No | 119018 | |
著者(漢字) | 松澤,智史 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | マツザワ,トモフミ | |
標題(和) | 少人数グループを対象にしたマルチキャストとそのグループ管理の研究 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 119018 | |
報告番号 | 甲19018 | |
学位授与日 | 2004.03.25 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第5750号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 電子工学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文は「少人数グループを対象にしたマルチキャストとそのグループ管理の研究」と題し、4部9章構成よりなる。IPマルチキャスト生誕の目的であるグループコミュニケーションにおける現状の実態を調査し、現状のグループ管理の問題点とその解決案を提案した。また同調査で少人数で短時間で構成されるグループが存在することを見つけ、それに特化したIPマルチキャストルーティングプロトコルを提案した。 第1章は「序論」であり、本研究を行うにあたっての動機や目的をまとめている。 第2章は「IPマルチキャストについて」と題し、IPマルチキャストについての概要と、それに伴う一般的な問題点を示し、本研究で取り扱う問題点として、「グループ管理」を取り上げている。 第3章は、「グループコミュニケーションについて」と題し、IPマルチキャストの生誕目的であるグループのコミュニケーションにおける現状の調査をするために、IRC (Internet Relay Chat) と呼ばれるチャットを取り上げ、IRCを利用するユーザの接続時間や、グループの継続時間と規模を調べて、その特徴を明らかにした。その結果4種の特徴に分けられ、その中の「短時間の間、少人数で構成されるグループ」に関して特化したIPマルチキャストが存在しないことを述べている。 第2部に入り、第4章は「従来のマルチキャストルータ・ホスト間プロトコルとマルチキャストルータ間プロトコル」と題し、従来のIPマルチキャストで使用されているグループ管理のメカニズムを搭載したIGMP (Internet Group Management Protocol) の紹介と、それを利用したIPマルチキャストルーティングプロトコルを紹介している。 第5章は、「提案する新しいマルチキャストルータ・ホスト間プロトコルMGMP」と題し、IGMPや他方式での欠点を述べ、それに代わるグループ管理プロトコルであるMGMPの提案を行っている。 第3部に入り、第6章は、「PIM-SMへのDR Electionの導入」と題し、従来のIPマルチキャストルーティングプロトコルであるPIM-SMのDRと呼ばれる代表ルータを改良することによって、少人数で短時間グループのIPマルチキャストを実現する上で、欠かせないIPマルチキャストの配信木の確立を試みた研究成果を述べている。 第7章は、「ルータ間プロトコル」と題し、第6章のPIM-SMの改良とは視野を変え、L4での少人数で短時間グループのマルチキャストを実現するため、データ線、コントロール線の分離を目指した新規のP2Pマルチキャストルーティングを提案し、従来のP2Pマルチキャストに比べ再接続にかかる時間と、他のノードの迅速な通知という点で、短時間向きのP2Pマルチキャストであることを言及し、具体的な実装であるNCMRの仕様を解説している。 第4部に入り第8章は、「結論」であり、本論文の成果をまとめている。 第9章は「今後の課題」と題し、本研究を踏まえた上で、今後の予定や課題、展望等を記している。 以上を要するに、本論文は従来からIPマルチキャストの問題と言われ続けているグループ管理についての新案を提案し、IPマルチキャストの目的であるグループコミュニケーションについて、実際のアプリケーションを元に形成されるグループやユーザの傾向を調べ、それに基づくIPマルチキャストを実現する上で、足りない部分といえる「少人数短時間のコミュニティ」のための基盤技術を提案した。これらの成果は、今後のグループコミュニケーションのアプリケーションを考慮する上での参考データになり、それに基づいたマルチキャストの使われ方と、グループ管理における方向性をL3とL4で示したものである。 | |
審査要旨 | 本論文は「少人数グループを対象にしたマルチキャストとそのグループ管理の研究」と題し、インターネット上でのグループコミュニケーションに適した通信方式として注目されているマルチキャスト通信方式におけるグループ管理機能の欠如について論じ、それを解決する新たな手法の提案とその有効性について論じた4部9章で構成されている。 第1部は「マルチキャストの現状と問題提起」であり、第1章の「序論」で本研究の動機や目的をまとめ、第2章の「IPマルチキャストについて」で、現状のIPマルチキャスト通信方式の概要を総括し、マルチキャストルータがグループ管理機能を行う方式は、グループ数の増加に伴って資源管理コストが増大する問題があることを指摘している。また、第3章の「グループコミュニケーションについて」では、IRC (Internet Relay Chat) に対するユーザ接続時間や、グループ規模および継続時間の調査結果を示すことで、インターネット上でのグループコミュニケーションは「少人数で構成されるグループが短時間だけ生起するケース」が比較的多く、従来のマルチキャスト方式だけでは不十分であることを明らかにした。 第2部は「グループ管理」についてまとめられており、第4章では「従来のマルチキャストルータ・ホスト間プロトコルとマルチキャストルータ間プロトコル」として、従来のIPマルチキャストで用いられているグループ管理メカニズムIGMP (Internet Group Management Protocol) と、それを利用したIPマルチキャストルーティングプロトコルについて述べ、第5章の「提案する新しいマルチキャストルータ・ホスト間プロトコルMGMP」において、新たグループ管理プロトコルMGMPの提案を行っている。 第3部は、「マルチキャストルーティング」についてまとめられており、第6章は「PIM-SMへのDR Electionの導入」と題し、現在、広く使われているL3のIPマルチキャストルーティングプロトコル PIM-SMで使われるDR (代表ルータ) の選択を動的に行う様に改良することで、複数経路を持つ環境においても効率的なIPマルチキャスト配信木の生成が可能となることを示している。また、第7章は、「ルータ間プロトコル」と題し、L4におけるマルチキャスト(P2Pマルチキャスト)方式において、中継ノードの離脱などに伴う再接続のオーバヘッドを抑えるためのルーティング方式(NCMR: Node Cooperation Multicast Routing)を提案し、その実装方式についてまとめている。 第4部は「課題とまとめ」であり、第8章の「結論」で本論文の成果をまとめ、第9章の「今後の課題」において、本研究に関する今後の予定や課題、展望等をまとめている。 以上これを要するに、本論文はインターネットを基盤とするグループコミュニケーションの規模と継続時間の調査から、少人数で短時間のコミュニケーションが多いことを明らかにし、従来のマルチキャスト通信方式で問題になっていたグループ管理方式に対して新たな制御手法を2つのレイヤ(L3およびL4)で提案し、その有効性についてまとめたものであり、電子工学の分野に貢献するところが少なくない。 よって本論文は博士(工学)の学位論文として合格と認められる。 | |
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