学位論文要旨



No 117656
著者(漢字) 王,徳勝
著者(英字)
著者(カナ) オウ,トクショウ
標題(和) 経口糖尿病治療薬ビグアナイド系化合物の体内動態および副作用発現における有機カチオントランスポーター(OCTs)の関与
標題(洋) Involvement of organic cation transporters (OCTs) in the pharmacokinetics and adverse effect of biguanides, a class of drugs used for diabetes mellitus
報告番号 117656
報告番号 甲17656
学位授与日 2002.11.13
学位種別 課程博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 博薬第1009号
研究科 薬学系研究科
専攻 生命薬学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 杉山,雄一
 東京大学 教授 堅田,利明
 東京大学 教授 関水,和久
 東京大学 助教授 鈴木,洋史
 東京大学 講師 福島,健
内容要旨 要旨を表示する

【序】糖尿病の大部分はII型に分類され、インスリン抵抗性の症例では経口剤が治療に用いられている。1995年にFDAがメトフォルミンを承認して以来、ビグアナイド系化合物の再評価は急速に進められ、特に欧米では糖尿病経口治療薬の第一選択薬となる勢いである。しかし乳酸アシドーシスが副作用として報告されており、そのため一度市場に出たフェンフォルミンは1970年代に使用中止となった。現在でも、乳酸アシドーシは臨床の場においてもっとも危惧されている副作用である。ビグアナイド系化合物は有機カチオン性薬剤であり、メトフォルミン、ブフォルミンは大部分が尿中へと排泄される。乳酸アシドーシス発症例では腎機能低下がよく見られることから、腎クリアランスの低下による血中ビグアナイド濃度の上昇が乳酸アシドーシスの引き金になると考えられている。

 ヒトにおいてメトフォルミンの腎クリアランスは糸球体濾過速度より大きいことから、尿細管分泌を受けることが示唆されている。有機カチオントランスポーター(OCTs)は12回膜貫通領域を有する基質多選択的なトランスポーターであり、カチオン性の内因性物質および異物の臓器への分布と排出に重要な役割を果たしている。H2受容体アンタゴニストのシメチジンは、OCTsの基質となる有機カチオン性薬剤である。ヒトにおいてシメチジンとの併用により、メトフォルミンの腎クリアランスが有意に低下することが報告されており、ビグアナイド系化合物の体内動態にOCTsが関与していることが考えられる。体内動態の適正化を図ることで、乳酸アシドーシスを回避でき、より安全に使用できる新規ビグアナイド系化合物を開発できるのではないかという考えに基づき、本研究ではビグアナイド系化合物の体内動態特性ならびに乳酸アシドーシスの機序についてOCTsを中心に薬物動態の観点から研究を行った。

【体内動態におけるOCTsの関与】ラットを用いメトフォルミン、ブフォルミンとフェンフォルミンをそれぞれ5つの投与量で定速静脈投与し、血中、胆汁、尿中未変化体濃度をHPLCにて測定した。いずれの化合物とも胆汁中未変化体の排泄は測定限度以下であった。メトフォルミンの腎クリアランスは糸球体濾過速度よりも大きく、尿細管分泌を受けることが示唆された(Fig.1)。また、シメチジンとの併用ではメトフォルミン血中濃度の顕著な上昇と腎クリアランスの低下が観察され、メトフォルミンは腎臓で有機カチオンを認識する分泌機構による輸送を受けるものと考えられた。

 ラット有機カチオントランスポーターrOct1(Slc22a1)とrOct2(Slc22a2)の遺伝子発現系を用い、ビグアナイド系化合物の取り込み実験を行った。ホスト細胞より発現細胞での取り込みはいずれも有意に高値を示し、いずれのビグアナイド系化合物もrOct1とrOct2の基質となることが明らかとなった(Fig.2)。その絶対値はpositive controlとして用いたテトラエチルアンモニウムと同レベルあるいはそれ以上であった。テトラエチルアンモニウムの腎取り込みが血流律速であることを考慮すると、ビグアナイド系化合物の腎取り込みもいずれ血流律速に近いと考えられる。さらに濃度依存性の解析により輸送能力の指標であるVmax/Km値はフェンフォルミン>ブフォルミン>メトフォルミンの順であった。

 ビグアナイド系化合物の体内動態におけるOCT1の関与を明らかにするため、野生型とOct1ノックアウトマウスでメトフォルミンの体内動態を比較検討した。野生型マウスに比べ、Oct1ノックアウトマウスではメトフォルミン血中濃度ならびに尿中排泄が若干高いものの、腎クリアランスの変化は認められなかった。さらにメトフォルミンの組織分布を検討したところ、腎臓中濃度にはほとんど差が見られないのに対して、肝臓中濃度はOct1ノックアウトマウスでは野生型の約30分の1に低下し、また小腸での組織中濃度も減少していた(Fig.3)。ノックアウトマウスにおける肝臓中の分布はほぼ細胞外容積で説明できる程度である。この結果からメトフォルミンの肝臓取り込みクリアランスはOct1により説明されることが明らかとなった。

 腎取り込み過程を評価するため、ラット腎臓から調製したスライス切片を用いた取り込み実験を行った。ビグアナイド系化合物の取り込みはいずれもマンニトールより有意に高く、テトラエチルアンモニウムと同程度の取り込みを示した。ビグアナイド系化合物の腎スライスへのKm値はrOct2遺伝子発現系でのKm値とよく一致していることから、ビグアナイド系化合物の腎取り込みクリアランスのメカニズムはOct2によるものであると考えられた。

 ヒトOCT1とOCT2遺伝子発現系を用いて輸送実験を行ったところ、メトフォルミン、ブフォルミンとフェンフォルミンはいずれもhOCT1とhOCT2の基質であることが明らかとなった。そのKm値はrOct1、rOct2に対するKm値と同程度であった。hOCT1は肝臓、hOCT2は腎臓にのみ発現していることから、ヒトにおける肝、腎取込みクリアランスのメカニズムはそれぞれhOCT1とhOCT2であることが推察される。

【副作用発現におけるOCTsの関与】ラットを用いメトフォルミン、ブフォルミンとフェンフォルミンをそれぞれ5つの投与量で定速静脈投与し、血中乳酸値を測定した。いずれの化合物ともに血中乳酸値の上昇を引き起こし、その乳酸アシドーシスの誘導能力はフェンフォルミン>ブフォルミン>メトフォルミンの順であった。ビグアナイド系化合物の血糖降下メカニズムはミトコンドリアでの呼吸鎖阻害によるグルコース産生の抑制と末梢組織、特に筋肉での解糖作用の促進と言われている。そこで、ラット遊離肝細胞を用いて、ビグアナイド系化合物による酸素消費の低下を検討した。すべての化合物はいずれも酸素消費を低下させ、その作用はフェンフォルミン>ブフォルミン>メトフォルミンの順であった。In vivoでの血漿中乳酸値上昇とin vitroでの酸素消費阻害の間に良好な相関が見られることから、肝臓におけるビグアナイド系化合物の呼吸鎖の阻害が乳酸アシドーシスの指標となることが示唆された。Oct1ノックアウトマウスではビグアナイド系化合物の肝取り込みがほとんど見られないことから、乳酸アシドーシスがビグアナイド系化合物の肝臓に対する作用の結果であるのかを検証するため、Oct1ノックアウトマウスを用いてビグアナイド系化合物による血中乳酸値の上昇について検討を加えた。メトフォルミンを定速静脈投与し、経時的にメトフォルミン血中濃度および血中乳酸値を測定した。実験後、肝臓と大腿筋肉中濃度を測定した。血中乳酸値はコントロールに比べ野生型とノックアウトマウス両方ともに上昇したが、野生型マウスにおいては顕著な上昇であるのに対し、Oct1ノックアウトマウスでの上昇はわずかであった(Fig.4)。野生型マウスに比べOct1ノックアウトマウス肝臓では有意に低下したのに対し、メトフォルミンの筋肉中、血漿中濃度にはほとんど差が見られなかった。これらの結果によりビグアナイド系化合物により惹起される乳酸アシドーシスは肝臓での呼吸鎖への阻害が主な要因であり、Oct1の輸送がこれに関与したものと考えられた。

【まとめ】本研究ではビグアナイド系化合物の体内動態および乳酸アシドーシス副作用発現への有機カチオントランスポーターの関与について検討し、以下のことを明らかにした:1、ビグアナイド系化合物は有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、その臓器分布において肝臓ではOCT1が関与し、腎臓では少なくとも一部はOCT2が関与する。2、ビグアナイド系化合物による遊離肝細胞での酸素消費低下は乳酸アシドーシス副作用の指標となる。3、乳酸アシドーシスの発症は主に肝臓に起因する。メトフォルミンの場合、血糖値の低下は末梢組織での糖利用促進と肝臓での糖新生の抑制によると報告されている。乳酸アシドーシスの副作用の面から考えると、ビグアナイド系化合物の肝臓中濃度を低下させることで、血糖値降下の薬理効果を保ちながら副作用を回避する目的が達成できる。しかし糖尿病患者の腎機能低下になりやすいことから、腎臓での単一消失ルートではなく、複数の消失経路がより安全な薬の絶対条件と考えられる。ビグアナイド系化合物は肝臓へはOCT1により取り込まれることから、肝臓内で代謝あるいは胆汁排泄を受けるような薬物を選択することで、その目的が達成できるものと考えている。本研究はトランスポーターが薬物の臓器分布を決定する要因であることを示唆したものであり、トランスポーターの基質選択性を利用することによって、体内動態特性の優れた薬物の開発に貢献できることを提起したものであると考える。

【謝辞】本研究行うにあたり、OCT遺伝子発現細胞およびOct1ノックアウトマウスを御供与いただきましたDr.Koepsell、Dr.SchinkelならびにDr.Jonkerに深謝いたします。

【参考文献】

(1)D.-S. Wang, J.W. Jonker, Y. Kato, H. Kusuhara, A.H. Schinkel and Y. Sugiyama.(2002) Involvement of organic cation transporter 1 in the hepatic and intestinal distribution of metformin. J Pharmacol Exp Ther 302:510-515.

(2)J.W. Jonker, E. Wagenaar, C.A. Mol, M. Buitelaar, H. Koepsell, J.W. Smit, A.H. Schinkel (2001) Reduced hepatic uptake and intestinal excretion of organic cations in mice with a targeted distribution of the organic cation transporter 1 (Oct1 [Slc22a1]) gene. Mol Cell Biol 21: 5471-5477.

(3)D.-S. Wang, H. Kusuhara, Y. Kato, J.W. Jonker, A.H. Schinkel and Y. Sugiyama Involvement of organic cation transporter 1 in the lactic acidosis caused by metformin. In submitted.

(4)D.-S. Wang, H. Kusuhara, Y. Kato, H. Koepsell and Y. Sugiyama Involvement of organic cation transporter 2 in the renal excretion of biguanides. In preparation.

Fig.1 Renal clearance of metformin in rats.

Fig.2 Time profile of metformin uptake by rOct1 and rOct2-transfected HEK293 cells.

Fig.3 Time profile of plasma concentration and tissue distribution of metformin in Oct1(-/-) and Oct1(+/+) mice.

Fig.4 Time profiles of lactate and metformin plasma concentration in Oct1(+/+) and Oct1(-/-) mice.

審査要旨 要旨を表示する

 糖尿病の大部分はII型に分類され、インスリン抵抗性の症例では経口剤が治療に用いられている。1995年にFDAがメトフォルミンを承認して以来、ビグアナイド系化合物の再評価は急速に進められ、特に欧米では糖尿病経口治療薬の第一選択薬となる勢いである。しかし乳酸アシドーシスが副作用として報告されており、そのため一度市場に出たフェンフォルミンは1970年代に使用中止となった。現在でも、乳酸アシドーシスは臨床の場においてもっとも危惧されている副作用である。ビグアナイド系化合物は有機カチオン性薬剤であり、メトフォルミン、ブフォルミンは大部分が尿中へと排泄される。乳酸アシドーシス発症例では腎機能低下がよく見られることから、腎クリアランスの低下による血中ビグアナイド濃度の上昇が乳酸アシドーシスの引き金になると考えられている。

 ヒトにおいてメトフォルミンの腎クリアランスは糸球体濾過速度より大きいことから、尿細管分泌を受けることが示唆されている。有機カチオントランスポーター(OCTs)は12回膜貫通領域を有する基質多選択的なトランスポーターであり、カチオン性の内因性物質および異物の臓器への分布と排出に重要な役割を果たしている。H2受容体アンタゴニストのシメチジンは、OCTsの基質となる有機カチオン性薬剤である。ヒトにおいてシメチジンとの併用により、メトフォルミンの腎クリアランスが有意に低下することが報告されており、ビグアナイド系化合物の体内動態にOCTsが関与していることが考えられる。体内動態の適正化を図ることで、乳酸アシドーシスを回避でき、より安全に使用できる新規ビグアナイド系化合物を開発できるのではないかという考えに基づき、本研究ではビグアナイド系化合物の体内動態特性ならびに乳酸アシドーシスの機序についてOCTsを中心に薬物動態の観点から研究が行われた。

(1)体内動態におけるOCTsの関与

 ラットを用いメトフォルミン、ブフォルミンとフェンフォルミンをそれぞれ5つの投与量で定速静脈内投与し、血中、胆汁、尿中未変化体濃度をHPLCにて測定した。いずれの化合物とも胆汁中未変化体の排泄は測定限度以下であった。メトフォルミンの腎クリアランスは糸球体濾過速度よりも大きく、尿細管分泌を受けることが示唆された。また、シメチジンとの併用ではメトフォルミン血中濃度の顕著な上昇と腎クリアランスの低下が観察され、メトフォルミンは腎臓で有機カチオンを認識する分泌機構による輸送を受けるものと考えられた。

 ラット有機カチオントランスポーターrOct1(Slc22a1)とrOCt2(Slc22a2)の遺伝子発現系を用い、ビグアナイド系化合物の取り込み実験を行った。発現細胞での取り込みはいずれも有意に高値を示し、いずれのビグアナイド系化合物もrOct1とrOCt2の基質となることが明らかとなった。輸送能力の指標であるVmax/Km値はフェンフォルミン>ブフォルミン>メトフォルミンの順であった。

 ビグアナイド系化合物の体内動態におけるOct1の関与を明らかにするため、野生型とOct1ノックアウトマウスでメトフォルミンの体内動態を比較検討した。野生型マウスに比べ、Oct1ノックアウトマウスではメトフォルミン血中濃度ならびに尿中排泄が若干高いものの、腎クリアランスの変化は認められなかった。メトフォルミンの組織分布を検討したところ、腎臓中濃度にはほとんど差が見られないのに対して、肝臓中濃度はOct1ノックアウトマウスでは野生型の約30分の1に低下し、また小腸での組織中濃度も減少していた。Oct1ノックアウトマウスにおける肝臓中の分布はほぼ細胞外容積で説明できる程度である。この結果からメトフォルミンの肝臓ならびに小腸への取り込みにOct1が関与していることが明らかとなった。

 腎取り込み過程を評価するため、ラット腎臓から調製したスライス切片を用いた取り込み実験を行った。ビグアナイド系化合物の取り込みはいずれもマンニトールより有意に高かった。ビグアナイド系化合物の腎スライスヘのKm値はrOct2遺伝子発現系でのKm値とよく一致していることから、ビグアナイド系化合物の腎取り込みクリアランスのメカニズムはOct2によるものであると考えられた。

 ヒトOCT1と0CT2遺伝子発現系を用いて輸送実験を行ったところ、メトフォルミン、ブフォルミンとフェンフォルミンはいずれもhOCT1とhOCT2の基質であることが明らかとなった。そのKm値はrOct1、rOct2に対するKm値と同程度であった。hOCT1は肝臓、hOCT2は腎臓にのみ発現していることから、ヒトにおける肝、腎取込みはそれぞれhOCT1とhOCT2を介していることが推察される。

(2)副作用発現におけるOCTsの関与

 ラットを用いメトフォルミン、ブフォルミンとフェンフォルミンをそれぞれ5つの投与量で定速静脈投与し、血中乳酸値を測定した。いずれの化合物ともに血中乳酸値の上昇を引き起こし、その乳酸アシドーシスの誘導能力はフェンフォルミン>ブフォルミン>メトフォルミンの順であり、臨床での結果と一致した。ビグアナイド系化合物の血糖降下メカニズムはミトコンドリアでの呼吸鎖阻害によるグルコース産生(糖新生)の抑制と末梢組織、特に筋肉での解糖作用の促進と言われている。そこで、ラット遊離肝細胞を用いて、ビグアナイド系化合物による酸素消費の低下を検討した。すべての化合物はいずれも酸素消費を低下させ、その作用はフェンフォルミン>ブフォルミン>メトフォルミンの順であった。In vivoでの血漿中乳酸値上昇とin vitroでの酸素消費阻害の間に良好な相関が見られることから、肝臓におけるビグアナイド系化合物の呼吸鎖の阻害が乳酸アシドーシスの指標となることが示唆された。乳酸アシドーシスにおけるOct1の役割を明らかにするために、Oct1ノックアウトマウスを用いてビグアナイド系化合物による血中乳酸値の上昇を野生型と比較した。メトフォルミンを定速静脈内投与し、経時的にメトフォルミン血中濃度および血中乳酸値を測定した。野生型マウスにおいては顕著な血中乳酸値の上昇が見られたのに対して、Oct1ノックアウトマウスでの上昇はわずかであった。Oct1ノックアウトマウスではメトフォルミンの肝臓中濃度は有意に低下していたのに対し、筋肉中、血漿中濃度にはほとんど差が見られなかった。これらの結果によりビグアナイド系化合物により惹起される乳酸アシドーシスは肝臓での呼吸鎖の阻害が主な要因であり、0ct1による輸送がこれに関与したものと考えられた。

 以上、本研究ではビグアナイド系化合物の体内動態および副作用である乳酸アシドーシス発現への有機カチオントランスポーターの関与について検討し、以下のことを明らかにした:1、ビグアナイド系化合物は有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、その臓器分布において肝臓ではOCT1が関与し、腎臓では少なくとも一部は0CT2が関与する。2、ビグアナイド系化合物による遊離肝細胞での酸素消費低下は乳酸アシドーシスの指標となる。3、乳酸アシドーシスの発症は主に肝臓での糖代謝の阻害に起因する。これらの結果に基づくと、乳酸アシドーシスを回避するためには、ビグアナイド系化合物の肝臓中濃度を低下させることが重要である。これに伴いビグアナイド系化合物による肝臓での糖新生の阻害能は低下するが、末梢組織での糖利用促進効果も薬効メカニズムの一つであることから、本コンセプトに基づいたビグアナイド系化合物も薬理効果を有することが期待される。更に、糖尿病患者は腎機能が低下している症例も多いことから、腎臓のみから消失するのではなく、複数の消失経路により体内から消失することがより安全な薬の絶対条件と考えられる。ビグアナイド系化合物は肝臓へは0CT1により取り込まれることから、肝臓内で代謝あるいは胆汁排泄を受けるような薬物を選択することで、その目的が達成できるものと考えている。

 このように、本研究はトランスポーターが薬物の臓器分布を決定する要因であることを示唆したものである。また、トランスポーターの基質選択性を利用することによって、体内動態特性の優れた薬物の開発に貢献できることを提起しており、博士(薬学)の学位を授与するに値するものと認めた。

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