No | 122854 | |
著者(漢字) | 近藤,祐嗣 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | コンドウ,ユウジ | |
標題(和) | 肝細胞癌合併および非合併慢性肝疾患患者の健康関連の生活の質(Health-Related Quality of Life) の解析 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 122854 | |
報告番号 | 甲22854 | |
学位授与日 | 2007.04.25 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第2954号 | |
研究科 | 医学系研究科 | |
専攻 | 内科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 【背景】 健康関連の生活の質(Health-Related Quality of Life、以下HRQOL)は、近年、慢性肝疾患患者の管理において重視されている。また、肝細胞癌は、近年の診断・治療の進歩により生命予後が改善しているが、治療が奏功しても高率に再発するため、繰り返す治療を要する慢性疾患としての面を持ち合わせるようになっている。本研究では、肝細胞癌合併及び非合併慢性肝疾患患者のHRQOLを調査し、HRQOLに影響する因子を解析することを目的とした。 【方法】 1999年4月から2001 年3月の間に、東京大学医学部付属病院消化器内科にて経皮的局所療法(エタノール注入療法及びラジオ波焼灼療法)の適応と判断され治療が奏功した患者で2003年末の時点で生存中の患者97人、および対照群として2004年1月に同科外来を受診した肝細胞癌のない慢性肝疾患患者のうち年齢・性およびChild分類をマッチさせた97人、計194人を対象とした。2004年1月から3月にかけ、日本語版Short-Form 36(以下SF-36)質問票を用いてHRQOLを調査した。群別、再発歴、最近6ヶ月の治療歴、背景肝機能等を説明変数とし、SF-36の各ドメインの得点を目的変数とした多変量解析を行なった。 【結果】 HRQOLは、肝細胞癌の合併群と非合併群の両方において、SF-36の8個のドメインのうちPhysical Functioning、Bodily Painを除く6個のドメインが、健康人集団と比較して有意に低い 点を示した。肝細胞癌合併群と非合併群の比較では、8個のドメインいずれにおいても有意な差は見られなかった。多変量解析の結果、血清アルブミン値がSF-36各ドメインの得点と最も強い相関を示した。肝細胞癌合併の有無はHRQOLにほとんど影響しなかった。 【結論】 経皮的局所療法が奏功し、3-5年生存している肝細胞癌患者集団のHRQOLは、肝細胞癌のない慢性肝疾患患者集団と比較してよく保たれていた。HRQOLは、肝細胞癌の有無よりも、背景肝機能に強く依存した。血清アルブミン値は、客観的かつ測定が容易であり、臨床における患者のHRQOLの予測に有用と考えられた。肝細胞癌の治療において、背景肝機能を可能な限り温存することが、HRQOLの維持に重要であることが示唆された。 | |
審査要旨 | 本研究は、慢性肝疾患患者の健康関連の生活の質(Health-Related Quality of Life、以下HRQOL)について、肝細胞癌の合併の有無により比較検討したものであり、以下の結果を得ている。 1. 慢性肝疾患患者のHRQOLは、肝細胞癌合併患者(肝細胞癌に対する経皮的局所療法治療歴のある患者)、肝細胞癌非合併患者とも、健常人と比較し、低下している。 2. 肝細胞癌に対する経皮的局所療法治療歴のある患者のHRQOLは、肝細胞癌合併のない慢性肝疾患患者と比較し同等である。 3. HRQOLには、癌合併の有無よりも、背景肝機能が強く相関し、血清アルブミン値は、HRQOLの予測に適している。 以上、本論文では、慢性肝疾患患者のHRQOLは健常人より低下しており、HRQOLが、肝細胞癌合併の有無には左右されず、背景肝機能に強く影響されることを示した。比較的早期に肝細胞癌が発見され、経皮的局所療法にて根治的に治療出来、比較的長期生存を得られている患者のHRQOLは、良好に保たれていると考えられた。また血清アルブミン値がHRQOLと強く相関しており、患者のHRQOL評価に有用であることを示した。本研究は、慢性肝疾患や肝細胞癌の臨床において重要になりつつある患者HRQOLの解明につながり、患者ケアの向上に貢献すると考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 尚、審査会時点から、論文の内容について以下の点が改訂された。 1. 対象と方法において、対照群(慢性肝疾患群、肝細胞癌非合併)の構成法が不適切であったため、適切なものに修正した。またその方法につき詳細に記述した。 2. 結果において、性別、年齢、アルブミン値等の重要な因子につき層別解析を追加した。 3. 考察において、肝細胞癌合併群の集団の特性、バイアスが入る可能性につき記述した。 | |
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