No | 121638 | |
著者(漢字) | 喜々津,仁密 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | キキツ,ヒトミツ | |
標題(和) | 後流域との相互作用を考慮した三次元角柱の振動発生機構に関する研究 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 121638 | |
報告番号 | 甲21638 | |
学位授与日 | 2006.03.23 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(環境学) | |
学位記番号 | 博創域第220号 | |
研究科 | 新領域創成科学研究科 | |
専攻 | 環境学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文は,「後流域との相互作用を考慮した三次元角柱の振動発生機構に関する研究」と題し,超高層建築物等の風直角方向の振動発生機構における物体振動系一流体振動系の相互作用を評価し,風洞実験を援用した解析的モデルによる記述を試みたものである.後流挙動の記述には後流振動子と称されるモデルを適用し,そこに必要となる主要なパラメータの設定にあたっては,流速場の面計測において有効なPIV(Particle Image Velocimetry)システムを用いることにより,相互作用現象を大局的に把握した上で,物理的な評価を可能にしている.数学的に後流振動子モデルの記述を行うことにより,より一般的な条件に対する自励的渦励振等の発生予測や流体力学的制振方法による応答低減評価への応用が可能となる.本論文では,実験的評価と解析的評価の両方を行っており,全5章から構成される. 第1章では,社会文化環境学における本研究の位置づけを考察するとともに,既往の研究について,特に風直角方向振動に関する風洞実験及び解析モデルを中心に概観している. 第2章では,三次元角柱を対象とした風洞実験による振動発生機構,特に後流域での気流変動と角柱の風直角方向振動との相互作用特性について考察している.考察に当たっては,PIVシステムによる可視化実験が後流域での流速場評価に有力なものとなる.後流域を特徴付ける基本的なパラメータとして角柱背面から後方よどみ点までの距離に着目した上で,角柱の応答性状と当該距離の変化との対応を明らかにし,相互作用現象の定性的な傾向を説明している.次に,振動変位と後流域の変動流速場の時系列データとの関係を考察し,固有直交関数展開を用いたPOD(Proper Orthogonal Decomposition)解析により自励的振動に寄与する後流域の変動流速場特性を明らかにしている.そして,変動流速場特性からKutta-Joukowskiの定理を援用して定性的な揚力発生機構を仮定し,既往の強制振動実験の結果との比較も行った上で,仮定の妥当性を論じている. 第3章では,静止した三次元角柱に作用する風圧力及び周囲の平均流速場を風洞実験により評価し,ギャロッピング振動の発生機構評価のためのDenHartogの判別式を参照して,角柱側面からのはく離せん断層によって形成される後流渦がどのようにして不安定振動の発生機構に寄与しているか検討を行っている.具体的には,相対よどみ点角度と規準化よどみ点間距離を定義し,それらと平均揚力係数及び平均抗力係数の迎角に対する変化とを対応付けることにより,準定常仮定における解釈を行っている. 第4章では,第2章及び第3章での実験的評価を踏まえて,三次元角柱の風直角方向振動と後流域の気流変動との相互作用現象の数学モデルによる記述を試みている.モデル構築にあたっては,後流域における流体力学的現象を機械動力学的な解釈を通して振動子に置換した,後流振動子モデルを適用しているが,実験的に得られた後方よどみ点までの距離の非線形的な変化及びPOD解析結果をもとに後流振動子の平均長さを設定している.また,空気力特性と平均流速場との関係を用いて準定常仮定に基づく定式化を図り,接近流の乱れの効果や断面形状の違いを反映したパラメータ評価を行っている.構築した数学モデルは,その解析結果を風洞実験における風直角方向振動の結果と比較して,モデルの妥当性や適用範囲を検討することにより,構築したモデルによる振動予測式の耐風設計実務における応用可能性を示している. 第5章では,各章で得られた結論を総括的にまとめ,さらに今後の課題と展望を述べている. | |
審査要旨 | 本論文は、「後流域との相互作用を考慮した三次元角柱の振動発生機構に関する研究」と題し、超高層建築物などの風直角方向振動の発生メカニズムにおける物体系一流体系の相互作用を評価し、実験を援用した解析的モデルによる記述を試みたものである。振動メカニズムの記述は後流振動子モデルと称される手法を適用し、そこに必要となる主要なパラメータの設定にあたっては、流速場の面計測において有効なPIV(Particle Image Velocimetry)システムを用いることにより、相互作用現象を大局的に把握した上で、物理的な評価を可能にしている。数学的に後流振動モデルの記述を行うことにより、より一般的な条件に対する自励的渦励振の発生予測、応答低減手法への応用が可能となる。本論文では、実験的考察と解析的考察の両方を行っており、全5章からなる。 第1章では、社会文化環境学における本研究の位置づけを考察するとともに、既往の研究について、特に風直角方向振動に関する風洞実験および解析モデルを中心に概観している。 第2章では、三次元角柱の風洞実験による振動発生機構、特に後流域の気流変動と角柱振動との相互作用特性について考察している。PIVシステムが後流域での流速場の評価に有効であることを示し、基本的パラメータとして角柱背面から後方よどみ点までの距離に着目し、角柱の応答性状と当該距離の変化との対応を明らかにし、相互作用現象の定性的な傾向を説明している。次に、振動変位と後流域の変動流速場の時系列データとの関係を考察し、固有直交関数展開を用いたPOD(Proper Orthogonal Decomposition)解析により後流域の自励振動に寄与する変動流速場の特性を明らかにしている。それら変動流速場の特性からKutta・Joukowskiの定理を援用して変動揚力の発生機構を仮定し、既往の強制振動実験の結果との比較も行った上で、仮定の妥当性を論じている。 第3章では、三次元静止角柱の風圧力および流速場を風洞実験により評価し、ギャロッピング振動の発生機構評価のためのDen Hartogの判別式を参照して、角柱側面からの剥離せん断層およびそれによって形成される後流渦がどのようにして不安定振動の発生機構に寄与しているかの検討を行っている。具体的には、相対よどみ点角度と規準化よどみ点間距離を定義し、それらと平均揚力係数および平均抗力係数の迎え角に対する変化とを対応付けることにより、相互作用の解釈を行っている。 第4章では、第2章および第3章での実験的考察を踏まえて、三次元角注の風直角方向振動と後流域の気流変動との相互作用系の解析モデルによる記述を試みている。モデル構築にあたっては、後流域における流体力学的現象を機械動力学的な解釈を通して振動子に置換した、後流振動子モデルを適用しているが、実験的に得られた後方よどみ点までの距離の非線形的な変化およびPOD解析結果をもとに振動子の平均的長さを設定している。また、空気力特性と平均流速場との関係を用いて準定常仮定に基づく定式化を図り、接近流の乱れの効果や断面形状の違いを反映したパラメータ評価を行っている。提案した数学モデルは、その解析結果を風洞実験における風直角方向振動の結果と比較して、モデルの妥当性や適用範囲を検討することにより、提案モデルが耐風設計における実務での応用可能性を示している。 第5章では、各章で得られた結論を総括的にまとめ、さらに今後の課題と展望を述べている。 以上、本論文は三次元角柱の風直角方向振動における後流域の流速場変動との相互作用のメカニズムを可視化実験を効果的に活用することにより明らかにし、さらにその定量的な評価を従来の後流振動子モデルのパラメータ設定に反映させることによって、より完成度の高い解析的モデルに取りまとめ、応答評価手法としての成果を示しており、本論文の成果は環境学の発展に対し貴重な貢献をなしている。 よって本論文は、博士(環境学)の学位論文として合格と認められる。 | |
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