学位論文要旨



No 121143
著者(漢字)
著者(英字) Trevai Chomchana
著者(カナ) トリワイ チョンチャナ
標題(和) 複数の移動ロボットによる巡回監視
標題(洋) On Multiple Mobile Robot Surveillance
報告番号 121143
報告番号 甲21143
学位授与日 2006.03.23
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第6233号
研究科 工学系研究科
専攻 精密機械工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 助教授 太田,順
 東京大学 教授 佐々木,健
 東京大学 教授 淺間,一
 東京大学 助教授 横井,浩史
 東京大学 助教授 藤井,輝夫
内容要旨 要旨を表示する

Remote surveillance of complex environments is an important task that arises in diverse applications including search and rescue, planetary exploration and security patrolling. In the last decades witnessed tremendous advances in distributed mobile sensing technologies. Mounting a sensor on a mobile robotic agent and using the agent to sense the environment can achieve the automation of such surveillance tasks.

It is crucial to design algorithm to perform effective surveillance tasks in an autonomous fashion. In this dissertation, we study fundamental problems that arise in surveillance mission in complex environments with distributed multiple mobile robot system.

The first sub problem we address is the complete coverage of a bounded indoor environment. The problem leads to the strategic planning to provide the complete surveillance of the target environment using multiple robotic agents. Our algorithm provides complete coverage with scalability, robust and computational efficiency according to the use of self-organizing planner. We present experimental and simulation results, which verify the performance of the algorithm.

With the abstraction of sensor model using the strategic planner, our algorithm can be used with various kinds of actual sensors. We present an algorithm that provides the raw sensor data to construct the environmental model. The environmental model works as the connection between strategic planner, sensing module and action executor. The sensing complexity can be address as one of sub problem in our research.

The final sub problem we address for efficient surveillance mission using multiple mobile robots is a task allocation problem. The decomposition of system-level task (surveillance) for each robot to achieve the effective system performance is discussed. The task allocation in combinatorial point of view validates our algorithm in simulation up to 5 distributed mobile robots. The comparison and discussion according to the results lead the further applications in multiple mobile robot domains.

審査要旨 要旨を表示する

Trevai Chomchana(トリワイ チョンチャナ) 提出の本論文は「On Multiple Mobile Robot Surveillance」(複数の移動ロボットによる巡回監視)と題し,全6章より構成される.本論文は,複数台移動ロボットによる巡回監視システムを実現するための統合的なフレームワークの提案および効率的な巡回監視作業を行うための問題について評価を行ったものである。

第1章では,巡回監視作業(Surveillance)について説明を行い,効率的な巡回監視作業計画が応用できるアプリケーションについて述べた。複数の移動ロボットによる巡回監視システムは,移動ロボット分野における自律移動の問題,監視システムにおけるセンシング問題などが含まれており,複合的な問題解決法の必要性について述べた。さらに,巡回監視が応用されるアプリケーションでは監視における監視対象環境の被覆性,環境情報がないまたは不足している環境,効率的な作業順序の問題について説明し,それら三つの問題における複合的な解決法が従来研究ではなされていないことについて述べた。アプリケーションでの複合的な問題の解決法における重要性について説明した。複数の移動ロボットによる巡回監視作業における複合的な問題を本論文の目的として述べた。ここにおいて,本論文で各問題を解決するアプローチとして,自己組織化型環境被覆計画器,センシング・アクション・プランニングフレームワーク,組み合わせ最適化手法による作業分担という三つの問題に対するアプローチの提案を行った。

第2章では,本研究で対象とする複数の移動ロボットによる監視作業について述べ,従来研究における蜜の問題それぞれに対する解決法について説明した。また複合的な問題の解決法は本論文で提案した解決法でどの様な流れで解決が期待されているかについて述べた。問題設定として,本論文が想定する環境や作業について述べ,結果の評価やシミュレーションにおける具体的な仮定妥当性について説明した。

第3章では,複数の移動ロボットによる巡回監視システムにおける問題のひとつである,対象環境の被覆問題を解決するための手法を提案した。幾何学的に難しい問題で知られる,任意の対象環境の被覆問題と計画時間とのトレードオフ問題の解決を,自己組織化型計画器であるグラフ上の反応拡散方程式によって実現している。観測すべき点は環境情報と隣接する観測すべき点の情報のみで駆動され,最終的に少ない観測すべき点の数で対象環境をすべて監視可能にする手法である。また,本提案手法の被覆性を確認するために簡易的な環境認識手法を用いた実機実験を用いた評価を行い,提案した手法の可用性について考察した。

第4章では,本論文で解決するもうひとつの問題として,事前に環境情報がない問題を解決するための手法を提案した。環境を等間隔のグリッドによる表現を応用し,部分的に観測した障害物を表現することを可能にした。また,前章で提案したグラフ上の反応拡散方程式は連続的な環境において定義されたので,離散的な環境の表現に応用するための問題設定を提案した。そして,グリッドで表現された移動ロボットの内部環境をセンシング情報とDempster-Shafer法によって実環境のモデルを構築するための手法について述べた。これにより,未知の対象環境における監視計画を本提案手法について実現できることを示した。また,提案手法を用いて,シミュレーションによって,距離センサを用いた複数台の移動ロボットによる監視作業を解き,妥当な監視作業を行うことが可能であることを示した。

第5章では,複数台の移動ロボットと巡回監視作業の分担手法の提案を行い,巡回監視作業における作業分担手法と効率の関係について調べた。作業分担手法の方策に着目し,短期的な逐次選択と長期的な作業の組み合わせによる方策による効率の比較を行った。逐次的な作業分担として移動距離を短縮することに貪欲な手法を実装し,長期的な作業分担としては組み合わせ最適化の手法を実装した。組み合わせ最適化の手法においても単体の移動ロボットによる巡回監視計画を簡単に拡張したものと,台数を考慮してそれぞれの移動ロボットが効率的な作業を計画する手法を提案した。また,効率の指標である移動距離の見積もり方法として,直線距離と移動ロボットが環境内に移動を行う際,実際に利用したアルゴリズムによる方法の二つを作業分担手法と組み合わせてして,シミュレーションによる評価を行った。評価を行った結果として,組み合わせ最適化手法による作業分担は移動ロボットの台数の増加による効率を引き出せる結果が顕著に分かった。複数台の移動ロボットによる巡回監視作業における作業分担は逐次的に実行する計画ではなく,ある程度の期間において効率的な作業計画が効率的な作業に繋がっていること言える。また,本論文を通して提案した巡回監視作業フレームワークは巡回監視計画の有効性を示すためのフレームワークとして妥当であることを示した。

第6章では,本論文の結論として,複数台の移動ロボットによる巡回監視作業における問題を解決手法の提案と実験およびシミュレーションによる作業計画の性質について評価したことを述べた。本論分において提案した,自己組織化型計画器,巡回監視作業フレームワークと組み合わせ最適化的な作業分担の手法が,効率的な複数の移動ロボットによる巡回監視システムの実現を可能にすることを結論として得た。

以上を要するに,本論文は複合的な問題を内包する,複数台の移動ロボットによる巡回監視作業を実現するため,作業の完全性,効率性の両面から自己組織化型計画器,巡回監視作業フレームワークと組み合わせ最適化的作業分担手法により,シミュレーションおよび実機実験によってそれらの手法を評価したものである。これによって,本論文は実世界における移動ロボットの実用性に対して有用であると考えられ,重要なものである。

よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる.

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