学位論文要旨



No 118293
著者(漢字) 木下,恵理
著者(英字)
著者(カナ) キノシタ,エリ
標題(和) YaaマウスにおけるMarginal Zone B細胞の分化異常
標題(洋) Defective Development of Marginal Zone B-cells in BXSB Yaa Mice
報告番号 118293
報告番号 甲18293
学位授与日 2003.03.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第2100号
研究科 医学系研究科
専攻 内科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 中原,一彦
 東京大学 助教授 岩田,力
 東京大学 助教授 土屋,尚之
 東京大学 助教授 中村,哲也
 東京大学 助教授 田中,廣壽
内容要旨 要旨を表示する

 BXSBオスマウスにおいてSLE発症に重要な役割を果たしているYaa(Y-liked autoimmune acceleration)変異遺伝子はすでによく知られているところである。Mariginal Zone(MZ)B細胞の自己抗体産生の関与の可能性が報告されていることから、我々はYaa遺伝子により、MZ B細胞及びfollicular B細胞の分化が、病態の促進にどのように影響するかを調べた。BXSB YaaマウスのみならずSLEを発症しない2つのBXSBサブストレインマウスとC57BL/6Yaaマウスでは、月齢の若い段階でMZB細胞の著明な減少が認められた。また、骨髄移植により作成したキメラマウスにより、MZ B細胞の減少は、Yaa遺伝子を持つB細胞自身の異常であることが明らかにされた。SLE発症加齢BXSB YaaマウスにおけるMZ B細胞の選択的な欠損がみられることから、少なくともBXSBマウスにおいては、MZ B細胞の病的な自己抗体の産生への関与をむしろ否定するものである。さらに抗TNP/DNP IgMを発現するSP6 BXSBトランスジェニックマウスやCD22ノックアウトマウスとの比較解析により、IgM分泌の顕著な増加から推測されるように、我々の結果はYaa遺伝子がB細胞の抗原に対する高反応性をもたらし、その結果follicular B細胞の成熟を促し、MZ B細胞への分化を障害するように働いているということを示唆するものである

審査要旨 要旨を表示する

YaaマウスにおけるMarginal Zone B細胞の分化異常

 本研究は代表的なSLE発症モデルマウスであるBXSBオスマウスにおいて、初めてMarginal Zone B(MZ B)細胞の減少を見い出している。また、免疫学的に重要な役割を演じると考えられているMZ B細胞とSLE発症の関連、及びYaa遺伝子の病態発症への関与に関して、下記の結果を得ている。

1.MZ B細胞の自己抗体産生の関与の可能性が報告されていることから、Yaa遺伝子により、MZ B細胞及びfollicular B細胞の分化が、病態の促進にどのように影響するかを調べた。BXSB YaaマウスのみならずSLEを発症しない2つのBXSBサブストレインマウスとC57BL/6Yaaマウスでは、月齢の若い段階でMZ B細胞の著明な減少が認められた。また、骨髄移植により作成したキメラマウスにより、MZ B細胞の減少は、Yaa遺伝子を持つB細胞自身の異常であることが示された。

2.SLE発症加齢BXSB YaaマウスにおけるMZ B細胞の選択的な欠損がみられることから、少なくともBXSBマウスにおいては、MZ B細胞の病的な自己抗体の産生への関与をむしろ否定する事が示された。

3.抗TNP/DNP IgMを発現するBXSBトランスジェニックマウスやCD22ノックアウトマウスとの比較解析により、IgM分泌の顕著な増加から推測されるように、Yaa遺伝子がB細胞の抗原に対する高反応性をもたらし、その結果follicular B細胞の成熟を促し、MZ B細胞への分化を障害するように働いているということが考えられる。

 以上、本論文はSLEの代表的なモデルマウスであるBXSBマウスにおいて、MZ B細胞は病態が進行しても増加することなく、むしろ減少していることに加えて、Yaa変異遺伝子がMZ B細胞を減少させること、Yaa由来B細胞が高反応性phenotypeを示すことを明らかにした。Yaaに関連したMZ B細胞の減少とB細胞の高反応性phenotypeの原因について調べることは、Yaaによって引き起こされる分子異常、更にSLEの発症の解明につながる極めて重要なことであり、本研究は学位授与に値するものと考えられる。

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