No | 119153 | |
著者(漢字) | 呉,宰憲 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | オ,ゼ ホン | |
標題(和) | 森林作業時の車両系林業機械の動的解析と乗り心地評価 | |
標題(洋) | Dynamic analysis of forestry machines and their ride quality assessment for the forest operations | |
報告番号 | 119153 | |
報告番号 | 甲19153 | |
学位授与日 | 2004.03.25 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(農学) | |
学位記番号 | 博農第2704号 | |
研究科 | 農学生命科学研究科 | |
専攻 | 森林科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文は、車両系小型林業機械を使った集材作業によって引き起こされる乗車振動について論じたものである。現在の森林作業は大型高性能林業機械による場合が多いが、低コスト化や環境保全の観点からは、低規格作業道による小型林業機械を用いた作業システムが有利になる場合もある。しかし、現在森林で使用される大部分の小型林業機械は、機械の構造的特性と作業道の路面特性のため、走行時に大きな振動が発生する。また、この全身振動はオペレータに不快感を与え、障害を発生させる原因として考えられる。 従って、小型車両系林業機械の乗車作業時の振動の解析は作業の快適性を維持するため、また、操作性を向上させ作業能率を高めるため、さらに作業の安全性を高めると共に強い振動による人的障害を防ぐためにも必要である。 本研究は、小型林業機械の乗車振動を低減させるために、オペレータの全身振動の評価方法、低規格作業道の路面特性と小型林業機械の振動特性などを考慮した2次元動的モデルを開発し、オペレータに与える振動を予測したものである。また、予測した振動レベルを実際の路面走行実験と小型林業機械の座席振動実験を通じて比較し、モデルの有効性を確認した。 得られた結果は以下のとおりである。 林業機械の乗車振動の評価方法 林業機械の全身振動問題を評価するためには,乘車限界作業速度を決定することが有用である。その評価法には,VDI 2057, ISO 2631, BS 6841などの振動暴露の評価基準がよく使用されているが,不整地を走行する林業機械に関する研究は少ない。様々な基準について検討した結果、6Wレベルの吸收動力基準が全身振動に対するオペレータの乗車感をそのまま表現することが出来るため,不整地を走行する林業用車両の乘車限界速度の決定に有用であると判断された. 吸收動力基準は,他のスタンダ−ドと共に林業機械の乘車感評価において、有効な基準になると考えられた。 低規格作業道の路面特性 車両系林業機械の乗り心地解析と動的特性を予測するために、林道、作業道、林内の路面ラフネスを測定分析した。伝達関数特性が究明された第五輪とそこで設置した加速度の信号を測定分析して、 低規格作業道の路面のPSD(power spectral density)関数を求めた。測定した路面のPSD関数はISO8608の路面区分基準と比較した結果、ISOの路面区分クラスの中で 低規格作業道の路面はC-クラスからEクラスまでの領域であった。また、PSD 関数の近似式を求めて、この近似式から路面特性の指標になるラフネス係数を求めて、 低規格作業道の様々な路面を比較した。その結果、測定した路面別にPSD 関数の差異が認められた。車両系林業機械の振動特性の解析は、様々な路面条件でシミュレーションする必要があるので、ISO8608の基準によって路面のプロフィ-ルを生成できるプログラムを開発した。従って、ここで提案した路面ラフネスの測定と分析方法は、車両系林業機械の振動特性の動的シミュレーションにおいて、路面の特性を予測または区分するために有効であった。 小型林業機械の動的モデル開発とシミュレーション 小型林業機械の座席振動を予測と基本振動特性を究明するために図1のように履帯式小型林業機械と車輪式小型林業機械の動的モデルを提案し、実験を通じて究明されたパラメタを用いて、本モデルにおける状態方程式を導いた。また、この方程式を用いて、人工の半サインの凹凸路面を走行するシミュレーションを行い、座席の位置、車輪距離による機体振動と座席振動の大小について比較検討した。車輪式小型林業機械については後輪ボギー軸の作動の有無による 機体振動と座席振動の大小についても比較検討した。その結果ボギー軸が作動することにとって約13%の振動低減効果があることが分かった。さらに、機体のピッチング角加速度、機体中心の上下加速度について、理論解析によるシミュレーション結果と実験結果との比較を行い、シミュレーションの妥当性を検討した結果、高い再現性が確認される共にパラメータによって車両機構の検討を効率的に行うことができた。これらの開発した一連のソフトウェアは、小型林業機械の振動低減のための構造設計支援ソフトとして有用であった。 小型林業機械の乗車振動における乗り心地評価 ここでは低規格林道を走行する履帯式小型林内作業車と車輪式小型林内作業車の乗車振動と乗車感について検討した。四種類の低規格林道に対し乗車振動を測定分析した。その結果,小型林内作業車の乗車感に一番大きな影響を与える振動成分は、座席のY軸であった。 座席振動レベルの評価においては,ISO2631の健康限界注意領域を基準として評価した結果,履帯式型小型林内作業車のオペレータが一日に継続的に30分以上運転すると潜在的な健康危険があることが示された。また、林業用車両の座席のHz基本振動伝達特性と人体各部位の振動伝達特性を究明することにより、その振動低減化のための合理的設計指針を得ることを目的として4機種の車両系林業機械の座席を供試した。この四種類の座席を室内て3軸6自由度振動試験装置を利用し、車両系林業機械の座席を0から50Hzまで加振して、その時の人体の加速度を測定し人体の振動応答特性を分析した。その結果、振動伝達の度合は座席の種類によって減衰特性の差異がみられた。また、人体各部位の共振周波数は3-10Hzの低周波数域に見られた。従って、振動の伝達面から 林業用車両の座席の防振を考える時、共振点のある低周波数成分をできる限り小さくすると同時にエンジンの振動なども十分に考慮する必要がある。 以上、本研究で検討した小型林業機械の座席振動の低減のための動的特性解析は実用的にも適用可能なものと考えられ、効率的な低規格林道集材作業やオペレータの安全作業の確保及び労働負担の軽減に役立つ物と考えられる。 小型林業機械の2次元の動的モデル(a) 履帯式小型林業機械(b)車輪式小型林業機械 | |
審査要旨 | 本論文は、車両系小型林業機械を使った集材作業によって引き起こされる乗車振動について論じたものである。現在の森林作業は大型高性能林業機械による場合が多いが、低コスト化や環境保全の観点からは、低規格作業道による小型林業機械を用いた作業システムが有利になる場合もある。しかし、現在森林で使用される大部分の小型林業機械は、機械の構造的特性と作業道の路面特性のため、走行時に大きな振動が発生する。また、この全身振動はオペレータに不快感を与え、障害を発生させる原因として考えられる。従って、小型車両系林業機械の乗車作業時の振動解析は、作業の快適性を維持するため、また操作性を向上させ作業能率を高めるため、さらに作業の安全性を高めると共に強い振動による人的障害を防ぐためにも必要である。 本論文は、小型林業機械の乗車振動を低減させるために、オペレータの全身振動の評価方法、低規格作業道の路面特性と小型林業機械の振動特性などを考慮した2次元動的モデルを開発し、オペレータに与える振動を予測したものである。また、予測した振動レベルを実際の路面走行実験と小型林業機械の座席振動実験を通じて比較し、モデルの有効性を確認した。得られた結果は以下のとおりである。 林業機械の乗車振動の評価方法、林業機械の全身振動問題を評価するためには、乗車限界作業速度を決定することが有用である。その評価法には,様々な基準について検討した結果、6Wレベルの吸収動力基準が全身振動に対するオペレータの乗車感をそのまま表現することが出来るため,不整地を走行する林業用車両の乘車限界速度の決定に有用であると判断された. 低規格作業道の路面特性、車両系林業機械の乗り心地解析と動的特性を予測するために、林道、作業道、林内の路面ラフネスを測定分析した。伝達関数特性が究明された第五輪とそこで設置した加速度の信号を測定分析して、低規格作業道の路面のPSD(power spectral density)関数を求めた。ISOの路面区分クラスの中で低規格作業道の路面はC-クラスからEクラスまでの領域であった。 小型林業機械の動的モデル開発とシミュレーション、 小型林業機械の座席振動を予測と基本振動特性を究明するために、履帯式小型林業機械と車輪式小型林業機械の動的モデルを提案し、実験を通じて究明されたパラメータを用いて、本モデルにおける状態方程式を導いた。また、この方程式を用いて、凹凸路面を走行するシミュレーションを行い、座席の位置、車輪距離による機体振動と座席振動の大小について比較検討した。車輪式小型林業機械については後輪ボギー軸の作動の有無によって約13%の振動低減効果があることが分かった。これらの開発した一連のソフトウェアは、小型林業機械の振動低減のための構造設計支援ソフトとして有用であった。 小型林業機械の乗車振動における乗り心地評価、低規格林道を走行する履帯式小型林内作業車と車輪式小型林内作業車の乗車振動と乗車感について検討した。四種類の低規格林道に対し乗車振動を測定分析したが、小型林内作業車の乗車感に一番大きな影響を与える振動成分は、座席のY軸であった。 座席振動レベルの評価においては,ISO2631の健康限界注意領域を基準として評価した結果,履帯式型小型林内作業車のオペレータが一日に継続的に30分以上運転すると潜在的な健康危険があることが示された。四種類の座席を室内て3軸6自由度振動試験装置を利用し、車両系林業機械の座席を0から50Hzまで加振して、人体の振動応答特性を分析し、振動伝達の度合は座席の種類によって減衰特性の差異がみられ、人体各部位の共振周波数は3-10Hzの低周波数域に見られた。 以上、本論文で検討した小型林業機械の座席振動低減のための動的特性解析は、実用的にも適用可能なものと考えられ、効率的な低規格林道集材作業やオペレータの安全作業の確保及び労働負担の軽減に役立つものと考えられ、学術上応用上貢献することが少なくない。よって審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた. | |
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