審査委員一同は、本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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