学位論文要旨



No 121027
著者(漢字) 河合,研志
著者(英字)
著者(カナ) カワイ,ケンジ
標題(和) 局所的な地球内部構造推定のための波形インバージョン手法
標題(洋) Methods for waveform inversion for localized seismic structure
報告番号 121027
報告番号 甲21027
学位授与日 2006.03.23
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博理第4827号
研究科 理学系研究科
専攻 地球惑星科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 川勝,均
 東京大学 教授 本多,了
 東京大学 助教授 飯,隆
 東京大学 教授 纐纈,一起
 東京大学 教授 松浦,充宏
 東京大学 教授 ゲラー,ロバート
内容要旨 要旨を表示する

In order to fully extract information on localized seismic structure from observed seismic data, we have developed a methodology for seismic waveform inversion. The calculation of synthetic seismograms and their partial derivatives are the key steps in such an inversion. We have developed accurate and efficient methods for calculating broadband synthetic seismograms for spherically symmetric transversely isotropic (TI) media for both shallow and deep events. Synthetics up to 2 Hz are presented, but calculations can be readily extended to higher frequencies, albeit with increased computational requirements. We formulate the inverse problem of waveform inversion for localized structure, computing partial derivatives for the 3-D anisotropic elastic parameters at particular points in space. Our method does not use any great circle approximations in computing the synthetics and their partial derivatives. However, in order to reduce computational requirements, the heterogeneity is treated a perturbation to a spherically symmetric model in the calculations presented in this thesis. Finally, we conduct preliminary waveform inversion for a dataset sampling the D" layer beneath Central America.

審査要旨 要旨を表示する

本論文は4章からなる.第1章は,イントロダクションであり,近年の地球内部構造研究の進展,及びその中での地震波形計算手法・解析手法の発展,道具として用いるコンピュータの将来的な性能向上の見込み,などが簡潔に記されている.又それをふまえ,論文の主眼である実体波波形を使った地球内部構造インバージョンについて,その必要性と将来への発展性,その中での本論文の位置づけなどが的確に記されている.続く第2章では,実体波波形インバージョンへの第一ステップとして,正確な理論波形計算を高周波(2Hz)までおこなうアルゴリズムが提出されている.今までの手法の問題点を洗い出し,汎用性の高いアルゴリズムを導出し,完成度の高いソフト開発をおこなっている.本論文の主眼である波形インバージョンに応用するための基礎としてだけでなく,今後,構造解析地震学研究分野全般にわたって多くの研究者に使われるグローバルスタンダードのひとつになる可能性がある重要な貢献である.本アルゴルリズムでは,今後重要性が増すと思われる弾性常数の異方性の効果も組み込まれており,その意味でも汎用性が高いと考えられる.第3章では,第2章で提出したアルゴリズムをもとに,実体波波形インバージョンをおこなうための偏微分係数(異方性を含む)の計算法,特に局所的な構造推定のための波形インバージョンアルゴリズムが導出されている.米国USArrayなど大量の実体波波形データが今後解析可能になることを考えると,極めて有効でタイムリーな手法の導出であり,高く評価される.章の後半では,マントル最深部D"の構造に関して,データの違いによる異方性各成分の解像度に違いが明らかにされており,波形インバージョンにより正確な構造推定が可能になることを示唆している.第4章では,実際のデータに,実体波波形インバージョンを応用した例が示されている.D"の局所的な構造を実体波の波形インバージョンによって推定した初の研究として重要であるとともに,本論文が提出した手法が実行可能なものであることを示したという意味でも意義深い.対象となっている中米下のD"の構造は多くの研究者によってなされており,今後データを増やすことにより,詳細な構造が明らかになることを期待させるという意味で,本論文の締めくくりとして相応しい,今後の発展性をしめした章となっている.

なお,本論文第2章は,竹内希・ゲラーロバートとの共同研究であるが,論文提出者が主体となって解析を行ったもので,論文提出者の寄与が十分であると判断する.

したがって,博士(理学)の学位を授与できると認める.

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