学位論文要旨



No 119040
著者(漢字) 進藤,龍一
著者(英字)
著者(カナ) シンドウ,リュウイチ
標題(和) 磁性体に於ける量子輸送現象の位相幾何学的性質
標題(洋) Topological nature of quantum transport phenomena in magnets
報告番号 119040
報告番号 甲19040
学位授与日 2004.03.25
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第5772号
研究科 工学系研究科
専攻 物理工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 永長,直人
 東京大学 教授 宮下,精二
 東京大学 教授 十倉,好紀
 東京大学 教授 宮野,健次郎
 東京大学 教授 吉澤,英樹
内容要旨 要旨を表示する

強相関電子系における磁性と量子輸送現象の問題は高温超伝導体の発見以来、物性理論の中心的研究課題として多くの研究者の注目を集めてきた。本研究では、磁性秩序相での磁気ブロッホ電子が(一般化された)波数空間でつくる位相幾何学的な構造が、その磁性体の量子輸送現象にどのような影響を与えるのかを、(1)異常ホール効果、(2)電気磁気効果、(3)交流電磁場誘起スピン流という三つの現象を具体例として調べた。

異常ホール効果

本論文では先ず最初に、代表的なフラストレーションスピン系であるNiS2-xSexなどのfcc格子での反強磁性体を対象に、その磁気秩序と電子の軌道運動の関係を、理論的に明らかにする研究を行った。NiS2-xSexでは、格子構造からくるフラストレーションの為、低温で図1のようにカイラリティーをもった非共面的反強磁性秩序を示す。この系では、(I)異常ホール抵抗が低温に向けて残留する他、(II)ネール温度より更に低温で格子が自発的に歪み、それに伴い強磁性磁化が発生することが知られている。

本研究では、図1のようなスピンカイラリティーが実空間で存在する場合、磁気ブロッホ波動関数を使って定義される仮想磁束:〓|uM〉: 磁気ブロッホ関数の周期部分が、エネルギーバンドの縮退点をその涌き出し口や吸い込み口としながら、結晶波数空間上に非自明な構造を持った流れを作りだすことが示された。更にこの波数空間上の仮想磁束の分布を通して、この系の物性が議論されている。即ち我々は、等方的なfcc格子からの一軸性歪みによる対称性の低下に伴って、(I) 上記の仮想磁束が波数空間で発生し、(キャリアドープでの)自発(ゼロ磁場)ホール効果や(母物質モット絶縁体での)巨大光カー効果が引き起こされること、又、(II) 磁気ブロッホ電子の軌道運動に伴って強磁性が発生することを理論的に説明した。

磁性体における異常ホール効果はこれまで磁性散乱体による散乱過程で、スピン軌道相互作用が働く結果として生じる現象とされてきた。それに対して本研究では、散乱体やスピン軌道相互作用が無くても、波数空間の仮想磁束によって電子がその運動の軌道を曲げながら伝導する結果として異常ホール効果が生じるという描像を提唱している。又工学的応用として、我々は、室温以上の温度で同様の反強磁性秩序を示すγ-FeMn合金では、一軸性圧力で結晶の対称性を落せば、室温で巨大な光カー回転が誘起され、磁気メモリーとしての応用上の可能性があることを指摘した。

巨大トポロジカル電気磁気効果

結晶波数kx、とkyとで張られる2次元面を考えた時、その面を貫く仮想磁束に対応する物理量が、ホール伝導度σxyであった。一方で、外場が誘電体に印加された場合、(その外場が結合する)系の内部変数と結晶波数で張られる2次元面を考えると、その面を貫く仮想磁束は、今度は、その外場によって誘電体に誘起されたブロッホ電子の空間的変位(電気分極)に対応するであろうと予想される。ところで、磁性誘電体に外場を印加して電気分極を引き起こす現象の代表的なものとして、古くから電気磁気効果が知られているが、そこでは、磁場誘起の電気分極は、印加磁場がスピン-格子結合を介して、格子を形成する陰イオンを変位させ、その結果として電気分極が発生している、と考えられてきた。

本研究では、磁場誘起電気磁気効果での磁気ブロッホ電子の電気分極への寄与を調べ、磁場によって磁性体の磁化が変化した時に引き起こされる、磁気ブロッホ電子の空間的変位(電気分極)に対して位相幾何学的な意味を見出した。即ち、磁化の変化に伴うブロッホ電子の空間的変位は、磁化の変分δψと結晶波数で張られる面上で定義されるベリーの曲率:〓として与えられる。我々は、ここに別の方向への磁化の変分δλを導入して、結晶波数とψ、λとで張られる三次元の一般化された波数空間を考え、対応して上記のベリーの曲率(スカラー量)を仮想磁束(ベクトル量):〓へ拡張した。ここで、磁化の変分を表すベクトル(0,δψ,δλ)と結晶波数軸に平行なベクトル(-2π/am, 0, 0)(但しamは磁気単位格子の格子定数)で張られる面(図2(a)の斜線部分の面)を考えると、(δψ,δλ)の磁化変分によって引き起こされる磁気ブロッホ電子の空間的変位は、この面を貫く仮想磁束の総量(∫図2(a)の斜線部分の面〓・〓)として捉えられることを我々は見出した。更にこの視点に立って巨大な電気磁気効果のメカニズムを考案し、いくつかの具体的な模型を提案した。それらは、・s軌道のみからなるタイトバインディング模型にスクリュースピン構造の平均場を導入し、一つの磁気副格子の平均場磁化を変形させることで、価電子バンドの磁気ブロッホ電子の変位を引き起こすという模型、と・5つのd軌道からなるタイトバインディング模型にキャント反強磁性構造を平均場として導入し、平均場の全磁化の変分が、on-siteのスピン軌道相互作用を通じて、ブロッホ電子の空間的変位を引き起こすという模型である。これらの模型で我々は、三次元の一般化された波数空間の中でバンドの交差する点(2重縮退点)が仮想磁束の吸い込み口あるいは涌き出し口になるという事実を積極的に活用している。すなわち、これらのモデル計算では常に、図2(b)のように吟ψ-λ平面でバンド交差点を囲むようなループを想定し、そのループに沿って系を変形していくことが考えられている。この時、ループを一周して、(ψ,λ)が再び最初の磁化の値に戻ると、途中の過程で系が上記の仮想磁束を感じながら変形した結果として、終状態では、始状態と比較して有限の電気分極をもった状態が実現される。これは、bulk内部の電子状態は元の状態に戻っているが、途中の過程で、系の一方の表面から価電子バンドの電子が徐々に引き抜かれ、反対側の表面まで押し上げられ、ちょうど蓄電したコンデンサーのような状態が、終状態として実現していることになる(量子電荷ポンピング)。一周回ることで誘起された電気分極の変化分は、e/ad-1に量子化し(eは電荷素量で、aは格子定数、dは系の次元)、従来のスピン-格子結合に基づいた電気磁気効果の微視的理論から予想される電気分極の大きさと比べると、104倍から105倍に及ぶ巨大な電気分極が発生することになる。

交流電磁場誘起スピン流

本研究では、量子ポンピングをスピンについて実現する磁性体の候補として、Cu-benzoate やYb4As3(低温相)などのS=1/2の量子スピン鎖を具体的に取り上げ、これらの系での交流電磁場誘起の量子スピンポンピングの可能性を議論した。これらの擬一次元系では、スピン鎖を構成する磁性イオンを囲む陰イオン(結晶場)が、図3の様にジグザク構造を形成しているが、十分低温までスピンに関する物性が臨界的な振るまいを示すことから、等方的な一次元ハイゼンベルグ模型で記述されることが知られている。しかし、そのジグザク構造をした結晶場の為に、鎖の伸びている方向への一サイト分の並進対称性や、最隣接サイトを入れ換えるボンドの中点中心での空間反転対称性が破れている(最隣接ボンドを入れ換えるサイト中心の空間反転対称性は破れていない)。その為、(I)gテンソルの交番成分が許される他、(II) 外部から電場を印加して空間反転対称性を完全に破ると、ボンド交替が系に引き起こされる。(I) の結果としては、外部磁場をかけることで、有効交番磁場が系にかかり、臨界的な基底状態にスピンギャップ(基底状態は反強磁性状態)が誘起される。また (II) の結果としては、外部電場によってスピンギャップ(基底状態はダイマー状態)が誘起されることになる。

そこで、本研究では、この電磁場で張られる2次元のパラメータ空間で図4の様に臨界的な基底状態 (E=H=0) を囲うようなループを考えて、そのループに沿って系を一周させる過程で、μB/ad-1(但しμBはボーア磁子)に量子化したスピン流が系に流れることを示した(交流電磁場誘起スピン流)。これは、始状態と比べて、系の一方の端からもう一方の端ヘスピンが引き上げられた状態が終状態として実現していることを示すもので、いわば天然のスピンコンデンサーである。

具体的には、臨界的な基底状態を記述する量子サインゴルドン模型における位相演算子θ+がスピンの空間的分極を表す物理量であることに着目した議論が為されている。そこでは、有効交番磁場 (hs=εcos2πt/T〜H) やボンド交替 (Δ=εsin2πt/T〜E) がrelevantな内部変数になっており、臨界的な基底状態(θ+が不確定な状態)にこれらの内部変数が導入されると、この位相演算子がhssinθ++Δcosθ+=εsin(θ++2πt/T) という形の周期ポテンシャルの鞍点に固定されることになる。その為、ループに沿って系を変形すると、この周期ポテンシャルが図5のように並進移動するため、ループを一周すると、θ+の基底状態での期待値が2πだけ減る(逆向きにループを一周すれば2πだけ増える)ことになる。これは、ループを一周する過程でμB/ad-1に量子化したスピン流が系に流れることを表しており、位相演算子θ+が変形の過程 (0≦t≦T) で常にεsin(θ++2πt/T)の周期ポテンシャルによって固定されていれば、系を流れるスピン流の総量は、この量子化からずれない(トポロジカルな安定性)。このサインゴルドン模型を使った量子臨界点近傍での量子ポンピングの理論は、前述の一般化された波数空間での仮想磁束を使った量子ポンピングの理論の、ボゾン演算子を使った記述法であり、多体効果や disorder がある場合への自然な拡張を与えるものである。

本論文では、磁気ブロッホ電子が波数空間でつくる位相幾何学的構造が、磁性体の量子輸送現象でどのような役割を担うかを、以上三つの現象を題材にして議論した。そこでは先ず、二つの結晶波数軸で張られる面を貫く仮想磁束が、異常ホール効果として現れることを、fcc格子で非共面的反強磁性秩序をもった系で議論した。更にこの波数空間に系の磁化という新たなパラメータを付け加えることで、磁化の変分と結晶波数で張られる面を貫く仮想磁束が今度は、その磁化の変化によって引き起こされる電気分極(電気磁気効果)として物理現象に現れることを見出した。本論文では又、磁性体中の量子輸送特性が持つこのような位相幾何学的な性質を活かして、巨大トポロジカル電気磁気効果や量子スピン鎖での交流電磁場誘起スピン流といった新奇な物理現象が提唱された。それらは、図2(c)のように、バンド交差点(量子臨界点)を囲むようにして、バンド絶縁体相(スピンギャップ相)の中を断熱的に系が変形していくと、一般化された波数空間の中の仮想磁束を系が感じて、終状態として、bulkの一方の端からもう一方の端へ電荷(スピン)が引き上げられた状態が実現するという画期的な物理現象である。

fcc格子上での、カイラリティーを有した非共面的反強磁性スピン構造。(A) の図の 4-out state に於いて、ある磁気副格子のスピンと別の磁気副格子のスピンを入れ換えると、それは常に (B) の図で表される 4-in state と等価になる。一般に奇数回の置換操作では 4-out state と 4-in state は入れ替わることが分かる。

(a) 結晶波数軸に平行なベクトル(-2π/am,0,0)(赤線)と磁化の変分ベクトルに対応したベクトル(0,δψ,δλ)(青線)の張る斜線部分の面を図中のように考えると、この面を貫く仮想磁束(斜線の矢印)の総量が、(δψ,δλ) の磁化変分によって引き起こされた電気分極になる。(b)ψ-λの二次元平面で、系をループΓcycに沿って断熱的に変形させることを考える。但し Γcyc×[-π/am,π/am] の円柱の内側にバンド交差点 (band crossing point) が含まれる。(c) 斜線部分はバンドギャップ(スピンギャップ)が開いている領域を表し、×印がバンド交差点(量子臨界点)を表す。

Cu-benzoate の結晶構造:黒い球で表されているCu2+サイトのS=1/2スピンが、量子スピン鎖を形成している。そのまわりで八面体を構成しているのが、Cuサイトに結晶場をもたらす陰イオンで、八面体の向いている方向が隣り合うCuサイトで異なる(ジグザク構造)。

印加電場 (E) と印加磁場 (H) で張られる相図。原点の量子臨界点を囲むようにしてスピンギャップ相の中を一周するループをΓcycと表す。このループに沿って電磁場を印加すると、系の内部変数である、有効交番磁場 (hs〜H) とボンド交替 (Δ〜E) が (hs,Δ)=ε(cos2πt/T, sin2πt/T) と変化すると仮定する。ここで、TはΓcycを一周する間の時間とした。

量子臨界点のまわりをΓcycに沿って一周した時の、位相演算子θ+を固定する周期ポテンシャルの動き方。斜線の丸は、θ+の基底状態での期待値が、ポテンシャルのどの谷で固定されているかを表している。

審査要旨 要旨を表示する

高温超伝導体やマンガン酸化物の巨大磁気抵抗の発見以来、磁性と電気伝導、誘電性の関連に注目が集まっている。磁気的性質と、電気的性質の相関はこれらの物質群に限らず普遍的に存在しているものであるが、ランダウに始まる現象論はあるものの、その微視的理論による理解は驚く程進んでいないのが実情である。本研究では、磁性体におけるブロッホ電子のベリー位相という概念に着目し、その波数空間における位相幾何学的な構造を明らかにするとともに、それが物性にどのように現れるかを系統的に調べた仕事である。

本論文は5章と付録からなる。

第1章では、導入として、ホール効果、強磁性体における異常ホール効果、磁気電気効果など、本研究がターゲットとする物理現象の概略と過去の仕事がまとめられた後、固体中のブロッホ電子のベリー位相、ファイバー束などの基礎概念が記述されている。

第2章では、代表的なフラストレーションスピン系であるNiS2-xSexなどのfcc格子上の反強磁性体における磁気秩序と電子の軌道運動の研究が述べられている。NiS2-xSexでは、格子構造からくるフラストレーションの為、低温で非共面的反強磁性秩序を示し、いわゆるスピンカイラリティーを持つ。この系では、(I)異常ホール抵抗が低温に向けて残留する他、(II)ネール温度より更に低温で格子が自発的に歪み、それに伴い強磁性磁化が発生することが知られている。本章では、スピンカイラリティーが実空間で存在する場合、磁気ブロッホ波動関数を使って定義される仮想磁束:|uM〉: 磁気ブロッホ関数の周期部分が、エネルギーバンドの縮退点をその涌き出し口や吸い込み口(磁気単極子)としながら、結晶波数空間上に非自明な構造を持った流れを作りだすことが示されている。更にこの波数空間上の仮想磁束の分布を通して、この系の物性が議論されている。等方的なfcc格子からの一軸性歪みによる対称性の低下に伴って、(I)上記の仮想磁束が波数空間で発生し、(キャリアドープでの)自発(ゼロ磁場)ホール効果や母物質モット絶縁体での巨大光カー効果が引き起こされること、又、(II)磁気ブロッホ電子の軌道強磁性が発生することが結論されている。又工学的応用として、室温以上で同様の反強磁性秩序を示すγ-FeMn合金における、一軸性圧力による巨大な光カー回転の提案がなされている。

第3章では、巨大なトポロジカル電気磁気効果に関する研究が述べられている。スピンの構造に依存した磁気ブロッホ電子の電気分極への寄与を調べ、その位相幾何学的な構造を検討することで電気磁気効果を巨大にする可能性、およびサイクリックな磁場変調による電荷ポンピングの可能性について論じている。磁化の変化に伴うブロッホ電子の空間的変位は、磁化の変分δψと結晶波数で張られる面上で定義されるベリーの曲率により表現される。この視点に立って巨大な電気磁気効果のメカニズムを考案し、いくつかの具体的な模型を提案した。それらは、・s軌道のみからなるタイトバインディング模型にスクリュースピン構造の平均場を導入し、一つの磁気副格子の平均場磁化を変形させることで、価電子バンドの磁気ブロッホ電子の変位を引き起こすという模型、と・5つのd軌道からなるタイトバインディング模型にキャント反強磁性構造を平均場として導入し、平均場の全磁化の変分が、on-siteのスピン軌道相互作用を通じて、ブロッホ電子の空間的変位を引き起こすという模型である。これらの模型で我々は、三次元の一般化された波数空間の中でバンドの交差する点(2重縮退点)が仮想磁束の吸い込み口あるいは涌き出し口になるという事実を積極的に活用している。これを用いると、従来のスピン-格子結合に基づいた電気磁気効果の微視的理論から予想される電気分極の大きさと比べると、104倍から105倍に及ぶ巨大な電気分極が発生することが提案されている。

第4章では、交流電磁場により誘起されるスピン流に関する研究が述べられている。磁性体Cu-benzoateやYb4As3(低温相)などのS=1/2の量子スピン鎖を具体的に取り上げ、これらの系での交流電磁場誘起の量子スピンポンピングの可能性を議論した。これらの擬一次元系では、スピン鎖を構成する磁性イオンを囲む陰イオン(結晶場)が、ジグザク構造を形成しているが、十分低温までスピンに関する物性が臨界的な振るまいを示すことから、等方的な一次元ハイゼンベルグ模型で記述されることが知られている。しかし、そのジグザク構造をした結晶場の為に、(I)gテンソルの交番成分が許される他、(II)外部から電場を印加して空間反転対称性を完全に破ると、ボンド交替が系に引き起こされる。(I)の結果としては・外部磁場をかけることで、有効交番磁場が系にかかり、臨界的な基底状態にスピンギャップ(基底状態は反強磁性状態)が誘起される。また(II)の結果としては、外部電場によってスピンギャップ(基底状態はダイマー状態)が誘起されることになる。この電磁場で張られる2次元のパラメータ空間で臨界的な基底状態 (E=H=0) を囲うようなループに沿って系を一周させる過程で、μB/ad-1(但しμBはボーア磁子)に量子化したスピン流が系に流れることを解析的および数値的に示した(交流電磁場誘起スピン流)。付録では、本論文を理解するために有用な補足として、異常ホール効果に対する近藤理論(1)、論文中に現れる行列要素の計算(2、3、4)、サインゴルドン理論の詳細(5)、が述べられている。

以上をまとめると、本論文は、磁性体における磁気ブロッホ電子が波数空間でつくる位相幾何学的構造を明らかにし、その量子輸送現象、電気磁気効果、スピン輸送における役割を論じた。これらは、従来現象論的理解に留まっていた磁性と電気的性質の相関に対して、微視的理解をする上で重要な一歩であり、関連した諸効果を巨大化させるための指針を与えるものである。よって、今後の物性物理学、物理工学に寄与するところ大であると判断し、本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認める。

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