学位論文要旨



No 118316
著者(漢字) 吉田,敦行
著者(英字)
著者(カナ) ヨシダ,ノブユキ
標題(和) エストロゲン応答性遺伝子の発現パターンに基づいたエストロゲン受容体陽性乳癌患者群のサブグルーピングによるタモキシフェン低感受性群の同定
標題(洋) Identification of Tamoxifen-Hyposensitive Subgroup in Estrogen Receptor-Positive Breast Cancer Patients by Expression Patterns of Selected Estrogen-Regulated Genes
報告番号 118316
報告番号 甲18316
学位授与日 2003.03.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第2123号
研究科 医学系研究科
専攻 内科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 中原,一彦
 東京大学 助教授 滝沢,始
 東京大学 助教授 三村,芳和
 東京大学 講師 斉藤,光江
 東京大学 講師 福本,誠二
内容要旨 要旨を表示する

 乳癌の術後補助内分泌両方はエストロゲン受容体陽性乳癌の標準的な治療であるが、本治療後再発する症例が存在する。そのような症例を同定するために、エストロゲン応答性遺伝子(ERG)の発現パターンが役立つかどうか調べた。先に我々の行ったマイクロアレイのデータを参考に、11個のERGを選び、乳癌組織における発現量をリアルタイムRT-PCRにより測定し、クラスター解析を行った。エストロゲン受容体陽性乳癌患者群は明瞭な二群に分かれた。ERGの数を変化させて検討したところ、3個のERG(Progesterone receptor,HDAC6,IGFBP-4)でもほぼ同様の患者分類が可能であることがわかった。治療効果との関連を見るために、免疫染色によりHDAC6とIGFBP-4の発現を評価し、disease-free survivalとの関連を見たところ、HDAC6,IGFBP-4のいずれも単独で有意な治療効果予測因子であることがわかった。さらに、Progesterone receptor,HDAC6,IGFBP-4の三因子を組み合わせることで、より明確に、タモキシフェン低感受性群を同定できた。この研究は、従来の内分泌療法よりも、より強力な治療を検討されるべき症例を、エストロゲン受容体陽性症例群より選定するのに役立つものと思われる。

審査要旨 要旨を表示する

 本研究は、マイクロアレイ、リアルタイムRT-PCR、免疫染色という三つの発現解析手法を用いて、乳癌組織におけるエストロゲン応答性遺伝子とタモキシフェン療法の奏効性の関連を解析したもので、下記の結果を得ている。

 1.乳癌系培養細胞のマイクロアレイにより得られたエストロゲン応答性遺伝子群より選ばれた11個の遺伝子の乳癌組織における発現パターンをクラスター解析により検討することで、患者群の明瞭な分類と遺伝子群の発現パターンの相関が示された。

 2.上記実験に用いられた遺伝子より3個を選び、その発現を免疫染色により調べ、タモキシフェン療法の奏効性との関連を調べた結果、それらの組み合わせが、タモキシフェン低感受性である患者群を同定することが示された。

 以上、本論文は、タモキシフェン療法の新たな効果予測の手段を提示した。本研究は、培養細胞のマイクロアレイ研究を基礎に診断因子の確率を目指した、トランスレーショナル・リサーチであり、また、近年の著しい内分泌療法の発達に鑑みて、治療効果予測因子研究の進展に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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