学位論文要旨



No 123009
著者(漢字) 劉,淑杰
著者(英字)
著者(カナ) リュウ,シュクジェ
標題(和) 走査型メカノオプトプローブを用いた形状計測に関する研究
標題(洋)
報告番号 123009
報告番号 甲23009
学位授与日 2007.09.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第6626号
研究科 工学系研究科
専攻 精密機械工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 高増,潔
 東京大学 教授 毛利,尚武
 東京大学 教授 光石,衛
 東京大学 准教授 高橋,哲
 東京大学 准教授 森田,剛
内容要旨 要旨を表示する

本研究では,次世代半導体リソグラフィにおけるレジスト面形状の広い範囲(10mm~30mm)に対して,高さ方向に高精度(10nm以下)に高速で計測する手法を提案することを目的とした.レジストは従来の光計測手法では多重反射の問題が生じるために計測することが困難であったが,光計測と機械的接触を組み合わせたメカノオプトプローブによる計測手法を考案した,メカノオプトプローブを一括して計測し測定時間を短縮するために,光計測部分に白色干渉計を適用することにした.また,機械的接触を適用する部分に,広い領域をすばやく計測でき,さらに接触の影響を軽減できるボール付きのメカノオプトプローブを用いることにした.

まず,レジストの形状計測を行うために必要なメカノオプトプローブの形状について検討した.メカノオプトプローブの接触によるレジストへの影響を調べるために,有限要素シミュレーションによりレジスト表面に対する接触先端スタイラス形状の影響を検討し,レジストへの押込み実験も行った.メカノオプトプローブに取り付けてある球の直径が10μm程度であれば,接触によるレジストの変形の恐れはないことを確認した.さらに,広範囲を計測するために走査型の計測手法を検討し,走査ステージの案内誤差を分離するするための手法として,マルチプローブ法を適用することを提案した.

提案した手法によるレジスト形状の計測可能性を評価するために,まず,マルチボールカンチレバー,三次元粗微動ステージと白色干渉計を組み合わせた高分解能レジスト形状計測装置を試作した.試作した装置の性能評価を行うために,基準段差試料を用いた実験を行うことで装置の計測精度について検討し,半透明薄膜の計測実験を行うことで,従来の光計測で計測不可能な薄膜試料を本装置で計測可能であることを確認した.

次に,機械的接触と光計測を組み合わせた手法を用いて,広い範囲に走査実験をできるかを検討するために,50mmの広い稼動範囲のステージ,マルチボールカンチレバーと白色干渉計を組み合わせて広領域走査型光学式マルチボールカンチレバー面形状計測装置を開発した.走査ステージの案内誤差を分離するため,オートコリメータを利用した最小二乗方程式法による誤差分離手法を用いて走査実験を行った.レジスト薄膜について計測した結果から,マルチプローブ法が本装置の誤差分離手法に有効であることを確認した.また構築した装置は高精度,高速的にレジスト表面を計測する可能性があることが検証された.

さらに,格子状に配置したセンサとして新たにマルチトポセンサを考案した.広領域走査型光学式計測装置を基づいて,面内一括計測が可能であるマルチトポセンサ面形状計測装置を開発した.開発した装置の性能評価を行うために,段差試料を用いた実験を行うことで装置の計測精度を検討した.またレジスト試料を走査計測することで広い範囲での計測が可能であることを確認した.

以上のように,提案した新しい表面形状計測手法を基づいて構築した計測装置は,実験によってレジストのような薄膜表面形状を計測することが確認でき,また,広領域走査計測ための誤差分離手法を検討し,広領域に高精度,高速に計測することを確認できた.

審査要旨 要旨を表示する

本研究では,次世代半導体リソグラフィにおけるレジスト面形状の広い範囲(10 mm~30 mm)に対して,高さ方向に高精度(10 nm 以下)に高速で計測する手法を提案することを目的とした.レジストは従来の光計測手法では多重反射の問題が生じるために計測することが困難であったが,光計測と機械的接触を組み合わせたメカノオプトプローブによる計測手法を考案した.メカノオプトプローブを一括して計測し測定時間を短縮するために,光計測部分に白色干渉計を適用することにした.また,機械的接触を適用する部分に,広い領域をすばやく計測でき,さらに接触の影響を軽減できるボール付きのメカノオプトプローブを用いることにした.

まず,レジストの形状計測を行うために必要なメカノオプトプローブの形状について検討した.メカノオプトプローブの接触によるレジストへの影響を調べるために,有限要素シミュレーションによりレジスト表面に対する接触先端スタイラス形状の影響を検討し,レジストへの押込み実験も行った.メカノオプトプローブに取り付けてある球の直径が 10 μm 程度であれば,接触によるレジストの変形の恐れはないことを確認した.さらに,広範囲を計測するために走査型の計測手法を検討し,走査ステージの案内誤差を分離するするための手法として,マルチプローブ法を適用することを提案した.

提案した手法によるレジスト形状の計測可能性を評価するために,まず,マルチボールカンチレバー,三次元粗微動ステージと白色干渉計を組み合わせた高分解能レジスト形状計測装置を試作した.試作した装置の性能評価を行うために,基準段差試料を用いた実験を行うことで装置の計測精度について検討し,半透明薄膜の計測実験を行うことで,従来の光計測で計測不可能な薄膜試料を本装置で計測可能であることを確認した.

次に,機械的接触と光計測を組み合わせた手法を用いて,広い範囲に走査実験をできるかを検討するために,50 mm の広い稼動範囲のステージ,マルチボールカンチレバーと白色干渉計を組み合わせて広領域走査型光学式マルチボールカンチレバー面形状計測装置を開発した.走査ステージの案内誤差を分離するため,オートコリメータを利用した最小二乗方程式法による誤差分離手法を用いて走査実験を行った.レジスト薄膜について計測した結果から,マルチプローブ法が本装置の誤差分離手法に有効であることを確認した.また構築した装置は高精度,高速的にレジスト表面を計測する可能性があることが検証された.

さらに,格子状に配置したセンサとして新たにマルチトポセンサを考案した.広領域走査型光学式計測装置を基づいて,面内一括計測が可能であるマルチトポセンサ面形状計測装置を開発した.開発した装置の性能評価を行うために,段差試料を用いた実験を行うことで装置の計測精度を検討した.またレジスト試料を走査計測することで広い範囲での計測が可能であることを確認した.

以上のように,提案した新しい表面形状計測手法を基づいて構築した計測装置は,実験によってレジストのような薄膜表面形状を計測することが確認でき,また,広領域走査計測ための誤差分離手法を検討し,広領域に高精度,高速に計測することを確認できた.

よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる.

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