学位論文要旨



No 119827
著者(漢字) 豊福,建太
著者(英字)
著者(カナ) トヨフク,ケンタ
標題(和) 自己資本比率規制下における銀行行動と金融政策
標題(洋)
報告番号 119827
報告番号 甲19827
学位授与日 2005.03.11
学位種別 課程博士
学位種類 博士(経済学)
学位記番号 博経第191号
研究科 大学院経済学研究科
専攻 現代経済専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 助教授 柳川,範之
 東京大学 教授 新井,富雄
 東京大学 教授 福田,慎一
 東京大学 助教授 高橋,明彦
 東京大学 助教授 松村,敏弘
内容要旨 要旨を表示する

 本論文の目的は,自己資本比率規制が銀行行動や金融政策にどのような影響を与えているのかを分析し,銀行経営の健全化,さらには効率的な金融システムの構築に貢献する金融行政・金融政策の新しい理論的枠組みを提示することである.

 金融自由化・金融国際化という世界的な潮流の中,1987年のバーゼル合意以降は自己資本比率規制が銀行規制の中で大きな役割を担うこととなった.しかしその反面,1990年以降,日本だけでなく多くの国で金融危機が発生した.このように,現行の自己資本比率規制が結果的に金融システムを安定させたとは言えず,現行の自己資本比率規制は更なる改善が求められている.そこで本論文は,自己資本比率規制の役割や問題点について検討し,新たな自己資本比率規制の意義を提示する.

 本論文ではさらに,自己資本比率規制がマクロ経済に与える影響について分析する.自己資本比率規制の導入により,金融当局による銀行を通じた金融政策の効果も,当然従来とは違うものになる.そこで本論文では,銀行の自己資本を通じた金融政策の波及経路という新しい概念を用い,自己資本比率規制下における金融政策の効果や役割を解明する.

 本論文は,これらの問題を金融契約理論や情報の経済学の観点から分析する.これは,銀行のモラルハザードの問題を考慮した上で,銀行規制や金融政策のあり方を理論的に考察するためである.また近年,これらのアプローチを用いて銀行規制や金融政策に関する様々なことが明らかにされてきた.本論文はこの流れをさらに進め,自己資本比率規制の役割と銀行行動・金融政策のあり方に対し,新たな理論的貢献をもたらすことを目的としている.

 本論文は,4章からなっている.以下では,各章の内容を要約することにする.

 第1章では,自己資本比率規制が銀行行動や金融政策に与える影響などについて,既存文献を展望する.まず,自己資本比率規制が銀行規制の中で重要視されるようになった理由や果たすべき役割について述べる.さらに,金融自由化や早期是正措置との関連から,自己資本比率規制が直面している問題などについて論じる.次に,新しい自己資本比率規制の枠組みとして,プリコミットメント・アプローチと劣後債を用いた市場規律という考え方を紹介し,その意義や問題点などを整理して検討する.最後に,銀行の自己資本と銀行貸出の関係を示し,銀行の自己資本や自己資本比率規制がマクロ経済に与える影響について考察する.そして,銀行の自己資本を通じた金融政策の波及経路という新しい概念を紹介し,この概念が現代の銀行行動や金融政策を考える上で重要な分析ツールになりうることを論じる.

 第2章では,自己資本比率規制と銀行の資産選択に関するインセンティブの問題を扱い,二段階の自己資本比率規制や公的資金注入の役割や意義について論じる.

 日本の銀行は,1997年の金融危機の前後で異なる貸出行動をとっていたことが観察されている.1997年の前,日本の銀行は不動産業などの非効率な既存資産への貸出を増やす一方,製造業など効率的な既存資産への貸出を減少させた.これは,貸しはがしから追い貸しへの資産代替が起きていたことを示している.1997年の後になると,不良債権問題などで自己資本が毀損した多くの銀行は,貸出量を抑制し,国債等の安全資産の保有を増やした.これは,貸しはがしから債券保有へ資産代替が起きていたことを示している.そこで本章では,まずこのような資産代替が起こるメカニズムを明らかにする.

 さらに本章では,上記の非効率な銀行行動を防ぐための公的資金注入と二段階の自己資本比率規制のあり方を考察する.これらの政策は,現実の金融行政の中での重要性は増しているにもかかわらず,その効果や意義について経済学的に十分議論されてきたとはいえない.そこで本章では,適切な公的資金注入と二段階の自己資本比率規制の枠組みを構築することが,効率的な銀行の資産選択をもたらすことを示す.

 本章では,次のようなモデルを設定する.銀行は,収益率の高い安全なプロジェクトと収益率の低い危険なプロジェクトの二つを所持しており,それぞれに対して追加投資を行う機会がある.ただし,安全なプロジェクトへの追加投資のみ効率的とする.追加投資のための資金調達は,市場調達か既存プロジェクトの清算のどちらかしかなく,しかも自己資本の小さい銀行は,借入れ制約に直面しており,市場調達ができないとする.ここで銀行の資産選択(追加投資をするのかどうか,またその際には資金調達手段をどうするのか)を当局が立証するのは不可能な時,借入れ制約に直面している銀行は,安全なプロジェクトを清算し,危険なプロジェクトに追加投資をするインセンティブを持つ.借入れ制約と資産選択の立証不可能性の下,銀行がこのようなモラルハザードを起こすことを,貸しはがしから追い貸しへの資産代替のメカニズムと考える.また最低自己資本比率が高く設定されている時,自己資本の小さい銀行が,安全なプロジェクトであっても,それを清算してリスクウェイトの小さい債券保有を行うことで,自己資本比率を高めるインセンティブを持つことを示す.これを貸しはがしから債券保有への資産代替のメカニズムと考える.

 そして,こうした非効率な銀行行動は,二つの閾値を用いた二段階の自己資本比率規制を状況に応じて最適に設定し,かつ,予防的な公的資金注入を用いることで解決できることを示す.その際,当局が持っている特殊能力,すなわち銀行を検査することにより,他の投資家よりも銀行から返済を約束される(pledgeable)資金が大きくなる,という能力が公的資金注入を正当化する上で重要な役割を果たしている,という新しい視点を提供する.

 第3章では,劣後債を用いた市場規律という自己資本比率規制の中でも新しいトピックを扱う.

 近年高度に複雑化する銀行業務に対し,銀行の正確な情報を把握するため,従来型の金融当局による公的介入に加え,劣後債を用いた市場規律を活用しようという動きがある.それに従い,今後の銀行規制体系を構築していくためには,当局と投資家が果たすべき役割を理解することが重要になる.

 そこで本章では,銀行経営の規律付けに際し,市場規律と従来型の公的介入をどのように使い分けるのが望ましいのかという問題について分析する.

 得られる結論は次のようである.まず,銀行のリスクが立証可能かつ観察可能な時,当局は,劣後債の発行を銀行に命じることで,社会的に最適な状況を実現できる.しかし,銀行のリスクが観察可能だが立証不可能になると,劣後債の金利が銀行のリスクを正確に反映していても,契約の不完備性から銀行のモラルハザードを防げなくなる.よってこの時は,銀行のインセンティブを引き出す必要から,劣後債の発行量を少なくせざるを得なくなり,社会的に効率的な状況を導くことは出来ない.

 しかしこの状況は,銀行のリスクを市場も規制当局も観察できないと改善する.当局が,市場に対して,銀行は健全であるという信念を形成させることが出来ると,銀行がリスクテイクをした時の劣後債の価格形成が歪んでくる.この時の金利は,一定の条件下で,劣後債の発行量が小さい時はリスクに対して割安に,劣後債の発行量が大きい時はリスクに対して割高に評価される.この関係を用いると,劣後債の発行量を大きくすることでも銀行のモラルハザードを防ぐことが出来る.よって当局は,劣後債の発行量を銀行に応じて変化させることで,情報が対称なときよりもパレート改善した状況を作り出すことが出来る.さらに,規制当局が査察し,銀行のリスクを市場に開示する時を考える.この時,銀行がリスクテイクをした時の劣後債の金利が割安になっているときは,規制当局がモニタリングすることが望ましいが,割高になっているときはモニタリングを行わず,情報の非対称性を解消しない方が良いという結論を得た.

 このように本章では,市場での価格づけが正確に銀行の情報を反映していなくても,市場を用いることが有意義であることや,情報の開示が必ずしも効果的とはいえないことを明らかにした.現実的には,銀行の情報の全てが債券金利に反映されることはないこと,仮に正確に反映されていたとしても,契約の不完備性などによって,銀行のモラルハザードの可能性などを考慮しなければならないことを考えると,上記の結論は,今後の銀行規制の中での市場や公的介入の役割を考える上で,有益な含意を持つ考える.

 第4章では,銀行がソフトバジェット問題と自己資本比率規制に直面している時の金融政策の波及経路について分析し,金融政策の効果や公的資金注入がマクロ経済に与える影響などについて明らかにする.

 日本経済は,1990年代初頭にバブル経済が崩壊した後,「失われた10年」と言われる長期不況を経験した.この間金融当局は,景気対策として長期に渡る大幅な金融緩和を行ったが,効果的に機能しない状況が続いた.

 そこで本章では,1990年代の日本に見られたような金融政策とマクロ経済の関係を分析するため,従来の枠組みに二つの視点を導入する.一つは,銀行の資金配分のインセンティブである.これは,1990年代の日本の銀行貸出行動では、追い貸しや貸し渋りなど,銀行の非効率な資金配分が観察されていた点を考慮するためである.もう一点は,自己資本比率規制である.これは,1988年にBIS規制が適用されて以降,銀行の自己資本量は銀行貸出量に大きな影響を与えるようになったからである.具体的なモデルは,銀行がソフトバジェット問題により既存債権に追い貸しをするインセンティブを持つことを論じたBerglof and Roland(1997)のモデルを,多数の企業が存在するというマクロ経済モデルへと拡張し,さらに自己資本比率規制を導入したものとなっている.これを用い,金融緩和に対する銀行貸出量や総所得の関係,さらに公的資金注入の役割について論じる.

 得られる結論は次のようである.まず,金融政策の効果が,経済全体における優良な貸出先の割合によって全く異なるものになることを示す.そして,優良な貸出先が少ない時,金融緩和をしても銀行貸出量が必ずしも増加するとは限らないことを示す. さらに,金融緩和によって銀行貸出量が増えても,それが追い貸しに回される時,銀行のソフトバジェット問題がより深刻になるので,金融緩和は景気対策としては効果的ではないことを示す.さらに,モニタリングによって銀行貸出の収益性が上昇する可能性を導入し,優良な貸出先が少ない場合や,利子率が低い状況では,金融緩和よりも公的資金注入によって銀行のソフトバジェット問題を解決することの方が効率的であることを示す.最後に自力増資の可能性についても考え,モニタリングコストが大きい時は公的資金注入が依然として有効であることを論じる.

 本章の分析は,ソフトバジェット問題などの銀行行動に関する問題は,銀行業というミクロ的な問題だけにとどまらず,マクロ経済にも大きな影響を与えることを示している.そして銀行がソフトバジェット問題と自己資本比率規制に直面している時,景気対策としては銀行貸出の「量」ではなく,銀行貸出先の効率性という「質」に主眼をおくべきであること,そしてそのためには公的資金の注入も有効な手段であることを論じている.以上の結論は,銀行業の問題と,マクロ経済における問題とを解決するための政策パッケージを提供することに貢献すると考えられ,今後の金融政策・金融行政のあり方を考える上で重要な視点を提供しているものと考える.

審査要旨 要旨を表示する

 本論文は、現在の日本の金融システムを考えるうえでも重要な問題である自己資本比率規制をとりあげ、自己資本比率規制が銀行行動や金融政策にどのような影響を与えているのかを分析している。本論文の分析を通して、筆者は銀行経営の健全化、さらには効率的な金融システムの構築に貢献する金融行政・金融政策の理論的分析枠組みを提示しようと試みている。

 本論文は金融契約の理論モデルを用いて、銀行行動が非効率的になる理由や規制当局の行動などを厳密に分析している。またそれとともに、その理論モデルを用いて自己資本比率がマクロ経済に与える影響や、金融政策の影響など、分析対象がマクロ経済問題にまで広がっている点にも大きな特徴が認められる。このようなミクロ経済分析の積み重ねによる金融政策の分析は、今後も重要となる分野であり、本論文はその点において少なからぬ貢献をしている。

 本論文の構成は以下のようになっている。

第一章 自己資本比率規制と銀行行動・金融政策

第二章 自己資本比率規制と銀行の資産選択

第三章 劣後債を用いた市場規律と公的介入

第四章 銀行のソフトバジェット問題、自己資本比率規制と金融政策の波及経路

 なお、第三章の論文は、『現代ファイナンス』というレフェリーつきの学術雑誌に掲載されることが決定している。

各章の内容の要約・紹介

 各章の内容を要約・紹介すると以下のようになる。

 まず、第一章では、本論文全体を通しての問題意識になっている、自己資本比率規制のあり方、自己資本比率規制がどのように銀行行動や金融政策に影響をあたえるのかについて、既存文献を整理している。また、自己資本比率規制が直面している問題点などについても整理している。

 第二章では、自己資本比率規制が銀行の資産選択行動にどのような影響を与えるかを分析し、二段階の自己資本比率規制や公的資金注入の役割・意義について検討を行っている。本章では、現実的な課題として日本の金融機関の貸し出し行動をまず検討し、97年以前には不動産業などへの貸し出しを増やす一方、製造業などへの貸し出しを減少させている事実を明らかにする。そして97年以降には、貸出量が抑制され、国債などの安全資産への保有が増えていることを指摘している。そして、このような資産選択行動を金融機関がとるメカニズムを理論的に明らかにしている。その後で、このような銀行の(非効率的な)資産選択行動を前提とした際の、公的資金注入と二段階の自己資本比率規制のあり方が検討されている。結論としては、適切な公的資金注入と二段階の自己資本比率規制の枠組みを構築することが、効率的な銀行の資産選択を促すことが示されている。

 第三章では、劣後債を発行して市場規律を活用するという自己資本比率規制の中でも比較的新しいトピックスをとりあげて、理論的分析を行っている。現実経済では、このような劣後債による市場規律活用の動きが実際にあり、アメリカでは銀行は劣後債の発行を定期的に行うことが義務付けられ、実際に劣後債による市場規律を用いた銀行規制が行われている。本章では、このような劣後債を用いた市場規律と公的介入のあり方を、情報の経済学や契約理論の枠組みを用いて分析している。市場規律を用いる場合の大きな問題点のひとつは、市場参加者が十分な情報を有しているのかという点である。また、規制当局が市場の動きを適切に規制にいかす仕組みも必要である。そこで本章は、さまざまな状況において、どのような劣後債発行量を要求するのか、どのような規制が望ましい結果をもたらすのかを、厳密な形で分析している。

 第四章では、自己資本比率規制と金融政策の有効性との関連性を分析している。本章は、わが国が1990年代に、不況を抜け出すために大幅な金融緩和を行ったにもかかわらず、金融政策が効果的に機能しなかったのはなぜかという問題意識から出発している。そして、金融政策が従来の理論が想定していたのとは異なった影響を銀行行動に与えていた可能性を指摘し、銀行行動と金融政策の関係を再検討している。さらに、そのモデルを用いて、自己資本比率規制がどのような形で機能し、それが金融政策の有効性とどのような関係を有しているかを分析している。結論としては、銀行が追い貸しという非効率的な貸出行動をとる可能がある場合には、金融緩和によって銀行貸出を増加させても景気上昇につながらないこと、その場合には公的資金注入が必要になることが明らかにされた。

論文の評価

 本論文がとりあげたテーマは、自己資本比率規制という現実の政策論議においても非常に重要性の高いものであり、また経済理論の観点からみても銀行行動に関する規制のあり方という近年の重要なトピックスを扱っている。第一章で、詳しく過去の文献をサーベイしているように、本論文は過去の理論分析を踏まえた手堅いものであり、そのような厳密な理論分析を用いて、日本経済の抱える現実の問題点から導かれた、金融緩和の効果や自己資本比率のあり方などの重要な問題を、厳密に分析・検討している点は高く評価されるものであろう。ミクロ理論の基づいた分析からマクロ政策論議にそれを拡張していく際には、分析の仕方に注意が必要になるため、その点については工夫の余地がみられるが、全体の分析は手堅く、興味深い結論も多く得られている。

 より具体的には以下の点において本論文には大きな貢献が認められる。まず、第二章については、銀行の投資選択の歪みを、日本の現実に整合的な形で設定した点で、貢献が認められる。さらに、そのような銀行行動を前提として、2段階の自己資本比率規制が重要であることを指摘している点も貢献であろう。現実の自己資本比率規制は、既存理論が考えているほど単純なものではなく、日本においてもある意味では二段階に近い自己資本比率規制が採られている。その意味では、本章の導出した結論は、現実の経済や政策環境を適切に描写したものということができるだろう。

 第三章については、 劣後債による銀行の規律付けという新しいトピックスに関して、理論的に厳密な形で分析している点が評価できよう。劣後債を銀行に発行させ、それに対する市場の評価を銀行規制に活用しようという試みは、現実に採用されはじめている規制であり、それに関する理論的・実証的研究が今後大いに期待されるものである。しかし、現段階ではまだそれに関する十分な研究が行われているとはいえず、その意味で本章の分析の貢献は大きいと考えられる。また、このような市場規律を用いる際の問題点とされる、市場と銀行との間の情報の非対称性の問題を正面から扱い、市場が十分な情報を持っていない場合でもこのような市場規律は有効かという問題を考えている点も重要と指摘できよう。また、規制のあり方と市場規律の用い方の関係についても、既存文献では十分な整理ができているとは言えず、この点についても本章は一定の貢献をしていると考えられよう。

 第四章については、分析を金融政策の効果やマクロ経済への影響に広げている点が、興味深い。金融政策の影響を厳密に検討するためには、それによる銀行行動のミクロ的分析が重要であるという視点から、銀行行動がどのような場合には金融政策が有効に機能しないのかを検討している。銀行行動が非効率的にゆがんでいる場合には、金融緩和は適切には機能しないという結論は、日本の金融政策を考えるうえでは、示唆的なものであろう。また、公的資金の必要性などについても、厳密な理論分析の上に導き出している点は、貢献と考えることができるだろう。

 以上のように、この論文の貢献は大きなものがあると認められるが、その分析手法や記述の仕方などには改善の余地がないわけではない。まず、本論文の理論分析は、そもそも情報の非対称性や契約の不完備性という理論構造が複雑になりがちな問題を扱っているために分析モデルは比較的単純になっている。そのため、それを現実の政策論議やマクロモデルに応用していくには、もう少し丁寧な仮定等の説明やモデル分析が望ましいという指摘があった。また、現実の問題に整合的なモデル設定にしようとするため、ややアドホックと思われるような仮定が設定される部分があり、これらの点にも改善の余地が認められた。しかしながら、これらの点はいずれも今後の更なる研究の発展を示唆するものであり、本論文の価値を損なうものではないと考えられる。

 以上により、審査委員は全員一致で本論文を博士(経済学)のが学位授与に値するものであると判断した。

審査委員(主査)柳川 範之                            新井 富雄

福田 慎一

高橋 明彦

松村 敏弘

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