学位論文要旨



No 119288
著者(漢字) 國松,聡
著者(英字)
著者(カナ) クニマツ,アキラ
標題(和) 三次元画像解析を用いた血管形状の計測による内頚動脈狭窄の評価に関する研究
標題(洋)
報告番号 119288
報告番号 甲19288
学位授与日 2004.03.25
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第2262号
研究科 医学系研究科
専攻 生体物理医学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 安藤,譲二
 東京大学 助教授 青木,茂樹
 東京大学 助教授 小野木,雄三
 東京大学 助教授 伊良皆,啓治
 東京大学 助教授 宮田,哲郎
内容要旨 要旨を表示する

背景・目的

頚部内頚動脈狭窄症は、虚血性脳血管障害のリスクを高めることが知られている。過去において行われた大規模なランダム化比較試験の結果では、高度狭窄症例に対する外科的治療の有効性が示されており、狭窄率の正確な計測が必然的に重要である。これらの研究では狭窄計測に血管造影検査が使用されたため、超音波検査、computed tomography(CT)angiography、magnetic resonance(MR)angiographyなどの他の検査方法を用いて血管造影検査と比較した研究が数多くなされてきた。これらの検査法には、それぞれに利点や限界があるが、侵襲性がより低く、正確性の高い検査法が選択されることが望ましい。この中では、近年開発されたマルチスライスCTを用いたCT angiography(CTA)では、高い空間分解能および時間分解能を有し、血管造影検査に匹敵する空間分解能でありながら、より侵襲性が低く、また血管以外の組織情報も得られる、有力な検査方法である。

このような検査機器の発達に伴って、CTやMRIなどで得られる三次元画像データの画像処理技術も著しい発展を遂げてきている。血管中心軸抽出による血管軸直行断面表示法もそのひとつである。従来の画像検査法の血管断面像は必ずしも血管軸に対して垂直という保証がなかったが、本法を用いることにより血管軸直行断面上で血管内腔の正確な径や面積などの形状を自動計測することが可能である。また、自動計測は、人為的な計測誤差を排除し、かつ労力を軽減し、計測の再現性を高めるという利点を有する。加えて、自動計測技術を用いることにより、従来は計測の煩雑であった血管内腔面積を容易に求めることが可能となった。

本研究の目的は、上記のような血管軸直行断面上での自動計測のためのソフトウェアを開発して自動計測手法を確立すること、マルチスライスCTにおいて収集した三次元CTAデータを利用した自動計測と、従来の標準的検査法であるdigital subtraction angiography(DSA)を利用した手動計測より求めた狭窄率を比較し、前者の評価能を検討することである。

対象・方法

画像信号強度の二次微分値を与える行列の固有ベクトルを求めることにより、血管のような管状構造ではその軸の方向ベクトルを得ることができる。それにより定められる血管軸直行断面上で、領域拡張法により血管内腔およびその輪郭に相当するボクセルを抽出し、血管内腔面積、面積等価正円半径を自動計測し表示させた。アクリル製血管ファントムによる検証の後、マルチスライスCTを用いたCTAおよびDSAがともに行われた、頚部内頚動脈狭窄症19症例37血管を回顧的に検索し、それらのCTAの三次元画像データに対して血管軸直行断面上での自動計測を行った。North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial(NASCET)の方法に基づき、DSAから測定した狭窄率と、CTAデータでの自動計測により求めた狭窄率を比較した。

結果

ファントムを用いた計測では、実測により理論的に得られる値と、自動計測により得られる値とはほとんど差がなかったが、径の細いファントムでは誤差が多い傾向があった。CTAの三次元データを用いた自動計測により求めた狭窄率と、DSAにより求めた狭窄率とは中等度の一致が見られたが、自動計測手法の法が狭窄率を低めに算出する傾向が見られた。

三次元画像解析技術を利用した、血管軸直行断面上での自動計測は、再現性や客観性が高く、正確な血管内腔径、面積の計測を可能とするとともに、人為的な労力の軽減に寄与すると考えられる。高い空間分解能を有するマルチスライスCTでの三次元データを用いて、頚部内頚動脈狭窄の血管軸直行断面上での自動計測を行ったものは本論文がはじめてであり、狭窄率の正確な計測が治療方針選択のために重要な意味を持つ頚部内頚動脈狭窄症では、本手法は有望と考えられた。

しかしながら、マルチスライスCTで得られる高精細な三次元データを用いてさえ、部分容積現象、拍動や石灰化などの影響など、改善すべき課題はまだ残されており、今後の検討が必要と考えられた。

結論

三次元画像解析技術を利用した血管形状の自動計測手法を用いて、マルチスライスCTで収集した三次元CTAデータに対し、頚部内頚動脈狭窄の評価を行った。この方法は従来の標準的な狭窄の評価法であるDSAによる狭窄率評価に対して、中等度の一致を示した。狭窄評価の客観性、再現性の向上をもたらす有望な手法と考えられた。

審査要旨 要旨を表示する

本研究は、近年発展してきている三次元画像処理技法のひとつである自動計測の手法を、粥状動脈硬化性狭窄の症例に対して応用することの実施可能性を検証するため、粥状動脈硬化性内頚動脈狭窄の症例に対してマルチスライスCTで取得された高精細なCTアンギオグラフィーの三次元データを利用して、狭窄率を自動計測により客観的に評価し、従来の標準的検査法であるdigital subtraction angiographyを用いた評価との比較検討を試みたものであり、下記の結果を得ている。

画像信号値の二次微分からなるヘッセ行列を利用して、血管の中心軸ベクトルを抽出し、その中心軸に垂直な断面上で、領域拡張法を利用して血管内腔および輪郭を抽出するパーソナル・コンピューター上で作動するプログラムを作成した。アクリル製ファントムを用いた検討において、同プログラムによる自動計測は十分な正確性を持つことが示された。

粥状動脈硬化性内頚動脈狭窄の症例に対して行われた、従来の標準的な狭窄評価手法であるdigital subtraction angiographyの画像を回顧的に利用し、2名の放射線科医が独立に狭窄率を算定してその一致率を検討した。狭窄率は観察者間で優れた一致を示しており、今回計測した狭窄率が客観性において信頼に足ることが示唆された。

2と同じ症例に対して、マルチスライスCTにおいて取得された高精細なCT angiographyの三次元データを使用し、1で述べた自動計測プログラムを用いて狭窄率を算出した。自動計測による狭窄率算定は、ほとんどの症例において適応可能であることが示された。

2で求めた狭窄率をgolden standardとして、3で求めた自動計測による狭窄率を比較、検討した。両手法による狭窄率の間には中等度の一致を見ることが示された。

これらの症例のうち、外科的治療の対象となる高度の内頚動脈狭窄症例を取り出して、自動計測による高度狭窄の検出能を検討したところ、現時点の技術的制限に伴う検出能の限界が示唆され、自動計測を臨床に広く応用する際には慎重に行う必要があることが示された。

以上、本論文は三次元画像処理技法に基づく自動計測の手法を、臨床医学での画像検査から得られる粥状動脈硬化性内頚動脈狭窄症例の三次元画像データに対して応用し、その正確性および実施可能性を検討したものであり、自動計測が現時点での限界があるものの有望な手法であることを示した。本研究はこれまでほとんど報告のない内頚動脈狭窄病変に対する自動計測の臨床応用に関する知見に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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