学位論文要旨



No 118676
著者(漢字) 竹村,幸敏
著者(英字)
著者(カナ) タケムラ,ユキトシ
標題(和) ウシ角膜コラーゲン線維についての生化学的および細胞学的研究
標題(洋) Biochemical and cytological studies on collagen fibril in bovine corneal stroma
報告番号 118676
報告番号 甲18676
学位授与日 2004.01.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(学術)
学位記番号 博総合第456号
研究科 総合文化研究科
専攻 広域科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 石井,直方
 東京大学 教授 久保田,俊一郎
 東京大学 助教授 松田,良一
 東京大学 助教授 上村,慎治
 帝京平成大学 教授 林,利彦
内容要旨 要旨を表示する

ヒトなど高等動物の組織・器官の構築・恒常性維持においては,細胞と細胞外マトリックスの相互作用は決定的に重要な役割をしている。細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンタンパク質は力学的な支持をし,組織の骨格構造を構成するだけでなく,細胞との相互作用を介して,これらの生命現象に関わっている。コラーゲンタンパク質は27種類の分子種が知られている。その中でI,II,III,V,XI型コラーゲンはコラーゲン線維を形成するものであるが,新しく発見されたXXVII型コラーゲンは遺伝子の構造からはコラーゲン線維を形成するものと想定されているが,タンパク質レベルでの検討はなされていない。

硝子軟骨以外の組織のコラーゲン線維はこれまでの研究結果ではどれもI型コラーゲンを主成分とし,組織によって異なる含量のIII型,V型コラーゲンを伴っている生体内のコラーゲン線維は80- 100 nmの太い線維と20- 40 nmの細い線維の二種類に大別される。本研究で対象とした研究材料である角膜実質層は他の結合組織(真皮,腱など)と同様にコラーゲン線維が組織成分の主体であり,線維芽細胞様の細胞(ケラトサイト)はコラーゲン線維に囲まれて,まばらに存在している。角膜実質層の特徴は,1)コラーゲン線維を構成するコラーゲン分子はI型コラーゲンであるものの,他の組織よりもずっと多い割合でV型コラーゲンが含まれている。2)コラーゲン線維の直径は均一で細く(約30 nm),それらが一定方向に配列し,分岐せず,線維間の間隙も均一である。コラーゲン線維は密度高く詰まっている。3)角膜実質層内で角膜コラーゲンを産生し,コラーゲン線維の編成に関与している細胞はケラトサイトと呼ばれる線維芽細胞であるが,いくつかの点で真皮線維芽細胞と異なる。例えば,再構成したI型コラーゲンゲル内でのケラトサイトの細胞培養において,コラーゲンゲル収縮を引き起こすが,真皮線維芽細胞ほどは強くない。

本学位論文は,上記の1),2),3)の特徴を有する角膜コラーゲン線維に関して生化学的,細胞学的に研究したものである。以下に順を追って,具体的に成果を要約する。

については学位論文の第2章が対応する。角膜実質層内にはI型,V型コラーゲン分子の両方が存在し,均質なコラーゲン線維が多数あることから,各コラーゲン線維はI型コラーゲンとV型コラーゲンのハイブリッドから構成されていると予想されている。免疫化学的研究よりV型コラーゲンに対する抗体は細い線維に反応することが報告されている。また,コラーゲン分子を再会合させるとI型コラーゲンは80-100 nmかそれ以上の線維径をもつ線維を形成するのに対し,V型コラーゲンは細い線維(太くても50 nm)を形成する。さらにI型,V型コラーゲンを混合して再会合させるとV型コラーゲンの含量がある程度以上であれば混合線維の径が一定以上にならないことが報告されている。このようにV型コラーゲンは線維の細さに影響を及ぼしていると考えられている。

ウシ角膜組織はペプシン処理により,ほぼ完全に可溶化される。角膜実質層の組織全体からペプシンによって可溶化された画分中のタンパク質はI型コラーゲンとV型コラーゲンで占められていた。I型コラーゲンとV型コラーゲンの割合は,約9:1程度と見積もられた。角膜コラーゲン線維の酵素処理を限定した場合に溶けだしてくるI型コラーゲンとV型コラーゲンの割合から,角膜コラーゲン線維におけるV型コラーゲンの分布についての情報が得られると考え検討した。酸性でペプシン処理した際,短い時間に可溶化された画分にはV型コラーゲンがI型コラーゲンと同じ程度の量含まれていた。コラーゲン線維の表面に近いところにはV型コラーゲンが分布していると解釈できる。しかし,酸性中では線維中のコラーゲン分子間の間隙が開いている可能性がある。実際,BirkらはV型コラーゲンに対する抗体が中性条件では反応せず,コラーゲン線維を酸性条件にした後で反応することから,V型コラーゲンは線維の内部にあると考察した。V型コラーゲンが線維の内部にあるとのモデルが広く取り上げられている。すなわち,ペプシンを用いた酸性pHの条件では,コラーゲン線維は膨潤しコラーゲン分子間の間隙が広くなっているため,ペプシンが線維の内側まで浸透し作用し,たとえV型コラーゲンが線維の内部にあったとしてもV型コラーゲン分子の方が分子間架橋結合を切断されやすいために,ペプシンの限定処理で可溶化された割合が大きいことも考えられる。そこで,コラーゲン線維中の分子パッキングが保たれていると考えられる条件で限定酵素処理を行って検討した。中性pHでトリプシンおよびキモトリプシン処理を行い,線維の表面に近いところだけに作用していると思われる線維を得た。このように角膜線維を酵素処理することにより,種々の溶媒で溶け出してくるコラーゲンタンパク質等を検討した。2M尿素,0.7 M NaClを含むトリス緩衝液処理で可溶化されてくる画分にコラーゲンタンパク質があり,それらの大部分はV型コラーゲンであった。この結果をもとに角膜実質コラーゲン線維のV型コラーゲンとI型コラーゲンの構成比,コラーゲン分子の径,コラーゲン線維の径から,V型コラーゲン分子が角膜コラーゲン線維の表面に分布するモデルを提唱した。このモデルは,現在最も頻繁に引用されているBirkらが提案しているモデルと全く異なるものである。本モデルはV型コラーゲン分子から再構成した線維の径は一定以上に太くならないことが,V型コラーゲンの線維表面の分布によることを合理的に説明できるものと考察した。

については学位論文の第3章が対応する。コラーゲン線維はコラーゲン分子が規則的に会合して形成される。コラーゲン線維はさらに会合してコラーゲン線維束となり,線維束はさらに1つ高次構造の会合体を形成し,組織中に光学顕微鏡を用いて観察される“膠原線維”(膠原はコラーゲンの意味)と対応した構造となっている。このようにコラーゲンタンパク質は階層構造を形成していると考えられる。これまでのコラーゲン線維に関する研究においては,形態学的な研究やコラーゲン分子を再構成した再構成線維に限られている。コラーゲン線維がどのように配向し,また他のコラーゲン線維と結合するのはどのような機構によるかは,組織構築の重要な課題である。

角膜実質層は多数の一定の径をしたコラーゲン線維が整然と配向した形態をしている。線維と線維を結びつけていて線維間に存在する物質についても均一であることを仮定して,角膜実質層のコラーゲン線維を分散させ,線維をばらばらに分離することを試みた。メルカプトエタノール,EDTA,NaClなどを適度な組み合わせで用いると,棘皮動物(ウニ,ヒトデ,ナマコなど)ではほぼ完全に結合組織が分散し,ほとんどすべてのコラーゲン線維が回収できることが報告されているので,この方法を改変し,角膜に応用した。角膜組織片は分散し,分散したものから大きな破片を除いたあと,多少濁りを有する画分を透過型電子顕微鏡を用いて観察した。

さまざまな長さの線維が存在したが,どの線維もコラーゲン線維に特有の縞模様を示し,線維径が一定で約25 nmであった。線維の向きも,線維間の距離もさまざまで,コラーゲン線維へと分散されることがわかった。コラーゲン線維分散液の濁りは,線維が溶液中で分散していることを反映していた。ウシ角膜中のコラーゲン線維はメルカプトエタノールの処理により接着性を失うような物質で結合していると考えられる。

については学位論文の第4章が対応する。I型コラーゲンタンパク質を基質として用いた細胞培養研究は多数報告されている。I型コラーゲンから再構成した線維を培養基質として用いることで,生体内での環境としての線維がコラーゲン分子状のI型コラーゲンタンパク質とは異なる作用を細胞に及ぼすことが報告されている。培養基質として,生体内にコラーゲン線維として存在するものを用いたらどのような応答を細胞はするのであろうか。このような観点から,ヒトケラトサイトをウシ角膜から分離・分散したコラーゲン線維上で培養を行い,I型,V型コラーゲン再構成線維に対するケラトサイトの細胞応答を比較し検討した。

I型,V型コラーゲン再構成線維あるいはウシ角膜から分散した角膜線維画分を培養皿にコートし,ヒトケラトサイトを播種し無血清下で培養した。その結果,培養1日後の細胞数は角膜線維上が最も多かった。無血清下でケラトサイトの角膜線維に対する細胞応答はI型,V型コラーゲン再構成線維に対するものとは大きく異なり,I型,V型コラーゲン再構成線維にはない効果を角膜線維がもつ可能性が考えられた。角膜線維のどのような構造的特徴がそのような作用を有するのか,今後詳細に角膜線維の構造と他の組織中のコラーゲン線維あるいは再構成コラーゲン線維と比較することでさらに前進する可能性を追求したい。特に,角膜コラーゲン線維が一定の細い線維径を有し,かつV型コラーゲン分子が線維表面に分布することを本研究論文では提案していることに鑑み,角膜線維にV型コラーゲンが存在することにより,このような作用が生じているとの可能性を追求する意味があると考えている。

ヒトなど動物組織に見られるコラーゲン線維にはI型コラーゲンのほかにIII型コラーゲン,V型コラーゲンが存在する。多様な線維性コラーゲン分子種が存在する意義については全く解明されていない。本研究はV型コラーゲンの存在がI型コラーゲンだけでは持っていない何らかの特徴をコラーゲン線維に付与している可能性を考え,角膜のコラーゲン線維の特徴を解明することを試みた。本研究の成果は角膜のコラーゲン線維について,V型コラーゲンが線維の表面に分布するというモデルを提出した。このモデルを1)コラーゲン線維径を細くかつ一定にし,2)線維間の結合,3)細胞との相互作用,において角膜コラーゲン線維が有する特徴を解明する第一歩と位置づけたい。

審査要旨 要旨を表示する

コラーゲンは,哺乳類などでは生体内に最も多量に存在するタンパク質である。細胞外マトリクスの構成要素として,個体・器官・組織・細胞を力学的に支持するばかりでなく,細胞間・組織間の情報伝達を仲介したり,細胞運動の足場として細胞の増殖や分化を調節したりすることで,器官形成やその維持においても重要な役割を果たしている。これまで,コラーゲンタンパク質として27種類の分子種が報告されており,その中でI,II,III,V,XI型コラーゲンはコラーゲン線維を形成する。生体内では,これらの複数のコラーゲン分子種の存在比や分子間相互作用に依存して多様な細胞外マトリクス構造がつくられると考えられ,さらにこのことがそれぞれの器官や組織の機能にとって重要であろうと考えられている。しかし,コラーゲン分子種間,さらにコラーゲンと細胞の間に実際にどのような相互作用がはたらき,組織・器官に特徴的な細胞外マトリックス構造が形成されるのかについては,まだ十分に解明されていないのが現状である。本研究は,高い透明性と力学的強度を併せもつ点で特徴的な角膜実質層を材料として用い,1)均一な太さのコラーゲン線維が形成される分子的機構,および2)きわめて規則的なコラーゲン線維の配列が形成される生化学的・細胞生物学的機構について調べることを目的としたものである。

硝子軟骨以外の組織のコラーゲン線維は,多くの場合I型コラーゲンを主成分とし,III,V型コラーゲンを副成分としてもつが,これらの含量比は組織によって異なる。生体内のコラーゲン線維は80-100nmの太い線維と20-40 nmの細い線維の二種類に大別され,こうしたコラーゲン線維の太さを決定する上で,異なるコラーゲン分子種の含量比や分子種間の相互作用が重要な役割を果たすと考えられる。免疫化学的研究によるとV型コラーゲンに対する抗体は細い線維に反応する。また,コラーゲン分子を再会合させるとI型コラーゲンは80-100 nm以上の太さの線維を形成するのに対し,V型コラーゲンは細い線維(50 nm以下)を形成する。さらにI型,V型コラーゲンを混合して再会合させるとV型コラーゲンの含量が一定以上であれば線維の太さが一定以上にならないことも報告されている。したがって,V型コラーゲンの含量は線維の太さに影響を及ぼしていると考えられる。角膜実質層は他の結合組織と同様にコラーゲン線維が主要成分であり,次のような特徴をもつ : ア)コラーゲン線維を構成する主成分はI型コラーゲンであるものの,他の組織よりもV型コラーゲンの含量が多い;イ)コラーゲン線維の直径は均一で細く(約30 nm),分岐していない;ウ)線維は一定方向に,一定の間隔で高密度に配列し,さらに互いに直交する多数の層を形成する。こうした均一で規則的なコラーゲン線維の配列の構築に関与している細胞は,コラーゲン線維に囲まれて散在する線維芽細胞様細胞(ケラトサイト)であると考えられている。

本論文ではまず,コラーゲン線維の構成成分(上記ア))が,角膜実質層の機能上きわめて重要なコラーゲン線維の特徴である上記イ)とどのような関連をもつかにつき,主として生化学的手法を用いて調べた結果について述べている。その概要は次の通りである。

ウシ角膜組織はペプシン処理により,ほぼ完全に可溶化された。角膜実質層の組織全体からペプシンによって可溶化された画分中のタンパク質はI型コラーゲンとV型コラーゲンで占められていた。I型コラーゲンとV型コラーゲンの割合は,約9:1であった。そこで,酵素処理を限定した場合に溶出するI型コラーゲンとV型コラーゲンの割合から,角膜コラーゲン線維におけるV型コラーゲンの分布についての情報が得られると考え検討した。酸性でペプシン処理した際,短時間で可溶化された画分にはV型コラーゲンがI型コラーゲンと同程度の量含まれていた。このことは,コラーゲン線維の表面付近にV型コラーゲンが分布していることを示唆する。しかし,酸性条件下では線維が膨潤することによりコラーゲン分子間の間隙が開いている可能性がある。実際,BirkらはV型コラーゲンに対する抗体が中性条件ではコラーゲン線維と反応せず,酸性条件にした後で反応することから,V型コラーゲンは線維の内部にあると考察している。そこで,コラーゲン線維中の分子パッキングが保たれる条件で限定酵素処理を行って検討した。中性pHでトリプシンおよびキモトリプシン処理を行い,主に線維の表面付近に酵素を作用させた後に,種々の溶媒で溶出してくるコラーゲン分子種を検討した。2M尿素,0.7 M NaClを含むTris-バッファー処理で可溶化されてくる画分にコラーゲンが含まれ,その大部分はV型コラーゲンであった。この結果をもとに角膜実質コラーゲン線維のV型コラーゲンとI型コラーゲンの構成比,コラーゲン分子の径,コラーゲン線維の径から,V型コラーゲン分子がコラーゲン線維の表面に分布するモデルを作成した。このモデルは,現在最も頻繁に引用されているBirkらが提唱しているモデル,すなわちV型コラーゲンが線維の内部にあると考えるモデルと全く逆のものであり,V型コラーゲン分子から再構成した線維の径が一定以上に太くならないことを合理的に説明できるものと考えられた。

次に,前述の特徴ウ)を与えるメカニズムについて知見を得るため,どのような処理を行うことによって高密度にパッキングされたコラーゲン線維を分散・分離できるかを検討した。棘皮動物では,メルカプトエタノール,EDTA,NaClなどを適度な組み合わせで用いると,ほぼ完全に結合組織が分散し,ほとんどすべてのコラーゲン線維が回収できることが報告されている。そこでこの方法を改変し,0.2Mメルカプトエタノール,0.05M EDTA,0.5M NaClを含むバッファーで角膜組織片を処理した。分散したものから大きな破片を除いたあと,多少濁りを有する画分を透過型電子顕微鏡で観察した。観察された線維はどれもコラーゲン線維に特有の縞模様を示し,線維径は一定で約25 nmであった。線維の向きも,線維間の距離もさまざまで,コラーゲン線維へと分離されていることがわかった。また,収量は低下したが,メルカプトエタノールの代わりに DTTを用いてもほぼ同様の結果が得られた。したがって,ウシ角膜実質層のコラーゲン線維が一定方向に整然と配列する機構には,S-S 結合が重要な役割を果たしていることが示唆された。

最後に,一方向に整然と配列したコラーゲン線維がさらに直交する幾重もの層をなし,角膜としての機能的構造体を形成する(前述の特徴ウ))ためには,コラーゲン線維とそれをつくるケラトサイトとの相互作用が重要と考えられる。本論文では,この相互作用について知るための予備的研究として,角膜から分散したコラーゲン線維,I型,V型コラーゲン再構成線維をそれぞれ基質として,無血清下でヒトケラトサイトを培養し,その形態を経時的に調べた。培養1日後では,伸張し活発に突起を伸ばしている細胞の数は,角膜線維を基質とした場合が,プラスチックのみ,I型コラーゲン再構成線維,V型コラーゲン再構成線維のいずれの場合よりも多かった。したがって,角膜より分散したコラーゲン線維は,I型,V型コラーゲン再構成線維にはない効果をケラトサイトの細胞活性に及ぼすことが示唆された。 これらの実験結果から本論文は,角膜実質層で形成される native なコラーゲン線維に関して次のように結論づけている:1)I型コラーゲンとV型コラーゲンが約9:1の割合で含まれること;2)V型コラーゲン分子は線維の表層付近に分布し,このことが均一な太さの線維がつくられる機構において重要と考えられること;3)I型,V型コラーゲン再構成線維のそれぞれと比べ,異なった効果をケラトサイトの細胞活性に及ぼすこと。

冒頭にも述べた通り,コラーゲンにはきわめて多くの分子種があり,このことはおそらく多様な分子種の組合せにより多様な構造と機能をもつ細胞外マトリクスを形成する上で重要である。本論文は,I型コラーゲンとV型コラーゲンに焦点を絞っているものの,生体内のnative なコラーゲン線維において,これらの2種のコラーゲン分子の量比と分布が特定の線維形態を形成する上で重要であるばかりでなく,周辺の細胞の活性にも特異的な効果を及ぼすことを示した点で意義がある。

審査委員会では,線維内でのV型コラーゲン分子の局在についての直接的証拠に乏しい,コラーゲン線維が細胞活性に及ぼす効果についての実験での踏み込みが浅いなどの意見も出された。しかし,もとより可溶化が困難であり,構造と機能に関して限られた知見しか得られていない線維性コラーゲンについて上記の成果を得たことは,今後の研究の発展に大いに寄与するものと評価された。特に, I型,V型コラーゲン混合線維に関して本論文で提案されたモデルについては,従来提唱されているものと完全に対立するものであり,当該分野での研究を強く刺激するものと考えられた。

したがって,本審査会は本論文を博士(学術)の学位を授与するものにふさわしいものと認定する。

UTokyo Repositoryリンク