学位論文要旨



No 119526
著者(漢字)
著者(英字) Johan,Henry
著者(カナ) ジョハン,ヘンリー
標題(和) プログレッシブ手法による2次元形状の補間
標題(洋) Blending 2D Shapes Using Progressive Approaches
報告番号 119526
報告番号 甲19526
学位授与日 2004.03.25
学位種別 課程博士
学位種類 博士(情報理工学)
学位記番号 博情第7号
研究科 情報理工学系研究科
専攻 コンピュータ科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 池内,克史
 東京大学 教授 今井,浩
 東京大学 講師 五十嵐,健夫
 東京大学 助教授 高橋,成雄
 慶應大学 講師 金井,崇
内容要旨 要旨を表示する

2次元形状およびその重みが与えられたとき,2次元形状補間は与えられた重みに基づき入力形状を混合して補間した形状を生成するための手法である.コンピュータグラフィックスにおいて,2次元形状補間は様々な分野に応用できるので多くの注目を集めている.2次元形状補間の応用として,ジェネラライズシリンダーのモデリング(与えられた輪郭線に基づいて,その間の輪郭線を計算する)および画像モーフィングを含めて2次元キーフレームアニメーションの中間フレームの生成という応用がある.

2次元形状補間の従来法は次のような欠点,自然な補間した形状を作成不可能,高い計算コスト,複数の形状の補間ができないこと,キーフレームアニメーションに応用できないこと,を一つあるいは複数持っている.本論文は従来法よりもいくつかの利点を持つ形状補間手法を提案する.提案法は高速で,自然な補間した形状の作成が可能で,複数の形状を補間することが可能で,ユーザによる局所的に補間を制御することを許し,そしてキーフレームアニメーションの中割フレームを作成できる.

本論文では,2次元形状は頂点の順序付きリストで表されるとする.形状補間において,二つの問題があり,入力形状の頂点間の対応を決定する問題(頂点の対応問題)および補間した形状の頂点の位置を計算する問題(頂点の軌跡問題)である.また,形状補間手法をキーフレームアニメーションに応用する場合,キーフレームにおける形状間の相対位置を保つ問題も解決する必要がある.

二つの形状における頂点間の対応関係を決定するために,これらの形状の頂点間における局所的な幾何的類似度を計算するための類似度関数を提案する.この類似度関数の値を最適化することで,二つの形状における頂点間の対応関係を決定する.

2次元形状を表すための階層表現を提案する.この表現を用いたら,粗い形状(頂点数の少ない形状)から始まって,少しずつ詳細を加えることによって元の2次元形状を復元できる.この表現方法を利用して,二つの形状を補間するとき,頂点の位置を計算するために,新しいプログレッシブ手法を提案する.入力形状を補間するために,最初に入力形状を表すコンパチブルな階層表現を作成する.コンパチブルな表現において,各形状の階層表現における粗い形状は互いに対応し,また各形状の詳細の間に一対一の対応関係が成り立つ..提案した形状補間手法は粗い形状を作成し,この形状に繰り返し詳細を加えることによって段階的に補間した形状を作成する.この手法は高速に自然な補間した形状を作成可能である.

二つの形状を補間するため手法に基づいて,複数の形状を補間するための手法を開発する.補間した形状は入力形状の加重平均として定義される.各入力形状の重みは局所的に異なる値で指定することが可能である.その結果,補間した形状の局所的な形を容易に制御できる.

キーフレームアニメーションの生成において,形状間の相対位置を保つために,二つの方法を提案する.ここで,与えられたキーフレームの形状の間に一対一の対応関係があると仮定する.第一の方法は各キーフレームの中にある全ての形状を一つのグラフとして結合する.ソースおよびターゲットキーフレームのグラフを補間することによって中間フレームを生成する.第二の方法はプログレッシブに形状を処理し,中間フレームを作成する.このとき,与えられたキーフレームにおける形状間の相対位置に基づいて,形状を処理する順番が決定される.

さらに,形状補間手法の画像モーフィングへの適用の有効性を調査する.提案した形状補間手法の応用をフィーチャーベースの2次元画像モーフィングに応用した.フィーチャーベースモーフィングにおいて,ユーザはソース画像におけるフィーチャー(特徴)とそれに対応するターゲット画像のフィーチャーを指定する.ソースおよびターゲット画像のフィーチャーを補間することによって中間画像におけるフィーチャーを生成する.キーフレームアニメーション用の形状補間手法を用いて中間画像におけるフィーチャーを求めることによって,回転などを伴うモーフィングでもスムーズなモーフィングアニメーションを作成することが可能である.

本論文で提案される手法は2次元形状補間の問題を解決するためのツールである.上記のように,提案法は従来法よりいくつかの利点を持っている.そのため,提案法は2次元形状補間の可能性および応用範囲を広げた.

審査要旨 要旨を表示する

本論文は、”Blending 2D Shapes using Progressive Approaches,” (プログレッシブ手法による2次元形状の補間)と題し、6章よりなっている。

第1章は、Introduction”と題され、序論であり、研究の動機となったアニメーションシステムにおける物体形状の補間法の必要性、現在提案されている諸手法の問題点、解決手法の提案などについて論じている。2次元形状を頂点の順序付きリストで表現し、類似度関数の定義や階層表現を用いての補間法、ならびにキーフレーム間での対応関係からの中間フレームの生成法やそれの画像モーフィングへの適用可能性を主題としている。この主題の設定は、学位論文の主題として十分かつ妥当であると認められる。

第2章は、”Uniform Blending of Two 2D Shapes” と題し、2次元形状の階層的表現法を提案し、階層構造を用いた2つの図形の補間法が示されている。図形を多数の3角形による近似で表現する。2つの図形の間で三角形の数を徐々に減少させた階層表現をつくり、これらのあいだでの対応を付ける。この2つの系列の間での補間を行うというものである。本手法により、高速に補間形状が得られること、手法が連続的な形状を生成できることなどを示している。

第3章は、”Non-uniform Blending of Multiple 2D Shapes”と題し、3個以上の図形間での補間方法について提案している。ここでも、各図形の階層構造を計算する。この際、各部分図形の間で、重みをかえることにより現図形の各部分が異なった割合で補間された図形が生成できるアルゴリズムを示し、これの実験を行っている。

第4章は、”Blending between Key-Frames of 2D Shapes”と題し、アニメーション生成の際有用となる代表的な図形からそれらの間の図形を生成する手法を提案している。2つの図形間での相対関係を保つために、Dependency Graphとよばれる各画像間の部分図形の依存関係を示すグラフを用いて中間画像を生成する手法とShape Tree とよばれる部分図形の包含関係を示すグラフを用いて同様の画像を生成する手法を提案している。この両者を比較し、長短も論じている。

第5章は、”Application to Image Morphing”と題し形状補間手法の画像モーフィングへの有効性を調べている。提案した形状補間手法を、フィーチャーベースの画像モーフィングへ応用している。ユーザーがソース画像とターゲット画像における対応するフィーチャーを指定する。これに基づき中間画像を生成するものである。

第6章は、”Conlusions and Future Work”と題され、提案手法のまとめと評価、今後の方向性に関して記述がなされている。

以上これを要するに、本論文は、2次元形状とその重みが与えられた状況で、階層的に図形を表現し、この表現に基づいて図形補間を行う手法を提案するとともに、これを実装し有効性を証明し、さらにそれの応用を展開しており、極めて有意義な成果を得ている。この点で本論文は高く評価でき、審査委員全員で、博士(情報理工学)の学位を授与するのにふさわしいと判断した。

よって本論文は博士(情報理工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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