学位論文要旨



No 117592
著者(漢字) ファルーク ハリド
著者(英字) FAROOQ KHALID
著者(カナ) ファルーク ハリド
標題(和) 降雨浸透による砂質斜面の崩壊開始に関する実験的な研究
標題(洋) EXPERIMENTAL STUDY ON FAILURE INITIATION IN SANDY SLOPES DUE TO RAINFALL INFILTRATION
報告番号 117592
報告番号 甲17592
学位授与日 2002.09.30
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第5309号
研究科 工学系研究科
専攻 社会基盤工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 客員助教授 ロランド,オレンセ
 東京大学 教授 龍岡,文夫
 東京大学 教授 東畑,郁生
 東京大学 助教授 古関,潤一
 東京大学 助教授 沖,大幹
内容要旨 要旨を表示する

 「降雨が引き起こす斜面崩壊」は、降雨中あるいは降雨後に、何の兆候もなく、かつ短時間に起こるために、もっとも深刻な被害をもたらす災害のひとつである。このような斜面崩壊による災害は、毎年多くの国で起こり、多くの人命を奪うだけでなく、社会インフラに多大な被害を及ぼす。斜面崩壊災害の危険を減らすためには、降雨による斜面崩壊に対する予報システムを構築することが大切であり、本研究は、雨水が浸透して起こる斜面崩壊のメカニズムと条件を解明し、斜面の崩壊等を予想する手法を確立することを目的としている。

 そのため、本研究では、過去に大規模な降雨による斜面崩壊を起こした現場二箇所より採取した3種類の土の試料を用いて、三軸試験や斜面の模型実験といった様々な室内実験をおこなった。それら試料のうち、2種類は群馬県熊野平から得られたもので、もう1種類は千葉県小見川から得られたものである。それぞれの試料の物性を知るために、指標試験も行った。

 雨水の浸透によって潜在すべり面上の要素に生じる応力経路を再現するために、初期不飽和の供試体、ならびに、初期飽和の供試体を用いて、一定せん断応力下で排水三軸試験(CSD)を行った。この試験のために、応力経路を自動制御できる三軸試験を開発した。初期不飽和土の供試体を用いた一定せん断応力排水試験(これをCSDU試験と呼ぶ)では、空気を良く通すセラミックディスクを用いて初期のサクションを測定した。高さ155mm、直径75mmの供試体は湿潤締固め法によって、特定の相対密度と飽和度になるように製作した。供試体中の間隙水圧を計測するため、小型間隙水圧計を供試体内部に設置した。供試体はまず等方圧密され、その後、崩壊斜面現場の主応力比になるよう鉛直応力を増加させた。そして一時間圧密した後、供試体のせん断破壊まで、セラミックディスクの底面から、水を浸透させた。水が浸透している間、供試体の上端は大気に開放されている。軸荷重はコンピューターにより鉛直応力が一定になるように制御されている。

 初期には飽和した土の供試体を用いた一定せん断応力排水試験試験(これをCSDS試験と呼ぶ)では、供試体は飽和しており、ある特定の主応力レベルまで圧密された後、全応力一定のもとで供試体をせん断するまで、供試体内の背圧を増加させた。降雨による斜面崩壊のすべり面は、一般に浅いことを考慮し、本研究においては、20 50kPaという比較的小さな拘束圧で実験をおこなうこととした。異なる応力経路での挙動を調べるために、さまざまな応力経路に対し、従来行なわれているような排水および非排水三軸せん断試験(ICDとICU試験と呼ぶ)もおこなった。

 不飽和土の一定せん断応力試験(CSDU)では、初期相対密度、主応力比、水の浸透率、浸透係数、初期飽和度といった各パラメータが降雨による斜面でのせん断破壊の進行にどのような影響を持つのかを調べた。そして、実験の結果、水が浸透していく初期の段階では、軸ひずみにはほとんど発生しないが、供試体の飽和度が十分上昇し、(小型間隙水圧計で計測した)過剰間隙水圧が大きくなると、軸ひずみが急速に増加することが分かった。このとき、供試体は降伏点に達し、せん断破壊が始まったものと考えられる。いったんせん断破壊が始まると、その後の変形の進行は、供試体の初期の条件に依存する。せん断破壊が始まった後での応力の増分は、初期主応力比、浸透率が大きくなるほど、大きく、一方、初期相対密度、初期拘束圧が大きくなるほど、小さい。同条件下で様々な飽和度でおこなった試験の結果を比べると、初期飽和度の大きい供試体の方が、小さいものよりも、短い浸透時間でせん断破壊に至るということが分かった。しかしながら、その両方の実験において、ほぼ同じ平均飽和度、過剰間隙水圧でせん断破壊が始まった。さらに、様々な段階で水浸透が止められた実験結果から、ほぼ同じ平均飽和度でせん断破壊が始まったことを確認した。また、せん断破壊が始まった後でのひずみ速度は水浸透の継続するかどうかに依存するということも分かった。ほぼすべての不飽和供試体(CSDU)試験において、試験後に計測された飽和度は、ほとんど完全飽和に近かった。また、供試体内部に設置された小型間隙水圧計により、せん断破壊は供試体中の正の過剰間隙水圧により発生することが認められた。これらの観察から、斜面でのせん断破壊の開始はほぼ飽和した状態で起こるのであろうと結論付け、次に、はじめから飽和した供試体を用いた研究(CSDS試験など)をおこなうことにした。

 飽和した供試体の一定応力排水せん断実験(CSDS)では、初期相対密度、主応力比といった様々な初期条件においても、不飽和供試体の試験(CSDU)とほぼ同様な変形の挙動が観察された。また、CSDS試験、CSDU試験の両方で、せん断破壊が始まった後の変形挙動は、収縮的、膨張的といった変形のモードに大きく依存することが認められた。すなわち、収縮性の強い試料では、浸透による間隙水圧の上昇は、収縮せん断破壊を招き、たとえ排水条件であっても、せん断破壊開始後は、供試体内で非排水状態が卓越した。その結果、大きな過剰間隙水圧が発生し、せん断破壊は急速に進んだ。この結果はこれまで多くの研究者が指摘してきたように、降雨による斜面崩壊は、排水的に発生し、非排水的に進行するという仮説を支持するものである。これに対して、膨張性の強い土では、浸透による間隙水圧の上昇は、さらなる膨張を招き、この結果、過剰間隙水圧と減少させるように働き、せん断抵抗力を増加させる。そのため、せん断破壊の進行はゆっくりである。

 水で飽和した供試体の実験(CSDS試験)で、せん断破壊の開始時の内部摩擦角を測定し、同じ試料を用いた従来型の等方圧密排水三軸試験(ICD)と比較したところ、CSDS試験の摩擦角の方がかなり小さかった。これは従来のICD試験から得られた強度パラメータを用いて斜面安定解析をおこなうと、CSDS試験より得られたパラメータを使う場合よりも耐力を過剰に推定する恐れを示唆している。各試料において、ICD試験から得られた内部摩擦角とCSDS試験から得られた内部摩擦角の間には、簡単な相関は見受けられた。CSDS試験でのせん断破壊開始時における内部摩擦角は、ICD試験から得られた内部摩擦角の0.75 0.86倍であった。従来の異方圧密排水三軸せん断試験(ACD試験)、異方圧密非排水三軸せん断試験(ACU試験)における変形挙動を見ても、CSDS試験のものとは異なっている。同じ初期条件では、CSDS試験での変形挙動は主に膨張的であるのに対し、ACD試験では収縮的であった。ACU試験では、それぞれの試験で、供試体の膨張性、収縮性に応じたひずみ軟化やひずみ硬化を見せた後、0.5%以下の非常に小さい軸ひずみにおいて、ピーク強度を発現した。

 水の浸透を受ける斜面模型の破壊挙動を調べるために、斜面の模型実験もおこなった。斜面模型は、高さ70�p(上段までの高さ90�p、下段までの高さ20�p)で、湿潤締固め法で製作した。間隙水圧、含水率と地中変形を計測するために、様々な場所に間隙水圧計、土壌水分計、せん断ひずみ計を設置した。この模型実験では、水頭一定の水槽から斜面上段へ水を浸透させることにより、雨水の浸透を再現した。模型実験の結果、斜面の変形は飽和度と間隙水圧に大きく関係することが分かった。斜面の崩壊は、表面から5�pの深さで起こった。雨水の浸透により斜面の一部が飽和し、間隙水圧が上昇すると、表面付近の変形が起こった。斜面模型の実験では、密度と斜面の傾きが変形の過程に及ぼす影響も調べた。これらの結果は、水の浸透により、飽和した砂中の過剰間隙水圧が上昇することによってせん断破壊は起こるというCSDU試験の結果ともよく整合した。

 三軸試験と斜面模型実験における観察と結果にもとづくと、降雨による斜面崩壊の直前発生を予期する手法が確立された。そして、大部分の地盤が完全に飽和して間隙水圧が上昇を開始し、その後にせん断破壊が始まること、すなわち間隙水圧の上昇が破壊の前兆になるとことを示したことが、本研究の成果である。このことは、予報システム確立に大きな示唆を与える。従って、ある斜面の危険度の高い部分に、飽和度を感知する水分計、間隙水圧の上昇を感知する間隙圧計を設置し、それらをネットワークで結ぶことで、降雨による斜面崩壊がもたらす深刻な被害を警告することが可能であると結論付けられる。

審査要旨 要旨を表示する

 梅雨期や台風期等に全国各地で毎年のように発生する豪雨被害では、多くの尊い人命や社会的財産が失われている。この豪雨被害の中でも土砂被害は、その発生機構あるいは予知体制が確立されていないこともあり、その被害は多大なものがある。この土砂被害の原因は、我が国が年間降雨量1,800mm/yearと世界平均の2.3倍の多雨地帯であること、湿度が高く降雨に較べて蒸発散量が約1/3と少なく地下への浸透水量が多いこと、日本列島が環太平洋地帯に属し、地質的な安定性に欠けること等が挙げられる。この様な原因からも、斜面崩壊による被害を軽減するために何らかの対策を考えなければならないことは明らかである。

 現在、採用されている対策法は大きく二つに分類できる。一つは砂防ダムの建設・のり面の補強・地下水の排除等で物理的に崩壊を抑制しようとする手法である。もう一つは降雨量や地盤の状態を計器によって直接計測し、斜面崩壊の危険をリアルタイムに察知して、警報を発令し避難を促すという手法である。しかし、両者ともに問題を抱えている。前者では、擁壁で抑制するという方法は効果が絶大であるが、全国に無数にある不安定斜面の一つ一つに擁壁を造るということは、その建造費用が莫大なものになりかねない。たとえ可能であっても建造によって自然に与えるダメージははかり知れないものとなってしまうだろう。また後者の崩壊を予測するという手法の問題点は、予測に用いられるパラメータはデータ取得が比較的に簡易なもののみ(降雨量)となっているため、予測の精度が低いということである。そこで、斜面崩壊の危度をより正確に予測するためにどのようにすればよいかということを検討しなければならない。そこで本研究は、雨水が浸透して起こる斜面崩壊のメカニズムと条件を解明し、斜面の崩壊等を予想する手法を確立することを目的としている。

 本研究では、三軸試験や斜面の模型実験といった様々な室内実験をおこなっている。雨水の浸透によって潜在すべり面上の要素に生じる応力経路を再現するために、初期不飽和の供試体、ならびに、初期飽和の供試体を用いて、一定せん断応力下での排水三軸試験を行った。様々なパラメータが降雨による斜面でのせん断破壊の進行にどのような影響を持つのかを調べた。さらに、水の浸透を受ける斜面模型の破壊挙動を調べるために、斜面の模型実験もおこなった。斜面地盤内の間隙水圧、含水率と地中変形を計測するために、様々な場所に間隙水圧計、土壌水分計、せん断変位計を設置した。三軸試験と斜面模型実験における観察と結果にもとづいて、降雨による斜面崩壊の発生をその直前の段階で予測する手法を確立した。

 本論文は全体で八章から成っている。その第一章は問題の所在、研究の構成を記述するとともに、降雨に伴う斜面崩壊の被災事例についても若干の説明をしている。

 第二章と第三章は、実験材料と実験方法を詳細に説明している。本実験では、過去に大規模な降雨による斜面崩壊を起こした現場二箇所より採取した三種類の土の試料を用いた。それら試料のうち、二種類は群馬県熊野平から得られたもので(砂礫試料とシルト質砂試料)、もう一種類は千葉県小見川から得られたもの(砂試料)である。それぞれの試料の物性を知るために、指標試験も行った。本研究の特徴は、雨水の浸透によって潜在すべり面上の要素に生じる応力経路を再現するために、初期不飽和の供試体、ならびに、初期飽和の供試体を用いて、一定せん断応力下で排水三軸試験を行ったことである。またこの試験のために、応力経路を自動制御できる三軸試験を開発した。初期不飽和土の供試体を用いた一定せん断応力排水試験(これをCSDU試験と呼ぶ)では、空気を通し難いセラミックディスクを用いて初期のサクションを測定した。供試体中の間隙水圧を計測するため、小型間隙水圧計を供試体内部に設置した。一時間圧密した後、供試体のせん断破壊まで、セラミックディスクの底面から、水を浸透させて、水が浸透している間、供試体の上端は大気に開放されている。実験開始時から飽和した土の供試体を用いた一定せん断応力排水試験(これをCSDS試験と呼ぶ)では、ある所定の主応力レベルまで圧密された後、全応力一定のもとで供試体内の背圧を増加させ、供試体をせん断した。一方、異なる応力経路での挙動を調べるために、さまざまな応力経路に対し、従来行なわれているような排水および非排水三軸せん断試験(ICDとICU試験と呼ぶ)もおこなった。

 第四章において一定せん断応力排水試験(CSDU試験)の結果を報告した。ここでは、初期相対密度、主応力比、水の浸透率、浸透係数、初期飽和度といった各パラメータが降雨による斜面でのせん断破壊の進行にどのような影響を持つのかを調べた。そして、実験の結果、水が浸透していく初期の段階では、軸ひずみがほとんど生じないが、供試体の飽和度が十分上昇し、(小型間隙水圧計で計測した)過剰間隙水圧が大きくなると、軸ひずみが急速に増加し始めることが分かった。このとき、供試体は降伏点に達し、せん断破壊が始まったものと考えられる。いったんせん断破壊が始まると、その後の変形の進行は、供試体の初期の条件に依存する。せん断破壊が始まった後での応力の増分は、初期主応力比や浸透率が大きくなるほど大きく、一方、初期相対密度、初期拘束圧が大きくなるほど、小さい。同条件下で様々な飽和度でおこなった試験の結果を比べると、初期飽和度の大きい供試体の方が、小さいものよりも、短い浸透時間でせん断破壊に至るということが分かった。しかしながら、その両方の実験においても、ほぼ同じ平均飽和度、過剰間隙水圧でせん断破壊が始まった。さらに、様々な段階で水浸透を停止した実験結果から、ほぼ同じ平均飽和度でせん断破壊が始まることを確認した。また、せん断破壊が始まった後でのひずみ速度は水浸透の継続するかどうかに依存するということも分かった。ほぼすべての不飽和供試体(CSDU)試験において、試験後に計測された飽和度は、ほとんど完全飽和に近かった。また、供試体内部に設置された小型間隙水圧計により、せん断破壊は供試体中の正の過剰間隙水圧により発生することが認められた。これらの観察から、斜面でのせん断破壊の開始はほぼ飽和した状態で起こるのであろうと結論付け、次に、はじめから飽和した供試体を用いた研究(CSDS試験など)をおこなうことにした。

 飽和した供試体の一定応力排水せん断実験(CSDS)結果は第五章に報告されている。初期相対密度、主応力比といった様々な初期条件においても、不飽和供試体の試験(CSDU)とほぼ同様な変形の挙動が観察された。また、CSDS試験、CSDU試験の両方で、せん断破壊の開始後の変形挙動は、収縮的、膨張的といった変形のモードに大きく依存することが認められた。すなわち、収縮性の強い試料では、浸透による間隙水圧の上昇は、収縮せん断破壊を招き、たとえ排水条件であっても、せん断破壊開始後は、供試体内で非排水状態が卓越した。その結果、大きな過剰間隙水圧が発生し、せん断破壊が急速に進んだ。この結果はこれまで多くの研究者が指摘してきたように、降雨による斜面崩壊は、排水的に発生し、非排水的に進行するという仮説を支持するものである。これに対して、膨張性の強い土では、浸透による間隙水圧の上昇は、さらなる膨張を招き、この結果、過剰間隙水圧と減少させるように働き、せん断抵抗力を増加させる。そのため、せん断破壊の進行はゆっくりである。水で飽和した供試体の実験(CSDS試験)で、せん断破壊の開始時の内部摩擦角を測定し、同じ試料を用いた従来型の等方圧密排水三軸試験(ICD)と比較したところ、CSDS試験の摩擦角の方がかなり小さかった。これは従来のICD試験から得られた強度パラメータを用いて斜面安定解析をおこなうと、CSDS試験より得られたパラメータを使う場合よりもせん断耐力を過剰に推定する恐れを示唆している。各試料において、ICD試験から得られた内部摩擦角とCSDS試験から得られた内部摩擦角の間には、簡単な相関が見受けられた。CSDS試験でのせん断破壊開始時における内部摩擦角は、ICD試験から得られた内部摩擦角の0.80 0.88倍であった。

 第六章では、斜面の模型実験方法と結果を詳細に報告した。間隙水圧、含水率と地中変形を計測するために、斜面模型の中の様々な場所に間隙水圧計、土壌水分計、せん断ひずみ計を設置した。この模型実験では、水頭一定の水槽から斜面上段へ水を浸透させることにより、雨水の浸透を再現した。模型実験の結果、斜面の変形は飽和度と間隙水圧に大きく関係することが分かった。斜面の崩壊は、表面から約5cmの深さで起こった。雨水の浸透により斜面の一部が飽和し、間隙水圧が上昇すると、表面付近の変形が生じた。斜面模型の実験では、密度と斜面の傾きが変形の過程に及ぼす影響も調べた。これらの結果は、水の浸透により、飽和した砂中の過剰間隙水圧が上昇することによってせん断破壊は起こるというCSDU試験の結果ともよく整合した。

 第七章では、CSDU試験結果に基づいて、ひずみの時刻歴をバイリニアの関係式でモデル化し、重回帰分析を用いて崩壊開始前後のひずみと色々なパラメータの相関係数を計算した。さらに、三軸試験と斜面模型実験における観察と結果にもとづいて、降雨による斜面崩壊の発生を直前の段階で予測する手法を提案した。具体的には、ある斜面の危険度の高い部分に幾つかの土壌水分計と変位計を設置し、斜面地盤の水分(あるいは飽和度)と変位をリアルタイムで観測し、それぞれの値が限界に至ると警報を発令することを提案している。

 第八章では,本論文で得られた結論をまとめている。

 以上をまとめると本論文は、降雨に伴う斜面崩壊の発生の直前予測という問題に向けて、三軸試験と斜面模型実験という立場から研究したものである。その成果は土砂被害の抑制向上のために有用であり、地盤防災工学上の業績は大きい。よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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