学位論文要旨



No 121255
著者(漢字) 芦川,雄二
著者(英字)
著者(カナ) アシカワ,ユウジ
標題(和) 芳香環二原子酸素添加酵素における電子伝達及び触媒機構に関する構造生物学的研究
標題(洋)
報告番号 121255
報告番号 甲21255
学位授与日 2006.03.23
学位種別 課程博士
学位種類 博士(農学)
学位記番号 博農第2968号
研究科 農学生命科学研究科
専攻 応用生命工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 山根,久和
 東京大学 教授 祥雲,弘文
 東京大学 教授 田之倉,優
 東京大学 教授 正木,春彦
 東京大学 助教授 野尻,秀昭
内容要旨 要旨を表示する

細菌による芳香族化合物の分解は、芳香環に酸素原子を水酸基として導入する反応(初発酸化反応)から始まり、その後メタ開裂反応、加水分解反応が起こることで進行する例が多い。一連の反応の中でも初発酸化反応は全体の進行を左右するという意味で非常に重要であり、芳香族化合物分解系の鍵反応と言える。そのため、細菌による難分解性化合物汚染のbioremediationを目的とした研究の中で、初発酸化反応は特に精力的に研究がなされてきた。

当研究室では、変異原性を有するカルバゾール(CAR)を対象に資化性細菌Pseudomonas resinovorans CA10株、Janthinobacterium sp. J3株、Sphingomonas sp. KA1株などを単離し、代謝経路、分解遺伝子群、分解酵素群について解析してきた。CAR代謝経路の初発酸化酵素であるcarbazole 1,9a-dioxygenase(CARDO)はCARの窒素原子に隣接した位置(angular position)の炭素原子と隣接する炭素原子に二原子酸素添加反応を触媒する(図1)ことからangular dioxygenaseと呼ばれている。

CARDOは酸化酵素と電子伝達系で構成されるRieske non-heme iron oxygenase system(ROS)に属しており、基質を認識すると共に酸素添加反応を実際に触媒する

terminal oxygenase (CARDO-O)と、CARDO-Oに電子を伝達するferredoxin (CARDO-F)、NAD(P)HからCARDO-Fへと電子を伝達するferredoxin reductase (CARDO-R)の3つのタンパク質により構成される。また、CARDOは本来の基質であるCAR以外に、dibenzo-p-dioxinやdibenzofuran(共にダイオキシンの骨格)に対しても、angular dioxygenation(ADO)を触媒することができる(図1)。CARDOは低塩素化ダイオキシンに対してもADOを触媒可能であり、ダイオキシンの毒性の原因の1つとなる平面骨格を一段階の反応で破壊することができる。また、CARDO はnaphthalene

などの多環芳香族化合物に対しては核間とは異なる位置にlateral dioxygenation(LDO)を触媒する一方、dibenzothiopheneに対してはsulfoxidationを触媒するなど、広い基質特異性を有している(図1)。

さらに、CARDOには以下に挙げる興味深い特徴がある。i) CARDO-Oは既知のROSのterminal oxygenaseとは相同性が非常に低く、アミノ酸配列を基にした分子系統解析の結果から新規性の高い酵素であることが示されている。ii) 電子伝達鎖において、CARDO-OとCARDO-Fの特異性は高く、他のferredoxinからの電子伝達は認められないが、CARDO-FとCARDO-Rとの特異性は比較的低い、つまり、言い換えれば、CARDO-F−CARDO-R間の相互認識はあまり厳密ではないが、CARDO-O−CARDO-F間のそれは厳密である。iii) 1000種以上の既知ROSの中で、ADOを触媒できるROSの報告は5種程度であり、なぜこの反応を触媒できるのか興味が持たれる。iv) 他の多くのROSのterminal oxygenaseがα3β3型の構造を取るのに対し、CARDO-Oはα3型の構成を取る。

現在までにROSにおける研究はnaphthalene 1,2-dioxygenase(NDO)を中心に進んでいるが、構造生物学的な研究としては各コンポーネントの構造解析やLDO触媒機構に関するものであり、電子伝達機構やタンパク質間相互作用及びADO触媒機構についてはほとんど報告がない。そのため、これらの解明は学術的に極めて重要な知見を提供すると期待された。以上の背景から、構造生物学的にCARDOの電子伝達能や基質酸化能の解明を試みることにした。本研究開始までに、CARDO systemのうちCARDO-Fの立体構造は既に解明されていたことから1、本研究では相互に相同性が非常に高く、機能的な違いは認められないCA10株とJ3株由来のCARDOを用いて、(1)CARDO-Oの立体構造解析、(2)CARDO-O:CARDO-F複合体の結晶化・立体構造解析、(3)ADO触媒機構の各段階の構造解析による反応機構の解明、(4)CARDO-Rの結晶化及びX線結晶構造解析、を行った。

CARDO-Oの立体構造解析2

以前の研究でCA10株由来のCARDO-Oは結晶化までは成功していた。しかし、CARDO-Oは当時唯一構造が明らかになっていたNDOのterminal oxygenase(NDO-O)と相同性が低く、分子置換法では構造が得られていなかった。そこで、J3株由来のCARDO-Oを用い、多波長異常分散法により初期位相を求め、分解能1.95 〓の立体構造を得ることに成功した(図2)。

CARDO-Oは分子中央に広い空間をもつドーナツ様の構造をしていた。各サブユニットは239-251番目の残基から成るフック様構造により相互作用していたが、これは他の類縁酵素でみられるようなβサブユニット(安定化に寄与するとされている)を持たないCARDO-O特有の構造であることが明らかになった。サブユニットは2つのドメインから成り、相互作用する領域には鉄硫黄クラスターと隣のサブユニットの活性中心が隣接していた。これはNDO-Oと同様であり、鉄硫黄クラスターと活性

中心間で効率よく電子伝達できる距離となっていた。CARDO-OとNDO-Oの基質ポケット内の構造を比較すると、共にポケットの入り口側は疎水性残基が多く、芳香族基質に対する嗜好性と一致していた。しかし、CARDO-Oでは活性中心の鉄のさらに奥側に空間が存在し、そこには親水性残基が多く含まれていた。また、ポケットを構成するアミノ酸残基の違いにより、ポケットの形状やサイズも異なっていた。基質ポケットのサイズはCARDO-Oの方がNDO-Oよりも広く、これは主に2環の芳香族化合物を基質とするNDO-Oと3環の芳香族化合物を基質とするCARDO-Oの基質認識機構の違いを示していると考えられた。この様なポケットの形状やサイズ、さらにポケット内での鉄原子の位置の違いが、CARのようなヘテロ環を持つ化合物の認識(もしくはADOという特異な反応の触媒能)に関連しているものと考えられた。

CARDO-O:CARDO-F複合体の結晶化・立体構造解析3, 4

上述したようにCARDO systemにおいてCARDO-OとCARDO-Fの相互作用認識は厳密である。そのことを立体構造の観点から明らかにするために複合体X線結晶構造解析を行った。

J3株由来CARDO-OとCA10株由来CARDO-Fを別々に精製し、混合割合及び濃度を変え結晶化を行ったところ、2つの条件でX線結晶構造解析に適した結晶を取得することができ、CARDO-OとCARDO-Fのそれぞれの立体構造を用いた分子置換法により複合体構造を決定することに成功した(図3)。複合体構造では、CARDO-Oの各サブユニットの境界付近に3分子のCARDO-Fが突き刺さるような形で結合しており、お互いの鉄硫黄クラスターは電子伝達を効率よく行える距離に存在していた。また、複合体構造を取るにあたり、単体構造と比較してCARDO-O及びCARDO- Fでいくつかの部位で構造変化が起きていた。特にCARDO-OのLys12-Trp15とそれと相互作用するCARDO-FのPro66-Gly70の構造変化は大きく、この変化がCARDO-OとCARDO-Fの相互認識機構及び電子伝達に重要である可能性が明らかになった。さらに、いくつかの残基において複合体の構造安定化のために、側鎖がシ

フトして塩橋や水素結合を形成していた。複合体構造に基づいてi) His48→Asn352O→HOH→Leu70O-His71, ii) His68→Glu353OE2-OE1→Tyr344OH→Arg72NE2-NH1→HOH→Asp359OD1-OD2→His71という2つの電子伝達経路が推定された。

ADO触媒機構の各段階の構造解析による反応機構の解明

CARDOの基質認識機構及び反応機構を解明するために、CARDO-Oのみを用いて基質複合体の取得を試みたが、成功しなかった。そこで、CARDO-O単体での場合と比較して基質ポケットの構造に変化が見られないCARDO-O:CARDO-F複合体を用いて基質複合体構造の解明を試みた。あらかじめ調製したCARDO-O:CARDO-F複合体結晶をCARを含む溶液に浸すことで、基質を含む三者複合体結晶を得ることができ、立体構造を解明することに成功した。CARは活性中心の鉄原子の上部に存在しており、ヘテロ環の窒素原子がGly178Oと水素結合していたため、ADOはCARの平面な環に対して下側から起こると予想された。また、CARが基質ポケットに結合することでポケットの入り口及び結合部位周辺の残基が大きく移動しており、この変化が基質の結合安定化及び反応中の基質の流失防止に関与していることが示唆された。

次に、NDO-Oで推定されているLDO触媒機構を基にADO触媒機構を推定した(図4)。ADOは、まずCARDO-Oの鉄硫黄クラスターが還元された後、基質と酸素が鉄原子に配位し、反応が起こる。その後、活性中心の鉄原子が還元されることで生成物が離脱すると考えられる。このADO触媒機構を解明するために、各反応段階に相当する立体構造の取得を試みた。その結果、上述した三者複合体を含めて図4の(1)〜(5)に相当する立体構造を得ることができた。

還元状態構造【図4・(2)】では、鉄硫黄クラスターが還元されることで、活性中心の鉄原子と配位子であるAsp333の側鎖の距離が0.1-0.2 〓近づいていた。この状態に基質が結合すると【図4・(3)】、鉄原子とAsp333のOD2間が0.4 〓短くなり、Asp333の側鎖の配位が変化した(1配位から2配位へと変化した)。また、基質複合体において還元状態と酸化状態【図4・(3)と(3')】によって、鉄原子及びAsp333の位置が変化することも明らかになった。基質ポケット内での基質の位置に変化は無いが、還元されることで鉄原子とAsp333が基質から0.4 〓離れるように動いていた。この動きは、酸素を結合するための空間を作り出す意義があると考えられた。酸素複合体【図4・(4)】では二酸素原子がside-on様に配位していた。これは、NDO-Oの酸素複合体と類似しているが、酸素原子の配位する位置や酸素原子と鉄原子の距離は異なっていた。酸素基質複合体と思われる立体構造【図4・(5)】では、基質と鉄原子の間に2つの酸素原子の存在が見られた。この(5)の立体構造はまだ疑わしい点があるが、この位置に酸素原子らしきものが存在する可能性は高いと思われる。この2つの酸素原子は、酸素複合体の酸素原子と比較して鉄原子に0.2-0.7 〓も近づいており、二原子酸素添加反応直前の構造と考えられた。これらの立体構造から、ADO触媒機構中での活性中心付近の構造変化が明らかになった。

CARDO-Rの結晶化及びX線結晶構造解析

CARDO systemにおいて、CARDO-Rは他のferredoxin reductaseに置き換えることができるため、ferredoxinとの特異性は高くないと考えられている。しかしながら、その理由は変異体酵素や立体構造による知見がないために明らかになっていない。また、現在までにROSにおいて3種類のreductaseの立体構造が決定されているが、CARDO-Rとそれらとの相同性は低く、ドメイン構造や相互作用するタンパク質が異なっているため、その立体構造に興味が持たれた。そこで、CARDOの中で唯一立体構造が決定していないCARDO-Rの立体構造の取得を試みた。

以前の研究から、CA10株とJ3株由来のCARDO-Rを用いて精製及び結晶化が行われていたが、その不安定さから結晶化には至っていなかった。そこで、比較的安定なJ3株由来のCARDO-Rを使用して、精製条件の再検討を行った。その結果、以前より安定した状態でタンパク質が精製でき、結晶化にも成功した。得られた結晶はオレンジ色の板状のもので、cryo条件化で2.9 〓の分解能を示した。空間群はP42212、格子定数はa=b=157 〓, c=81 〓, α=β=γ=90°であった。現在、結晶化条件の最適化を行うのと同時にbenzoate dioxygenase reductaseをモデル分子とした分子置換法を行っているが、上述したように相同性が低いため、重原子置換同形法や多波長異常分散法による初期位相の決定を予定している。

本研究により、興味深い特徴を持つ新規性の高い酵素であるCARDO のCARDO-O及びCARDO-O:CARDO-F複合体の立体構造が決定された。CARDO-Oの構造からα3型のterminal oxygenase特有のサブユニット間相互作用が示され、複合体構造からoxygenaseとferredoxinのタンパク質間相互作用が明らかになり、電子伝達機構やそれに関わる残基が推定できた。さらに、この複合体結晶を使用してADO触媒機構中での活性中心付近の構造変化も明らかにした。今後は、変異体の作成と比較解析を通して相互認識や電子伝達に関与する残基を完全に同定することができると思われる。さらに、X線結晶構造解析によって未だ成功していないADOの反応中間体構造や生成物との複合体構造を取得することで、より詳細に触媒サイクルを理解できると期待される。また、先に述べたCARDOの基質特異性の決定メカニズムも各種基質の結合状態の解明を通して明らかにできると期待される。

図1 CARDOが触媒するADO, LDO, sulfoxidation

図2 CARDO-Oの立体構造

図3 CARDO-O:CARDO-F複合体構造構造

図4 推定ADO触媒機構

括弧内の数字は酸素原子と鉄原子の距離(〓)

Nam, Noguchi, Fujimoto, Mizuno, Ashikawa et al., (2005). Proteins 58, 779-789.Nojiri, Ashikawa et al., (2005). J. Mol. Biol. 351:355-370. Ashikawa et al., (2005). Acta.Crystallogr. Sect. F 61:577-580.Ashikawa et al., submitted.
審査要旨 要旨を表示する

細菌による芳香族化合物の好気的分解は、芳香環に酸素原子を水酸基として導入する反応(初発酸化反応)から始まる例が多く、初発酸化反応は全体の進行を左右するという意味で芳香族化合物分解系の鍵反応と言える。この反応を触媒する酵素は、酸素添加酵素と電子伝達系で構成されるRieske non-heme iron oxygenase system(ROS)に属しており、電子伝達系から酸素添加酵素に電子が伝達することで酸素分子中の2つの酸素原子をcis型の2つの隣接した水酸基の形で芳香環に導入する。この反応は2つの酸素原子が添加される位置によって名称が異なり、carbazole(CAR)やダイオキシンの構造類縁体の核間とそれに隣接する炭素原子に2つの酸素原子が添加される場合はangular dioxygenation(AD)、それ以外の芳香環の隣接する炭素原子に添加される場合はlateral dioxygenation(LD)と呼ばれている(図1)。ROSに属するCAR代謝系初発酸化酵素であるcarbazole 1,9a-dioxygenase(CARDO)は、基質を認識すると共に酸素添加反応を実際に触媒するterminal oxygenase (CARDO-O)と、CARDO-Oに電子を伝達するferredoxin (CARDO-F)、NAD(P)HからCARDO-Fへと電子を伝達するferredoxin reductase (CARDO-R)のにより構成される。CARDOはCARや低塩素化ダイオキシンに対してADを、naphthaleneなどに対してはLDを触媒する。また、dibenzothiopheneに対してはsulfoxidationを触媒するなど、広い基質特異性を有している(図1)。さらに、i) CARDO-Oは既知のROSのterminal oxygenaseとは相同性が非常に低く、新規性の高い酵素である。ii) CARDO-OとCARDO-Fの特異性は高く、他のferredoxinからの電子伝達は認められない。iii) 多くのROSのterminal oxygenaseがα3β3型構造を取るのに対し、CARDO-Oはα3型構造を取る、といった興味深い特徴を有している。

本論文はCARDOを材料にCARDO-Oの特異な構造の解明、ADに必須な基質認識機構の解明、CARDO-OとCARDO-F間の電子伝達様式と相互作用の解明、さらに触媒サイクルの構造生物学的解明を行った研究であり、6章から成っている。

第1章では、ROSの諸性質や分類、CARDOの特徴、酸素添加反応触媒機構に関して、研究開始時までの知見をまとめ、本論文の研究の意義と目的を述べている。

第2章では、基質を認識すると共に酸素添加反応を触媒するCARDO-Oの構造解析を行っている。申請者はJanthinobacterium sp. J3株由来のCARDO-Oを用い、立体構造を得ることに成功した。CARDO-Oは分子中央に広い空間をもつドーナツ様の構造をとっていた。構造解析により、α3β3型構造にはない特徴的な構造を見出し、これが安定化に寄与するとされているβサブユニットを持たないα3型の特有の構造であることを明らかにした。さらに、CARDO-OとNDOのterminal oxygenase(NDO-O)の基質ポケット構造を比較することで、特異な基質結合ポケットの構造が明らかになった。

第3章では、CARDO-OとCARDO-F間の電子伝達や相互作用を解明するために、複合体X線結晶構造解析を行っており、世界で初めて酸素添加酵素とその電子伝達タンパク質の複合体構造を決定している。複合体構造では、CARDO-Oの各サブユニット境界付近に3つのCARDO-Fが突き刺さるような形で結合しており、お互いの鉄硫黄クラスターは電子伝達を効率よく行える距離に存在していた。また、単体構造と比較してCARDO-O及びCARDO-Fでいくつかの部位で構造変化を見出し、この変化がCARDO-OとCARDO-Fの電子伝達及び相互認識機構に重要である可能性を明らかにした。

第4章では、第3章で得られたCARDO-O:CARDO-F複合体結晶を用いてCARDOの基質認識機構及び触媒サイクルの解明を行っている。ソーキング法によりCARを含む三者複合体結晶を取得し、基質複合体構造を解明することに成功した。CARは活性中心の鉄原子の上部に存在していることから、CARの平面な環に対して下側から酸素添加が起こると推定した。また、CARの結合によりポケットの入り口及び結合部位周辺の残基が構造変化しており、この変化が基質の結合安定化及び反応中の基質の流失防止に関与する基質認識機構であることを示唆した。次に、NDO-Oで推定されている触媒サイクルを基に各反応段階に相当する立体構造の取得を試みた。その結果、反応中間体複合体及び生成物複合体を除く各反応段階の立体構造の取得に成功した。得られた構造から、NDO-Oでは見られなかった触媒機構中での構造変化を見出し、基質、酸素分子の順で結合するのが主な反応プロセスであることを提唱した。さらに、反応時の酸素種がperoxideであることも推定した。

第5章では、CARDOの中で唯一立体構造が決定していないCARDO-Rの立体構造の取得を試みている。以前は、タンパク質の不安定性が原因で結晶化には成功していなかったが、申請者は比較的安定なJ3株由来のCARDO-Rを使用して、精製条件の再検討を行った。その結果、結晶化に成功し、cryo条件化で2.9 〓の分解能のデータを得ることに成功した

第6章では、全体の総括と今後の展望が述べられている。

以上、本論文は、CARDOのX線結晶構造解析から、特異な構造を明らかにするとともに、基質認識機構、酸素添加酵素−フェレドキシン間での電子伝達機構・相互認識、酸素添加反応触媒機構を解明したものであり、CARDOをはじめとするROSの機能を理解し将来的に環境浄化・有用物質生産へと応用しようとする研究として、学術上ならびに応用上貢献するところが少なくない。よって、審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値のあるものと認めた。

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