学位論文要旨



No 122999
著者(漢字) 林,崇傑
著者(英字)
著者(カナ) リン,チュンチェ
標題(和) 容積移転からみる都市歴史地区における景観形成メカニズムに関する研究:台北市迪化街地区の景観再生と都市保全
標題(洋) The Urban Historic Area's Landscape Transformation with Application of Transfer of Development Rights : The Preservation and Urban Revitalization of Dihua Street in Taipei
報告番号 122999
報告番号 甲22999
学位授与日 2007.09.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第6616号
研究科 工学系研究科
専攻 都市工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 西村,幸夫
 東京大学 教授 大西,隆
 東京大学 教授 大方,潤一郎
 東京大学 教授 北沢,猛
 東京大学 准教授 城所,哲夫
内容要旨 要旨を表示する

都市歴史エリアは社会多様化の重要な証拠であり、もです都市を持続可能な発展への重要な学習と参考するの座標。都市歴史エリアは現在の世界中の工業化に直面して急いで保護する必要性がある重要な資産である。これらの地域だけでなく、地域の伝統特色を反映し、これらの地域の今昔にある環境を直面して挑戦する生存知恵を現れたことである。これらの歴史エリアを保存維護だけでなく、工業化そして漸は一致する文化様相を改善していて、同時にもこれらの歴史エリアを発展の圧力に直面し、コミュニティの協和を維持することと市民共同の記憶への成長道を探すを促している。

都市歴史エリアの保存維護だけでなく、全世界文化多様性への尊重もすべきである、同時にこのメンテナンスプロセスの中で歴史に学ぶ。過去の人間が環境を直面して挑戦する経験の中から、地域の真実な脅威を知ったよに、本來の都市持続発展の可能性及び経営策略を知ることが出来る。しかし、遺憾なのは我々はこの事理を知るが、大多数の国と地方は都市歴史エリアを直面する発展の必要性があるので、常に選択したのは歴史エリアを改築することになり保存する方ではない。特にアジアの都市が急速な成長を直面し、たくさんの圧力の下で、都市の開発を選択する。アジア地域にとって、発展途上の都市とその都市歴史エリアの保存維護、依然として一つの急だ適当保全施策を探して課題です。

華人文化の影響下の地域では、街屋は都市歴史エリアの重要な建物タイプであり、都市の経済発展を直面する圧力下には、街屋の保全は一つの真実な都市歴史保存の課題になる。このような建築形態も明朝鄭和(1371~1434)による海外探險事業を伴りて、清朝の海外移民まで、東南アジア地方をはじめ、邏羅、安南、爪哇、三仏斉、滿剌加、台湾などを影響し、シンガポール、マカオ、ハノイ、ペナン及び台湾にある多数の都市早期発展エリアは街屋を集めるのが発展特徴である。これ歴史エリアの中で、街屋は都市早期発展のエリアの主な建築形態です。速い経済発展圧力の下で直面している、これらの十中八九城市中心地方の街屋に位置して、撤去する運命に臨む、地方が発展して土地需要に提供する圧力があると思っていた。

東南アジアの華人聚落に集めた歴史街屋建築群、台湾は一番早くスピーディ経済成長の圧力に直面したことろ。台湾の都市は異なっている発展条件の下に、各種で異なっている環境チャレンジ を直面し、それぞれに異なっている保全手段を取りました。これらの歴史街区の保存経験、そして台湾における地域性発展経験の価値に対してまさに順次に向かう開発する大多数の東南アジア地域における歴史街区にも参考比較の意義がある。

廸化街地区は台湾で一番早く伝統的歴史街屋を保全する歴史街区であり、最も早く都市計画及び容積移転の措置を利用し、有効に都市開発にあたる経済市場需要満足し、として同時に歴史街区保存目的を達するところである。台湾にある約50もある歴史街区の中で、各都市の異なっている発展条件によって、たくさん異なっている発展事情がある。廸化街地区は台北市がスピーディ発展する背景の下で、同じく都市道路の拡幅に臨み、街屋は古しく倒るがち、居住と商業の面積が需要の拡大などの圧力を面している。1982から都市計画道路拡幅計画し、街屋を撤去予定だった事件を論争してから、台湾最初都市計画の手段を利用して歴史保存が遂行したエリアで、台湾で最初の容積移転を利用して現存する街屋を保存するところであっだ。

廸化街地区の容積移転を利用するだけでなく、既存の街屋を有効に保護し、歴史街区の全体形貌の協和も維持する、高層建築が築くと既存歴史エリアの片影を破壊するので、それを避けよるとした。廸化街地区容積移転の実績があったため、台湾ではたくさんの歴史街区、古跡のオーナーあるいは愛護者及び政府部門を引き付ける。未来に容積移転制度を都市歴史保存の策略工具に援引するも期待できる。そのために、廸化街地区容積移転のメカニズムを検討して一つの重要な課題になって、それは廸化街地区は容積移転が保全工具を利用する進展して今までもう一度検討することだけではなく、台湾地域今後容積移転を都市保存の工具として引用する重要な参考を提供している。そして、廸化街地区容積移転制度の施行と検討は、容積移転が都市歴史保全が策略モデル分析を提供することが出来る。続き台湾地域について東南アジア地域の歴史街区にも重要な参考意見となります。

研究の地理範囲は廸化街がセンターに「大稻〓歴史風貌特定專用区」都市計画の範囲 (略称廸化街地区)を範囲にすることです。研究の対象は上述廸化街の街屋建物(歴史性建築と非歴史性建築を含む)を中心に、容積移転を利用すると移り変わらない状況に、その保存維護する状況が作為研究する対象。この研究の時間帯範囲には1988年当地区都市設計審議を採用してから、2005年まで間の建築の申請案である。それは都市景観が維持していた状況について分析をし、対照的な比較をするためである。そして2000年容積移転制度を執行しはじめた後、2005年までの間に全部容積移転申請案を主な分析対象とし、具体的に容積移転制度を検討してこの制度を利用する実績及びその影響を明かにする。研究範囲内に全部401個の建物敷地の中、完成した都市設計審議案103件(1988~2005)、及び容積移転が53件(2000~2005)を検討した。

台北市迪化街地区に関する研究は、迪化街地区は台湾早期発展の重要な市街であるため、今までもほとんど歴史街屋建築群を保留している。昔、迪化街地区の歴史保全計画と歴史発展の分析がある、しかし容積移転の運用に対し、まだ2000年から利用しはじめた新しい制度であるため、台湾地域もまだこの容積移転制度を採用するほかの歴史街区がなく、容積移転に対して討論は、今まで依然に制度の紹介、分析に重視するものであり。そのため、この研究は初めてシステムの分析により、台北市迪化街地区が容積移転をとける有効な保存歴史街区伝統的な建造物築群での討論である。この研究もはじめて具体的に容積移転を検討し、歴史街区に利用することは、一体どんな効能を発揮することが出来るか、その環境背景と条件はまた何なのか。しかも分析したこの保全のモードのメカニズム、及びそれは一つの有効な工具ではないことである。台湾にある他の歴史街区に利用することが出来るか。ほかの東南アジア地域都市の歴史エリアまで街屋保存の参考を提供しますか。

この研究は台湾の歴史保全政策の発展及び容積移転制度のは創設の討論し、この容積移転制度どう台湾で形成し、そして台湾の中央政府が容積移転を使用した始め動因を検討と分析する。そして台北県の経験を例とし、台北市の廸化街地区の対照組となる、歴史保存について影響と、容積移転が非歴史保存に利用する結果で検討する。この研究も台北市迪化街地区が容積移転制度を利用と分析の討論、さらに、容積移転の影響は何が都市風景に対し、廸化街地区を検討することを含めて街区の送出敷地は容積を送出した後、個別敷地の景観について影響が何あるのか。街区の中の敷地がその容積を送り出すと街区の全体の景観は影響が何あるのか。同じく送出敷地は、歴史性建築と非歴史性建築について相違がとういうことだろう。同時に容積移転の接收敷地にも分析して、容積は移し入れた後どんな影響をもたらしたのか。そして接收敷地を受け入れると周縁環境は衝撃を生じるのか。その外に、台北市全体の発展観点から分析すると、容積は一体どうな移動があるのか。それらのエリアは容積が移し入れた主な地方になるのか。どんな理由でこのような現象を起したのか。このような容積移動は全市の全体形貌についてどんな影響があったのか。さらに台北の古跡、歴史性建築は容積移転利用の状態を討論する。迪化街地区がTDRを利用しなければならない不動産市場条件を分析し、そして容積移転容積が歴史街区を保存するの適用条件への分析である。

容積移転制度の価値とそれをほかの歴史街区の保全工具を利用する評価の分析、そして容積移転が都市歴史街区の歴史保全を利用して発展モデルを建てる可能性をはかる。そして台北市での古跡及び歴史建築の保存と使用の状態とそれ容積移転が利用する必要性での討論。上記の分析に基づいて、再び顧みての台湾歴史街区の発展現況を調べ、容積移転に対してその保存と経営にあたる可能な効果の影響を分析すると、容積移転について台湾歴史街区で適用状況と可能性に評価する。

容積移転は歴史街区に対して開発の圧力に臨む時には、確か一つ有効な緩いの作用を提供した。それは持主の期待に応じ経済需要への発展するを解決するは、同時にTDRから来た経費が歴史建築の修繕を用いることが出来る、古い街屋をさせれば保存が維持した原則の下で修繕することが出来、居住と商業空間の品質も改善した。しがし、容積移転はただ一つ単純な発展権を転移する技術であり、歴史街区保存の工具として、それは依然にほか価値が判断した操作メカニズム協力を要り、及びたらセット応じて状況を継続的に発展する自由協調の措置。そして、容積移転の有効運転は、たくさん組みあわせの法令は改正する必要がある、完全な都市計画の樹立、有効な行政助成の指導、深く入り込む修繕方式の討論、市民アイデアの教育宣伝指導を行う。

キー・ワード: 容積移転(transfer of development rights)、送出敷地(sending site)、接受敷地(receiving site)、土地使用分区規制規則(zoning ordinance)、歴史街区(historic district)、街屋(streethouse)、歴史性建築物(historic building)、都市設計審議(urban design review)
審査要旨 要旨を表示する

本論文は台湾における歴史保全政策のうち、近年の特色となっている容積移転制度について、その制度創設の経緯をはじめとして、その現在の利用状況、今後の展望を系統的に論じたものである。研究を進めるにあたって台北市内の主要な歴史地区のひとつである迪化街を対象として、容積移転の実際を具体的に検証している。

論文は研究の枠組みを述べた序章と8つの章から成る本論部分、そして結論を述べる結章によって構成されている。巻末に具体的な資料および参考文献を掲載している。

第1章は、序説であり、国際的に見た歴史地区の概念の変遷を明らかにしたのち、歴史地区保全のための主要な手法のひとつとしての容積移転制度の発生をアメリカおよび日本の事例をもとに明らかにしている。とくに容積移転制度は歴史的な背景が地域ごとに異なるためにその適用方法も地域性を有していること、適切な環境管理計画のもと容積の送出地と接受地は同時に計画されなければならないことを明示している。

第2章は、台湾における都市歴史地区の保全施策の発展の歴史を明らかにした章である。民間による保存運動の歴史と国による政策の展開および法令の制定の過程を明らかにし、次いで地方政府による保全施策と規制手法の展開を台北市を事例にして明らかにしている。とりわけ台北市迪化街において、都市計画と都市設計審議制度を利用することによって実効性のある保全施策が実現していることを明らかにしている。

第3章は、台湾における容積移転制度の創設と発展の経緯を詳細に明らかにしている。国レベルでの容積移転制度の採用にあたっては、歴史保存、開放空間の提供および公共用地取得の3つの目的があったことが明らかにされている。次いで台湾においてもっとも先進的に容積移転制度を運用している台北市について、容積移転計画のあり方を8つに分類し、さらに規制手法によって3類型に分類している。特に接受地の様態に関して、MRT駅周辺の開発促進、都市更新の促進、送出地との抱き合わせ指定などの形態の相違を明らかにしている。

第4章は、事例研究として、台北市迪化街を採り上げ、同地区における容積移転の各種事例の検討を行っている。1988年から2005年までに迪化街において実施された103件の都市設計審議案件をすべて検討し、容積移転が実施された延べ107件に関して比較検討を行っている。その結果、いくらかの時期的な相違はあるものの一般的に見て容積移転制度は街区内の歴史的建造物の保存に寄与していること、ただし同制度が効果的に適用されるためには詳細な運営機構が必要であることを明らかにしている。

第5章は、第4章で明らかにした容積移転を有効に機能させるための運営機構として台北市の都市設計審議制度を採り上げ、同制度によってどのような都市保全が実現したのかを検証している。1988年から2005年までに実施された合計176件の歴史建造物保存に関わる都市設計審議案件をすべて検討し、これらが3類型6種に分類できることを明らかにし、さらに同時期の全審議案件である1812件のなかでの位置づけを論じている。続いて迪化街において同様の調査をさらに詳細に行っている。その結果、都市設計審議を柔軟に行うことによって容積移転制度が有効に活用できることを実証している。

第6章は、さらに具体的に台北市迪化街において実際にどのような景観形成が実現しているのかを現地調査をもとに明らかにしている。また、接受地において発生した2件の係争事例を分析し、容積移転が都市景観全体に及ぼす影響を明らかにしている。移転容積総量に制限を設ける均衡機構の導入を提言している。また、容積移転のタイミングをコントロールするために都市設計審議が果たしている役割が大きいことを評価している。

第7章は、容積移転制度の側からではなく、歴史地区側から見た際の容積移転制度の評価を試みている。同制度が都市保全の側面からも高く評価できることを示したのち、同制度の運用にあたり透明な情報プラットホームの形成が必要であることを強調している。

第8章は、第7章に引き続き、容積移転制度の都市保全における有効性を台湾全土の議論として展開している。容積移転が成功するための4要件をまとめている。

結章では、全体として容積移転制度の肯定的な評価を導き出していると同時に、その条件として制度運営のための機構が十全に機能するべきことを示している。また、今後の台湾における容積移転制度の改善に向けた提言をまとめている。

以上、本論文は台湾における容積移転制度を総括的にまとめた最初の論文であり、台北市の詳細な事例研究をもとに同制度の有効性と今後の展開方向に関して、示唆に富む結論をまとめている。この結論は台湾のみならず、日本をはじめ東アジア全域に亘って有効な考察となっており、その有用性は非常に高いといえる。

よって本論文は博士(工学)の学位申請論文として合格と認められる。

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