No | 118579 | |
著者(漢字) | ||
著者(英字) | Gulsan Ara,Parvin | |
著者(カナ) | グルサン・アラ,パービン | |
標題(和) | マイクロクレジット・プログラムによって生じる利益の持続可能性 : バングラディッシュ南西部の貧困層女性についてのケーススタディ | |
標題(洋) | SUSTAINABILITY OF THE BENEFITS INDUCED BY MICROCREDIT PROGRAMS : A Study on the Poor Women in South-Western Region of Bangladesh | |
報告番号 | 118579 | |
報告番号 | 甲18579 | |
学位授与日 | 2003.09.30 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第5598号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 都市工学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 貧困層の女性に対するマイクロクレジット(Microcredit:小規模金融)へのアクセスの取り組みは、バングラデシュのグラミン銀行(Grameen Bank)において始められ、その後、貧困の軽減と女性のエンパワーメント(empowerment)の有効なツールとしてほぼすべての開発途上国で広く適用された。『マイクロクレジットサミット1997』では、マイクロクレジットが貧困撲滅の強力なツールと提唱されている一方で、マイクロクレジットがもたらす効果の持続可能性(sustainability)という点では、欠点や批判が非常に多く報告され混乱を招いている。マイクロクレジットプログラムは多くの場合、外部的な要因によって、本来の持続的な人材開発や生産性の上昇よりもむしろ、一時的な所得の上昇と消費につながっているという議論がある。したがって、開発問題の新しいパラダイムにおいて、さまざまなマイクロクレジットプログラムの成否を精査し、将来世代にも効果を発揮するだけの持続可能性を発揮するだけのポテンシャル(potential:潜在力)を議論することは、非常に必要性の高いテーマとなっている。持続可能性は、いわんや現在の世界では緊急を要するテーマである。バングラデシュでも、限られた資源を最大限に活用するために、貧困軽減のアプローチはこの持続可能性のポテンシャルという観点から統合されなければならない。 この研究は、単に貧困層をマイクロクレジットプログラムに依存させるのではなく、彼ら自身のポテンシャルを高めてマイクロクレジットプログラムによって引き出される効果の持続性を確保するために、持続可能性が高いと考えられるマイクロクレジット組織に注目している。ここではまず、広範な参考文献から抽出した基準をもとにして3つの異なるマイクロクレジットプログラムから引き出される効果の持続可能性のポテンシャルを比較する。さらに、一次・二次情報からの経験的な事実に照らして、これらのマイクロクレジットプログラムから生み出される効果の持続可能性に関わる重要な問題について議論する。マイクロクレジットプログラムの立ち上げに関連するさまざまな課題の中で、居住地と民族性が、プログラムの便益の持続性と同時に、決定的な影響力を及ぼすことが明らかになる。さらに、政府、大規模NGO(Non-Governmental Organization:非政府組織)、小規模NGOのプログラムを比較すると、政府によるプログラムが、地域の課題に対して総合的なアプローチであるにも関わらず経済性に問題があるために持続可能な形になっていないのに対して、小規模NGOによるプログラムは、焦点を多少絞ったプログラムではあるが長期的な効果を保持するだけのポテンシャルをより強く有している。この研究は、マイクロクレジットプログラムがその直接の支出だけでなく、社会的、経済的、制度的、環境的な要素を強調することによって、プログラムの参加者だけではなく、将来世代も享受できるだけの持続可能な効果を引き出すためのポテンシャルを持つことができる。 | |
審査要旨 | 貧困層の女性に対するマイクロクレジット(Microcredit:小規模金融)へのアクセスの取り組みは、バングラデシュのグラミン銀行(Grameen Bank)において始められ、その後、貧困の軽減と女性のエンパワーメント(empowerment)の有効なツールとしてほぼすべての開発途上国で広く適用された。『マイクロクレジットサミット1997』では、マイクロクレジットが貧困撲滅の強力なツールと提唱されている一方で、マイクロクレジットがもたらす効果の持続可能性(sustainability)という点では、欠点や批判が非常に多く報告され混乱を招いている。マイクロクレジットプログラムは多くの場合、外部的な要因によって、本来の持続的な人材開発や生産性の上昇よりもむしろ、一時的な所得の上昇と消費につながっているという議論がある。したがって、開発問題の新しいパラダイムにおいて、さまざまなマイクロクレジットプログラムの成否を精査し、将来世代にも効果を発揮するだけの持続可能性を発揮するだけのポテンシャル(potential:潜在力)を議論することは、非常に必要性の高いテーマとなっている。持続可能性は、いわんや現在の世界では緊急を要するテーマである。バングラデシュでも、限られた資源を最大限に活用するために、貧困軽減のアプローチはこの持続可能性のポテンシャルという観点から統合されなければならない。 本研究は、単に貧困層をマイクロクレジットプログラムに依存させるのではなく、彼ら自身のポテンシャルを高めてマイクロクレジットプログラムによって引き出される効果の持続性を確保するために、持続可能性が高いと考えられるマイクロクレジット組織に注目している。ここではまず、広範な参考文献から抽出した基準をもとにして3つの異なるマイクロクレジットプログラムから引き出される効果の持続可能性のポテンシャルを比較する。さらに、一次・二次情報からの経験的な事実に照らして、これらのマイクロクレジットプログラムから生み出される効果の持続可能性に関わる重要な問題について議論する。マイクロクレジットプログラムの立ち上げに関連するさまざまな課題の中で、居住地と民族性が、プログラムの便益の持続性と同時に、決定的な影響力を及ぼすことが明らかになる。さらに、政府、大規模NGO(Non-Governmental Organization:非政府組織)、小規模NGOのプログラムを比較すると、政府によるプログラムが、地域の課題に対して総合的なアプローチであるにも関わらず経済性に問題があるために持続可能な形になっていないのに対して、小規模NGOによるプログラムは、焦点を多少絞ったプログラムではあるが長期的な効果を保持するだけのポテンシャルをより強く有している。本研究は、マイクロクレジットプログラムがその直接の支出だけでなく、社会的、経済的、制度的、環境的な要素を強調することによって、プログラムの参加者だけではなく、将来世代も享受できるだけの持続可能な効果を引き出すためのポテンシャルを持つことができることを示し、結論としている。 本研究は、開発途上国の貧困女性層を対象としたマイクロ・クレジットの有効性とその持続可能性に関して、バングラデシュの事例を通じて詳細に明らかにし、その分析を通じて今後の政策展開のための有益な提言を行い、優れた学術的価値を有している。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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