学位論文要旨



No 118170
著者(漢字) 宮本,みちる
著者(英字)
著者(カナ) ミヤモト,ミチル
標題(和) 湿地植生モニタリングのための高解像度リモートセンシング・データによる多空間スケール測定の評価 : 北海道釧路湿原を事例として
標題(洋) Evaluation of Measurements for Monitoring Wetland Vegetation Using Remotely Sensed Data, A Case Study of Kushiro Wetland in Hokkaido Japan
報告番号 118170
報告番号 甲18170
学位授与日 2003.03.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(農学)
学位記番号 博農第2559号
研究科 農学生命科学研究科
専攻 生物・環境工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 佐藤,洋平
 東京大学 教授 大政,謙次
 東京大学 教授 宮�ア,毅
 東京大学 教授 鷲谷,いづみ
 東京農業大学 教授 長野,英敏
内容要旨 要旨を表示する

研究の概要

 湿原植生はその複雑な植生構造と広域性という観点から、リモートセンシング技術により、観測対象植生に適した観測の物理的手段や空間スケール、空間分解能や分光特性の詳細を明らかにし、的確な面的・空間的計測手法の確立のための研究開発が急務となっている。具体的には、観測対象物の空間分解能や分光特性を詳細に検討し、異なる地表分解能による4段階のスケールによるアプローチから詳細な湿原植生の判別を試みた。スケール1;地上観測(GPS測量と個葉と群落の分光測定)(地上3m)、スケール2;(高度100-200m)係留型気球による空中写真撮影およびモザイク画像作成による判読、スケール3;(高度900m);航空機搭載型近赤外ビデオ画像解析と航空機搭載型分光画像解析(Airborne Casi)、スケール4;衛星画像SPOT2(XN)の解析を行った。調査地は、釧路湿原の赤沼周辺及び北海道厚岸湖(ほっかいどうあっけしこ)・別寒辺牛湿原(べかんべるししつげん)のヨシ・スゲ群落とミズゴケ群落及び矮性低木の混在植生を調査対象地域とした。スケール1において群落のレベルで、湿生植物タイプごとの近接分光反射特性と植物生産層構造・物質生産量の特性の相互関係を物理的に検証し明らかにした。さらに、スケール1と3において、鉛直方向からのみ捉えたマルチスペクトル分光反射だけではなく、複数角方向からの分光反射特性を捉えることで、各湿原植生の典型的あるいは特異的な植生パターンを特定した。特に湿生植生タイプ別の推定及び抽出に有効な波長帯、植生指数、観測角領域の特定を行った。スケール4においては、高解像度のモザイクバルーン空中写真を教師データとした航空機近赤外ビデオデータの解析 1)方向性観測の有効性(広域に適用)の検証を行った。2)異なるバンドや角度の組み合わせによる比演算処理 3)SPOT(XN)により異なるセンサのデータ・フュージョンにより特異的・典型的な湿原植生の把握を試みた。これにより、各空間スケールにおける把握可能な植生情報及びその観測目的に適した物理的手段やセンサの組み合わせを提言することが可能となった。

 なお、本博士論文は全11章(以下、要約)で構成されている。

研究の背景と目的(第1章)(論文構成を含む)

 湿原環境保全のためには、正確なモニタリング、特に湿原植生の分布状況と、その変動の把握が必要不可欠である。現在、リモートセンシング・データを用いて湿原植生分類を行う上で、観測対象植生に適した観測の物理的手段や空間スケール、空間分解能や分光特性の詳細が一般論として明確に確立されていない。湿原は、その複雑な植生構造と広域性という観点から、リモートセンシング技術の検証の場としては大変有効である。現在、湿原植生モニタリングとその的確な面的・空間的計測手法の確立のための研究開発が急務となっている。しかしながら、多様な植生が生育している状況下で、各種植生のそれぞれについてその生育や消長の状況を的確に把握する計測手法未開発な現況であり、湿原植生の的確なモニタリングは困難となっている。また、道東湿原は、植生の観測に最も適した夏季の時期に霧が発生し、既存のデータが希少である。本研究は、こうした困難な状況を打開することを意図した研究である。既往の研究では、高層湿原や保全種の植生分布の把握は十分には行われていない。

 本研究の目的は釧路湿原赤沼を主な対象地とし、次の3点とした。

1.多空間スケールから観測された高解像度リモートセンシング・データを用いて、スケールごとに判別可能な植生のパターンを明確にすること。そして、明確にされた観測対象植生別にモニタリングの目的やそれに応じた、湿原植生モニタリングのための最適なプラットフォームや観測時季、分光情報及びセンサの組み合わせ等の提言をし、湿原植生把握のための評価をすることである。

2.短期間で環境影響によるインパクトを受けやすい脆弱な植生、多年草や高山植物及びコケ等の抽出は、高木の樹木などに比べ、衛星画像からの直接の詳細な判別は難しいとされている。そのため、それらの植生分布の面的空間情報を低高度からの観測によりランドスケープのレベルで、植生群落構成要素を詳細に把握し、植生マッピングにより、生態学的にも有効な群落の面的空間情報を明確にすることである。

3.抽出可能な保全指定植生の詳細な分布状況を明確にし、保全指定植生マッピングを行うこと。また、スケールごとの観測において、各湿原タイプで、植生判別のための群落を構成する各植生パターンの特徴を特定することである。

既往の研究(第2章)

 リモートセンシング技術による湿原植生のモニタリングに関する研究小史を取り上げた。多様なリモートセンシング技術を用いた湿原植生モニタリングの評価に関する研究はLyonet al.、(1995、2001)、Tiner、(1997、1999)がまとめており、80年代前半から、実際の解析事例を含め、Jensen et al.、(1984)に代表的な論文がある。現在に至り、航空写真は、幅広くトレーニング・データとして使用されてり、Howland(1980)やGrace(1985)らが、可視近赤外航空写真により各湿原タイプの抽出に、Robert(1997)らが湿原浸水部及び樹木の種類の判別に有効であることが示された。しかしながら、可視近赤航空写真は湿原内部の詳細な植生情報の取得には不十分であることも指摘されている。一方、気球や凧を用いた低高度プラットフォームによる陸域観測のモニタリングにおいて、熱帯林や土壌、穀物、河川、そして一部、泥炭地のモニタリングの事例はあるが、湿原植生のモニタリングはほとんど行なわれていない。また、航空機搭載型のセンサを用いた研究では、80年代後半からはハイパースペクトルをもちいた湿原植生の分類に関する研究が行なわれるようになった。データ・フュージョンでは、80年代のTM+SPOTの組み合わせに加えて、航空機搭載型スペクトルイメージャーを使用した研究がみられるようになったが、スケーリングアップによる湿原植生判別に関する研究は、森林による事例を除き、明確に定義された研究はほぼ皆無である。釧路湿原の植生モニタリングに関して、山形らが96年よりTMやCasiを用いた観測時期の選択や植生土壌水指数が開発され、安岡らはSARとTMを用いた湿原周辺を含む土地被服分類を行っている。しかし、高層湿原植生域における地上数mから数十m範囲内の群落が点在するような高山植生や多年生草本、コケやチトウの把握にいたっては十分ではなく、各湿原植生タイプごとの保全種の分布情報も含め、局所領域の観測は現在に至り不十分な状況である。

湿原の定義と分類(第3章)

 湿原の定義と分類に関する研究が本格化した後の80年代に入ってからでした。定義と分類に関して、アメリカは50年代から、Cowardinシステム(USFWS)により57種に分類され、カナダではNWWGにより、69種類に、オーストラリアはAWCSにより58種に、ラムサール条約では、39種類に、日本では73年からの本格的なフィールド調査にもとづき6タイプに分類定義されている。

調査・解析方法

調査対象地(第4章)

 調査対象地は、釧路湿原の赤沼周辺の高層湿原及び低・中層湿原である(240m×460m)。湿地のような過湿立地に成立している植物群落は、小面積に分布し、特殊化した立地に適応した種から構成されている。人為的影響を受けた立地条件がある一方、釧路川の中流域に残る保護に値する貴重な高層湿原とそれに隣接する中層・低層との自然遷移が保持されている立地条件の両方を兼ねそなえている。

植生調査(第5章)

 釧路湿原内のグランドトゥルースは全9ケ所、136ケ所で行なわれた。より詳細な調査のため、踏査可能な調査区は、温根内と赤沼に限定した。赤沼木道の両脇沿の方形区(10m×10m)と木道の北西と南東に各々2本の200mトランセクトに対して方形区(20m×20m)を計97ケ所設置し、単純任意抽出法による植生調査とGPS観測を行った。なお現地調査期間は1998年6月下旬〜7月上旬、2001年7月下旬〜8月上旬に行なった。58種が同定され、草本(カヤツリグサ科10種とイネ科6種、その他多年草23種)、低木(ハンノキ、ヤチヤナギ)、小低木(ツツジ科6種)、矮生低木(ミネズオウ、ガンコウラン)、コケ9種に分類された。その内、15科25種が保全指定植物であった。

分光反射スペクトル特性による湿原植生の分類(第6章)

 群落レベルで湿生植物群落タイプごとの分光特性と植物生産構造・物質生産量の特性の相互関係を物理的に検証した。多方向分光観測により、湿原植生タイプを特定し、優占種及び混在種の判別・抽出に有効な波長帯、植生指数、観測角領域の特定を行った。矮生低木の混在する中層湿原植生において、多方向分光観測(15・45°)が有効であったが、コケとスゲが混在するようなキャノピーに対して、特に多方向分光観測を行わなくても、鉛直方向からの観測により他の湿原植生からの判別が可能であることが明らかとなった。これは、低木混在植生に比べ、層内の多重散乱による影響がなく、拡散面に近い状態になっているためであると予測された。

湿原植生分類のための植生マッピング:係留型気球による空中写真撮影(第7章)

 各気球写真は幾何補正、オルソ化されERDAS IMAGIN(Ver.8.4)(ERDAS Inc.)のモザイクモジュールによりモザイク処理された。モザイク写真(15cm/pixel)はグランド・トゥルースデータに基づき、Arc View GIS(Ver.3.2)(ERDAS Inc.)によりデジタルマップを作成した。また、環境省が定めた湿原指定植物の植生マップを作成した。また、Patch Analyst(Ver.2.2)(OMNR)を用いて、植生群落の空間分布解析を行った。気球観測により、低層、中層、低中層、高層湿原植生において、計27群落10タイプの植生に分類することが可能となった。衛星データからでは直接、このレベルの判読は不可能であるため、この詳細な分類結果は重要である。初夏における観測で、パッチを構成する群落要素の判読の特徴として以下の植生パターンの着目が肝要であることが明らかとなった。1)浸水生の高層湿原植生及び水辺の低層湿原植生のトクサ科・イネ科・カヤツリグサ科の混生 2)低中層湿原植生のカヤツリグサ科とイネ科の穂 3)高層湿原植生のミズゴケとカヤツリグサ科の混生 4)低層湿原植生の低木ヤチヤナギ・カヤツリグサ科・ミズゴケの混生 5)高層湿原植生のツツジ科の小低木(常緑と落葉)。これらの混生度合いの判別が気球観測において群落要素のポリゴンを抽出する上で顕著となった。保全指定植物は主に多年草、小低木であるため、衛星データからは直接判読することは不可能であるが、気球観測により、湿原内の小範囲の正確なモニタリングと植生データベース及びマッピングにおいて有効であることが分かった。現在、湿原科学では撹乱、侵入種、復元のためのモニタリング研究が盛に行われているため、今後、小範囲の正確なモニタリングが必至と思われるため、湿原における気球空中写真観測はこうしたモニタリングヘの期待が出来るもと思われる。

航空機搭載型リモートセンサによる湿原植生の把握:航空機搭載可視・近赤外ビデオ画像画像による多方向観測による湿原植生の分類(第8章)

 航空機搭載鉛直カラー赤外ビデオ画像(SILVACAM、VTT Automation Co. Finland)を30分の1秒ごとに静止画像化され、対応地上基準点の自動抽出と標定計算に基づく数百枚の画像の重ね合わせにより、観測天頂角一定の画像が複数枚作成された。斜めカラー赤外ビデオ画像と合わせることにより、さらに広い観測天頂角範囲について、観測天頂角一定画像を作成することが可能となった(Kushida、1999)。気球観測から取得されたベースマップにより、教師分類(ISODATA)された。低層湿原植生で3タイプ、中層湿原で4タイプ、高層湿原で6タイプの植生の判別が可能となった。バンド比演算処理により、NDVI、VI、Green/Red、Red/NIRに関して鉛直と多方向データ(又はその組み合わせ)が使用された。4つのバンド比において、赤沼から木道西部、北東部、のヒメシャクナゲ、ヤチツッジ、スゲ類、ミズゴケ及び、ヤチヤナギ、クロマメノキといった中層湿原植生の低木と矮生低木プラススゲの混在植生において抽出が顕著であるが、一方、ミズゴケと単子葉草本と高山植物がマット状になったところは、斜め画像を用いなくても判別が可能となることが明らかとなった。また、これは地上観測における分光測定と同様の結果であった。

衛星画像解析による湿原植生のモニタリング:SPOT(XN)の適用(第9章)

 解析は温根内川を含むモザイク写真よりも広範な範囲を対象とした。オルソ化された1996年と2000年夏季のデータを解析に使用した。7タイプ17カテゴリーが分類された。2000年6月の多年草とチトウ、コケのカテゴリーが、1996年に比べ減少していることが明らかとなった。逆に、ツツジ科の矮生低木とスゲ群落は増加していた。赤沼から温根内にかけて、気球観測で判別された群落種の各要素の情報を用いることにより、小領域でのチトウ、コケ、スゲ類等の消長が詳細に明らかになった。

多空間スケール測定による高解像度リモートセンシングデータの評価(第10章)

 気球観測により、各湿原タイプごとの群落要素を種のレベルで判別が可能で、特に特定領域の多年草や高山植物の保全指定植生の抽出に有効であった。また、航空機搭載型可視近赤外ビデオデータより、方向性観測による、特定の非演算処理により、小低木やイネ科草本、高山性の植物の抽出に有効であった。また、この詳細な分類は、Casiにより可能となった。コケの抽出であれば、気球と鉛直方向からの航空機データを用いることにより十分判別が可能であることが明らかとなった。SPOTでは赤沼から温根内にかけて、気球観測で判別された群落種の各要素の情報を用いて、小領域でのチトウ、コケ、スゲ類等の消長が詳細が可能となった。低木や高木樹木の判別であればベースマップを用いなくても抽出は可能であるが、常緑や落葉などの判別には詳細な気球観測等が必要となった。特に気球観測で判読可能であったパッチサイズが40平方m以上の一部の小低木および低木が判別基準として重要であることが分かった。

結論とまとめ(第11章)

 湿原植生モニタリングのための的確な面的・空間的モニタリング及び計測手法の確立のための基礎的な開発研究としてその成果が期待できる。また環境変動による湿性植物群落の移行等への影響を評価すると同時に、復元のためのモニタリングや局所領域の詳細な植生のモニタリングにより、湿原保全・管理のあり方の提言が期待される。

審査要旨 要旨を表示する

 湿原植生はその複雑な植生構造と広域性という観点から、リモートセンシング技術によって、観測対象植生に適した物理的手段や空間スケール、空間分解能や分光特性等の詳細を明らかにし、的確な面的・空間的計測手法の確立のための研究開発が急務となっている。本論文は、観測対象物の空間分解能や分光特性の詳細な検討から、異なる地表分解能による4段階のスケールによるアプローチに着目し、湿原植生の詳細なモニタリング手法および計測手法の開発を試みたものであり、10章から構成されている。

 第1章から第4章まではいわば序論に相当する部分であり、第1章では、湿原環境保全のための正確なモニタリング、特に湿原植生の分布状況とその変動の把握の急務及び生育や消長の状況を的確に把握する観測の困難性など、研究の背景について述べ、さらに論文の構成について概説している。第2章では、リモートセンシング技術による湿原植生のモニタリングに関する研究小史を、第3章では、諸外国の湿原の定義と分類に関する既往の研究と日本の湿原の分類と定義について概説している。第4章は、解析対象地となる釧路湿原の赤沼周辺の高層湿原及び低・中層湿原の特徴について述べている。

 第5章は、赤沼のグランドトゥルース地点、全9ケ所、136ケ所における植生調査について詳細に述べられている。踏査による調査区は、赤沼木道の両脇沿の方形区(10m×10m)と木道の北西と南東に各々3本の460mトランセクトに対して方形区(20m×20m)を計97ケ所設置し、単純任意抽出法による植生調査とGPS観測が行った結果、58種が同定され、草本(カヤツリグサ科10種とイネ科6種、その他多年草23種)、低木(ハンノキ、ヤチヤナギ)、小低木(ツツジ科6種)、矮生低木(ミネズオウ、ガンコウラン)、コケ9種に分類された。そのうち、15科25種が保全指定植物として同定された。

 第6章では、湿生植物群落タイプごとの分光特性と植物生産構造の特性の相互関係について物理的に検証している。多方向分光観測により、湿原植生タイプを特定し、優占種及び混在種の判別・抽出に有効な波長帯、植生指数、観測角領域の特定を行い、矮生低木の混在する中層湿原植生において、多方向分光観(15・45°)が有効であることが明らかにされた。

 第7では、湿原植生判別のための気球空中写真の有効性について述べられている。気球観測により、低層、中層、低中層、高層湿原植生において、計27群落10タイプの植生に分類することが可能となった。保全指定植物は主に多年草、小低木であるため、衛星データからは直接判読することは不可能であるが、気球観測により、湿原内の小範囲の正確なモニタリングと植生データベース及びマッピングにおいて有効であることが分かった。

 第8章では、湿原植生モニタリングのための、航空機搭載鉛直カラー赤外ビデオ画像の有効性について検証している。気球観測から取得されたベースマップにより、教師分類(ISODATA)の結果、低層湿原植生で3タイプ、中層湿原で4タイプ、高層湿原で6タイプの植生の判別が可能となった。バンド比演算処理により、MDVI、VI、Green/Red、Green/NIR、Red/NIR、に関して鉛直1と多方向データ(又はその組み合わせ)により、矮生低木と小低木における特定の群落抽出に有効であることが示された。

 第9章では、赤沼・温根内の特定の広範な領域に対して、衛星画像解析によるモニタリングの可能性を検討している。1996年と2000年夏季のデータをベースマップにより教師分類を行なった結果、7タイプ17カテゴリーに分類された。2000年6月の多年草とチトウ、コケのカテゴリーが、1996年に比べ減少していることが明らかとなった。逆に、ツツジ科の矮生低木とスゲ群落は増加していたことが明らかとなった。

 第10章では、多空間スケール測定による高解像度リモートセンシングデータの評価を行っている。各スケールで利用可能なリモートセンシングデータと観測目的等により判別可能な5タイプに分類されることを明らにし、観測目的や対象植生サイズに応じた衛星情報を含むプラットフォーム等、詳細な植生情報の把握が可能となることが示された。

 以上、本論文は、観測対象物の空間分解能や分光特性を詳細に検討し、異なる地表分解能による4段階のスケールによるアプローチから湿原植生の詳細なモニタリングにより、各空間スケールにおける把握可能な植生情報及びその観測目的に適した物理的手段やセンサの組み合わせ及び観測角領域等多くの知見を得ている。これらの知見は、湿原植生の的確な面的・空間的モニタリング手法および計測手法の確立にとって学術上、応用上貢献するところが少なくない。よって審査員一同は、本論文が博士(農学)の学位論文として価値があるものと認めた。

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