No | 119524 | |
著者(漢字) | 高松,淳 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | タカマツ,ジュン | |
標題(和) | ロボット動作の自動生成のための観察による手作業の抽象化 | |
標題(洋) | Abstraction of Manipulation Tasks to Automatically Generate Robot Motion from Observation | |
報告番号 | 119524 | |
報告番号 | 甲19524 | |
学位授与日 | 2004.03.25 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(情報理工学) | |
学位記番号 | 博情第5号 | |
研究科 | 情報理工学系研究科 | |
専攻 | コンピュータ科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 様々な作業を行うロボット動作を自動生成することは, 産業的応用として大きな可能性があるだけでなく, 人工知能の観点からも大きなテーマであり, 現在まで様々な研究が行われてきた. しかし作業の目的のみを手がかりとして, その作業を達成する動作を自動生成することは非常に困難であり, その困難さを解決する方法として「観察による行動獲得」手法が近年注目されている. 「観察による行動獲得」手法では, まず教示者の作業を観察, 認識することにより, 作業を抽象化して表現する. それを用いて, 動作プリミティブの繰り返しとして, 目的の作業を再現することができる. 動作プリミティブとは抽象化して表現された作業中の状況を再現するために必要不可欠となる動作群である. つまり, この手法の適用の際には, 作業表現の方法と作業を再現するために十分な動作プリミティブの定義が非常に重要となる. 本論文では日常の手作業を対象とし, 組み立て作業, リンクにより接続された物体の操作, 紐結び作業を扱う. まず, 2つの多面体物体を用いた組み立て作業を再現するロボットシステムを提案する. 組み立て作業では2物体間の接触状態により作業を抽象化して表現することができる. しかしながら, 無数の接触状態を扱う困難さにより, この表現のみからロボット動作を生成することは非常に困難である. そこで, 各接触状態における物体の局所可動範囲の質を表す指標である運動自由度を提案する. 作業中に出現する運動自由度の遷移を用いて, 作業の再現に十分な動作プリミティブを定義し, ロボット動作を生成する方法について述べる. 実際にシステムの実装についても示す. 次に, このシステムを曲面物体の組み立て作業を扱えるように改良する方法について述べる. 前述のシステムでは運動自由度を物体の局所可動範囲の1次近似を用いて計算しているが, 1次近似では曲率の情報を扱うことができない. そこで2次近似を用いて曲率情報を扱うことのできる数学的な枠組みを提案する. さらに, 前述のシステムをリンクにより接続された物体の操作を扱えるように改良する方法を述べる. ドアノブを回す作業を考えたとき, 前述のシステムではノブの正確な内部構造から運動自由度を計算しようと試みるが, それは非常に困難である. しかし内部構造を知らなくとも, ノブがある軸回りに回転すること(リンクの種類), さらにはその軸の向きや中心の位置(リンクパラメータ)を知っていれば, ノブを回すことができる. そこで, 実際に作業の様子を観察することにより, 視覚誤差に対してロバストに, リンクパラメータを推定する方法を提案する. 最後に, 一本の紐を結ぶ作業を再現するロボットシステムを提案する. まずP-data表現を用いて作業を抽象化して表現する. この表現は紐の位相的な特徴を完全に保持している. 次に紐結び作業の再現に十分な動作プリミティブを定義し, P-dataの変化から対応する動作プリミティブを選択する方法を提案する. その理論的な背景は「結び目理論」や「グラフ理論」から来ている. | |
審査要旨 | 本論文は、ロボットが人間の行動を観察することによって行動を獲得する手法について論じたものである。動作対象としては、多面体をはめ込むような組み立て作業、リンクにより接続された物体の操作、紐結び作業の3つを取り上げている。多面体のはめ込み作業に関しては、状態遷移のモデル化を中心に、ビジョンによる行動の認識、ロボットによる行動の実現まで行っている。リンクにより接続された物体の操作については、観察によりモデルを推論する手法の提案を行っている。また、紐結びについては、紐の状態と遷移を記述する枠組みの提案を行っている。以下、内容の概要を説明する。 まず, 2つの多面体物体を用いた組み立て作業を再現するロボットシステムを提案している. 組み立て作業では2物体間の接触状態により作業を抽象化して表現することができる. しかしながら, 無数の接触状態を扱う困難さにより, この表現のみからロボット動作を生成することは非常に困難である. そこで, 各接触状態における物体の局所可動範囲の質を表す指標である運動自由度を提案している. 作業中に出現する運動自由度の遷移を用いて, 作業の再現に十分な動作プリミティブを定義し, ロボット動作を生成する方法について述べている. 実際にシステムの実装についても示している. 次に, このシステムを曲面物体の組み立て作業を扱えるように改良する方法について述べている. 前述のシステムでは運動自由度を物体の局所可動範囲の1次近似を用いて計算しているが, 1次近似では曲率の情報を扱うことができない. そこで2次近似を用いて曲率情報を扱うことのできる数学的な枠組みを提案している. さらに, 前述のシステムをリンクにより接続された物体の操作を扱えるように改良する方法を述べている. ドアノブを回す作業を考えたとき, 前述のシステムではノブの正確な内部構造から運動自由度を計算しようと試みるが, それは非常に困難である. しかし内部構造を知らなくとも, ノブがある軸回りに回転すること(リンクの種類), さらにはその軸の向きや中心の位置(リンクパラメータ)を知っていれば, ノブを回すことができる. そこで, 実際に作業の様子を観察することにより, 視覚誤差に対してロバストに, リンクパラメータを推定する方法を提案している. 最後に, 一本の紐を結ぶ作業を再現するロボットシステムを提案している. まずP-data表現を用いて作業を抽象化して表現している. この表現は紐の位相的な特徴を完全に保持している. 次に紐結び作業の再現に十分な動作プリミティブを定義し, P-dataの変化から対応する動作プリミティブを選択する方法を提案している. その理論的な背景は「結び目理論」や「グラフ理論」から来ている. 審査においては、本研究のオリジナリティと具体的な成果について高い評価が得られた。特に、作業の内容を精緻にモデル化し、実際に動くシステムとして実現した点が評価された。成果の発表に関しても、競争率の高い国内の論文誌や海外の国際会議などに複数の論文が採択されており、博士号を認定するに十分な要件を満たしているといえる。 よって本論文は博士(情報理工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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