学位論文要旨



No 117595
著者(漢字) ソルタニ モハマディ マスウド
著者(英字) Soltani Mohammadi Masoud
著者(カナ) ソルタニ モハマディ マスウド
標題(和) ひび割れを考慮する鉄筋コンクリート構成則のミクロ計算方法および非線形有限要素解析への応用
標題(洋) Micro Computational Approach to Post Cracking Constitutive Laws of Reinforced Concrete and Application to Nonlinear Finite Element Analysis
報告番号 117595
報告番号 甲17595
学位授与日 2002.09.30
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第5312号
研究科 工学系研究科
専攻 社会基盤工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 助教授 安,雪暉
 東京大学 教授 魚本,健人
 東京大学 教授 前川,宏一
 東京大学 助教授 石原,孟
 東京大学 講師 松本,高志
内容要旨 要旨を表示する

 RCプレート要素はせん断壁、離岸プラットフォーム、箱型梁、核容器およびシェル構造で多く使われているRC構造の基礎的なコンポーネントである。RCプレート要素の基本挙動は複雑であり、コンクリートと鉄筋との付着特性、骨材の噛み合い、鉄筋のdowel効果、ひび割れ面の力の伝達、ひび割れ間のコンクリートの圧縮剛性低下、ひび割れの開閉および新しいひび割れの生成などの異なるメカニズムの組合せである。これらの要因を深く理解するのは鉄筋コンクリート構造の合理的な分析および設計の基本となる。シェルビーにあるウィルキンズ空軍貯蔵所倉庫の部分的な崩壊(1955)、ノルウェー沖にある3億ドルの離岸プラットフォームの崩壊(1995)、および阪神大震災の構造物の崩壊は、分析と設計の手法での欠乏のデモンストレーションである。過去十年間で、鉄筋コンクリート構成則が非線形有限要素分析だけでなく、最近提案された設計方法にも適用できるようになってきた。

 本研究では、一般的な面内応力を受けるRCプレート要素の挙動分析のためのミクロ計算モデルの開発を目指す。RC要素の挙動については、コンクリートと鉄筋の相互作用を含むRC領域の応力伝達のミクロメカニズムに基づいて、骨材の噛み合いによる応力伝達、鉄筋のdowel効果を考慮する。提案されるモデルによって、鉄筋とひび割れが発生したコンクリートの平均応力ひずみ関係、平均ひび割れ間隔、ひび割れ開きとズレが計算できる(図1)。

 要素レベルに続いて、モデルはメンバーレベルまで延長される。ひび割れのある鉄筋コンクリートの構成則におけるのRC領域のひび割れ分散性およびひずみの不均一分布が分析され、現有モデルの上でコンクリートのtransient softening-stiffening modelが提案され、鉄筋比の影響を考慮できるようになった。提案されたモデルの信頼性が有限要素解析で検証された。

 要素レベル:

 鉄筋コンクリート要素のポストクラッキングレスポンスを計算できる手法が開発され、RC要素の中で発生するすべての応力のミクロ特性が考慮に入れられる。提案された方法の系統的な立証はいくつかの実験の結果との比較を通じて実行され、パラメーターの調査のために続けて使用される。

 提案された方法を使用:することによって

 ・ひび割れ成長期と安定期のコンクリートおよび鉄筋の両方の空間に平均された挙動を分析できる。斜めひび割れを含む鉄筋コンクリート要素の鉄筋の平均降伏点、コンクリートのtension stiffening効果をひび割れ面における応力釣り合い式とひずみ共用式で求められる。また、直交する鉄筋の異方性によるtension stiffening効果を検討することができる。

 ・局所ひび割れの開きとズレによって骨材の噛み合いと鉄筋のdowel効果によるせん断応力伝達が考慮できる。

 ・斜めひび割れ間隔、ひび割れ幅およびひび割れのスリップ(ズレ)が計算できるようになる。

 ・提案されたモデルの延長で溶接されたワイヤーメッシュを備えた鉄筋コンクリート要素の場合、クラッキング・レスポンス(ひび割れ間隔および開き)を計算するのモデルが開発された。

 図2は、せん断応力ひずみ関係を用いて提案されたモデルの解析結果と実験の結果を比較したものである。実験とミクロの計算が一致していることが分かる。

 提案された方法では、RC領域の中で働く応力要因のすべてがミクロ特性で得られるとともに、平均的な応力ひずみ関係も求まる、そしてひび割れのあるコンクリートの引張応力の合計、つまり付着伝達応力、ひび割れ伝達応力およびダイラタンシー応力のプレート要素の挙動への影響を調べることができる。

 パラメーター解析でこれらミクロ要因のコンクリートの巨視的な構成則への影響を調べた。十分な数のひび割れが発生する要素の場合に要素サイズ上で独立した材料特性が示された。つまり:Fy・ηは、η方向の鉄筋降伏強度である。

 部材レベル:

 RC要素のマクロ構成は密な配筋で均一的な応力、ひずみ分布を条件として使われている。しかしながら、RC構造物の中で鉄筋がある部分に集中し、ある部分に無筋コンクリートの状態が生じる場合もたくさん存在する。大型鉄筋コンクリート梁のように、高さ方向にひずみの非均一分布が卓越している。このような状況でひずみの不均一分布あるいは少数ひび割れの集中現象には、十分な鉄筋を配置される条件から求められた平均応力ひずみ関係はRC要素の挙動に適用できない。非均一性を考慮できる分散ひび割れモデルは、鉄筋コンクリートプレート要素のミクロ応力計算によって議論することができる。本研究で提案するgeneric tension-stiffening modelをRC構造のFEM分析で利用することで、一般的な適用への構成法則を開発することができた。当モデルは、鉄筋比の小さいRC部材の構造挙動を再現し、鉄筋コンクリート構造せん断破壊のシミュレーション分析に使用した。せん断耐力の寸法効果を検討するために本モデルを適用した。鉄筋コンクリートから無筋コンクリートまでカバーできる本提案モデルは以下となる。

 ftはコンクリートの引張強度、εtとεtuそれぞれコンクリートのひずみとひび割れ発生ひずみである。Cはtension-stiffening係数であり、CGはtension-softening係数で破壊エネルギーに基づいて計算される。実験の結果との分析的な結果の比較は、提案されたモデル(図3)の信頼度を示す。

図1RCプレート要素の挙動を分析のためのミクロ計算モデル

図2ミクロ計算と実験結果の比較

図3解析と実験の比較(a)作者の実験(b)大型せん断梁(c)曲げ梁

審査要旨 要旨を表示する

 RCプレート要素はせん断壁、離岸プラットフォーム、箱型梁、核容器およびシェル構造で多く使われているRC構造の基礎的なコンポーネントである。RCプレート要素の基本挙動は複雑であり、コンクリートと鉄筋との付着特性、骨材の噛み合い、鉄筋のdowel効果、ひび割れ面の力の伝達、ひび割れ間のコンクリートの圧縮剛性低下、ひび割れの開閉および新しいひび割れの生成などの異なるメカニズムの組合せである。これらの要因を深く理解するのは鉄筋コンクリート構造の合理的な分析および設計の基本となる。シェルビーにあるウィルキンズ空軍貯蔵所倉庫の部分的な崩壊(1955)、ノルウェー沖にある3億ドルの離岸プラットフォームの崩壊(1995)、および阪神大震災の構造物の崩壊は、分析と設計の手法での欠乏のデモンストレーションである。過去十年間で、鉄筋コンクリート構成則が非線形有限要素分析だけでなく、最近提案された設計方法にも適用できるようになってきた。

 本研究では、一般的な面内応の挙動分析のためのミクロ計算モデルの開発を目指す。RC要素の挙動については、コンクリートと鉄筋の相互作用を含むRC領域の応力伝達のミクロメカニズムに基づいて、骨材の噛み合いによる応力伝達、鉄筋のdowel効果を考慮する。提案されるモデルによって、鉄筋とひび割れが発生したコンクリートの平均応力ひずみ関係、平均ひび割れ間隔、ひび割れ開きとズレが計算できる

 要素レベルに続いて、モデルはメンバーレベルまで延長される。ひび割れのある鉄筋コンクリートの構成則におけるのRC領域のひび割れ分散性およびひずみの不均一分布が分析され、現有モデルの上でコンクリートのtransient softening-stiffening modelが提案され、鉄筋比の影響を考慮できるようになった。提案されたモデルの信頼性が有限要素解析で検証された。

 鉄筋コンクリート要素のポストクラッキングレスポンスを計算できる手法が開発され、RC要素の中で発生するすべての応力のミクロ特性が考慮に入れられる。提案された方法の系統的な立証はいくつかの実験の結果との比較を通じて実行され、パラメーターの調査のために続けて使用される。

 提案された方法を使用することによって

 ・ひび割れ成長期と安定期のコンクリートおよび鉄筋の両方の空間に平均された挙動を分析できる。斜めひび割れを含む鉄筋コンクリート要素の鉄筋の平均降伏点、コンクリートのtension stiffening効果をひび割れ面における応力釣り合い式とひずみ共用式で求められる。また、直交する鉄筋の異方性によるtension stiffening効果を検討することができる。

 ・局所ひび割れの開きとズレによって骨材の噛み合いと鉄筋のdowel効果によるせん断応力伝達が考慮できる。

 ・斜めひび割れ間隔、ひび割れ幅およびひび割れのスリップ(ズレ)が計算できるようになる。

 ・提案されたモデルの延長で溶接されたワイヤーメッシュを備えた鉄筋コンクリート要素の場合、クラッキング・レスポンス(ひび割れ間隔および開き)を計算するのモデルが開発された。

 提案された方法では、RC領域の中で働く応力要因のすべてがミクロ特性で得られるとともに、平均的な応力ひずみ関係も求まる、そしてひび割れのあるコンクリートの引張応力の合計、つまり付着伝達応力、ひび割れ伝達応力およびダイラタンシー応力のプレート要素の挙動への影響を調べることができる。

 RC要素のマクロ構成は密な配筋で均一的な応力、ひずみ分布を条件として使われている。しかしながら、RC構造物の中で鉄筋がある部分に集中し、ある部分に無筋コンクリートの状態が生じる場合もたくさん存在する。大型鉄筋コンクリート梁のように、高さ方向にひずみの非均一分布が卓越している。このような状況でひずみの不均一分布あるいは少数ひび割れの集中現象には、十分な鉄筋を配置される条件から求められた平均応力ひずみ関係はRC要素の挙動に適用できない。非均一性を考慮できる分散ひび割れモデルは、鉄筋コンクリートプレート要素のミクロ応力計算によって議論することができる。本研究で提案するgeneric tension-stffening modelをRC構造のFEM分析で利用することで、一般的な適用への構成法則を開発することができた。当モデルは、鉄筋比の小さいRC部材の構造挙動を再現し、鉄筋コンクリート構造せん断破壊のシミュレーション分析に使用した。せん断耐力の寸法効果を検討するために本モデルを適用した。

 鉄筋コンクリート構造物の非線形解析モデルの精度向上および構成則の進化という点で、構造設計に大きい貢献するとともに、既設構造物の性能診断にも展開できる。よって、本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

UTokyo Repositoryリンク