No | 118925 | |
著者(漢字) | ||
著者(英字) | NAM HONG,NGUYEN | |
著者(カナ) | ナムホン,グェン | |
標題(和) | 繰返し三軸・ねじり載荷時における豊浦砂の局所計測による変形特性とモデル化 | |
標題(洋) | Locally measured deformation properties of Toyoura sand in cyclic triaxial and torsional loadings and their modelling | |
報告番号 | 118925 | |
報告番号 | 甲18925 | |
学位授与日 | 2004.03.25 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第5657号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 社会基盤工学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 砂の弾性的変形特性の異方性について、主応力軸の回転の影響を考慮しながら、実験および数値計算により詳細に検討した。 気乾状態の豊浦砂を用いて、拘束圧30kPaでの初期間隙比が0.697〜0.760の範囲の密な中空円筒供試体を作成した。供試体の寸法は、外径20cm・内径16cm・高さ30cm(サイズA)、外径20cm・内径12cm・高さ30cm(サイズB)、および外径10cm・内径6cm・高さ20cm(サイズC)の3通りとした。排水三軸・ねじりせん断試験を系統的に実施し、新たに開発したピンタイプの局所変位計測装置と非接触変位計を用いて供試体の局所変位計測を行った結果、微小変位レベルでの弾性的変形特性について以下の点を明らかにした。 等方応力または三軸応力下で主応力軸方向が回転しない場合、鉛直ヤング率Ez, せん断剛性率Gzθ, およびポアソン比vzθの測定値は、それぞれδ'z m, (δ'zδ'θ)0.5n, およびRkに主として依存した。ただしR は鉛直応力と水平応力の比δ'z/δ'θで、m,n,kは定数である。三軸応力下でRが3を超えると、Gzθが小さめになる傾向が見られた。一方、ねじりせん断により主応力軸方向が回転する場合、Ez, Gzθ, vzθ の値はτzθの載荷とともに小さめになり、その低下の程度はRの値とそれまでに経験した応力履歴によって異なった。 供試体寸法の違いの影響に関しては、サイズAとBの供試体の試験結果に有意な差は見られなかった。特に、サイズBの供試体の試験結果は最もばらつきが少なく安定していた。一方、サイズCの供試体の試験結果は、ばらつきが最も多く、Gzθの測定値は他のサイズの場合よりも小さくなる傾向が見られた。 供試体端面でのベッディングエラーと端面拘束がEzに及ぼす影響は明確には見られなかった。一方、Gzθは局所変位計測による測定値が、外部での変位計測による結果よりも小さくなった。これは、後者が端面摩擦による変位拘束の影響を受けているためと考えられる。 空中落下法により供試体を作成する際に、砂粒子を円周方向のみに散布すると、水平面内での異方性が生じた。円周方向と半径方向に砂粒子を散布することにより、この異方性の程度を減少させることができた。 さらに、初期異方性と応力誘導異方性および主応力軸方向の回転の影響を考慮できる新しい亜弾性モデルとして、IISモデルと呼ばれるモデルを提案した。これを用いて算定したひずみの弾性成分を全ひずみの測定値から差し引くことにより、大振幅繰返しねじりせん断時のせん断ひずみの塑性成分を推定し、そのモデル化を行った。これらの検討により以下の点が明らかになった。 主応力軸方向が回転する場合も含む三軸・ねじりせん断試験で測定した豊浦砂の弾性的変形特性の異方性を、IISモデルによりシミュレーションすることができた。本研究で用いた試験条件のもとでは、シミュレーション結果に及ぼす初期異方性の影響は小さかった。 一般化した双曲線関数 (GHE) と新たに提案した対数正規分布関数 (LE) により、単調ねじりせん断時の豊浦砂の骨格曲線をモデル化することができた。LEを用いることにより、GHEを用いた場合よりも少ないパラメーター数でモデル化を行うことができた。 Masing の第2法則を一般化した Proportional rule と、生じたひずみ量に応じて骨格曲線を移動させる Drag rule を適用し、適切な drag 関数を設定することにより、大振幅の繰返しねじりせん断時におけるせん断応力比とせん断ひずみの塑性成分の関係の測定値を、数値計算によりシミュレーションすることができた。 本研究では豊浦砂の変形特性を対象とした検討を実施したが、モデル化に用いた各手法は他の粒状体材料に対しても一般化して適用することが可能である。弾性的変形特性にIISモデルを、単調載荷時の骨格曲線のモデル化にGHEまたはLEを、繰返し載荷時の挙動のモデル化に Proportional rule と Drag rule を適用することにより、従来よりも詳細な変形挙動のシミュレーションが可能になると考える。 | |
審査要旨 | 直接基礎や杭基礎などを支持する密な地盤に通常の荷重下で生じるひずみレベルは小さく、弾性的な変形成分が占める割合が比較的高い。このような弾性的変形特性の実験的研究には、これまで主として三軸試験が用いられてきた。しかし、この試験では主応力軸の方向が鉛直・水平方向に固定されており、実際の地盤で生じる主応力軸の回転を再現することができない。そのため、主応力軸が鉛直・水平方向以外の場合の弾性的変形特性については十分な試験データが得られていない。 また、これまでの研究で地盤材料の弾性的変形特性には初期異方性と応力状態誘導異方性があることが明らかになっているが、これら2種類の異方性の軸が一致しない場合のモデル化の検討も十分にはなされていない。 さらに、大振幅の繰返し荷重を受ける地盤材料の挙動をモデル化する手法として、単調載荷で得られる応力ひずみ関係を骨格曲線とし、これを徐々にシフトさせながら所定の履歴法則を適用する手法が提案されているが、地震時の水平地盤のように水平面上に繰返しせん断応力が作用する場合の挙動を対象とした検証はこれまで行われていない。 以上の背景のもとで、本研究では、主応力軸方向を回転させることのできるねじり三軸試験を乾燥豊浦砂の中空円筒供試体を用いて系統的に実施し、弾性的変形特性に及ぼす応力条件や供試体寸法等の影響を明らかにしている。また、初期異方性と応力状態誘導異方性の軸が一致しない場合にも適用可能な弾性的変形特性のモデルを新たに提案し、試験結果に見られる傾向が説明できることを示している。さらに、大振幅の繰返しねじり試験を行い、その結果を対象に骨格曲線を徐々にシフトさせる前述した手法の妥当性を検証している。 第一章は序論であり、関連する既往の研究をまとめながら研究の背景と目的を説明し、最後に論文の構成を記述している。 第二章では、研究に用いた試験装置と試験材料の詳細、および試験方法と試験条件を記述している。 第三章では、中空ねじり三軸試験におけるひずみと応力の算定方法、および新たに開発したピンタイプの局所変位計測装置について記述している。 第四章では、さまざまな応力状態において微小ひずみレベルでの繰返し載荷を鉛直方向とねじり方向に行うことにより、鉛直方向のヤング率、水平面上のせん断剛性率、および鉛直・水平面でのポアソン比を測定した結果を報告している。三軸応力状態ではこれらの弾性的変形特性の応力状態誘導異方性が鉛直応力と水平応力の関数としてモデル化できることを示したうえで、ねじりせん断応力を作用させて主応力軸方向を鉛直・水平方向から回転させた場合には、このようなモデル化が成立しなくなることを指摘している。 第五章では、中空円筒供試体の寸法を三通りに変えた場合の試験結果を比較し、弾性的変形特性の測定値に及ぼす影響は小さいが、供試体寸法が大きいほうがデータのばらつきが少なくなることを明らかにしている。また、それぞれの場合において局所変位計測結果と外部変位計測結果を比較し、鉛直ヤング率には違いが見られないが、水平面上のせん断剛性率は後者のほうが大きくなり、端面拘束の影響を受けていると考えられることを示している。 第六章では、初期異方性と応力状態誘導異方性の軸が一致しない場合にも適用可能な弾性的変形特性のモデルを新たに提案している。また、このモデルを用いてシミュレーションを行い、試験結果に見られる傾向が説明できることを示している。 第七章では、大振幅の繰返しねじり試験を行った結果を、等方圧密過程からの各ひずみ成分の挙動も含めて詳細に記述している。また、空中落下法により中空円筒供試体を作成する際に、砂粒子の散布方向に起因して水平面内での異方性が生じるという知見を見出している。 第八章では、大振幅の繰返しねじり試験結果を対象としたシミュレーションを行い、単調載荷で得られる応力ひずみ関係を骨格曲線とし、これを徐々にシフトさせながら所定の履歴法則を適用する手法が有効であることを検証している。 第九章では、結論と今後の課題を記述している。 以上を要約すると、本研究は、系統的な試験結果との比較により、初期異方性と応力状態誘導異方性の影響を考慮しながら多様な応力条件に適用できる弾性的変形特性の新たなモデル化に成功し、さらに、大振幅の繰返し荷重を受ける地盤材料の挙動について既往のモデルの妥当性を検証したものであり、地盤工学の発展に貢献するところが大である。よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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