No | 120360 | |
著者(漢字) | 北村,律 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | キタムラ,タダシ | |
標題(和) | 脱内皮型同種大動脈移植におけるレシピエント骨髄細胞移植の内膜肥厚抑制効果に関する研究 | |
標題(洋) | Seeding of Recipient Bone Marrow Cells Reduces Neointimal Hyperplasia of De-endothelialized Rat Aortic Allograft | |
報告番号 | 120360 | |
報告番号 | 甲20360 | |
学位授与日 | 2005.03.24 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第2509号 | |
研究科 | 医学系研究科 | |
専攻 | 外科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 背景 心臓血管外科領域での移植医療の進歩に伴い、移植片の血管内膜肥厚が移植の成否を決定する要素の一つであることが解明されてきた。また、長期に耐用する小口径の同種血管移植は、移植片の血管内膜肥厚のため未だ達成されていない。近年、レシピエントの骨髄由来の前駆細胞が移植片の血管内膜肥厚の形成に関与していることを示唆する報告がなされている。そこで今回、再生医療的手法を用いて移植片の血管内膜肥厚を抑制することが可能かどうかについてラットの同種大動脈移植モデルを用いて検討するに至った。 目的 小口径血管への細胞播種法を検討し、脱内皮したラット同種大動脈にレシピエントの骨髄細胞を播種することが、移植片の内膜肥厚に与える影響を示す。 方法 予備実験として、化学的脱内皮を施したWKYラットの腹部大動脈に、ルイスラットの骨髄細胞を、フィブリン糊を用いたグループと、そうでないグループでそれぞれ播種した。本実験ではWKYラットの腹部大動脈を化学的に脱内皮し、ルイスラットに同所移植するモデルを用いた。そのまま移植するグループ(n=6)とレシピエントの骨髄細胞を播種してから移植するグループ(n=6)で、28日後の組織学的所見を比較した。 結果 ルイスラットの骨髄細胞は、フィブリン糊を用いたグループでは、脱内皮したWKYラットの腹部大動脈に播種することができたが、用いないグループでは播種することができなかった。移植モデルではレシピエント骨髄細胞播種により28日後の内膜肥厚が抑制された(Fig)。また播種された骨髄細胞は移植片の内膜にとどまっているものもあれば、28日目の時点で中膜に浸潤しCD31 やα-SMAを発現しているものもあった。 考察 化学的に脱内皮されたラット大動脈の内腔は平滑であるため、そのままでは滑らかな球形の骨髄細胞を播種することができないが、フィブリン糊を用いることで接着が可能であったと考えられる。移植片の内膜肥厚は慢性拒絶により生じると考えられており、今回レシピエント由来の細胞で内腔を覆うことで内膜肥厚の抑制に有利に働いたと考えられる。骨髄細胞は血管内皮細胞にも平滑筋細胞にも分化しうるが、組織障害修復、病的内膜肥厚のいずれにも寄与する可能性があり、骨髄由来のどのような細胞が内膜肥厚の抑制に重要な役割を果たしているかは不明であり、拒絶のメカニズムと同様、今後さらなる研究が必要である。 結語 脱内皮したラット同種大動脈の移植において、フィブリン糊を用いることで骨髄細胞播種は可能であり、また、レシピエント骨髄細胞播種により内膜肥厚は抑制された。 DE:脱内皮後そのまま移植 BM:骨髄細胞を播種してから移植 *:p=0.0077 Fig 移植28日後の移植片の内膜/中膜面積比(I/M ratio) | |
審査要旨 | 近年、心臓血管外科領域での移植医療が盛んに行われるようになったが、現時点で長期耐用型、あるいは小口径の血管移植は達成されていない。それらの実現のためには内膜肥厚抑制が重要な役割を担うと考えられているが、本研究は、骨髄細胞播種により移植片の血管内膜肥厚を抑制することが可能かどうかについてラットの脱内皮型同種大動脈移植モデルを用いて検討し、下記の結果を得ている。 1. コラゲナーゼを用いた化学的脱内皮を施したラット同種大動脈移植モデルにおいて、フィブリン糊を用いることで、グラフト血管内腔にレシピエントの骨髄細胞を播種することが可能であることが示された。 2. 脱内皮のみを施して同種大動脈移植したグループと、脱内皮の後骨髄細胞播種を行ってから移植したグループの間で、移植後4週において移植片の内膜・中膜面積比を比較したところ、骨髄細胞播種を行ってから移植したグループの方が有意に内膜・中膜面積比が小さく、骨髄細胞播種によって内膜肥厚が抑制されることが示された。 3. グラフト血管内腔に播種されたレシピエント骨髄細胞は、移植後4週において内膜にとどまっているものもあれば、7日で中膜に浸潤するものもあり、また、4週目においてCD31やα-SMAを発現するものもあることが示された。 以上、本論文は極小動脈に対してもフィブリン糊を用いることで骨髄細胞播種は可能であること、レシピエント骨髄細胞播種により脱内皮型ラット同種大動脈移植において内膜肥厚は抑制されること、播種された骨髄細胞が中膜に浸潤し、内皮細胞、平滑筋細胞に分化する可能性があることを明らかにし、今後の長期耐用型同種動脈移植法、小口径同種動脈移植法の開発に貢献し、さらに内腔面だけでなく、中膜を標的とした再生医療的技法の開発の糸口になると考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 | |
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