学位論文要旨



No 119605
著者(漢字) 石井,雅巳
著者(英字)
著者(カナ) イシイ,マサミ
標題(和) オリゴヌクレオチドアレイの定量性検証とその応用
標題(洋)
報告番号 119605
報告番号 甲19605
学位授与日 2004.07.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第2368号
研究科 医学系研究科
専攻 生殖・発達・加齢医学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 谷口,維紹
 東京大学 教授 高橋,孝喜
 東京大学 教授 橋都,浩平
 東京大学 助教授 矢野,哲
 東京大学 講師 高見澤,勝
内容要旨 要旨を表示する

 近年遺伝子発現を網羅的に解析する手法の発達はめざましく、数万の遺伝子を一度に解析する実験系が確立されてきている。これらのなかでアレイ法、そしてSAGE法は最も一般的な方法となってきている。アレイ法のひとつであるオリゴヌクレオチドアレイ法の定量性を検証するためにするために、同一のRNA試料を用いてオリゴヌクレオチドアレイ法とSAGE法を施行し両者の結果を比較検討した。ここで用いたRNA試料は、健康成人血液より分離採取した単球とGM-CSFによって誘導したマクロファージ由来のものである。SAGE法では単球から57560個、マクロファージから57463個のタグがそれぞれ得られたが、これは約28000個の異なるタグに対応していた。一方オリゴヌクレオチドアレイ法はAffymetrix社のGeneChipを用いて行っており、これは約6000の遺伝子に対応するプローブを含有するものである。比較検討の結果、これら二つの実験系は極めて良好な相関を示すことが判明した。血球の分化に伴う遺伝子発現量の変化率を解析する比較解析、個々の遺伝子の発現の絶対量を解析する絶対解析のいずれの解析においても二つの実験系の相関は良好であった。変化率が大きい程、遺伝子発現が大きい程二つの実験系の相関は良好であった。遺伝子発現量の変化率を解析する比較解析だけでなく個々の遺伝子の発現の絶対量を解析する絶対解析においても、オリゴヌクレオチドアレイ法は十分信頼できる解析法であることがこれらの結果から結論づけられた。従ってオリゴヌクレオチドアレイ法を共通の実験系として用いて遺伝子発現のデータベースを構築することが可能であると考えられた。

 オリゴヌクレオチドアレイの一応用例として同法を用いて神経芽腫の遺伝子発現プロファイリングを行った。神経芽腫は小児期に最も多く見られる悪性固形腫瘍である。本腫瘍は1歳未満の予後良好な群と1歳以上の予後不良な群とに分けられると考えられている。MYCNやTRKA遺伝子などが予後と関連すると報告されているが、まだ完全に解明されてはおらず、また実際に予後予測を行うのは必ずしも容易ではない。予後良好群と不良群の神経芽腫の遺伝子発現レベルでの差を検証するために、オリゴヌクレオチドアレイを用いて両群の遺伝子発現プロファイリングを行った。両群で発現に差があった遺伝子群としてMYCN、TRKA、NM23といった今まで報告されている遺伝子以外にもHIAP1やp19INK4dといったアポトーシス、細胞周期関連の遺伝子が多数抽出された。これらの遺伝子は神経芽腫の悪性化に関与する可能性、あるいは神経芽腫の分類や予後予測に有用である可能性が強く示唆され、将来の研究につながる有望な遺伝子群と考えられた。

審査要旨 要旨を表示する

 本研究ではアレイ法のひとつであるオリゴヌクレオチドアレイ法の定量性を検証するためにするために、同一のRNA試料を用いてオリゴヌクレオチドアレイ法とSAGE法を施行し両者の結果を比較検討している。さらにオリゴヌクレオチドアレイ法を用いて小児がんとして代表的な神経芽腫の遺伝子発現プロファイリングをいっている。これらの解析によって以下の結果を得ている。

1.健康成人血液より分離採取した単球とGM-CSFによって誘導したマクロファージ由来の同一のRNA試料を用いて、SAGE法とオリゴヌクレオチドアレイ法の一つであるAffymetrix社のGeneChipを用いた解析を行った。比較検討の結果、これら二つの実験系は極めて良好な相関を示すことが判明した。血球の分化に伴う遺伝子発現量の変化率を解析する比較解析、個々の遺伝子の発現の絶対量を解析する絶対解析のいずれの解析においても二つの実験系の相関は良好であった。比較解析だけでなく個々の遺伝子の発現の絶対量を解析する絶対解析においても、オリゴヌクレオチドアレイ法は十分信頼できる解析法であることがこれらの結果から結論づけられた。

2.オリゴヌクレオチドアレイを用いて神経芽腫の遺伝子発現プロファイリングを行った。本腫瘍は主に1歳未満の予後良好な群と主に1歳以上の予後不良な群とに分けられると考えられているが、両者の区別を行うのは必ずしも容易ではない。予後良好群と不良群の神経芽腫の遺伝子発現レベルでの差を検証するために、オリゴヌクレオチドアレイを用いて両群の遺伝子発現プロファイリングを行った。両群で発現に差があった遺伝子群としてMYCN、TRKA、NM23といった今まで報告されている遺伝子以外にもHIAP1やp19INK4dといったアポトーシス、細胞周期関連の遺伝子が多数抽出された。これらの遺伝子は神経芽腫の悪性化に関与する可能性、あるいは神経芽腫の分類や予後予測に有用である可能性が強く示唆され、将来の研究につながる有望な遺伝子群と考えられた。

 以上、本論文はオリゴヌクレオチドアレイの定量性を明らかにした。また神経芽腫のプロファイリングで新規の予後予測因子の可能性を持つ遺伝子群を抽出した。本研究は当時はあまり広く認識されていなかったアレイ技術の定量性を明らかにし、その後のアレイ法の発展に貢献をなしたと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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