No | 123005 | |
著者(漢字) | 杜,大江 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | ドゥ,ダジアン | |
標題(和) | 骨再生のための三次元培養 | |
標題(洋) | Hydrodynamic 3D Culture for Bone Tissue Engineering | |
報告番号 | 123005 | |
報告番号 | 甲23005 | |
学位授与日 | 2007.09.28 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第6622号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 機械工学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 当研究は,骨のティッシュエンジニアリングに関する研究を進めてきた.骨は再生能の高い組織ではあるが,ある大きさ以上の欠損については自然治癒しないため,これまではアパタイト系材料などで補填する手法が施されてきたが,骨のリモデリングなど生体組織としての骨組織には置き換わらないという欠点があった.そこでティッシュエンジニアリングの手法を用いて骨組織を再生さえる研究が進められてきている.しかしながら,生体外で骨組織様組織を再構築する技術は,細胞の均一播種,生体外培養技術など基本的な技術も含め確立されていないのが現状である.本人は,医学というバックグランドを持っているが,再生骨組織の臨床応用という目的意識のもと,工学的技術の開発に取り組み,ラピッドプロトタイピング法を用いた3次元培養担体の設計製作,流体力学的な方法を用いた骨芽細胞の3次元培養担体への均一播種,動的な環境での長期培養を実現させた.往復性の流れを伴うコンパクトな灌流培養システムを開発し,評価した。少液量の細胞懸濁液で3次元培養担体の内部まで培養液を均一灌流できる機能を有したシステムは,これまでになく独創的なものであり,本技術は骨のティッシュエンジニアリングに留まらず,広く再生医療技術として適用可能であると考えられた. | |
審査要旨 | 本論文は,骨再生のための三次元培養(Hydrodynamic 3D Culture for Bone Tissue Engineering)と題し,本文10章から構成される.以下に論文の概要,続いて各章についての要旨を述べる. 骨は再生能の高い組織ではあるが,ある大きさ以上の欠損については自然治癒しないため,これまではアパタイト系材料などで補填する手法が施されてきたが,骨のリモデリングなど生体組織としての骨組織には置き換わらないという欠点があった.そこでティッシュエンジニアリングの手法を用いて骨組織を再生さえる研究が進められてきている.しかしながら,生体外で骨組織様組織を再構築する技術は,細胞の均一播種,生体外培養技術など基本的な技術も含め確立されていないのが現状である.再生骨組織の臨床応用という目的のもと,ラピッドプロトタイピング法を用いた3次元培養担体の設計製作,流体力学的な方法を用いた骨芽細胞の3次元培養担体への均一播種,動的な環境での長期培養を実現した.往復性の流れを伴うコンパクトな灌流培養システムを開発し,評価した。 第1章 「序章」では再生骨における3次元培養や物理刺激の意義や効果について既往の研究を概説した.本研究では少ない培養液の容量で3次元担体に細胞を効率よく播種し,同時に物理刺激を負荷するデバイスの開発を目指した.本章では,これらのデバイスの特色について,既往の論文と比較しながらその性能を述べた. 第2章 「装置設計」について目的・コンセプトの概説を行った.装置内部で生じると考えられるせん断応力につても簡易的な計算を行った. 第3章 「材料と方法」では,本研究で使用した材料ならびにそれらの使用方法,実際の実験手段について述べた. 第4章 「結果1」では,本研究では少ない培養液の容量で3次元担体に細胞を効率よく播種し,同時に物理刺激を負荷するデバイスの開発を行った.装置の性能を評価するために,マウスの骨芽細胞のcell-lineを用いて培養6日目の細胞の機能評価を行った.本研究で開発した装置を用いることによって効率よく細胞播種が可能であることがわかった.また,骨の形成傾向を定量的に評価できるアルカリフォスファターゼ活性の計測結果からも本装置が有効な培養デバイスであることが証明された. 第5章 「結果2」では,本研究で開発した装置によって,物理刺激の一種である流れの存在下で3次元培養を行った.デバイス内の培地の灌流速度を0,0.05,0.50,1.00ml/minの4種類に制御して6日間培養を行った結果,細胞の保持個数およびアルカリフォスファターゼ活性の観点から,0.50ml/minが最も再生骨のための培養条件として適していると考えられた. 第6章 「結果3」では,本研究で開発した培養液の簡便循環装置を用いて担体を培養する際の担体固定用ガスケットの形状の違いによる細胞の増殖活性およびアルカリフォスファターゼ活性の定量的評価を行った.具体的には,担体の保持用ガスケットの保持部位の個数を0,1,2の3種類の条件で評価を行った.その結果,保持用ガスケットの保持部位の個数が1の場合が最も高い細胞の増殖活性を示した.単位細胞数あたりのアルカリフォスファターゼ活性は保持数2で最もよい結果が得られた.細胞の生存率は保持数2が最も高い傾向を示した.以上の結果から,培養デバイスを作製する際には保持方法についても十分な考察および検討が必要であることが示唆された. 第7章 「結果4」では,従来の1方向の循環培養装置と,本研究で開発した装置の比較を行うために,装置を組んで,その性能を定量的に評価した.細胞の増殖活性は従来の1方向の循環型の培養装置が最も良好な性能を示した.一方,アルカリフォスファターゼ活性は本研究で開発した2方向の流れであるoscillatory循環培養が最もよい結果を示すことがわかった. 第8章 「結果5」では,本研究で開発した装置は簡便に担体内部に流れを惹起できる特徴を有する.流れ負荷の最適化を目指して,0.50,1.00ml/minの循環速度に加えて,それぞれ,12,24ml/min,0.5Hz,1.5h/dayの条件で追加培養を行った結果,アルカリフォスファターゼ活性の観点から0.50ml/minの単純な培養条件が最も再生骨の培養として適していることがわかった. 第9章 「結果6」では,本装置で培養する担体として,光造形技術により作製したモールドにアパタイト系の材料を含浸・焼結することによって構築したものを用いた検討を行った.培養液の循環および細胞の播種の容易さから,担体内部の設計が行われる必要があると考えられ,本研究においてモデルを作製して,循環培養装置を用いてその性能を評価した.定量的な結果を示すには至らなかったが,将来的な展望を示すことができた. 第10章 「総括」では,本研究で得られた結果の総括を行い,その考察を行った. 以上のように,少液量の細胞懸濁液で3次元培養担体の内部まで培養液を均一灌流できる機能を有したシステムは,これまでになく独創的なものであり,本技術は骨のティッシュエンジニアリングに留まらず,広く再生医療技術として適用可能であると考えられた. よって,本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる. | |
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