No | 122092 | |
著者(漢字) | 小山,文一 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | コヤマ,フミカズ | |
標題(和) | カスケードゲージ理論のオリエンティフォルド化と重力理論による記述 | |
標題(洋) | Orientifolding the cascading gauge theory and its gravity dual | |
報告番号 | 122092 | |
報告番号 | 甲22092 | |
学位授与日 | 2007.03.22 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(理学) | |
学位記番号 | 博理第4955号 | |
研究科 | 理学系研究科 | |
専攻 | 物理学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 弦理論において、時空に重ねて置かれたブレインの系は、開弦理論で記述するとゲージ理論が得られ、閉弦で記述すると重力理論が得られる。この2つの記述を比較することによりゲージ重力対応と呼ばれる双対性が得られる。この博士論文の目的は、O7プレインによってオリエンティフォルドされたコニフォルドの特異点上に置いたp枚のD3ブレインとM 枚のフラクショナルD3ブレインの系を考え、開弦理論による記述であるN=1超対称Sp(p+M)×Sp(p)ゲージ理論のモジュライ空間と、対応する重力理論の重力解を比較することである。 まず、コニフォルド上のブレインをゲージ理論を用いて記述することを考える。フラクショナルD3 ブレインを導入したことに対応して、Sp(p+M)×Sp(p)ゲージ理論は共形対称性を持っていない。高エネルギーから低エネルギーにフローさせることを考えることを考えてみる。電気的なSp(p+M)×Sp(p)ゲージ理論はSeiberg によって発見された双対性を用いて磁気的なSp(p)×Sp(p-M)ゲージ理論を用いて記述することができる。磁気的な理論は理論において重い粒子を積分して得られた理論は、電気的な理論と同じ形をしていてゲージ群のランクだけが減っているように見えることが分かる。よって、ゲージ群のランクが正である限りサイバーグ双対性を何度もとり続けながら Sp(p+M)×Sp(p)-Sp(p)×Sp(p-M)-Sp(p-M)×(p-2M)→・・・(1) と、低エネルギーにフローさせることができる。この現象はデュアリティーカスケードと呼ばれている。低エネルギー極限では閉じ込めが起きゲージーノが凝縮し、その結果カイラル対称性が破れる。我々がSp(p+M)×Sp(p)ゲージ理論のモジュライを解析する際にも、このデュアリティーカスケードは重要な役割を果たす。ゲージ理論のモジュライには[p=M]個のブランチが存在し、それぞれのブランチの中にはカイラル対称性の破れの結果生じたM個の真空が存在することが分かる。各ブランチにおいて、先端の特異点は3次元球面に置き換わることで解消されていて、3次元球面の大きさはブランチによって異なる。 次に、オリエンティフォルド上のブレインを重力理論を用いて記述することを考える。デフォームされたコニフォルドにコンパクト化された時空を考え、D3ブレインとフラクショナルD3ブレインが作るフラックスを導入する。そして、オリエンティフォルドによってコニフォルドの2点を同一視する。ゲージ理論の各ブランチに対応した重力解は、カットオフを定めて境界条件を与え、プローブのD3 ブレインがデフォームされたコニフォルドを運動しているような背景として与えられる。デフォームされたコニフォルドの先端の3次元球面の大きさはやはり各々重力解よって異なることがわかる。 我々は、ゲージ理論の量子的なモジュライに現れた3次元球面の大きさと、重力解のデフォームされたコニフォルドの先端の3次元球面の大きさが一致することを確認する。また、ゲージ理論において異なるブランチの真空をつなぐドメインウォールと、重力理論において3次元球面に巻いた5ブレインが対応していることについても議論する。 | |
審査要旨 | 超対称ゲージ理論がもつ豊かな相構造は、様々な双対性を用いることによって明らかにされてきているが、殊にDブレイン配位を媒介にしたゲージ/重力対応は、強力な道具となっている。そのようにして得られた知見のうちのひとつに、カスケードゲージ理論と呼ばれるものがある。これは、コニフォールドの特異点上にp枚のD3ブレインとM枚のフラクショナルD3ブレインをおくことで、実現される超対称SU(p+M)×SU(p)ゲージ理論であるが、二つの因子群の結合定数がスケール依存し、低エネルギー側に進むにつれてランクの大きい方の群が強結合になる。その結果、理論のより良い記述は、Seiberg双対をとったSU(p)×SU(p-M)ゲージ理論によって与えられるようになる。ところが、この有効理論は群のランク以外は元々の理論と同構造をしているため、さらに低エネルギーに進むと、再びそのSeiberg双対に移り群のランクが下がる。これを繰り返して、条件が満たされなくなるまで有効理論が移り変わっていくのである。 本論文は、上記のコニフォールドをオリエンティフォールド化することで、超対称Sp(p+M)×Sp(p)ゲージ理論という、新たなカスケードゲージ理論の例を与えたものである。配位としては、コニフォールド上にオリエンティフォールドプレーンとそのチャージを打ち消す4枚のD7ブレインを用意し、特異点上にやはりp枚のD3ブレインとM枚のフラクショナルD3ブレインを配置する。こうすることで、Sp群のゲージ理論を構成することができる。 本論文においては、この理論のモデュライ空間を詳しく調べ、[p/M]個のブランチがあること、さらにそれぞれのブランチに、カイラル対称性の破れの結果生じたM個の真空があることを明らかにした。 さらに、重力側では、SU群の場合に知られていたKlebanov-Strassler解からモッドアウトすることで得られる解を用い、D3ブレインの効果をフラックスで記述することよって双対的記述が与えられることを示し、モデュライ空間に現れる変形コニフォールドの3次元球面と、重力解側の対応する3次元球面の半径が一致することを確認した。 また応用的結果として、ゲージ理論側で異なるブランチの真空をつなぐドメインウォールと重力理論側の3次元球面にまきついた5ブレインが対応していることも議論している。 以上のように豊かな構造を持つカスケードゲージ理論の新たな例を与え、そのモデュライ空間の構造を詳しく調べて興味ある結果を得ており、学位論文として相応しい成果を得ているものであると認める。 なお、本論文は大学院生の八木太氏との共同研究に基づくものであるが、学位申請者が主体となって解析を進めたものであると認められる。 以上により、審査委員一同は、本論文提出者に対し博士(理学)の学位を授与できると認める。 | |
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