学位論文要旨



No 118976
著者(漢字)
著者(英字) Rasoul,Aivazi
著者(カナ) ラソール,エイヴァジ
標題(和) 有限要素解析を利用した厚物・軸物部品自由鍛造のための自動工程設計
標題(洋) Automated Sequence Design for the Free Forging of Plates and Shaft Parts using Finite Element Analysis
報告番号 118976
報告番号 甲18976
学位授与日 2004.03.25
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第5708号
研究科 工学系研究科
専攻 産業機械工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 柳本,潤
 東京大学 教授 光石,衛
 東京大学 教授 横井,秀俊
 東京大学 助教授 吉川,暢宏
 東京大学 助教授 割澤,伸一
内容要旨 要旨を表示する

より小量多様な鍛造製品を実現するため、柔軟性と安定性を持つ製造プロセス設計システムが要求されている。本研究では、軸部品の自動鍛造シーケンス設計(AFSD)システム、インクリメントの自由な鍛造プロセス、FEM数値解析時間の短縮と予測結果の安定の解決策としてワンステップFEM解析手法を構築した。ワンステップFEM分析では、試料が中間のステップのない初期の形から最終配置まで直接的に変形関数を仮定され、より早くFEM解析を実現した。製品の与えられた幾何形状に応じて、自動的に鍛造シーケンス設計システムデザイン、また自由な鍛造中に塑性変形を参照する塑性流動を最適化し、ワンステップの厳密な剛塑性FEM分析によって得られた。新たに構築した手法に基づき、インクリメントの軸のためのAFSDシステム、提案された自由な鍛造プロセス、などが開発された。その後、システムは、長さ制限の軸類のインクリメントの鍛造製品に適用され、希望の幾何形状に応じて最適な加工プロセスの設計を成功的に実現された。また、様様な形状の軸類製品に対してシーケンス設計を行い、提案されたシステムの解析結果と実験結果を比較し実験検証を行った。提案されたシステムが任意の幾何形状の軸類部品に適用し、鍛造シーケンスを最適的に設計することが明らかになった。調査を通じて、ワンステップFEMシステムはがインクリメント自由鍛造の分析に使用可能であることが明らかになった。

審査要旨 要旨を表示する

本研究は「Automated Sequence Design for the Free Forging of Plates and Shaft Parts using Finite Element Analysis(有限要素解析を利用した厚物・軸物部品自由鍛造のための自動工程設計)」と題し、単純な金型で多様な形状を有する製品を製造できる、フレキシブルな自由鍛造加工について検討したものである。

変形加工における形状の創成は、金型の形状を材料に転写することで行われる。この加工様式故に、変形加工は同一の形状寸法を有する金属部品の大量生産に適しており、事実、工業製品の製造において広く利用されている。この特徴は、変形加工によって多種少量生産するためには、致命的な短所ともなりえる。すなわち通常の変形加工は、金型形状によって製品形状が規定されてしまうため、多種少量生産には向いていない。単純な金型を利用した逐次造形を行う自由鍛造はこの例外に属するが、自由鍛造の工程の生成は人間の勘と経験に頼っており、個々の製品形状に対応した工程すなわち加工部位と加工量の設計には長い時間および試行錯誤が必要である。

本論文では、自由鍛造工程の設計をone-step有限要素解析を援用して自動化することによって、フレキシブルな自由鍛造が実現できることを示している。第1章は序論であり、変形加工の役割および特徴を記し、自由鍛造に関わる内外の研究を総括し問題点を抽出している。これを受けて、研究の目的を述べている。

第2章には、自由鍛造の自動工程設計の第1のコアである、one-step有限要素解析の基礎理論を示している。この解析手法は、変形を増分的に取り扱うことで塑性変形に伴う大きな変形を解析するのではなく、わずか1増分ステップ区間内の非線形計算で、与えられた加工条件に対応して生じる塑性変形を大まかに把握するのに適している。計算時間は、通常のオフライン工程設計に利用される増分形有限要素解析と比較して数十分の一を必要とするのみなので、将来のオンライン工程設計での利用をはかる上で、有望な手法である。なお、剛塑性材料モデルを利用したone-step有限要素解析は、本研究で初めて提案されたものである。第3章では、2次元問題である一方向拘束形の厚物部品(スラブ)の自由鍛造加工を取り上げ、one-step有限要素解析を実施するとともに、その精度を実験と比較して検証している。

第4章では、自由鍛造の自由工程設計の第2のコアである自動工程設計システム(AFSDシステム:Automated Forming Sequence Design System)の構成方法と適用例について、延伸拘束形の厚物部品(スラブ)の自由鍛造加工を取り上げつつ論じている。自由鍛造では、材料に多数回の塑性変形を付与することで造形を行うため、製品形状に対応した加工部位と加工量の設計が必要となる。ところが、逐次加工されている部位の変形は、他の加工されていない部位の形状変化を必然的に伴うため、工程の設計には勘と経験が必要である。ここでは、加工中の変形をOne-step有限要素解析で追跡し、製品形状に対応した最適な加工量を逐次修正法にて逆算するAFSDシステムを構成し、階段状の高さ分布を有する製品への自動工程設計が行えることを示した。また自動設計された工程を利用した自由鍛造実験を実施し、正しく工程が設計されていることを実証した。

第5章、第6章は、3次元形状を有する製品の、one-step有限要素解析の適用とAFSDシステムの構成について述べている。第5章では、one-step有限要素解析を、幅が狭く顕著な3次元変形を呈する場合について適用し、自由鍛造後の幅・高さいずれについても、相応な精度で解析ができることを、実験と比較を行うことで立証している。第6章ではこの結果を受け、長手方向断面形状が変化する軸物部品の自由鍛造を対象として、自動工程設計方法すなわちAFSDシステムを構築する方法を論じている。またいくつかの軸物部品についてAFSDシステムを適用し、工程が正しく設計されることを示している。また実験結果との比較により、自動生成された工程が妥当であることを示している。

第7章は結論であって、研究成果を総括し、今後の研究について展望している。

以上を要するに本研究では、自由鍛造加工における有限要素解析を利用した自動工程設計について、基礎理論の構築よりより応用事例、実験との比較検証に至るまで一貫して取り扱っており、今後の、自由鍛造加工を利用したフレキシブルな変形加工システムの実現に向けた工業的意義が高いのみならず、変形加工において今後重要となる課題の一つを取り扱った研究として、学術的な意義も高い。

よって本論文は、博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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