学位論文要旨



No 123135
著者(漢字) 山本,晶
著者(英字)
著者(カナ) ヤマモト,ヒカル
標題(和) インターネットと消費者間相互作用
標題(洋)
報告番号 123135
報告番号 甲23135
学位授与日 2008.02.20
学位種別 課程博士
学位種類 博士(経済学)
学位記番号 博経第229号
研究科 経済学研究科
専攻 企業・市場専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 阿部,誠
 東京大学 教授 藤本,隆宏
 東京大学 教授 高橋,伸夫
 東京大学 教授 安田,雪
 東京大学 准教授 新宅,純二郎
内容要旨 要旨を表示する

インターネットの登場により、消費者行動に大きな変化が訪れている。なかでも決定的な変化が、発信する消費者の出現である。マス・マーケティングの時代においては、企業が消費者に一方的にメッセージを発信する一対多のコミュニケーションであった。その後ダイレクト・マーケティングやone-to-oneマーケティングといった概念が登場し、個々の消費者に対するカスタマイズされたマーケティング・コミュニケーションが可能となったが、情報の流れが企業から消費者に向かっているという意味では一方向のコミュニケーションであった。

しかし、インターネットが登場したことにより、コミュニティ、ブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)といった新たなコミュニケーション・ツールが生まれると、消費者から企業、消費者から別の消費者へと情報を発信することが容易になった。つまり、双方向のコミュニケーションが可能になり、消費者間相互作用が活発に行われることとなったのである。

ここでいう「消費者間相互作用」とは、ある消費者のウェブ上の書き込みに対し、別の消費者が直接返答するというような直接的な対話に限らない。ウェブ上で消費者が自分の意見を書き込むことができ、他者がそれを読むことができるということは、対人影響の場があり、そこで相互作用が起こりうることを意味している。本研究は消費者間の直接的なコミュニケーションだけでなく、間接的なコミュニケーションも含めた広義のコミュニケーションを「消費者相互作用」と定義し、その意義を明らかにするものである。

消費者間相互作用が顕著になるということは、消費者行動の中で対人影響の重要性が増すということである。他者の意見によって購買行動が影響を受けることは、特に新しい現象ではない。消費者が購買を行う際に、周囲の友人や家族の影響を受けるのは以前から指摘されてきた。しかし、インターネットの登場以前は、対人影響には物理的・地理的制約が存在した。消費者は遠く離れた場所の消費者の意見を知ることは困難であったし、一度に多数の意見を収集することも容易ではなかった。こうした物理的・地理的障壁はインターネットによってほぼ撤廃されたといってよい。この情報環境の変化は、発信する消費者を生み出した。彼らは自らの消費体験を購買の前後に発信し、他者と共有する。そして、新しい消費者の出現は新しい消費者行動モデルの必要性を意味する。

本研究はインターネットが登場したことによる消費者行動の変化に着目したたうえで、インターネット上の消費者間相互作用の意義を明らかにし、企業のマーケティング活動において消費者間相互作用を活用するための方法を探ることを目的としている。

論文の構成は以下のとおりである。

まず、第1章で新しい消費者行動モデルとしてAIDEESモデルを提示し、本研究の問題意識と設定を明らかにした。

つづいて第2章で企業と顧客と接点としての企業ウェブサイトの重要性を検証した。ここではアンケート調査による実証分析を行い、リアルにおけるブランド力やマス広告などのマーケティング活動が、バーチャルにおける企業ウェブサイト訪問動機に及ぼす影響(R→V)と、企業ウェブサイトにおける消費者の経験が、リアルの世界における企業イメージや購買意図へ及ぼす影響(V→R)を明らかにした。

企業ウェブサイトに関するオンライン・アンケート調査を実施した結果、リアルの世界におけるマーケティング資産は、企業ウェブサイト訪問に大きな影響を与えることが明らかになった。また、同データから消費者の企業に対する態度形成モデルを構築し、共分散構造分析を行った結果、企業ウェブサイトは企業に対する好感度や企業の製品・サービスの購買意図との間に有意で強い因果関係を持つことが検証された。

さらに、多母集団の同時分析を行った結果、ウェブサイト閲覧による好意度への影響と購買意図への影響との間に確認された因果関係は、「よい」と知覚された企業ウェブサイトを閲覧した場合よりも、「よくない」と知覚された企業ウェブサイトを閲覧した場合の方が有意に大きく、ウェブサイト閲覧による購買意図への影響が、プラスの状況とマイナスの状況で非対称であることが検証された。

第3章では消費者間相互作用のマーケティングへの意義を検証した。3.1ではインターネット上の消費者間相互作用の場であるオンライン・コミュニティに着目し、消費者間相互作用機能を持つウェブサイトは、そうでないウェブサイトと比較して顧客の生存率が高く、ウェブサイトへのロイヤルティが高いという仮説を構築した。

この仮説を検証するために、本研究では(株)ビデオリサーチネットコムのインターネット視聴率データを用いて実証分析を行った。具体的には分析対象を化粧品カテゴリーに特定し、化粧品のクチコミサイトである@cosmeと化粧品の企業サイトを対象として比例ハザード分析を行った。分析の結果、消費者間相互作用機能は離脱の相対リスクを低下させ、顧客生存時間を延ばすという結果が得られた。

3.2では (1) ウェブサイトのリピート訪問の決定要因と(2) ウェブサイトのリピート訪問とオンライン・ショップにおける購買との因果関係を明らかにしている。

ここではオンライン・コミュニティユーザーに対するアンケート調査データと併設オンライン・ショップにおける購買履歴データを用いて実証分析を行った。具体的には共分散構造分析を用いてサイト・ロイヤルティの源泉を構成概念にまとめ、各構成概念とサイト・ロイヤルティ、優良顧客度との因果関係をモデル化した。分析の際にはデータをRAM(一回以上製品評価情報を投稿したユーザー)とROM(製品評価情報を投稿した経験のない、「黙って読んでいる」ユーザー)に分割し、多母集団の同時分析を行った。

共分散構造分析の結果から、ROMのサイト・ロイヤルティの源泉は、商品開発やモニター/プレゼント・キャンペーンなどの「B2Cインタラクション」が最大の要因であることが明らかになった。ついで「サーチ」、「購買後」、「コンサマトリー」と続く。一方RAMの場合、「コンサマトリー」、「サーチ」、「B2Cインタラクション」がサイト・ロイヤルティの源泉であった。「C2Cインタラクション」自体はサイト・ロイヤルティに有意な影響を与えない結果となったものの、発信する顧客は「C2Cインタラクション」の平均値が高いという結果になった。

次に、購買との因果関係をみてみると、ROMの場合は失敗しない購買意思決定のためにコミュニティを利用し、元来通販好きのユーザーが「優良顧客」となっており、合理的な購買行動が浮かび上がってくる。それに対しRAMの場合は、当該コミュニティへの愛着が購買決定要因であった。このことは、RAM、すなわち発信する消費者は潜在的優良顧客となりうることを示唆している。

第4章においては消費者間相互作用の実務への応用を試みた。4.1では消費者間相互作用から紡ぎだされる消費者間ネットワークを用いたレコメンデーション・エージェントを提案した。@cosmeでは消費者の属性情報や製品評価情報に加えて、各消費者が「誰とつながっているか(誰の意見を参考にしたいか)」を把握することができる。ここでは@cosmeにおける消費者間関係を予測変数として用いたブランド選好予測モデルを構築した。

分析の結果、ブランド選好予測において消費者間関係が購買履歴情報やデモグラフィック情報よりも有用な変数であることと、消費者間関係を利用すると予測精度が高まることが明らかになった。

つぎに、予測モデルから導出された@cosme内のキーパーソンの影響ネットワークを解明し、彼らのプロファイル記述と類型を行った。まず、社会ネットワーク分析により各キーパーソンの影響ネットワークを可視化し、各キーパーソンの保有するネットワークの規模や密度といった構造特性を明らかにした。つぎに、ネットワーク特性と化粧品の消費行動履歴データから、キーパーソンにはブランド・エバンジェリスト、カテゴリー通など異なったタイプが存在することが確認された。

続いて4.2においてはクチコミ・マーケティングの実践に向けて、リアルでのクチコミを含めたインフルエンサーの発見と、クチコミ効果の実証分析を行った。ここではインフルエンサー度をクチコミの受け手の購買行動への影響の深さ(影響の質)とクチコミ発信者のネットワーク規模(影響の量)から構成されると定義し、測定を試みた。具体的には自由回答データとして得られたクチコミの受け手の行動を第1章で提示したAIDEESモデルに即して数値化し、AIDEESの各段階の転換率を算出した。集計の結果、クチコミは高い確率で購買・試用(Experience)に結びつくことが明らかになった。続いて、ネットワーク規模を用いて回答者のインフルエンサー度の算出および順位付けを行った。

さらに、共分散構造分析によるインフルエンサー度の因果モデルを構築し、「イノベータ」、「オピニオン・リーダー」、「バーチャル・オピニオン・リーダー」、「目利き」、「物言い」、「関与」といった構成概念から、インフルエンサー度への因果関係を解明した。クチコミに関するカテゴリー間の差異は、構成概念の平均値と切片により明らかにした。

分析の結果、クチコミは高い確率で受け手の購買に結びつくこと、ウェブ上の情報発信はリアルとバーチャルの両方の場において、インフルエンサー度に有意に正の影響を与えること、インフルエンサー度にはカテゴリー間で差があること、が明らかになった。

最後に、第5章で結論として本研究をまとめ、問題点を指摘し、今後の研究課題を述べた。

審査要旨 要旨を表示する

インターネットの出現は、消費者行動に大きな変化をもたらし、AIDMA(attention, interest, desire, memory, action)に代表される従来の消費者行動のフレームワークでは十分に対応しきれなくなっている。決定的な変化は、発信する消費者の出現である。マス・マーケティングの時代においては、企業が消費者に一方的にメッセージを発信する一対多のコミュニケーションが主流であった。その後ダイレクト・マーケティングやone-to-oneマーケティングといった概念が登場し、個々の消費者に対するカスタマイズされたマーケティング・コミュニケーションが可能となったが、情報の流れが企業から消費者に向かっているという意味では一方向のコミュニケーションであった。しかし、インターネットが登場したことにより、ホームページ、オンライン・コミュニティ、ブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)といった新たなコミュニケーション・ツールが生まれると、消費者から企業、消費者から別の消費者へと情報を発信することが容易になった。つまり、多対多の双方向コミュニケーションが可能となったのである。

山本博士論文はインターネットが登場したことによる消費者行動の変化に着目したうえで、インターネット上の消費者間相互作用の意義を明らかにし、企業のマーケティング活動において消費者間相互作用を活用するための方法を探ることを目的としている。その観点から、本論文はインターネット時代のマーケティングにおける早急な課題をアカデミックに分析した斬新なものであろう。

この博士論文は私の指導のもとにモジュラー化されており、近代経済学の博士論文に多くある "3 essays on …" のような形になっている。これは同時にモジュラーが比較的、独立化していることを意味している。通常の経営学の博士論文とは若干、異なったスタイルであるため、統一感に欠けるという批判もあろう。しかし個々のモジュールは単発の論文として査読付きアカデミック・ジャーナルへの投稿を前提としている質の高いものであり、論文の投稿を強く奨励する博士課程の教育と一致している。また在学中から学会発表や論文投稿に対しての生産性が高まるという利点も兼ね備えている。

論文の構成は以下の図を参照すると分かりやすい。

2.1節は日本マーケティング・サイエンス学会の若手研究者セッションで研究奨励賞(最優秀賞)を獲得し、2003年の『マーケティング・サイエンス』誌に掲載された。3.1節は2006年、3.2節は2005年の『消費者行動研究』誌に掲載された。後者は日本消費者行動研究学会のJACS-SPSS論文プロポーサルにおいて優秀賞を得ている。4.1節は『Webマーケティングの科学―リサーチとネットワーク』日本マーケティング・サイエンス学会編、千倉書房の第5章に私との共著で掲載されている。

各モジュールの関係と位置付けは以下である。発信する消費者による書き込みやコメントは、日々更新され、ウェブサイトのリピート訪問動機となる。よって、消費者間相互作用の機能がウェブサイト上にあると、ウェブサイトへのロイヤルティが増大すると考えられる(3.1節)。ウェブサイトへの訪問を繰り返すことによって、ウェブサイトへの好意度が増大する。ウェブサイトへの好意度は、そのウェブサイトを運営する企業への好意度、購買意図へとつながる(2.1節)。企業への好意度、購買意図が高まった消費者は、その企業が販売する製品・サービスを購買する(3.2節)。購買後、発信する消費者はウェブサイト上で製品・サービスの使用感を書き込み、類似した他者のお気に入り登録といった購買後行動を行う。これらのクチコミは他の消費者によって閲覧され、消費者間相互作用が起こる(4.1節)。こうした消費者間相互作用では、「インフルエンサー」が中心的役割を果たす(4.2節)。

図にあるようなフィードバックのある購買ループ、つまり、コミュニティーなどで代表される消費者間相互作用からサイト・ロイヤルティが生まれ、それが購買意図、さらには実際の購買へとつながり、そしてネット上でのクチコミなどの購買後行動として現れるという一連の連鎖が、プラスあるいはマイナスのスパイラルとしてマーケティングに大きな影響をおよぼすのである。このようなフレームワークは従来のマーケティングにはなかったものであるが、ネット時代には非常に重要な役割を果たすため、近年のマーケティング・サイエンスで急に脚光を浴びてきた分野である。山本論文は、特に日本においては、その先駆けを行くものであろう。

以下では個々のモジュールに対するコメントを述べる。

2.1節では顧客との接点としての企業ウェブサイトの重要性を実証している。消費者が発信する現在、マーケティングの主戦場のひとつとなるのが企業ウェブサイトであり、コンタクト・ポイントとして重要な役割を果たしている。しかし企業の最終的なゴールは消費者に購買させることである。この節では、ウェブサイトの要因と企業に対する好感度、商品の購買意図との関係を日経BP社のウェブ・アンケート調査で収集したデータを用いて共分散構造分析で明らかにしている。さらにウェブサイト閲覧による好意度への影響と購買意図への影響との間に確認された因果関係は、「よい」と知覚された企業ウェブサイトを閲覧した場合よりも、「よくない」と知覚された企業ウェブサイトを閲覧した場合の方が有意に大きく、ウェブサイト閲覧による購買意図への影響が、プラスの状況とマイナスの状況で非対称であることが検証された。この研究での弱点は、構成概念を反映する観測変数が離散的に+1、0、-1の3値で測定されており、その処理が統計ソフトの限界によって省かれていることである。

3.1節ではインターネット上の消費者間相互作用の場であるオンライン・コミュニティに着目し、消費者間相互作用機能を持つウェブサイトは、そうでないウェブサイトと比較して顧客の生存率が高く、ウェブサイトへのロイヤルティが高いという仮説を構築している。検証では、(株)ビデオリサーチネットコムのインターネット視聴率データを用いて実証分析を行っている。具体的には分析対象を化粧品カテゴリーに特定し、化粧品のクチコミサイトである@cosmeと化粧品の企業サイトを対象として比例ハザード分析を行っている。分析の結果、消費者間相互作用機能は離脱の相対リスクを低下させ、顧客生存時間を延ばすという可能性が示唆されている。ここでの分析の弱点は、比較検討した5つのウェブサイトのうち消費者相互作用機能を備えたサイトが@cosmeのみなので、@cosmeの生存率が高いのが消費者相互作用によるものなのか、それともその他の@cosmeサイト独自の要因によるものなのかが分離できていないことである。

3.2節では (1) ウェブサイトのリピート訪問の決定要因と(2) ウェブサイトのリピート訪問とオンライン・ショップにおける購買との因果関係を明らかにしている。ここではオンライン・コミュニティユーザーに対するアンケート調査データと併設オンライン・ショップにおける購買履歴データを用いて実証分析を行っている。具体的には共分散構造分析を用いてサイト・ロイヤルティの源泉を構成概念にまとめ、各構成概念とサイト・ロイヤルティ、優良顧客度との因果関係をモデル化している。データはRAM(一回以上製品評価情報を投稿したユーザー)とROM(製品評価情報を投稿した経験のない、「黙って読んでいる」ユーザー)に分割され、多母集団の同時分析が行なわれている。観測変数は5段階尺度で測定されており、2章での弱点は克服されている。購買との因果関係において、ROMの場合は「サーチ」が有意に正の影響を与えており、失敗しない購買意思決定のためにコミュニティを利用する合理的な消費者行動を暗示している。それに対しRAMの場合は、当該コミュニティへの愛着が購買決定要因であった。このことは、RAM、すなわち発信する消費者は潜在的優良顧客となりうることを示唆している。

4.1節では消費者間相互作用を考慮に入れたレコメンデーション・エージェントが提案されている。@cosmeのウェブサイトからは消費者の属性情報や製品評価情報に加えて、各消費者が「誰とつながっているか(誰の意見を参考にしたいか)」を把握することができるデータが収集できる。そこでブランド選好を予測変数、消費者間関係を説明変数としたブランド選好予測モデルを、順序ロジットの枠組みで構築している。その結果、ブランド選好予測において消費者間関係が購買履歴情報やデモグラフィック情報よりも有用な変数であることと、消費者間関係を利用すると予測精度が高まることが明らかになった。特定の消費者へのネットワークの有無が、なぜ予測精度を大きく向上させるのかを検証するために、@cosme内のキーパーソンのネットワーク・トポロジーを数値化して説明変数として加えたが目立つパターンは検証されなかった。そのため論文では、「キーパーソンにはブランド・エバンジェリスト、カテゴリー通など異なったタイプが存在することが確認された。」という言及にとどまったのが残念である。

4.2節ではインフルエンサー度をクチコミの受け手の購買行動への影響の深さ(影響の質)とクチコミ発信者のネットワーク規模(影響の量)から構成されると定義し、その測定を試みている。その際に、新しい消費者行動モデルとしてAIDEESモデルを提示し、自由回答データとして得られたクチコミの受け手の行動をモデルに即して数値化し、AIDEESの各段階の転換率を算出していることが革新的である。集計の結果、クチコミは高い確率で購買・試用(Experience)に結びつくことが明らかになった。また、ネットワーク規模を用いて回答者のインフルエンサー度の算出および順位付けを行っている。分析の結果、クチコミは高い確率で受け手の購買に結びつくこと、ウェブ上の情報発信行動はオフラインとオンラインの両方の場において、インフルエンサー度に有意に正の影響を与えること、インフルエンサー度にはカテゴリー間で差があることが明らかになった。これらの分析は、オフラインでのクチコミを含めたインフルエンサーの発見と、クチコミ効果の測定という観点から、クチコミ・マーケティングの実践に役立つであろう。節の終わりに挙げられている限界点は今後の課題である。

以上、山本論文をまとめると、インターネット・マーケティングにおいて重要な影響をあたえる消費者相互作用の実証研究という新しい分野において、実データを企業から収集し、整理して、理論と仮説を精緻な統計モデルに基づいて検証したことは、博士(経済学)として十分な評価に値する。細かい点ではいくつかの限界が見られるが、その多くはデータ自体の問題であり、研究の本質的な部分はロバストである。

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