No | 117363 | |
著者(漢字) | 高江,健太郎 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | タカエ,ケンタロウ | |
標題(和) | ヒツジ及びヒヒの胎仔腎臓におけるプロスタグランジンE及びF受容体の発現に関する研究 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 117363 | |
報告番号 | 甲17363 | |
学位授与日 | 2002.03.29 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第1971号 | |
研究科 | ||
専攻 | ||
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 目的:大人のヒト腎臓におけるプロスタグランジンの重要性にもかかわらず、いままで胎児における腎臓におけるプロスタグランジンの受容体の発現に関する研究は行われていなかった。そこで、ヒツジ及びヒヒの胎仔腎臓におけるプロスタグランジンE及びF受容体−EP2、EP3、EP4、FPのmessenger ribonucleic acid (mRNA)の妊娠の経過に伴う発現の変化について比較すること、同時に出生前の母体へのグルココルチコイド投与が胎仔腎臓におけるプロスタグランジンE及びF受容体の発現に与える影響についても比較することを目的とした。方法:すべての胎仔はハロタン麻酔下で帝王切開にて娩出され、児頭切新法にて安楽死させた。 妊娠の経過に伴う変化に関する研究:ヒヒ胎仔は妊娠125-173日齢(満期:180日)に分娩とした。(n=14)ヒヒ新生児(n=2)は分娩後40日齢で安楽死させた。ヒツジ胎仔は80-100日齢(n=3)(満期:150日)、110日齢(n=4)、125日齢(n=3),138日齢(n=3)、145日齢(n=4)に分娩とした。 グルココルチコイド投与による効果に関する研究:妊娠ヒヒは生食あるいはベタメタゾン(170ug/kg/day)を妊娠日齢135-141日齢に12時間間隔で計4回投与した。最後の投与から12時間後胎児は帝王切開にて分娩とした。妊娠ヒツジは3コースの生食あるいはデキサメサゾン投与を104、111、118日齢に行った。1コースは12時間おきに生食あるいは2mgのデキサメサゾンを4回投与するものであった。最後の投与から12時間後胎児は帝王切開にて分娩とした。 以上のすべての実験において、分娩、安楽死後、胎仔腎臓は直ちに採取され、液体窒素にて瞬間冷凍の上、-80度で保存された。全RNAを抽出し、プロスタグランジンE及びF受容体−EP2、EP3、EP4、FPのmessenger ribonucleic acid(mRNA)の発現をノーザンブロット法で測定した。 結果:EP2、FPのmRNAはヒヒ、ヒツジどちらの胎児腎臓からも検出できなかった。EP4のmRNAはヒヒ、ヒツジどちらにおいても同様の傾向で、妊娠日齢に伴って増加した。EP3のmRNAはヒヒでは妊娠日齢とともに増加したが、ヒツジでは検出されなかった。ヒヒではグルココルチコイド投与によってEP4のmRNAの発現は減少したが、EP3のmRNAの発現は変わらなかった。ヒツジではEP4のmRNAの発現はグルココルチコイド投与によって変化しなかった。結論:胎仔腎臓におけるプロスタグランジンE受容体の発現を、あらゆる種を通じて始めて示した。そしてプロスタグランジンE受容体の発現へのグルココルチコイド投与の関与を検討した。これらの結果は、胎仔腎臓機能におけるプロスタグランジンの調節機構の解明にとって非常に重要な意義を持つものである。 | |
審査要旨 | 本研究は、胎仔における腎臓の発育において重要な役割を果たしているプロスタグランジンの受容体の発現について、ヒツジ及びヒヒをモデルにして解析を試みたもので下記の結果を得ている。 1 妊娠日齢の経過に伴って、プロスタグランジンE及びFの受容体がどのように発現するかをヒツジ及びヒヒの胎仔腎臓についてノーザンブロットを用い解析した。ヒツジについては、プロスタグランジンE受容体のうち、EP4のみ検出され、妊娠日齢に伴ってその発現は増加したことが示された。プロスタグランジンF受容体(FP)は検出されなかったことが示された。ヒヒについては、プロスタグランジンE受容体のうち、EP3及びEP4が検出され、いずれも妊娠日齢に伴ってその発現は増加したことが示された。プロスタグランジンF受容体(FP)は検出されなかったことが示された。 2 出生前の母体へのグルココルチコイド投与が胎仔腎臓におけるプロスタグランジンE及びF受容体の発現に与える影響についても解析した。妊娠80%の時点で母体へのグルココルチコイドを投与し、プロスタグランジンE及びF受容体の発現を比較したところ、ヒツジにおいては投与による変化はみられなかったが、ヒヒにおいては、プロスタグランジンE受容体のうちEP4の発現がグルココルチコイドによって減少したことが示された。 以上、本論文は、あらゆる種を通じて初めて、胎仔の腎臓にPGE2の受容体サブタイプの発現を示すものである。これらの結果は、プロスタグランジン受容体が胎児腎機能の発育に重要な役割を果たしていることを示唆しており、非常に大きな意義を持つものである。胎児腎機能の解明、とくにプロスタグランジンの役割について重要な貢献をなすものと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 | |
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