学位論文要旨



No 119354
著者(漢字) 小串,哲生
著者(英字)
著者(カナ) オグシ,テツオ
標題(和) EBAG9/RCAS1の腎癌における役割
標題(洋)
報告番号 119354
報告番号 甲19354
学位授与日 2004.03.25
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第2328号
研究科 医学系研究科
専攻 外科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 武谷,雄二
 東京大学 助教授 後藤,淳郎
 東京大学 助教授 真船,健一
 東京大学 助教授 國土,典宏
 東京大学 講師 久米,春喜
内容要旨 要旨を表示する

【目的】エストロゲン受容体がゲノムDNA上のエストロゲン応答配列に結合することにより転写活性化がおこるエストロゲン標的遺伝子としてEBAG9は1998年にヒト乳癌細胞株MCF-7より同定された。EBAG9は、後に免疫監視からのエスケーブ機構に関与し癌細胞の表面に発現しているRCAS1と同一のものであることがわかった。今回、マウス腎癌細胞株Rencaを用いてin vivoにおいて同遺伝子が細胞増殖に及ぼす作用の検討を行った。また、ヒト腎癌組織におけるEBAG9/RCAS1の発現を特異抗体を用いて免疫組織化学法により検討し、予後予測因子としての検討を行った。

【方法】マウス腎癌細胞株RencaにEBAG9/RCAS1を強制発現させた後、マウス背部に皮下注し腫瘍の増殖について検討し、また、それらのマウスの生命予後について解析した。1990年より1995年までに根治的腎摘除術を実施した腎細胞癌78例、および肺転移に対し切除術を施行した腎癌肺転移9例を対象としてEBAG9/RCAS1の発現と臨床的病理的なパラメーターおよび予後との相関を統計的に解析した。

【結果】腎癌78例中65例(87.2%)にEBAG9/RCAS1の強い発現を認めた。腎癌におけるEBAG9/RCAS1の発現はGrade、Stage、リンパ節転移、静脈浸襲と有意に相関した。EBAG9/RCAS1の発現は癌特異生存率の低下と有意に相関した。一方、EBAG9/RCAS1安定発現マウス腎癌細胞株Renca-BAG9の容積は対照コントロール腫瘍に比べ有意に増大し予後不良であった。

【結論】EBAG9/RCAS1は腎癌の有用な予後悪化因子であり、腫瘍が増殖・進展する機構において何らかの役割を有していることが示唆された。今後、EBAG9/RCAS1の更なる機能解析が必要となるが、腎癌の新しい予後不良予測マーカーとして非侵襲性検査および予後予測への応用が期待される。

審査要旨 要旨を表示する

本研究は1998年にエストロゲン標的遺伝子としてヒト乳癌細胞株MCF-7より同定されたEBAG9について腎癌進展の機構における役割について解析した。EBAG9/RCAS1はin vitroにおいては免疫細胞にアポトーシスを誘導して免疫応答を抑制する可能性が示唆されており、子宮癌や肺癌において高発現し予後予測因子であることからEBAG9/RCAS1の発現は癌の進展や転移の機構に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。本研究ではマウス腎癌細胞株Rencaを用いてin vivoにおいて同遺伝子が細胞増殖に及ぼす作用の検討を行った。また、ヒト腎癌組織におけるEBAG9/RCAS1の発現を特異抗体を用いて免疫組織化学法により検討し、予後不良因子としての解析を行った。

以上の検討より下記の結果を得ている。

マウス腎癌細胞株Rencaを用いてin vivoにおいて同遺伝子が細胞増殖に及ぼす作用の検討を行った。Renca細胞にEBAG9を安定発現させて同遺伝子安定発現細胞株Renca-EBAG9を作製した。この細胞株に感受性のあるBalb/cマウスに移植したところ、Renca-EBAG9細胞株の方が腫瘍の容積は有意に増大しており、またそれらのマウス群では生命予後は有意に不良であった。このことからEBAG9/RCAS1はin vivoにおいて腫瘍の増殖および進展の機構に関与している可能性が示唆された。

1990年より1995年までに根治的腎摘除術を実施した腎細胞癌78例、および肺転移に対し切除術を施行した腎癌肺転移9例を対象としEBAG9/RCAS1の発現と臨床的病理的なパラメーターおよび予後との相関を統計的に解析した。その結果、腎癌78例中65例(87.2%)にEBAG9/RCAS1の強い発現を認めた。腎癌におけるEBAG9/RCAS1の発現はGrade、Stage、リンパ節転移、静脈浸襲と有意に相関した。また、EBAG9/RCAS1高発現群は同低発現群に比べ癌特異生存率は有意に不良であり、同発現は予後不良因子であった。

以上、本論文よりEBAG9/RCAS1は腎癌の有用な予後因子であり、腫瘍が増殖・進展する機構において何らかの役割を有していることが示唆された。今後、EBAG9/RCAS1の更なる機能解析が必要となるが、本研究により腎癌の新しい予後不良予測マーカーとして非侵襲性検査および予後予測への応用が期待され、学位の授与に値するものと考えられる。

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