No | 121474 | |
著者(漢字) | 望月,靖史 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | モチヅキ,ヤスシ | |
標題(和) | 脱神経筋の線維化病変に対する骨髄由来細胞の関与 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 121474 | |
報告番号 | 甲21474 | |
学位授与日 | 2006.03.23 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第2722号 | |
研究科 | 医学系研究科 | |
専攻 | 外科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 除神経された骨格筋(脱神経筋)では、その神経筋接合部(神経終末)領域を中心として間質の単核細胞が増加することが知られている。従来、この間質細胞は筋組織自身に由来する細胞と考えられてきた。ところが、GFP骨髄キメラマウスの坐骨神経を部分切除して下腿を除神経したところ、除神経14日目を中心として多数の骨髄(循環系)由来細胞(bone marrow-derived cells;BM-DC)が 腹筋の神経筋接合部領域の間質に集積した。このBM-DCは、増加した間質細胞全体の半数近くを占めていた。免疫組織化学およびフローサイトメトリー(fluorescence-activated cell sorter;FACS)による解析の結果、BM-DCがCD45およびCD11b陽性すなわちマクロファージあるいは単球系の細胞であることが分かった。BrdU染色の結果、BM-DCの分裂能は乏しいことが分かった。FACSを用いてBM-DCとホスト筋組織(および周辺組織)に由来する細胞(muscle tissue-related cells;MT-RC)とを分離採取してそれぞれRT-PCR解析したところ、BM-DC自身は1型コラーゲンやテネイシンCといった細胞外マトリックス(ECM)を発現せず、専らTGF-β1を発現していた。一方、MT-RCはこれらのECMを発現していた。これらのことから、MT-RCは実際に線維化を起こす細胞を含み、一方BM-DCはそのMT-RCの機能を制御する細胞であると考えられる。BM-DCの移動、生着、増殖、分化などを制御することで、脱神経筋の線維化病変の予防および治療効果が期待できる。 | |
審査要旨 | 本研究はGFP骨髄キメラマウスを用いて、脱神経筋の線維化病変に対する骨髄由来細胞(bone marrow-derived cells;BM-DC)の関与を調べたものであり、主に以下の結果を得ている。 除神経14〜28日目を中心に脱神経筋の間質、とくに神経筋接合部(NMJ)領域に多数のGFP陽性細胞が浸潤した。このGFP陽性細胞は間質に増加した単核細胞のうちの半数近くを占めていた。 NMJ領域に集積したGFP陽性細胞は蛍光免疫組織化学の結果1型コラーゲンやテネイシンCといった線維化関連の細胞外マトリックス(ECM)と共局在傾向を示していた。 同GFP陽性細胞はフローサイトメトリー(FACS)および蛍光免疫組織化学の結果、CD45/CDllbといった血球系とくに単球/マクロファージ系の表面抗原を発現していた。 BrdU染色の結果、GFP陽性細胞の細胞分裂能は乏しかった。 RT-PCRの結果、GFP陽性細胞は1型コラーゲンやテネイシンCといったECMを何ら発現せず、専らTGF-β1を独占的に発現していた。このことは蛍光免疫組織化学によっても裏付けられた。一方、GFP陰性の間質単核細胞は上記ECMを主に発現していた。 これらの結果から、まず、多数のBM-DC(GFP陽性細胞)が脱神経筋の線維化病変に関与することが明らかになった。さらに、筋組織および周辺由来の単核間質細胞(GFP陰性の単核間質細胞)には線維化の主たる「効果器」としての線維芽細胞などが含まれ、一方BM-DC(GFP陽性細胞)はTGF-β1を発現することでそれら線維芽細胞を含めた筋組織および周辺由来の間質細胞を制御する役割を持ちうることが示唆された。 本研究はひとり脱神経筋のみならず、筋萎縮性側索硬化症のような重篤な神経筋疾患による線維化病変の治療戦略においても重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 | |
UTokyo Repositoryリンク |