No | 119343 | |
著者(漢字) | 吉田,志朗 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | ヨシダ,シロウ | |
標題(和) | アクチビンAと血管内皮増殖因子(VEGF)によるアフリカツメガエル胚未分化細胞からの in vitro での血管の誘導 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 119343 | |
報告番号 | 甲19343 | |
学位授与日 | 2004.03.25 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第2317号 | |
研究科 | 医学系研究科 | |
専攻 | 生殖・発達・加齢医学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 受精卵は卵割を繰り返し、桑実胚、胞胚、原腸胚、神経胚の時期を経て幼生(胎仔、胎児)へと発育する。桑実胚期において、卵黄を豊富に含む側を植物極、その対側を動物極と呼ぶ。植物極は内胚葉に、動物極は外胚葉に分化するが、この時期の胚細胞は未だ多分化能を有しており、分化の方向性が完全には決定されていない。桑実胚期に植物極側から動物極側に向かい、中胚葉誘導因子が分泌され、胚の中間層に中胚葉予定領域が形成される。血管はその初期発生において、中胚葉に由来する組織である。中胚葉より血球血管芽細胞が分化し、さらにそれは血球系前駆細胞と血管内皮前駆細胞に分化し、両者が血島を形成する。これら血島は互いに連結し、原始的な血管網を形成する。この過程はvasculogenesisと呼ばれるが、その詳細は明らかではない。今回私は、アフリカツメガエル胞胚期卵より摘出した外胚葉予定領域に、中胚葉誘導作用を有するアクチビンA、及び血管内皮誘導因子であるVEGFを作用させ、2日間ないし3日間培養する系を設定し、抗Flk-1抗体を用いた組織免疫学的方法及びin situ hybridization法により血管形成の有無を検討した。この結果、アクチビンA1〜10ng/mlによる中胚葉誘導を行った後、VEGF1〜10ng/mlを作用させる条件で培養した場合、内皮細胞により構成される管腔構造を有する血管が誘導されることが示された。また、上記培養系を用いて、初期発生において背側大動脈の位置決定に重要な役割を果たす脊索が、アクチビンA単独作用時よりも、アクチビンA処理後VEGFを作用させた方が、アクチビンA低濃度の条件で効率よく誘導されることも示され、VEGFを介した脊索に対するフィードバック機構の存在が示唆された。 | |
審査要旨 | 本研究は初期胚における血管形成(vasculogenesis)に必要な条件を明らかにするため、アフリカツメガエル胚胞胚期における外胚葉予定領域を摘出し、中胚葉誘導因子であるアクチビンAと血管内皮増殖因子VEGFを作用させ培養する系にて、血管の誘導の有無及び血管の誘導に関与する組織の形成について、免疫組織化学的手法及びin situ hybridization法により検討したものであり、下記の結果を得ている。 内皮細胞の最も早期のマーカーであるFlk-1を用いた組織免疫染色において、外胚葉予定領域をアクチビンA1〜10ng/mlで2時間処理した後、VEGF 1〜10ng/mlで2日間ないし3日間培養した場合、内皮細胞による管腔構造を形成する血管が誘導されることが示された。VEGFで処理した後アクチビンAを作用させ培養した場合、血管は誘導されなかったことから、血管形成においてVEGFが血管内皮増殖作用を示すためには、中胚葉誘導が既に行われていることが必須であることが示された。外胚葉予定領域をアクチビンA10ng/mlで2時間処理した後、VEGF 10ng/mlで2日間培養したものに、抗Flk-1抗体を用いてwhole mount in situ hybridizationを行ったところ、網目様構造を伴う血管が密に形成されていることが示された。 内皮細胞のマーカーであるTie-2、EphB4及びPECAMを用いた組織免疫染色において、外胚葉予定領域をアクチビンA 10ng/mlで2時間処理した後、VEGF 10ng/mlで2日間培養する条件では、血管形成及び血管新生(angiogenesis)の段階までは誘導されるものの、動静脈の分化までは誘導されないことが示された。 外胚葉予定領域をアクチビンA 10ng/mlで2時間処理した後、VEGF 10ng/mlで3日間培養した場合、アクチビンA単独で3日間培養した場合よりもよりアクチビンA低濃度の条件で脊索の形成率が増加することが示された。脊索が、VEGFを産生し内皮細胞を自らの近傍に遊走させることで背側大動脈の位置を規定する後索を誘導することは既知であったが、本培養系において、脊索-後索間にVEGFを介したフィードバック機構が存在することが推測され、VEGFは脊索誘導を促進する正のフィードバック作用を有することが示唆された。 以上、本論文はアフリカツメガエル胚外胚葉予定領域に中胚葉誘導を行った後VEGFを作用させることで、未分化胚細胞における血管の誘導に必要な条件を明らかにし、またVEGFを介した脊索-後索間のフィードバック機構が存在する可能性を提起した。本研究は未だ詳細が明らかとされていない初期胚の血管形成機序の解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 | |
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