No | 119284 | |
著者(漢字) | 齊藤,元章 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | サイトウ,モトアキ | |
標題(和) | Processing Server 技術による画像閲覧のための Interactive Streaming 画像配信システムについて | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 119284 | |
報告番号 | 甲19284 | |
学位授与日 | 2004.03.25 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第2258号 | |
研究科 | 医学系研究科 | |
専攻 | 生体物理医学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 研究の背景 近年の画像取得モダリティの進歩は、より多くの情報をより短時間に取得する方向にある。特に多列検出器型CT装置の出現は、患者の体動の影響を抑えた時間分解能の高い画像データを短時間で広範囲に渡り収集することを可能とした。また、MRI装置においても、新たな高速撮影シークエンスの開発により、信号・雑音比が高く、高解像度な画像を短時間に取得可能とした。このため、必然的に一検査当たりの情報量は多くなり、同時に一日の検査量も増加し、放射線科診断医及び検査依頼医に届けられる画像情報量は、爆発的な増加傾向にある。 このような膨大な画像情報を取り扱う環境下において「医用デジタル画像と通信」に関する世界的標準規格であるDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格により、モダリティ、画像データ保管サーバ及び画像閲覧端末をネットワークで繋ぐフィルムレス画像閲覧環境が大・中病院施設において整備され始めている。このフィルムレス画像閲覧環境において、ネットワークを介した画像データ送受信が可能となり、画像閲覧端末における画像閲覧が実現されたが、モダリティより取得される画像データは膨大な量であるため、院内全ての画像閲覧端末への画像データ送信は、院内ネットワークに多大な負荷をかけてしまい、ネットワークを介した他の業務へ支障を来たす可能性がある。また、画像閲覧端末はハードディスクに大量の画像データを常時保持しなければならず、相当に高速な処理能力も要求される。画像データは患者情報そのものであるため、各画像閲覧端末へ送信された場合、患者情報が複数存在してしまうため、患者情報が散逸したり、変更されてしまう危険性がある。このような問題のため、画像データ送信は放射線科部門内と院内の一部のみ画像閲覧端末のみに行われるという制限された画像閲覧環境が構築されていることが多い。また、最新の断層系モダリティであるCT、MRI、PET(Positron Emission Tomography)は、体軸方向への空間分解能高い画像データを取得することが可能であり、この収集された画像データを立体データとして取り扱うことが可能であるが、全ての画像閲覧端末にMPR(Multi Planar Reformation)画像、MIP(Maximum Intensity Projection)画像、Volume Rendering画像等の臨床的に有用な3次元画像再構成機能が付随していることはなく、多くの画像閲覧端末においてはモダリティにより取得された画像データをそのまま2次元画像表示していることが一般的である。 画像データ保管サーバに3次元画像再構成機能が付随されると、全科的な2次元画像及び3次元画像配信が可能となり、モダリティにより取得された画像データを十分に活用できるだけでなく、院内の全ての画像閲覧端末において合同画像カンファレンスやインターネットを介した病院施設間の遠隔画像診断システムの構築が可能であると考えられる。本研究では、モダリティより取得された画像データを院内の全ての画像閲覧端末において十分に活用可能な画像閲覧環境を構築し、画像診断等の画像データを取り扱う臨床業務に役立てるため、取得された画像データを読み込み、画像表示に関する全てのパラメータをインタラクティブに変更し、その結果画像をリアルタイムに画像閲覧端末に配信するインタラクティブストリーミングサーバという装置を開発し、この装置を用いてインタラクティブストリーミング画像配信に関する検討を行った。 対象と方法 本研究のために新しく開発されたアプリケーションは、大きく二つに分けられる。一つは、インタラクティブストリーミングサーバに実装されるアプリケーションで、DICOM規格に準拠したモダリティや他の画像データ保管サーバとのデータ送受信を行うサーバ機能と、画像閲覧端末からのインタラクティブな命令を受け即時に画像再構成を行い、その端末へ画像配信する機能を特徴とする。もう一つは、画像閲覧端末に実装されるアプリケーションで、インタラクティブストリーミングサーバに命令を送信し、それに対応して配信される画像を表示するものである。この二つのアプリケーションにより、モダリティより取得された3次元画像データをインタラクティブストリーミングサーバで読み込み、画像閲覧端末より画像表示に関連するパラメータをインタラクティブに変更しながら、画像閲覧端末に瞬時に処理され、配信された結果画像を閲覧することが可能となる設計とした。具体的には、2次元画像、MPR画像表示及びMIP画像表示に必要なWW、WL、拡大率、画像中心位置、面角度変更、そしてVolume Rendering画像表示に必要な閾値、不透明度、色、拡大率、画像中心位置、観察角度変更、カット処理などの画像表示に関連するパラメータは、インタラクティブに変更できるような設計を行った。また、互いに直交する3個のMPR画像と1つのVolume Rendering画像等の3次元画像を、画面内に同時に表示し、さらに二つのMPR画像と直交するMPR画像上に表示される2本の交線の交点と3次元画像を表示している画面の中心を一致させながら、同時に4枚の画像を表示する表示系アプリケーションも同時に開発し、オリエンテーションがつきやすく、画像診断しやすいレイアウトにした。 複数の画像データ表示に関して、MDCTより取得された複数の位相を持つ心臓や肝臓等の動的3次元画像データにおいては位相を変更しながら動的画像表示を可能とし、同種、他種モダリティを問わず複数の画像データを同時に4個まで画像再構成し、同時に画像配信とし、比較参照を行える設計とした。また、同時画像表示において、PET等の機能的画像とCT、MRI等の形態的画像を融合した画像を表示可能とするアプリケーションを開発した。 1台のインタラクティブストリーミングサーバに複数の画像閲覧端末からの接続を可能とし、さらに1台の画像閲覧端末から複数のインタラクティブストリーミングサーバへの接続を可能とする設計として、大規模な画像閲覧環境にも対応可能とした。この機能を拡張することにより、カンファレンスシステム及び遠隔画像診断システムにも対応可能になるような設計とした。 以上のアプリケーションを用いて、インタラクティブストリーミング画像配信に関する検討を行い、またその将来性についても一部検討した。 結果 検証用デジタルデータを用いたインタラクティブストリーミング画像配信の基礎的検討では、インタラクティブストリーミング配信された画像と画像処理専用ワークステーションで処理された画像は、精度及び画質という点において、同等であった。 臨床画像データを用いたインタラクティブストリーミング画像配信の基礎的検討では、画像配信速度は、臨床使用に十分に耐えうる速度であり、また、通常の画像処理専用ワークステーションと比較して、画像処理に要する時間は短縮されていた。画像表示に関するパラメータ変更をした場合にも、随時画像が配信された。ひとつの画像データより複数の画像を再構成し、その複数の画像を関連付けながら表示して、同時に画像配信表示が可能であった。また、4つまでの画像データを読み込み、16枚の画像を関連付けながら画像配信表示が可能であった。 複数のインタラクティブストリーミングサーバ及び複数の画像閲覧端末を用いたインタラクティブストリーミング同時画像配信に関する検討では、複数の画像閲覧端末及び複数のインタラクティブストリーミングサーバにおいて、相互的にアクセス可能というSPAN(Storage and Processor Area Network)を構築し、大規模施設における院内画像配信の実現の可能性が示唆された。また、遠隔画像配信が可能であることも示唆された。 CT再構成の機能を統合し、生データの圧縮保存機能を持った、インタラクティブストリーミングサーバの将来の可能性が示唆された。 まとめ モダリティより取得された膨大な画像データを、院内のネットワークにできるだけ負荷を与えずに十分に活用するため、画像データ保管サーバに3次元画像再構成機能と処理された画像を配信する機能を付加したインタラクティブストリーミングサーバを開発した。この装置により画像再構成され、配信された画像は、画像処理専用のワークステーションで処理された画像と同等精度と画質を持つことが示唆され、十分に臨床現場における使用ができると考えられた。また、処理性能が十分にあることから、インタラクティブな画像処理が可能で、院内ネットワーク上にある全ての画像閲覧端末において、画像処理専用ワークステーションと同等の画像観察が可能であることが示唆された。ひとつの3次元画像データより再構成される複数の画像を関連付けて表示することも可能であり、配信される画像枚数は最大20枚まで同時可能であった。また、同時に4個までの3次元画像データを読み込み、12個のMPR画像と4個のVolume Rendering等の3次元画像を配信することが可能であり、これらの画像データを1つの座標系に合わせ込みことにより、16枚全ての画像を同期させ表示されることが可能であった。一台のインタラクティブストリーミングサーバには、合計8台までの画像閲覧端末を接続し、同時にインタラクティブ画像配信をすることが可能であるが、複数台のインタラクティブストリーミングサーバを使用することにより、さらに多くの画像閲覧端末を接続可能であることが示唆された。2台のインタラクティブストリーミングサーバと2台の画像閲覧端末をインターネットに接続した場合、画像配信が可能であり、病院間における遠隔画像配信システムの構築が可能であることが予想された。インタラクティブストリーミングサーバより、同一の画像を複数の画像閲覧端末に配信する機能を追加することにより、院内画像カンファレンスシステムが構築可能であることが予想された。将来、インタラクティブにCT再構成処理を行う機能も統合出来る可能性を有するなど、インタラクティブストリーミングサーバを用いた画像配信システムは、有用な画像表示システムであることが本研究より示唆された。 | |
審査要旨 | 本研究は、モダリティより取得された膨大な画像データを院内のネットワークにできるだけ負荷を与えずに十分に活用するため、画像データ保管サーバに3次元画像再構成機能と処理された画像を配信する機能を付加したインタラクティブストリーミングサーバの開発の試みと、その臨床的有用性を検討したものであり、下記の結果を得ている。 検証用デジタルデータを用いたインタラクティブストリーミング画像配信の基礎的検討では、インタラクティブストリーミング配信された画像と画像処理専用ワークステーションで処理された画像は、精度及び画質という点において、同等であった。 臨床画像データを用いたインタラクティブストリーミング画像配信の基礎的検討では、画像配信速度は、臨床使用に十分に耐えうる速度であり、また、通常の画像処理専用ワークステーションと比較して、画像処理に要する時間は短縮されていた。画像表示に関するパラメータ変更をした場合にも、随時画像が配信された。ひとつの画像データより複数の画像を再構成し、その複数の画像を関連付けながら表示して、同時に画像配信表示が可能であった。また、4つまでの画像データを読み込み、16枚の画像を関連付けながら画像配信表示が可能であった。 複数のインタラクティブストリーミングサーバ及び複数の画像閲覧端末を用いたインタラクティブストリーミング同時画像配信に関する検討では、複数の画像閲覧端末及び複数のインタラクティブストリーミングサーバにおいて、相互的にアクセス可能というSPAN(Storage and Processor Area Network)を構築し、大規模施設における院内画像配信の実現の可能性が示唆された。また、遠隔画像配信が可能であることも示唆された。 CT再構成の機能を統合し、生データの圧縮保存機能を持った、インタラクティブストリーミングサーバの将来の可能性が示唆された。 以上、本論文は開発されたインタラクティブストリーミングサーバについて、画像再構成され配信された画像が、既存の画像処理専用のワークステーションで処理された画像と同等精度と画質を持ち、院内ネットワーク上にある全ての画像閲覧端末において、画像処理専用ワークステーションと同等のインタラクティビティで画像観察が可能である有用な画像表示システムであることを明らかにした。本研究は、扱うデータ量が増大し続ける医療画像情報システムと、画像診断に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 | |
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