学位論文要旨



No 122654
著者(漢字) 岡部,弘基
著者(英字)
著者(カナ) オカベ,コウキ
標題(和) 生きた細胞内における特定のmRNAのリアルタイム定量
標題(洋)
報告番号 122654
報告番号 甲22654
学位授与日 2007.03.22
学位種別 課程博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 博薬第1199号
研究科 薬学系研究科
専攻 分子薬学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 船津,高志
 東京大学 教授 長野,哲雄
 東京大学 教授 堅田,利明
 東京大学 教授 三浦,正幸
 東京大学 助教授 浦野,泰照
内容要旨 要旨を表示する

 真核生物の遺伝子発現において中心的役割を担うmRNAの一生には、転写、プロセシング、輸送、局在、分解等の過程があり、複雑かつ多様な遺伝子発現を可能としている。長年の間、mRNAは、核内のDNAが持つ遺伝情報を細胞質に伝える情報伝達分子であると認識されて来たが、近年siRNAやmiRNAなどの小分子RNAや非翻訳RNAの発見により、積極的に遺伝子発現を調節する機能性分子としても大きな関心を集めている。一方、生理活性分子の機能、動態解析において蛍光イメージング法は時間、空間的な理解の強力なツールとなるが、タンパク質のイメージングと異なり、生きた細胞内における特定の内在性RNAの蛍光標識技術は無く、生きた細胞内における内在性mRNAのイメージングはほとんど未開の領域であった。生きた細胞内におけるRNA分子のリアルタイム観察は、mRNAや機能性RNAの動態や機能解析において革新的かつ必須の技術的課題であると考え、本研究では生きた細胞内において配列特異的な内在性mRNAの蛍光標識法を確立した。さらに、確立した蛍光標識法を応用して、特定のmRNAのリアルタイム定量法を構築した。

【1】アンチセンス人工核酸を用いた特定のmRNAのリアルタイムイメージング

 特定のmRNAを可視化するために、蛍光標識したアンチセンス核酸を細胞内にてハイブリダイズさせ、蛍光顕微鏡を用いて観察する方法を考案した。アンチセンス核酸分子としては細胞内において安定に存在し、RNAへの高い親和性を有する2'O-methyl RNAを選択した。さらに、標的mRNAとハイブリダイズしたシグナルと、未結合のプローブ由来の蛍光とを区別するために、2種類の人工核酸をそれぞれ異なる蛍光団で標識し、ハイブリダイズに伴う2種の蛍光団間に起こる蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて検出することとした(Fig.1)。これら2種のアンチセンスプローブは標的mRNAのそれぞれ隣接する配列に相補的に結合することで、2種の蛍光団間の距離が短くなり、FRETが生じるが、未結合のプローブは蛍光団が接近せず、FRETは生じない。

Fig.2 アンチセンスプローブの蛍光スペクトル[ex.532nm,黒線がmRNA添加後,挿入図はセンスプローブを用いたスペクトル]

 標的mRNAとして、転写因子AP-1の構成タンパク質であるc-fosをコードしているhuman c-fos mRNAを選択し、これに相補的な16-20塩基の各種核酸骨格を有するドナー(Cy3標識)及びアクセプター(Cy5標識)プローブを設計及び調製した(Fig.1)。調製したプローブの標的mRNAとの結合能を、蛍光分光光度計を用いて評価した。Fig.2に示すように、調製したアンチセンスプローブはin vitro転写システムにより合成したc-fos mRNA存在下、FRET蛍光として検出された。一方、標的mRNA非存在下、もしくはセンス配列を有するプローブを用いた場合はFRET蛍光が観察されず、アンチセンスプローブが標的mRNAに配列依存的に結合することが確認された。また、標的mRNAとプローブを混合した後のFRET蛍光の時間変化測定を行ったところ、その結合速度定数は172,000M(-1)s(-1)であり、プローブとmRNAとの結合は速やかに進行することが分かった。

 次に、生きた細胞内におけるアンチセンスプローブとmRNAの結合安定性を評価するため、in vitro合成したc-fos mRNAをあらかじめアンチセンスプローブとハイブリダイズさせた後に、マイクロインジェクションによりCos7細胞の細

胞質に導入し、落射蛍光顕微鏡を用いて観察した。ドナー蛍光(Cy3)、アクセプター蛍光(Cy5)及びFRET蛍光(Cy3を励起した際のCy5の蛍光)の3種の蛍光像を、それぞれ冷却CCDカメラを用いて取得した。アンチセンス2'O-methyl RNAを用いた場合、ドナー蛍光、アクセプター蛍光は細胞全体に分布していたのに対し、FRET蛍光像においてのみ細胞質にmRNA特異的なシグナルが観察された(Fig.3)。一方、FISH(Fluorescence in situ hybridization)法など化学固定した細胞内のmRNAの検出に用いられるDNAプローブをmRNAとハイブリダイズさせて導入すると、プローブは速やかに核内に移行し(Fig.3)、DNAプローブはmRNAとハイブリダイズしていても生きた細胞内では速やかに解離することが示唆された。以上の検討から、人工核酸である2'O-methyl RNAを用いてFRET検出することが、ターゲットのmRNAを特異的に検出するのに有効な手法であることが分かった。

 続いて、Cos7細胞に内在性のc-fos mRNAを検出するため、アンチセンス2'O-methyl RNAプローブをCos7細胞の細胞質にマイクインジェクションにより導入した。プローブの多くは導入後速やかに核内へと移行し、細胞質において標的mRNAを検出することは出来なかった。そこで、プローブの核内への移行を防ぐため、アンチセンスプローブを、ビオチンを介してストレプトアビジンを結合させて、サイズ効果により核膜孔を通過できない誘導体へと変換した。ストレプトアビジンを結合したドナー及びアクセプタープローブを混合し、Cos7細胞の細胞質に導入したところ、プローブは核内へ移行せず細胞質に分布した(Fig.4A)。種々の濃度のアンチセンスプローブを導入したところ、濃度依存的にFRETシグナルが得られた(Fig.4B)。一方、ストレプトアビジンを結合したセンスプローブやDNAプローブを導入した細胞においては、FRETシグナルは検出されなかった(Fig.4B)。以上の検討により、ストレプトアビジンを結合したアンチセンス2'O-methyl RNAプローブを用いて細胞内に内在する特定のmRNAを選択的に検出する方法を確立した。

【2】蛍光相関分光法を用いた特定のmRNAのリアルタイム定量

 確立した蛍光標識法により、細胞内に内在性のc-fos mRNAを蛍光標識し、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy, FCS)を用いて生きた細胞における発現量の定量を試みた。FCSは対物レンズによって絞り込まれたレザー光による共焦点領域を通過する蛍光分子の発する蛍光のゆらぎを解析することにより、その領域内平均分子数と拡散時間を算出できる測定系である。細胞内に導入したアンチセンス2'O-methyl RNAプローブは標的mRNAの発現量依存的にmRNAに結合、非結合の2状態をとるので、FCS測定を行うことで、拡散時間の異なる2状態をそれぞれ定量し、結合比率から標的mRNAの濃度を算出できると考えた。

 まずin vitroにて、FCSによるmRNAの定量を行った。in vitro合成したc-fos mRNAとCy3標識アンチセンス2'O-methyl RNAプローブを混合後、Cy3を励起してFCSにより解析した(Fig.5挿入図)。プローブはmRNAとの結合、非結合型を、それぞれの拡散時間の違いから分離して定量することが出来た。また、mRNA濃度一定条件における種々濃度のアンチセンスプローブのFCS測定から、アンチセンスプローブとc-fos mRNAとの解離定数(KD=44.5±6.80 nM)を算出した。また、解離定数から算出したmRNAの濃度は、吸光度から定量した濃度とほぼ一致した。続いて、生きた細胞においてFCSを用いた同様の検討をするため、ストレプトアビジンを結合したアンチセンス2'O-methyl RNAプローブをCos7細胞の細胞質にマイクインジェクションにより導入し、細胞質におけるプローブの蛍光をFCSにより解析した。細胞質におけるFCS解析条件の最適化を行ったところ、細胞内においても、結合、非結合型の2成分を検出することが可能であった。一方、センスプローブを導入した細胞内では、ほとんどのプローブは非結合型であった。発現しているc-fos mRNAの濃度は細胞個々に異なるが、導入するアンチセンスプローブの濃度を変化させて解析を行ったところ、発現しているmRNAの濃度の不均一性を反映して各プローブ量における結合量にばらつきを示した(Fig.5)。多数の細胞について解析を行ったところ、細胞内における解離定数(KD=170±29.6 nM)を算出することができた。また解離定数から個々の細胞におけるc-fos mRNAの濃度を定量した(Fig.6)。また、本定量法を用いて、転写阻害剤アクチノマイシンD処理をした時のc-fos mRNAの減少を検出することが出来た。

【3】まとめ

 本研究において私は特定のmRNAのリアルタイム検出を行うために、内在性のmRNAを選択的に検出可能なラベル法を確立した。本法ではFRETに基づき標的mRNAと結合したプローブのみを検出するため、未結合のプローブと共存下でも選択的に検出可能であり、生きた細胞においてリアルタイムに内在性のc-fos mRNAを検出することが出来た。また、確立したラベル法を用いて生きた細胞内に内在するmRNAを蛍光標識し、細胞内のプローブの結合・非結合型の拡散定数の違いを利用してそれらの分子数をFCSで計測した。以上により、生きた個々の細胞において内在性のmRNAの濃度をリアルタイムに定量することに初めて成功した。

Fig.1 アンチセンスプローブを用いたmRNAの蛍光標識法

Fig.3 Cos7細胞中のin vitro mRNAとハイブリダイズしたアンチセンスプローブの蛍光像[D:ドナー,F: FRET,A: アクセプター蛍光像]

Fig.4 ストレプトアビジンを結合したプローブを用いた細胞内における内在性c-fos mRNAのFRETによる検出[A蛍光像,B導入したプローブの量とFRET蛍光強度の関係(●アンチセンス,○センス,△DNAプローブ)]

Fig.5 FCSによるmRNAの定量.導入したアンチセンスプローブの濃度とmRNAに結合したプローブ濃度の関係[挿入図はin vitroにおける結果]

Fig.6 FCSにより定量したCos7細胞に内在するc-fos mRNAの濃度.178細胞の結果をヒストグラムに示した。

審査要旨 要旨を表示する

 真核生物の遺伝子発現において中心的役割を担うmRNAの一生には、転写、プロセシング、輸送、局在、分解等の過程があり、複雑かつ多様な遺伝子発現を可能としている。長年の間、mRNAは、核内のDNAが持つ遺伝情報を細胞質に伝える情報伝達分子であると認識されて来たが、近年siRNAやmiRNAなどの小分子RNAや非翻訳RNAの発見により、積極的に遺伝子発現を調節する機能性分子としても大きな関心を集めている。一方、生理活性分子の機能、動態解析において蛍光イメージング法は時間、空間的な理解の強力なツールとなるが、タンパク質のイメージングと異なり、生きた細胞内における特定の内在性RNAの蛍光標識技術は無く、生きた細胞内における内在性mRNAのイメージングはほとんど未開の領域であった。したがって、生きた細胞内におけるRNA分子のリアルタイム観察は、mRNAや機能性RNAの動態や機能解析において革新的かつ必須の技術的課題である。本論文は、このような現状を鑑み、生きた細胞内において配列特異的な内在性mRNAの蛍光標識法を確立し、さらに、この蛍光標識法を応用して、特定のmRNAのリアルタイム定量法を研究開発した結果をまとめたものである。

 まず、第1章では、遺伝子発現におけるRNAの役割や、RNAの検出、定量技術の現状など、本研究の背景が述べられている。

 第2章では、本研究で用いた材料と実験方法がまとめられている。特に、キーテクノロジーとなる蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によるイメージングと、蛍光相関分光法(FCS)が詳細に説明されている。

 第3章では、アンチセンス人工核酸を用いて生きた細胞における特定のmRNAのリアルタイムイメージング法を確立した。特定のmRNAを可視化するために、蛍光標識したアンチセンス核酸を細胞内にてハイブリダイズさせ、蛍光顕微鏡を用いて観察する方法を考案した。アンチセンス核酸分子としては細胞内において安定に存在し、RNAへの高い親和性を有する2'O-methyl RNAを選択した。さらに、標的mRNAとハイブリダイズしたシグナルと、未結合のプローブ由来の蛍光とを区別するために、2種類の人工核酸をそれぞれ異なる蛍光団で標識し、ハイブリダイズに伴う2種の蛍光団間に起こるFRETを検出した。これら2種のアンチセンスプローブは標的mRNAのそれぞれ隣接する配列に相補的に結合することで、2種の蛍光団間の距離が短くなり、FRETが生じるが、未結合のプローブは蛍光団が接近せず、FRETは生じない。標的mRNAとして、転写因子AP-1の構成タンパク質であるc-Fosをコードしているhuman c-fos mRNAを選択し、これに相補的な16-20塩基の各種核酸骨格を有するドナー(Cy3標識)及びアクセプター(Cy5標識)プローブを設計及び調製した。調製したプローブの標的mRNAとの結合能を、蛍光分光光度計を用いて評価した。調製したアンチセンスプローブはin vitro転写システムにより合成したc-fos mRNA存在下、FRET蛍光として検出された。一方、標的mRNA非存在下、もしくはセンス配列を有するプローブを用いた場合はFRET蛍光が観察されず、アンチセンスプローブが標的mRNAに配列依存的に結合することが確認された。また、標的mRNAとプローブを混合した後のFRET蛍光の時間変化測定を行ったところ、その結合速度定数は172,000 M(-1)s(-1)であり、プローブとmRNAとの結合は速やかに進行することが分かった。次に、生きた細胞内におけるアンチセンスプローブとmRNAの結合安定性を評価するため、in vitro合成したc-fos mRNAをあらかじめアンチセンスプローブとハイブリダイズさせた後に、マイクロインジェクションによりCos7細胞の細胞質に導入し、落射蛍光顕微鏡を用いて観察した。ドナー蛍光(Cy3)、アクセプター蛍光(Cy5)及びFRET蛍光(Cy3を励起した際のCy5の蛍光)の3種の蛍光像を、それぞれ冷却CCDカメラを用いて取得した。アンチセンス2'O-methyl RNAを用いた場合、ドナー蛍光、アクセプター蛍光は細胞全体に分布していたのに対し、FRET蛍光像においてのみ細胞質にmRNA特異的なシグナルが観察された。一方、DNAプローブをmRNAとハイブリダイズさせて導入すると、プローブは速やかに核内に移行し、DNAプローブはmRNAとハイブリダイズしていても生きた細胞内では速やかに解離することが示唆された。以上の検討から、人工核酸である2'O-methyl RNAを用いてFRET検出することが、ターゲットのmRNAを特異的に検出するのに有効な手法であることが分かった。続いて、Cos7細胞に内在性するc-fos mRNAを検出するため、アンチセンス2'O-methyl RNAプローブをCos7細胞の細胞質にマイクインジェクションにより導入した。プローブの多くは導入後速やかに核内へと移行し、細胞質において標的mRNAを検出することは出来なかった。そこで、プローブの核内への移行を防ぐため、アンチセンスプローブを、ビオチンを介してストレプトアビジンを結合させて、サイズ効果により核膜孔を通過できない誘導体へと変換した。ストレプトアビジンを結合したドナー及びアクセプタープローブを混合し、Cos7細胞の細胞質に導入したところ、プローブは核内へ移行せず細胞質に分布した。種々の濃度のアンチセンスプローブを導入したところ、濃度依存的にFRETシグナルが得られた。一方、ストレプトアビジンを結合したセンスプローブやDNAプローブを導入した細胞においては、FRETシグナルは検出されなかった。以上の検討により、ストレプトアビジンを結合したアンチセンス2'O-methyl RNAプローブを用いて細胞内に内在する特定のmRNAを選択的に検出する方法を確立した。

 第4章では、FCSによる生きた細胞内における特定のmRNAのリアルタイム定量法を確立した。第3章で確立した蛍光標識法を用い、細胞内に内在するc-fos mRNAを蛍光標識し、FCSを用いて生きた細胞における発現量の定量を試みた。FCSは対物レンズによって絞り込まれたレザー光による共焦点領域を通過する蛍光分子の発する蛍光のゆらぎを解析することにより、その領域内平均分子数と拡散時間を算出できる測定系である。細胞内に導入したアンチセンス2'O-methyl RNAプローブは標的mRNAの発現量依存的にmRNAに結合、非結合の2状態をとるので、FCS測定を行うことで、拡散時間の異なる2状態をそれぞれ定量し、結合比率から標的mRNAの濃度を算出できると考えた。まずin vitroにて、FCSによるmRNAの定量を行った。in vitro合成したc-fos mRNAとCy3標識アンチセンス2'O-methyl RNAプローブを混合後、Cy3を励起してFCSにより解析した。その結果、mRNAと結合、非結合のプローブを、それぞれの拡散時間の違いから分離して定量することが出来た。また、mRNA濃度一定条件における種々濃度のアンチセンスプローブのFCS測定から、アンチセンスプローブとc-fos mRNAとの解離定数(KD=44.5±6.80nM)を算出した。また、解離定数から算出したmRNAの濃度は、予め吸光度から定量してあった濃度とほぼ一致した。続いて、生きた細胞においてFCSを用いた同様の検討をするため、ストレプトアビジンを結合したアンチセンス2'O-methyl RNAプローブをCos7細胞の細胞質にマイクインジェクションにより導入し、細胞質におけるプローブの蛍光をFCSにより解析した。細胞質におけるFCS解析条件の最適化を行ったところ、細胞内においても、結合、非結合型の2成分を検出することが可能だった。一方、センスプローブを導入した細胞内では、ほとんどのプローブは非結合型であった。発現しているc-fos mRNAの濃度は細胞個々に異なるが、導入するアンチセンスプローブの濃度を変化させて解析を行ったところ、発現しているmRNAの濃度の不均一性を反映して各プローブ量における結合量にばらつきを示した。多数の細胞について解析を行ったところ、細胞内における解離定数(KD=170±29.6nM)を算出することができた。また、解離定数から個々の細胞におけるc-fos mRNAの濃度を定量した。さらに、本定量法を用いて、転写阻害剤アクチノマイシンD処理をした時のc-fos mRNAの減少を検出することが出来た。

 第5章では、本研究のまとめと展望が述べられている。

 以上のように、学位申請者は生細胞において特定のmRNAのリアルタイム検出を行うために、内在性のmRNAを選択的に検出可能なラベル法を確立した。本法ではFRETに基づき標的mRNAと結合したプローブのみを検出するため、未結合のプローブと共存下でも選択的に検出可能であり、生きた細胞においてリアルタイムに内在性のc-fos mRNAを検出することに成功した。また、確立したラベル法を用いて生きた細胞内に内在するmRNAを蛍光標識し、細胞内のプローブの結合・非結合型の拡散定数の違いを利用してそれらの分子数をFCSで計測した。以上により、生きた個々の細胞において内在性のmRNAの濃度をリアルタイムに定量することに初めて成功した。よって、本研究を行った岡部弘基は博士(薬学)の学位をうけるにふさわしいと判断した。

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