No | 122277 | |
著者(漢字) | 肥後,昭男 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | ヒゴ,アキオ | |
標題(和) | シリコンフォトニックMEMS技術による集積化マイクロメカニカル光変調素子に関する研究 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 122277 | |
報告番号 | 甲22277 | |
学位授与日 | 2007.03.22 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第6482号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 電気工学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 波長多重通信などの光通信システムは,PCやインターネット通信の急速な発展に伴い,通信容量も向上してきた. パケット通信などの高速な光変調素子と同時に交通量に応じて経路を切り替える光クロスコネクトや特定波長取捨選択のための光アドドロップ,光強度をそろえるアッテネータなどが実用化されている. しかしながら,光素子そのものが高価であると同時に,それぞれの光素子を接続することが容易ではない. さらに,光素子を一体化した超小型モノシリック光集積回路の作製は困難であった. また,光変調素子に限れば,光変調に必要な光学結晶は非常に高価であり,さらにそれぞれの屈折率変化が小さいため,変調速度はGHzに達するものの導波路長が長くなってしまう. 本研究は,超小型シリコンモノリシリック光集積回路を作製するための要素技術として,フォトニック結晶とシリコン細線導波路を用い,光変調器部分にMEMS/NEMSを応用することで,今まで以上に小型なシリコン製光集積回路が実現できる. 本論文は6章で構成される. 第1章は本論文の序論であり,本研究の背景,概略を述べたあとに本論文の構成をまとめる. 第2章は「シリコンフォトニックMEMS技術による光変調器の提案」と題し,マイクロメカニカルな機構と光導波路を組み合わせた光素子の構造を提案した. シリコンフォトニック結晶光導波路の上に機械的構造体を作製する表面マイクロマシニングによる光変調素子,SOI層の同一平面内に変調器部分と機械部分を同時に持つ光変調素子の構造について述べる. さらに,光変調の原理と光学設計,MEMS部分の機械的な設計論についての考察をしている. 第3章では「フォトニック光導波路とMEMS構造を融合した光変調器」と題して,第2章で提案した構造体を実際にシリコンフォトニック結晶光導波路の上に微小機械構造体を作製する方法の確立,問題点,電気機械的特性評価,光学特性評価について述べている. 第4章では「シリコン細線光導波路とMEMS構造を融合した光変調器」と題し,第2章で提案した平面型MEMSデバイスの作製方法の確立,電気機械的特性の評価および光学特性評価について詳述する. 第5章ではそれぞれ提案した素子の利点および課題について考察をおこなう. 第6章は結論で,本博士請求論文の結果の要約と今後の展望をのべる. | |
審査要旨 | シリコンフォトニックMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)技術とは、高屈折率を利用して効率よく光を閉じこめる単結晶シリコン製の光導波路に微小な機械的可動素子を集積化することにより、光変調器、可変減衰器、光スイッチなどを構成する微小光学技術の総称である。本論文は「シリコンフォトニックMEMS技術による集積化マイクロメカニカル光変調素子に関する研究」と題し、単結晶薄膜シリコン基板を加工してフォトニック結晶光導波路とシリコン細線光導波路を形成し、かつ、同一基板上に印加電圧の静電引力で駆動する微細な機械構造を集積化する設計・製作方法、および、素子の特性評価についてまとめたものであり、6章より構成される。 第1章は「序論」で、研究の背景となる光通信ネットワークの現状と同分野へのMEMS技術の応用展開について解説し、フォトニクス分野におけるマイクロメカニクスの位置づけと、本研究における手法、および、本論文の意義について述べている。 第2章は「シリコンフォトニックMEMS技術による光変調器の提案」であり、マイクロメートル程度の微小な機械変位を用いて光学的な変調をもたらす方式について概説し、とくに、MEMSと整合性のよい変調方式として、光導波路近傍のエバネッセント領域において高屈折率材料を機械的に振動することにより伝搬光に強度変調と位相変調を掛ける方式を提案している。その変調原理を実現するための具体的な素子構成として、シリコンフォトニック結晶光導波路上に静電的に励振可動なシリコン製マイクロカンチレバーを配置する方法、2本の平行なシリコン細線光導波路そのものを機械的に駆動する方法、シリコン細線光導波路に微細なブラッグ回折格子を押し当てて変調を掛ける方法について光学的な解析を行い、それらがシリコンマイクロマシニング技術を用いて製作可能であることを述べている。 第3章は「フォトニック光導波路とMEMSを融合した光変調器」であり、薄膜SOI基板を電子ビーム露光と高アスペクト比ドライエッチングによって加工したフォトニック結晶光導波路上に、LPCVD法によって多結晶シリコンの薄膜構造を形成する新規製作プロセスについて述べている。特に、フォトニック結晶導波路下の酸化膜は除去せずに、多結晶シリコン製のMEMS変調器の下の犠牲層酸化膜だけを除去するために、層間保護膜としてシリコン窒化膜を配置する方法を考案した。また、実際に製作したフォトニック結晶導波路型MEMS光変調器に光ファイバを用いて波長1.55ミクロンの光を導入し、MEMS構造の静電駆動により光が変調されることを実験的に確認した。 第4章は「シリコン細線光導波路とMEMS構造を融合した光変調器」であり、薄膜SOI基板をシリコン細線光導波路に加工し、その光導波路を基板面内で水平に静電駆動することにより光変調、光スイッチングをするデバイスの製作方法について述べている。また、同様の手法により、シリコン細線光導波路に対してグレーティング構造を機械的に押し当てることで特定波長を選択的に切り出す光スイッチが作製可能であることを実験的に示している。 第5章は「考察」であり、シリコン細線光導波路の挿入損失を損なわずに静電的に駆動可能にする設計方法として、導波路の一部分を機械的に保持する形状について議論している。また、機械的に駆動する光導波路部分のみを選択的に犠牲層エッチングによりリリースする手法として、フォトレジストやパリレンを保護材として用いた蒸気フッ酸によるエッチング方法について議論している。また、第3章と第4章で述べた2種類のシリコンフォトニックMEMS光変調器の特徴を比較して、それぞれに適した応用例を提示している。 第6章は「結論」で、本論文で示した成果を総括している。 以上これを要するに本研究は、シリコン光集積回路とマイクロメカニカル技術を融合したシリコンフォトニックMEMS光変調素子を提案し、本素子の電気機械的および光学的設計を実施するとともに、新たに開発したマイクロマシニング技術により実際に光変調素子を作製してその動作を確認したものであり、電気工学上貢献するところが少なくない。 よって本論文は、博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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