学位論文要旨



No 120670
著者(漢字) 大谷,美沙都
著者(英字)
著者(カナ) オオタニ,ミサト
標題(和) シロイヌナズナにおける細胞増殖能の制御機構に関する研究
標題(洋) Studies on regulatory mechanisms of cell proliferation competence in Arabidopsis thaliana
報告番号 120670
報告番号 甲20670
学位授与日 2005.09.30
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博理第4746号
研究科 理学系研究科
専攻 生物科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 助教授 杉山,宗隆
 東京大学 教授 中野,明彦
 東京大学 教授 長田,敏行
 東京大学 助教授 川口,正和司
 東京大学 教授 福田,裕穂
内容要旨 要旨を表示する

多細胞生物の正常な発生や形態形成には、時間的・空間的な細胞増殖の制御が不可欠である。この細胞増殖の制御は、細胞周期の進行と停止によるだけではなく、非増殖状態も含めた多段階で行われると考えられる。すなわち、増殖していない細胞には、増殖準備に関していくつかの異なる段階があり、これらの段階間の移行にも様々な制御が働いていることが想定される。とくに細胞増殖能の獲得、喪失は重要な制御点になり得る。植物では、発生や分化の柔軟性が増殖能の可逆的な制御と関連していると考えられ、こうしたことからも増殖能制御の機構は非常に興味深い。

シロイヌナズナのsrd2(shoot redifferentiation defective)は、根の脱分化、カルスの成長などはほぼ正常である一方、旺軸の脱分化新たな分裂組織形成に関しては強い温度感受性を示すという、特徴的な表現型をもつ突然変異体である。srd2変異が旺軸の脱分化に影響し、根の脱分化には影響しないことについては、根と旺軸での細胞増殖能の違いと増殖能獲得へのSRD2の関与を仮定する説明がなされてきた。つまり、根が比較的高い増殖能を保持しているのに対し、旺軸は増殖能を失っており、脱分化の過程で増殖能を再獲得するのにSRD2機能を要求するという仮説である。脱分化だけでなく分裂組織形成にも高い増殖能が必要であるとすれsrd2の表現型はすべて増殖能励起の欠陥によると考えることもできる。

こうしたことから私は、srd2が植物の細胞増殖能の制御機構や分子的実体、ひいては分化の柔軟性に関しても重要な手がかりを与えると考え、この変異体の解析に取り組んできた。修士課程では、SRD2がヒトのSNAP50と高い相同性を示すタンパク質をコードすることを明らかにした。SNAP50がsnRNA転写に必要な因子として見出されたSNAPcのサブユニットであることから、SRD2もsnRNA転写活性化に働いていると類推された。また、この推測を支障するいくつかの予備的な結果も得た。博士課程では、この研究をさらに発展させてSRD2の分子機能解析を進め、SRD2による細胞増殖能の制御機構の解明を目指した。

結果と考察

SRD2のsnRNA転写活性化機能の検証

U2.3 snRNA遺伝子プロモーターの下流にルシフェラーゼ(LUC)コード配列を配置したレポーター遺伝子(U2.3::LUC)を作製し、これを野生型とsrd2のカルスに導入し、許容温度と制限温度でのLUC発現を比較した。その結果、srd2カルスではLUC発現が温度感受性を示すことが分かった(図1)。また、このとき野生型SRD2cDNAを同時に導入すると、LUC発現の高温感受性が緩解した。さらにsnRNAの遺伝子のプロモーター中に同定されていたシス因子、USEに塩基置換を施した変異型レポーター遺伝子を用いた実験では、LUC発現が低下するとともにsrd2変異の影響を受けなくなることも明らかになった(図1)。以上の結果より、SRD2がsnRNA転写活性化因子であることが証明されるとともに、その標的がUSEであることが示唆された。

胚軸脱分化過程におけるsnRNA量の変動とSRD2の役割

胚軸外植片におけるSRD2mRNAの発現解析から、SRD2発現がオーキシンに応答して増大すること、サイトカイニン添加でさらに発現量が上昇することが明らかとなった(図2A)。このSRD2発現を誘導するホルモン条件は、細胞増殖の再開を引き起こす条件と一致していた。またこのとき、snRNA量はSRD2発現とよく対応する形で増大していた(図2B)。胚軸脱分化過程における蓄積量変動とsrd2変異の影響を、いくつかのsnRNA分子種について比較検討した結果、srd2変異は、遺伝子のプロモーター領域にUSEをもつタイプのsnRNA量の増大を選択的に抑制し、とくに制限温度下では蓄積量を減少させることが分かった(図2C)。さらにU2.3snRNA遺伝子プロモーターとuidA遺伝子からなるキメラ遺伝子(U2.3::GUS)を導入した形質転換体を用いて、胚軸脱分化過程におけるGUS活性変動を調べたところ、srd2変異がGUS活性上昇を強く阻害することが示された(図2D)。これらの結果から、植物ホルモンによって誘導されたSRD2がUSEに働いてsnRNA転写を活性化することが、旺軸の脱分化を成立させる要件になっていると考えられた。

細胞増殖能の器官間差とsnRNAレベルの関連

srd2変異体の表現型から、根は胚軸よりも高い細胞増殖能を保持していると考えられる。SRD2がsnRNA転写活性化因子であったことから、この増殖能を規定するものはsnRNAであり、根ではsnRNAレベルが相対的に高いと推測された。RNAゲルブロット解析を行ったところ、実際に根は旺軸よりも多量のsnRNAを含むことが確認された(図3A)。また、U2.3::GUS形質転換植物体において、旺軸では見られない高いGUS発現が根の中心柱領域に検出された(図3B-E)。これらの結果により、器官による細胞増殖能の違いとsnRNAレベルとの対応関係が裏付けられた。

分裂組織形成過程におけるsnRNA量の変動とSRD2の役割

srd2変異体の表現型は、SRD2が分裂組織形成においても重要な機能を果たしていることを示している。分裂組織形成時のsnRNAの動態を調べるため、側根形成過程を対象に、抗TMG抗体(TMG;trimethylguanosine、snRNA)に付与されるキャップ構造)を用いた免疫組織学的解析を行った。この結果、野生型ではごく初期の段階から側根原基の細胞の核に多量のsnRNAが検出された。snRNA量は原基形成の間を通して高いレベルに保たれたが、その後一旦大きく減少し、側根が伸長し始める段階になって再び増大した(図4A)。これに対して、制限温度下で培養したsrd2変異体では原基形成後のsnRNA量の再上昇が明瞭には見られなかった(図4B)。このような原基は分裂組織を確立できないまま成長を続け、異常な形状となった。この結果により、正常な分裂組織形成にSRD2によるsnRNA転写活性化が必須であることが示唆された。

カルスからのシュート再生過程においても、srd2変異が制限温度下でsnRNA蓄積量を減少させることが確認され、srd2変異体のシュート再生の温度感受性とsnRNA蓄積量の低下とが関連づけられた。なお、シュート再生過程初期における茎頂分裂組織(SAM)形成関連遺伝子の発現パターンには、srd2変異はとくに影響しなかった。

SRD2ノックアウト変異体の表現型解析

SRD2の生理的役割についてさらに情報を得るため、SRD2遺伝子座にT-DNA挿入をもつ2つの系統の表現型解析を行った(図5)。いずれの系統でもT-DNA挿入に関するホモ接合個体は見出されず(表1)、SRD2機能の完全欠損が胚致死あるいは配偶体致死をもたらすことが示された。また、SRD2/srd2-2個体と野生型との交配実験の結果から、srd2-2変異が雌雄両方の配偶体に影響することが分かった(表1)。SRD/srd2-2個体では、しばしば花粉管の到達していない旺珠や、胚発生の起こっていない旺珠が観察された(図6)。これらのことから、SRD2によるsnRNA転写活性化が生殖や初期発生にも重要であることが示唆された。

srd2と類似した表現型を示すrid1変異体の解析

snRNAには多くの分子種があり、mRNA前駆体スプライシングに関与するものや、rRNAの成熟・修飾を担うものが含まれる。SRD2による転写活性化を受けると考えられるsnRNAはこの両群に跨っており、どちらのsnRNA機能が脱分化や分裂組織形成で鍵となっているのかは、SRD2の解析からは分からなかった。この点について手掛かりを得るため、当研究室で単離されたrid1(root intiation defective1)の解析を行った。 rid1はsrd2同様、脱分化と分裂組織形成に関して特徴的な温度感受性を示す変異体である(図7)。rid1変異の存在箇所を精密染色体マッピングで絞り込み、当該領域の塩基配列の比較解析を行って、rid1変異体ゲノムのDEAH型RNAヘリカーゼ遺伝子、Atlg26370内に塩基置換を発見した(図8)。Atlg26370は、mRNA前駆体スプライシングに働くとされるDDX8(ヒト)やPrp22(酵母)ととくに相同性が高く、スプライシング反応への関与が予想される。これにより、スプライシングの脱分化と分裂組織形成における重要性が示唆された。

まとめと展望

本研究では、シロイヌナズナの温度感受性突然変異体srd2を糸口に、細胞増殖能の制御機構に迫った。全ての結果を総合すると、植物の細胞増殖能を規定するのはsnRNAレベルと、おそらくはそれによって制限されるmRNA前駆体スプライシング活性であり、SRD2はsnRNA転写活性化を通して増殖能励起に働いている、とまとめられる。この細胞増殖能は、脱分化に伴って増大するだけでなく、通常の発生過程でも大きく変動し、とくにその一部は分裂組織形成に深く関わっている。snRNA転写制御という観点からは、本研究はsnRNAの転写活性のダイナミズムとその生理的な意義を初めて示したと言える。今後はスプライシング活性も含めた包括的な解析により、植物の発生の基礎要因について一層理解が深まることが期待される。

図1.U2.3snRNAプロモーター活性に対するsrd2変異の影響

野生型(WT)およびsrd2の胚軸由来カルスを22℃、RIMで1日間培養し、不定根原基を誘導した。この外植片に野生型USE(wtUSE)または変異型USE(mu1USE、mu2USE)をもつU2.3::LUCをレポーターとして導入し、22℃または28℃で1日間培養後LUCアツセイを行った。このとき35S::SRD2をエフェクターとして導入し、その対照にはベクターのみを導入した。なお、LUC活性は同時に導入した35S::GUSに由来するGUS活性で標準化した。mu1USEではLUC活性が大きく低下し、mu2USEでは活性が検出できなかった。得た値から28℃/22℃の比を算出し、その平均値を示した。シンボルが異なる値同士は、統計的に有意な差がある(Mann-Whitney U test;P<0.05)。wtUSE、エフェクターなしの場合にsrd2でLUC活性の温度感受性が見られたが、35S::SRD2を同時導入するとこの温度感受性が解除された。これに対して、mu1USEではこうしたsrd2変異による温度感受性が検出されなかった。

図2.胚軸脱分化過程におけるSRD2 mRNAおよびsnRNA蓄積量の変動

(A)植物ホルモン組成の異なる様々な培地に置床し22℃で培養した野生型胚軸外植片から全RNAを調製し、これを鋳型に定量的RT-PCR解析を行って、SRD2 mRNA量を算出した(18S rRNAで標準化)。用いた培地は、ホルモン無添加のBM、0.1mg/l kinetinを含むBM+K、0.5mg/l 2,4-Dを含むBM+D、0.1mg/l kinetinと0.5mg/l2,4-Dを含むCIMの4種類。SRD2mRNAはCIM培養によって一過的に発現し、発現量は24時間目に最大となった。またSRD2発現はBM+Dでも誘導されたが、発現レベルはCIMの場合よりも低かった。(B)(A)と同様の条件で培養した野生型胚軸外植片の全RNAを用いてRNAゲルブロット解析を行い、U2 snRNA蓄積量の変動を調べた。下段はローディングコントロールのrRNA。 U2snRNA蓄積量はCIM培養によって増大した。また、BM+Dで培養した場合にもある程度の増大が見られた。(C)22℃または28℃で2日間、CIMで培養した野生型(WT)とsrd2の胚軸外植片から全RNAを調製し、RNAゲルブロット解析を行って、snRNA分子種ごとに蓄積量変動を調べた。5.8S rRNAはローディングコントロール。28℃で培養したsrd2では、プロモーターにUSE-TATAボックスをもつsnRNAの蓄積量増大が抑えられた。一方、クラスターとしてコードされているsnRNAには、srd2変異の影響は見られなかった。(D)U2.3::GUS形質転換体の胚軸をCIMに置床して22℃または28℃で培養し、GUS活性を調べた。野生型(WT)ではGUS活性がCIM培養によって上昇するが、srd2ではこうした上昇が抑えられた。スケールバー;100μm。

図3.胚軸と根のsnRNAレベルの比較

(A)22℃で育てた播種後12日目の野生型(WT)およびsrd2の芽生えの胚軸(H)と根(R)から全RNAを抽出し、抗TMG抗体を用いたRNAゲルブロット解析を行い、snRNAを検出した。5.8SrRNAはローディングコントロール。野生型、srd2ともに胚軸よりも根のsnRNA蓄積量の方が多かった。(B-E)U2.3::GUS形質転換体の播種後12日目の芽生えにおけるGUS活性。(C)は胚軸、(D)は根の拡大図。さらに根の横断面を(E)に示す。胚軸ではGUS活性が検出されなかったが、根では内鞘を含む中心柱領域に強いGUS活性が見られた。スケールバー;500μm(B-D)、50μm(E)。

図4.側根形成過程におけるsnRNA蓄積量の変動

野生型(A)およびsrd2(B)の主根断片をRIMに置床し、22℃(A)または28℃(B)で培養して、側根形成を誘導した。6日後または12日後に回収し、抗TMG抗体を用いて、様々な段階の側根原基におけるsnRNA蓄積を免疫組織学的に検出した。上段はsnRNA蓄積のパターンを示す免疫顕微鏡像、中段はDAPI染色による蛍光像、下段はノマルスキー微分干渉顕微鏡像である。野生型ではsnRNA蓄積量は側根原基形成後に一旦大きく下がり(A;左から7枚目のパネル)、側根伸長が始まる頃に再び上昇してきた。28℃で形成されたsrd2側根原基では、こうしたsnRNA蓄積の再上昇が不明瞭であった。スケールバー;50μm。

表1.SRD2遺伝子座にT-DNA挿入をもつ変異系統の自殖次世代および交雑第一代における遺伝子型の分離比

図5.SRD2遺伝子座へのT-DNA挿入位置

GABI-Kat Line430FO2とSAIL 99 D12におけるT-DNA挿入位置。前者はSRD2遺伝子(Atlg28560)の第6エキソンに、後者は第1イントロンに、それぞれT-DNAが挿入されている。これらの変異アリルをsrd2-2、srd2-3と名付けた。

図6.srd2-2変異による生殖と初期発生の異常

(A) SRD2/srd2-2個体(上)とSRD2/SRD2個体(下)の長角果。前者では多くの萎縮した胚珠が観察される。(B, C)SRD2/srd2-2個体の同一長角黒内の、正常に発生している胚(B)と涯発生が観察されない胚珠(C)。(D,E)アニリンブルー染色により、 SRD2/srd2-2個体の子房内部の花粉管を観察した。花粉管の到達が見られない胚珠(D;白い矢印)や、花粉管は到達しているものの胚発生が起こらずに萎縮してしまった胚珠(E)が確認された。赤い三角形は胚珠孔に到達している花粉管を示す。スケールバー;1mm(A)、50μm(B,C)、100μm(D,E)。

図7.rid1変異体の表現型

(A)野生型(WT)、srd2、 rid1の胚軸(H)および根(R)の断片を、CIMおよびRIMに置床し、22℃または28℃で24日間培養した。どちらの変異体も胚軸外植片からのカルス形成と不定根形成については強い温度感受性を示すが、根外植片からのカルス形成は温度感受性を示さなかった。側根の発達においても、両変異体に共通した温度感受性が見られた。(B)野生型(WT)、srd2、 rid1の主根断片をRIMで14日間、22℃または28℃で培養した。どちらの変異体の側根原基も、28℃では正常な根端分裂組織を確立できず、瘤状の細胞塊として成長した。スケールバー;1cm(A)、200μm(B)。

図8. rid1変異のマッピングとRID1候補遺伝子

(A)rid1変異の染色体マッピング。マーカー名の下にある数字は組換え染色体数を示す。(B)RID1候補遺伝子(Atlg26370)のコードする推定アミノ酸配列とヒ卜DDX8との比較。RNAヘリカーゼに保存されているモチーフを青い下線で示した。rid1では赤丸で示したロイシンがフェニルアラニンに置換している。

審査要旨 要旨を表示する

本論文の主要部分は3章からなり、第1章にはシロイヌナズナSRD2タンパク質のsnRNA転写活性化因子としての分子機能とその細胞増殖能制御における役割が、第2章にはSRD2によるsnRNA発現調節の発生学的側面が、第3章にはsrd2に類似した変異体rid1の解析を通して得られたSRD2のはたらきに関する新知見がそれぞれ述べられている。また、主要部3章に先立つ序章では、研究の背景として植物細胞の増殖制御および脱分化についての分子生物学的情報がまとめられており、これと関連づけて研究の意義と目的が記されている。研究全体を統括した総合考察と展望は、3章とは別に終章として記述されている。

本研究では、胚軸脱分化や根の発達などに関して特異な温度感受性を示すシロイヌナズナの突然変異体srd2を利用して、植物細胞の増殖能制御機構の分子遺伝学的解析を実行している。まず、srd2変異体の責任遺伝子がコードするタンパク質SRD2がsnRNA転写活性化因子として作用することを証明し、多くの植物snRNA遺伝子(スプライソソームsnRNA遺伝子と一部のsnoRNA遺伝子)の上流域に存在するUSEがその標的であることを示唆した。また、細胞増殖能の器官間差がsnRNAレベルによって規定されていること、増殖能の低い組織が脱分化する際にはSRD2によるsnRNA転写活性化を必要とすることを明らかにした。さらにsrd2変異体の側根形成とシュート再生、SRD2ノックアウトの胚発生等を調査して、SRD2機能を要求する発生段階を記述した。とくに側根形成においては、SRD2に依存したsnRNAレベルのダイナミックな変動があること、この変動が根端分裂組織の確立に重要な役割をもつことを発見した。srd2類似変異体rid1の解析では、プレmRNAスプライシングへの関与が考えられるDEAH型RNAヘリカーゼ遺伝子に塩基置換を見出し、これをもとに、SRD2によるsnRNA転写調節の細胞増殖能制御における意味を論じた。研究全体を通して得られた結果は質・量ともに膨大であり、植物の細胞増殖能制御の分子的実体を捉えることに成功しているだけでなく、 snRNA転写調節の生理的意義という観点からも画期的な新情報をもたらしている。

本論文は、これらの研究成果をわかりやすい図表と正確かつ明快な英文で記述している。実験結果についての考察では、精緻な論理展開により仮説が検証され、合理的な結論が導かれている。また、当該分野の文献は、過不足なく適切に引用されている。

なお、本論文に記載された研究は、主査である杉山宗隆(東京大学大学院理学系研究科助教授)との共同研究であるが、論文提出者が主体となって実験および論証を行ったもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。

したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

UTokyo Repositoryリンク