学位論文要旨



No 120617
著者(漢字) 山内,潤一郎
著者(英字)
著者(カナ) ヤマウチ,ジュンイチロウ
標題(和) 複合関節動作における筋活動調節機構の解明とその応用
標題(洋) Neuromuscular regulatory mechanisms of human multi-joint movements
報告番号 120617
報告番号 甲20617
学位授与日 2005.07.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(学術)
学位記番号 博総合第593号
研究科 総合文化研究科
専攻 広域科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 石井,直方
 東京大学 教授 小林,寛道
 東京大学 教授 大築,立志
 東京大学 助教授 金久,博昭
 東京大学 助教授 松田,良一
内容要旨 要旨を表示する

【背景】

ヒトの運動能力を評価するために、運動器の生理学的・力学的特性を理解することは重要である。すべてのヒトの動作は、骨格筋の活動によって起こる。筋活動は等尺性または静的活動と等張力性、等速性、増張力性筋活動を含む動的活動の2つに大別される。これらの筋活動状態には筋(筋線維)本来の特性としての長さ−張力関係や力−速度関係が関与し、筋活動能力を決定する要因となる。Gordon et al(1966)によって、カエル骨格筋単一線維の等尺性張力はサルコメア長に依存して変化し、サルコメア長がおよそ2.0μmのときに最大張力が発揮されることが示された(長さ−張力関係)。ヒト生体内の最大筋力の測定では、筋の長さ-張力関係にテコの要素などを加え、関節角度−トルク関係として評価するのが一般的である。一方、筋の動的特性として、筋の発揮する張力の大きさと短縮速度との間に一定の関係があることが古くから知られている。筋にかかる負荷(張力)が増えると筋の短縮速度は低下し、最終的に負荷が筋の等尺性最大張力に到達すると短縮速度はゼロとなる。カエル縫工筋では、筋の力と速度の関係は、Fenn and Marsh (1935)によって指数関数(exponential funtion)で近似され、さらにHill(1938)によって直角双曲線(hyperbola)でより的確に近似されることが示された。Hillによって記載された力−速度関係(Hillの特性式)は、アクチンとミオシン分子の相互作用のレベルからヒトの単関節動作に至るレベルで成り立つことがわかっている。一方、これまでにヒト複合関節動作時の筋機能を、筋の静的な力発揮特性を考慮した相対的な等張力性条件下で評価した例は存在せず、したがってその動的特性のメカニズムも明らかにされていない。複合関節動作において生体内の筋力、スピード、パワーがどの様に変化するかを調べることは、身体パフォーマンスとの関連から筋機能を評価するために重要である。

本論文では,1)複合関節動作の動的特性はどのようになるか、2)複合関節動作においてどのような筋の相互作用が働くか、3)加齢に伴う筋機能の変化やトレーニング効果を評価するために複合関節動作の動的特性をどのように利用できるか、を調べることを目的とし、以下のような研究を行った。

【複合関節動作のカ-速度関係】

研究1)サーボ制御式膝・股関節伸展ダイナモメータを用いた複合関節動作の動的特性の評価膝・股関節伸展動作における踏力を高精度のサーボ制御により任意に固定(force clamp)し、長さ-力関係を考慮に入れた相対的な等張力性条件下で動作速度を測定できるダイナモメータを開発した。これによって得られる力−速度関係は直線近似され、比較的低負荷での数回の測定から、等尺性最大筋力(Fmax)、無負荷最大速度(Vmax)、最大パワー(Pmax)を推定することが可能となった。

研究2)電磁負荷制御型リカベント式サイクル・エルゴメータによるトルク-速度関係の評価電磁負荷制御型リカベント式サイクル・エルゴメータを用い、一定負荷ごとに測定する方法と一度に連続段階的に負荷を変えて制御する新たな方法で得られるトルク−速度関係を評価した。その結果、トルク−速度関係は単一制御、連続制御間で差が認められなかった。またこれらは直線でよく近似され、サーボ制御式膝・股関節ダイナモメータで得られた力−速度関係と同様の傾向を示した。

【複合関節動作の神経-筋調節機構:直線的な力-速度関係のメカニズム】

研究3)膝・股関節伸展動作中の力発揮と筋活動の関係複合関節動作における力−速度関係は直線近似され、Hillの特性式で近似される双曲線と異なっていた。しかし、こうした差異が生じるメカニズムは十分には解明されていない。複合関節動作の動的特性には、複数の筋の相互作用が影響していると考えられるので、まず膝・股関節伸展動作に関わる各筋の筋電図解析を行った。膝・股関節伸展動作に関わる筋の活動レベルは等張力負荷条件下では有意な差はなかったが、膝伸筋群では等尺性筋力発.揮時に等張力性条件下に比べ活動レベルが低かった。一方、股関節伸筋群では、低負荷・高速度で筋活動レベルが低下する傾向があった。したがって、高負荷で膝伸筋群の活動レベルが低下し、低負荷では股関節伸筋群の活動レベルが低下することにより、力−速度関係がより直線的な様相を示す可能性が示唆された。

研究4)2関節筋(半腱様筋)への電気刺激が膝・股関節動作の力-速度関係に及ぼす影響上記結果から、股関節伸筋の活動レベルの低下が低負荷での速度低下の要因となることが示唆されたため膝・股関節伸展動作中に半腱様筋(ST)の活動レベルを電気刺激(ES)によって上げた場合の、力-速度関係の変化を検討した。STへの電気刺激の効果は各個人のSTの筋活動レベルに依存していた。本来STの筋活動レベルの低い被験者では電気刺激によって低負荷における速度が向上したが、逆にSTの筋活動レベルの高い被験者では電気刺激によって速度が低下した。このことから、股関節伸筋の活動レベルが低負荷での速度の重要な要素となるものの、過度の活動レベルの上昇は逆に膝伸筋に対する内的負荷となり得る可能性が示された。

【加齢が複合関節動作の筋機能に及ぼす影響】

研究5)両側性および片側性膝・股関節伸展動作における若齢と高齢女性の筋の出力特性若齢女性(平均22.15歳)と高齢女性(平均69.17歳)を対象として両側性および片側性膝・股関節伸展動作の特性を調べた。Fmax、Pmaxと垂直跳びの跳躍高は若齢者の方が高齢者に比べ有意に高く、両側性欠損が若齢者および高齢者でそれぞれおよそ20、15、25%と23、20、21%認められた。一方、Vmaxは若齢者、高齢者ともに両側、片側のいずれにおいても同じで、若齢者と高齢者間にも差はなかった。このことからVmaxはFmaxに依存せず、両者は独立した変数であることが示唆された。

研究6)膝・股関節伸展動作における最大筋力、無負荷短縮速度、最大パワーの加齢変化加齢(18〜82歳の男女(n=285))に伴う膝・股関節伸展動作のFmax,Vmax,Pmaxの変化を横断的測定により調べた。等張力性条件下で膝・股関節伸展動作のカー速度関係は、年齢、性差に関わらず直線に近い関係が得られた。カー速度関係から推定したFmax,Vmax,Pmaxについての標準加齢曲線を作った。FmaxとPmaxは加齢と共に減少するが、Vmaxは変化がみられなかった。また最大筋力発揮までの立ち上がり時間は高齢者の方が若齢者に比べ長かった。これらの結果から、膝・股関伸展節動作の筋力やパワーは加齢に伴って低下するが、無負荷短縮速度はそれ程加齢に影響されないことがわかった。

【トレーニングが複合関節動作時の筋機能に及ぼす効果】

研究7)膝・股関節伸展レジスタンストレーニングが筋力および無負荷最大速度に及ぼす効果へサーボ制御式ダイナモメータを用いて中強度の膝・股関節伸展レジスタンストレーニングを10週間行ったところ、Fmaxはトレーニング期間を通して直線的に上昇するが、Vmaxは6週目までにピークとなり以後一定となる傾向が認められた。また、主にVmaxの増大によりPmaxも増大したが、垂直跳びの跳躍高は増大しなかった。このことは、慣性の影響を低減したトレーニングはVmaxを増大させるものの、ジャンプパフォーマンスを改善させず、いわゆる"スピードトレーニング"や"パワートレーニング"では初期加速に必要な大きな筋力発揮が重要な要素となることが示唆された。

研究8)トレーニング量操作のピリオダイゼーション・トレーニングが女性の筋機能に及ぼす効果トレーニング量を増加した20週間のピリオダイゼーションプログラムを実施した。Fmaxは12週目まで上昇した後プラトーに陥るが、トレーニング量の増加は、プラトーを打開できなかった。一方、Vmaxはトレーニングの6〜8週目までにピークとなり以後一定となる傾向があるが、その後トレーニング量の増加によってさらなる向上がみられた。中強度のトレーニングにおいてトレーニング量の増加は膝・股関節伸展動作の筋力へ大きな効果はなかったが、動作スピードや筋の相互作用の改善に効果があることが示唆された。

研究9)高齢者の自体重トレーニングが複合関節動作時の筋機能に及ぼす効果トレーニング未経験者の中・高齢者を対象として、自体重を使ったスクワット等の日常動作に近いレジスタンスエクササイズを10ヶ月間実施し、トレーニング効果を一般的な体力指標とサーボ制御式ダイナモメータによって評価した。トレーニングによりFmaxに有意な増加がみられた。また、下肢筋力を指標とした生理学的年齢が有意に低下した。一方でVmaxは1年以内のトレーニングでは変化しなかった。

研究10)高齢者の2年間の長期的自体重トレーニングが複合関節動作の筋機能へ与える効果:筋力増加とエクササイズ強度の関係

研究4-3)と同様の研究を2年間長期的に実施し、下肢筋機能へのトレーニング効果を検討した。自体重を負荷としたトレーニング1年後にはFmaxと下肢筋力年齢に有意な向上を示したが、1年後と2年後の間には大きな変化はなかった。一方、Vmaxは1年後に変化がみられなかったが、2年後に向上がみられた。その結果、Pmaxは1年後と2年後共に有意な増加がみられた。また、垂直とびではスクワットジャンプ(SJ)のみが2年後に向上を示した。Fmaxの効果の大きさはトレーニング前の体重/Fmax示したトレーニング強度と有意な相関を示し、高齢者に対するトレーニング処方においてもトレーニング強度が重要であることが示唆された。

【複合関節動作の筋機能と様々な身体機能変数I】

研究11)収縮様式の異なる複合関節動作時の血圧応答等張力性と等尺性筋力発揮中の血圧変化を,トノメトリー法(JENTOW-7700)により測定した。等張力性筋力発揮中の血圧は等尺性筋力発揮中に比べ血圧上昇は小さかった。また、等尺性筋力発揮中の血圧応答の大きさはF0とVmaxに相関を示した。

研究12)複合関節動作の最大筋力、速度、パワーと垂直跳び能力の関係サーボ制御式ダイナモメータによって得られるFmax,VmaxとPmaxと垂直跳び能力の関係について検討した。すべて変数は垂直跳びと有意な相関示し、特にPmaxが高い相関を示した。一方、FmaxとVmaxの間には相関はなく、独立した変数であることが示された。サーボ制御式ダイナモメータによる筋機能の測定は、身体に比較的軽い負担で垂直跳びなど下肢の複合関節動作パフォーマンスを的確に評価することに応用できることがわかった。

【まとめ】

本研究で用いた方法により日常的な身体動作にとって重要な複合関節動作の動的特性の評価が可能となった。複合関節動作における力-速度関係はHillの特性式で近似されるような双曲線にはならず、直線で近似された。その結果、小さな力発揮で等尺性最大筋力、無負荷最大速度が容易に推定できるようになり、また血圧上昇も小さいことから高齢者の転倒予防などを目的とした安全な下肢筋機能の評価に応用できることがわかった。

複合関節動作には多くの筋が複雑に関与している。膝・股関節伸展動作では、単関節筋として股関節伸展に大臀筋、膝関節伸展に広筋群[内側広筋、中間広筋、外側広筋]、2関節筋として膝・股関節伸展に大腿直筋とハムストリングス[大腿二頭筋(長頭)、半膜様筋、半腱様筋]が関与している。膝・股関節伸展動作において膝伸筋の筋活動は低負荷で大きく、等尺性収縮時に比べ有意な差がみられた。高負荷では相反抑制などを通じて膝伸筋の活動レベルが低下する可能性が考えられる。一方、膝伸筋の拮抗筋あたるSTは膝・股関節伸展動作における低負荷時の短縮速度を調節している可能性が示唆された。STは股関節伸筋の働きを担いつつも、過度の活動は膝伸筋の拮抗筋として内的負荷を生じ、膝伸筋の活動の妨げとなる。したがって、STの至適な活動レベルは低負荷のもとで大きな速度を生み出すために重要となる可能性が考えられる。これらの力に依存した筋活動の変化や、筋間の力学的相互作用が膝・股関節伸展動作においてカー速度関係が直線状となるメカニズムの1つになっていると考えられる。

本研究はまた、加齢に伴う下肢の筋機能低下の主要因が最大筋力の低下であることを示した。一方、無負荷最大短縮速度は加齢に影響されず、筋線維長やサルコメア数などが加齢に伴って大きく変わらないことを示唆している。また、レジスタンス・エクササイズはFmaxとVmax両方の向上に有効であるものの、Vmaxはトレーニング量や特異的なトレーニングに対する反応性は高いが、トレーナビリティーの上限は低いことがわかった。一方、自体重におけるトレーニング後のFmaxの増加率はトレーニング前のFmaxあたりの体重負荷で算出したトレーニング強度と相関を示し、このことによりトレーニング処方におけるトレーニング強度の重要性が示唆された。一方、継続的な自体重によるレジスタンス・エクササイズは筋の相互作用の改善などによって、動作スピード・パワーを向上させるのに有効であり、高齢者のQOLを改善する効果をもっと考えられる。

審査要旨 要旨を表示する

ヒトの身体運動は,原動機としての骨格筋の動的特性と,筋活動を調節する神経系の機能に強く支配される。エンジンやモータなどの人工的な原動機の動的特性は一般に,負荷として作用する力と,原動機の発生する速度の関係で表されることから,筋についても同様の関係が古くから調べられてきた。特に,A.V.Hill(1938)は,動物から摘出した骨格筋を用い,等張力性条件のもとで筋が発生する力と短縮速度の間の関係を調べ,この関係が直角双曲線で近似されることを示した(力-速度関係)。この双曲線で近似される力-速度関係は,ミオシン分子とアクチンフィラメントの相互作用のレベルで決定されることから(Ishii et al., 1997),基本的にすべての筋で成り立つものと考えられている。また,ヒト生体内の筋運動においても,例えば肘屈曲運動などのように単純な運動(単関節動作)では,力-速度関係は,筋単体の場合と同様の直角双曲線で近似されることが示されている。一方,実際の身体動作の多くはこのような単純な動作ではなく,複数の関節と筋が同時にかかわる複合関節動作である。このような複合関節動作の動的特性は,おそらく関連する個々の筋の特性の単純和として表せるものではなく,個々の筋の解剖学的位置や,個々の筋の活動を調節する神経系の機能が関与することで,筋単体がもつ特性とは大きく異なったものとなる可能性がある。しかし,主に技術的な問題から,複合関節動作の動的特性を厳密な力学的条件下で調べた研究はきわめて少ないのが現状である。本研究は,新たに開発した「サーボ制御式膝・股関節伸展ダイナモメータ」を用い,ヒト生体内での複合関節動作の動的特性とそのメカニズムを調べ,さらにこの装置によって得られるデータをどのように一般的な筋機能の測定やエクササイズプログラムの作成に応用できるかを示したものである。

本研究で使用したダイナモメータは,従来単一筋線維を対象として行われてきた "force clamp"法の原理をヒト生体内での測定に応用したものであり,フィードバック機構により膝・股関節伸展筋力を任意の関数に固定するように動作速度を調節するものである。まずこの装置を用いて力-速度関係を調べるため,等尺性条件下での長さ-張力関係(脚長と踏力の関係)に基づいて,フィードバック制御のための力制御関数を決定した。この操作により,最大筋力に対する相対的筋力を,脚長によらず常に一定に保つように制御することが可能となった。このように厳密な条件下(等張力性条件)で複合関節動作の動的特性を調べた研究は本研究が初めてである。得られた力-速度関係は,直線できわめてよく近似され,骨格筋単体や単関節動作で見られ双曲線型の力-速度関係とは大きく異なる様相を呈した。また,同様の直線的な力-速度関係は,膝・股関節伸展動作のみならず,別途開発した「リカンベント型サイクルエルゴメータ」を用いたペダリング動作の解析によっても得られた。

そこで,力-速度関係がこのように直線状になるメカニズムについて,筋の電気的活動の測定,筋の電気刺激の両面から調べた。膝・股関節伸展動作に関わる7つの主動筋から表面筋電図を導出し,その時間当たり積分値から筋活動量を推定したところ,力発揮の大きな領域では膝伸筋の活動が抑制され,逆に力が小さく速度が高い領域では股関節伸筋の活動が抑制されることがわかった。これらの結果から,個々の筋の力-速度関係の単純和は双曲線になるものの,力の大きな領域と力の小さな領域の双方で,筋活動の抑制により速度が低減する結果,直線に近い力-速度関係となることが示唆された。次に,この可能性を検証するために,股関節伸筋である半腱様筋の活動を電気刺激により増強した場合の効果を調べた。その結果,電気刺激の効果は被検者に依存し,低負荷での速度が上昇する場合と,逆に低下する場合に分かれた。また本来半腱様筋の活動レベルが高い場合には電気刺激により速度が低下し,逆の場合には速度が上昇する傾向が見られた。半腱様筋は,股関節伸展と膝関節屈曲の作用を併せ持つ二関節筋であることから,その過度の活動は膝伸展に対する内的負荷となってしまうものと考えられた。以上の結果から,膝・股関節伸展動作が直線状の力-速度関係を呈するメカニズムに,複数の主動筋の活動調節機構が関わっていることが判明した。特に,二関節筋である半腱様筋については,その活動が高すぎても低すぎても速度の低減が起こることから,低負荷領域での速度発揮には高度の巧緻性が要求されることが示唆された。

このように力-速度関係が直線で近似されれば,低負荷での複数の測定から,最大筋力(Fmax),無負荷最大速度(Vmax),最大パワー(Pmax)などを外挿により推定することが可能である。そこで本研究では,このような利点を高齢者の筋機能評価やトレーニング効果の判定などに応用するための多様な基礎的測定を行った。まず,等張力性条件下での膝・股関節伸展筋力発揮時には,従来から一般的に行われている等尺性最大筋力測定の場合に比べ,動作中の血圧上昇が少ないことを実証した。その上で,横断的測定により,Fmax,Vmax,Pmaxなどの加齢変化を調べ,Fmax が加齢に伴い著しく低下するのに対し,Vmax は加齢の影響をほとんど受けないことなどを示した。また,高齢者を対象とした2年間の長期筋力トレーニングの結果,初期の1年間で主にFmax が増加し,2年目にVmax が増加することを示した。これらの成果はいずれも,新しい測定方法によって得られた新規の知見とみなすことができる。

以上のように本研究は,厳密な力学的条件下でのヒト複合関節動作の動的特性を明らかにし,またその測定・評価法を,高齢者の筋機能測定など多方面に応用できる可能性を示した点で高く評価される。したがって,本審査会は博士(学術)の学位を授与するにふさわしいものと認定する。

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