学位論文要旨



No 123215
著者(漢字) 大橋,健良
著者(英字)
著者(カナ) オオハシ,タケヨシ
標題(和) マイクロ波伝導度スペクトロスコピーを用いた高温超伝導体における超伝導ゆらぎの研究
標題(洋)
報告番号 123215
報告番号 甲23215
学位授与日 2008.03.24
学位種別 課程博士
学位種類 博士(学術)
学位記番号 博総合第814号
研究科 総合文化研究科
専攻 広域科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 准教授 前田,京剛
 東京大学 教授 鹿児島,誠一
 東京大学 准教授 深津,晋
 東京大学 准教授 加藤,雄介
 東京大学 准教授 福島,考治
内容要旨 要旨を表示する

1 序

高温超伝導は、1986 年に発見されて以来20 年以上経過した今日においても、未だ完全には解明されていないと言われている。解明されていない問題の中で特に重要と考えられているのが、高温超伝導体特有の電子相図の理解である。高温超伝導はモット絶縁体にキャリアドーピングすることで発現し、全ての高温超伝導体が図1 に示すようなキャリア濃度x 依存性を持つと考えられている。しかし、このキャリア濃度依存性の起源は良く理解されているとは言えない。なかでも、

・超伝導転移温度Tc のキャリア濃度依存性の原因は何か

・Tc 以上でも見られるギャップ構造(擬ギャップ)の起源は何か

という点については、鋭く対立する主張があり決着はついていない。

電子相図に対する理論的モデルは、超伝導相の内部に"隠れた量子臨界点"が存在すると考えるか否かで、大きく2つに分類することができる。"隠れた量子臨界点"を仮定しない理論モデルでは、図2 や図3 のような相図が提案されている。図2 では、電荷とスピンの自由度が分離してそれぞれ別々に相転移を起こし、両方が凝縮すると超伝導になると考えてTc のキャリア濃度依存性が説明される(t-J モデル[1])。このモデルでは、擬ギャップ状態はスピンの自由度のみ秩序形成している状態と理解される。図3 は、キャリア濃度の低い領域では超伝導秩序変数の位相がコヒーレンスになる温度でTc が決まり、高い領域では秩序変数自体の成長で決まると考えるモデル[2] である。このモデルでは擬ギャップ状態は、超伝導秩序変数は成長しているが位相はゆらいでる状態として理解される。

一方、"隠れた量子臨界点"を仮定することで電子相図を説明するモデルもある[3]。図4 のように、擬ギャップを超伝導とは別の秩序によるものと考え、その秩序が消える量子臨界点の近傍で超伝導が発現すると考えるモデルである。

したがって、これらの理論モデルを実験的に吟味するには、

1. 擬ギャップは超伝導の前駆現象(位相ゆらぎ)かどうか

2. "隠れた量子臨界点"が存在するかどうか

が焦点となる。

本研究では、超伝導ゆらぎを測定することで上記の問題に取り組んだ。高温超伝導体では熱ゆらぎの効果が大きく、2次相転移に普遍的な秩序変数の絶対値のガウスゆらぎのみならず、超伝導転移の普遍性クラスを反映した臨界ゆらぎが観測される。したがって、超伝導ゆらぎを測定し、位相ゆらぎが観測された領域が擬ギャップの領域と一致するか調べることで、1. を検証できる。また、古典的な臨界現象の描像ではキャリア濃度の増減では相転移の普遍性クラスは変化せず、ゆらぎの性質も変わらない。しかし、仮に量子臨界点があり、その相転移が2次であれば、その近傍では量子ゆらぎが超伝導ゆらぎに影響を与えるかも知れない。したがって、超伝導ゆらぎのキャリア濃度依存性を調べることで2. を検証できる可能性がある。さらに、t-J モデルではホールドープ系と電子ドープ系の対称性が予想されており、ホールドープ系と電子ドープ系の試料を同様に測定することで、この観点からも吟味できる。

以上のような背景から、ホールドープ系高温超伝導体La2-xSrxCuO4(LSCO) と、電子ドープ系高温超伝導体La2-xCexCuO4(LCCO) の幅広いキャリア濃度の試料を用いて超伝導ゆらぎの測定を行った。

また、電子相図の議論とは別に、本研究では混合状態と超伝導ゆらぎの関連性も探った。高温超伝導体では、ゆらぎが大きいことに起因して、磁束系が様々な秩序をとるなど混合状態に新奇な現象が引き起こされる[4]。例えば、秩序変数は十分発達しても磁束量子が自由に動き回れるためにゼロ抵抗とならない磁束液体相が存在する。興味深いのは、常伝導相と磁束液体相の間に相転移がなく、超伝導秩序が成長し出して磁束量子が良く定義された状態になるまでの過程が連続的であることである。このような変化を定量的に取り扱った研究はない。しかし、磁束系の物理を議論する上で、磁束量子の描像がどこまで成り立っているのかを明らかにすることは重要である。そこで、上部臨界磁場Hc2 が10 T 程度と小さいLCCO を用い、広い磁場範囲で測定を行った。

2 解析方法・実験方法

臨界ゆらぎによる伝導度σfl は、動的スケーリング則

σfl = ξz+2-dS(ωξz) (1)

に従うと考えられる[5]。ここでξ(T) = |T/Tc - 1|-ν であり、d は次元、ν, z は臨界指数である。つまり、ゆらぎ伝導度の周波数依存性をTc の近傍で測定することで、d, ν, z が実験的に求まり相転移の普遍性クラスを決定できる。

一方、磁束量子の運動による伝導度(抵抗率)は、平均場近似による計算で

ρ =[ρv + iμ0λ2]/[1 + 2i(λ/δnf )2] . (2)

ρv =(BΦ0/η)+ [ε + (ω/ωp)2 + i(1 - ε)ω/ωp]/[1 + (ω/ωp)2], (3)

と求められている[6]。ここで、δnf は常流体による表皮厚さ、λ は超流体による磁場侵入長、η, ωp, εは磁束量子の粘性係数、ピン止め周波数、クリープ係数である。この場合も、伝導度の周波数依存性を、この式を使って合理的なパラメータでフィッティングできるかどうかで、磁束量子が良い定義となっているかどうかを判断できる。

このように、本研究の目的には伝導度の周波数依存性σ(ω) の測定(伝導度スペクトロスコピー)が適当である。そこで以下のようなブロードバンド法を用いた。まず同軸ケーブルの片端に薄膜試料を密着させ、マイクロ波に対する複素反射率S11 を周波数ω、温度T、磁場B、の関数として測定する。測定されたS11 から、同軸ケーブルなどの寄与を較正すれば、

σ =1/(Zvac t) * (1 - S11)/(1 + S11) (4)

を用いて複素伝導度σ(ω, T,B) を得られる。

3 結果と考察

高温超伝導体に先立って従来超伝導体NbN の超伝導ゆらぎを測定し、動的スケーリング解析を行った。その結果、ガウスゆらぎで非常に良く説明できることを確認した。このことから、十分な精度で伝導度が測定できていること、ゆらぎ伝導度の動的スケーリング解析によって超伝導ゆらぎの性質を実験的に明らかにできることを確認した。

3.1 高温超伝導体における超伝導ゆらぎのキャリア濃度依存性

LSCO 薄膜(x = 0.07 - 0.20)とLCCO 薄膜(x = 0.075 - 0.150)についてσfl(ω, T) を測定し、動的スケーリング解析を行った。得られた結果をまとめたものが図5 の電子相図である。

まず、擬ギャップについて検討する。擬ギャップが広い温度領域で見られるホールドープ系の低ドープ領域では、2次元XY 的なゆらぎとなり、Tc が位相のコヒーレンスで決まっていることが示唆される。しかし、超伝導ゆらぎの温度領域は高々2Tc 程度で、擬ギャップ領域より明らかに狭い。したがって、擬ギャップ領域全体を超伝導のゆらぎと解釈することはできず、図3 のような相図とは矛盾する。

次に、隠された量子臨界点の有無を考察する。ホールドープ系では、キャリアドーピングによってゆらぎの次元性が変化している。これは、古典的な臨界現象の範疇では説明できない。図2 や図3 からは一見、相転移の性質が変化するように思えるが、次元の変化を説明することは難しい。"隠れた量子臨界点"モデル(図4)では、量子臨界点の近傍の強い量子ゆらぎが、超伝導ゆらぎの面間の相関に影響を与える考えれば、2次元から3次元への変化を説明可能である。このシナリオでは、量子ゆらぎの影響がない高ドープ領域と低ドープ領域の2次元的なゆらぎが同じであることが予想される。しかし、高ドープ組成での実験結果は、2次元XY モデルともガウスゆらぎとも異なる臨界指数ν ~ 0.9, z ~ 1.7 を与えた(2次元"U"と記述)。これは、2次元XY モデルに乱れやフラストレーションを加えた結果現れた、新しい普遍性クラスである可能性が高い[7]。つまり、基本的には2次元XY であり"隠れた量子臨界点"モデルでのシナリオに矛盾しない。LSCO では元素置換によりホールドープしているので高ドープ組成で乱れが大きいことは自然である。しかし、超伝導秩序にフラストレーションが加わることは自明ではない。したがって、乱れの少ない高ドープ組成が得られるTl2Ba2CuOy などを用いて、乱れの影響かどうかを検証し、もしフラストレーションの影響であると結論できた場合にはホールドーピングによりフラストレーションが加わるメカニズムが明らかにされる必要がある。

最後に、ドールドープ系と電子ドープ系を比較する。電子ドープ系ではゆらぎの性質はキャリア濃度に依存性せず、ホールドープ系と対照的である。また、低ドープ領域でも超伝導ゆらぎの温度領域はそれほど大きくはならない。この点からも、"隠れた量子臨界点"を仮定するモデルが支持される。ただし、

・ホールドープ系でのみ2次の量子相転移が存在するのなぜか

・量子ゆらぎの効果を除くとホールドープ系では2次元的なゆらぎ、電子ドープ系では3次元的なゆら

ぎとなるのはなぜか

という問題が残る。逆に、これらの実験事実を説明できるかどうかが、"隠れた量子臨界点"を仮定する理論群に対する試金石となると考えられる。

3.2 高温超伝導体における磁束量子のダイナミクス

LCCO(x = 0.07) に対して磁場B = 0 - 8 T の範囲でTc 近傍のσ(ω) を測定し、動的スケーリング則と磁束量子のダイナミクスの平均場モデルを用いて解析した。結果を図6 のH - T 相図に示す。実線はゼロ抵抗温度、破線は抵抗が減少し始める温度であり、その間の領域がいわゆる磁束液体相である。磁束量子の影響が小さい低磁場(B ≦ 0.5 T)でゆらぎ伝導度の動的スケーリング則が成立したのは自然である。しかし、高磁場中においても、実験結果が磁束量子モデルと整合したのは図の三角印の領域であり磁束液体相のごく一部でしかない。つまり、"磁束液体"というナイーブな名称とは異なり、図のハッチ部では超伝導ゆらぎの影響が強く、磁束量子の描像があまり明確になっていないことが明らかになった。この領域を定量的に取り扱ったモデルの構築が望まれる。一方、平均場近似が適用できないと考えられる相転移線(実線)近傍を含めて、平均場モデルで実験結果が記述できたのは注目に値する。このことは、少なくとも数GHz 以上の高周波では磁束量子間の相関が事実上無視でき、相転移近傍でも平均場近似が有効であることを示している。

4 結論

ホールドープ系高温超伝導体LSCO(x = 0.07 - 0.20)、電子ドープ系高温超伝導体LCCO(x = 0.075 -0.150) に対してゆらぎ伝導度の周波数依存性の動的スケーリング解析を行い、ホールドープ系ではキャリアドーピングによってゆらぎの性質が2次元XY 、3次元XY 、2次元"U"と変化すること、一方で電子ドープ系では全てのキャリア濃度で3次元XY 的であることを明らかにした。この結果から、高温超伝導体の電子相図に対して提案されている理論モデルのなかでは、超伝導相の内部に"隠れた量子臨界点"を仮定するモデルが最も適当であることを示した。また、それらのモデルで今後検証されるべき実験事実を提示した。

LCCO(x = 0.075) に対して広い磁場範囲で伝導度の周波数依存性の測定を行い、磁束量子の描像が成立する温度、磁場領域を明らかにした。その結果から、いわゆる磁束液体相の大部分において磁束量子が良く定義された状態ではなく、超伝導ゆらぎの影響を考慮する必要があることを示した。

[1] Y. Suzumura, Y. Hasegawa, and H. Fukuyama, J. Phys. Soc. Jpn. 57, 2768 (1988); N. Nagaosa and P. A.Lee, Phys. Rev. Lett. 64, 2450 (1990).[2] V. J. Emery and S. A. Kivelson, Nature 374, 434 (1995).[3] C. M. Varma, Phys. Rev. B 55, 14554 (1997); S. Chakravarty et al., Phys. Rev. B 63, 094503 (2001); J.Zaanen, Nature 404, 714 (2000) など.[4] G. Blatter et al., Rev. Mod. Phys. 66, 1125 (1994).[5] D. S. Fisher, M. P. A. Fisher and D. A. Huse, Phys. Rev. B 43, 130 (1991).[6] M. W. Coffey and J. R. Clem, Phys. Rev. Lett. 67, 386 (1991).[7] P. Holem, B. J. Kim, and P. Minnhagen. Phys. Rev. B 67, 104510 (2003); M. Hasenbusch, A. Pelissetto,and E. Vicari, J. Stat. Mech., P12002 (2005) など.

図1:高温超伝導の電子相図

図2:t-Jモデルの電子相図

図3:ギャップを位相ゆらぎとみなす電子相図

図4:量子臨界点をは仮定するモデルの電子ショ相図

図5:高温超伝導体ルの超伝導ゆらぎ

図6:LCCO(x=0.075)のH-T相図

審査要旨 要旨を表示する

本論文は6章からなり、第1章では研究の背景と目的が述べられ、第2章では実験方法について記述されている。第3章では、参照試料として測定された従来超伝導体の結果が示され、第4章、第5章では、それぞれホールドープ系高温超伝導体、電子ドープ系高温超伝導体に対する結果が示され考察されている。最後に、第6章で研究全体の総括が行われ、結論が述べられているという構成である。

第1章では本研究の対象である銅酸化物高温超伝導体の物性が概説され、擬ギャップの起源が超伝導ゆらぎかどうか、超伝導相の内部に"隠された量子臨界点"が存在するかどうか、ホールドープ系と電子ドープ系が対称的かどうか、といった電子相図にかかわる問題が未だ解決しておらず、理論モデルによって異なる見解を持つことが指摘されている。そして、超伝導ゆらぎの測定を行うことでこれらの問題を明らかにし、理論モデルを吟味できる可能性が示されており、これが研究の目的として提示されている。これに加え、高温超伝導体の超伝導ゆらぎの測定を行うことで、これまで明らかでなかった磁場中の超伝導ゆらぎと磁束量子のダイナミクスとの移り変わりを捕らえられる可能性も示され、これも研究目的として提示されている。

また、超伝導ゆらぎに関する基礎的な概念が説明されるとともに、解析に用いられたゆらぎ伝導度の動的スケーリング則と磁束量子の交流応答の平均場モデルについて簡潔にまとめられている。

第2章の実験方法に関する記述では、マイクロ波領域での伝導度スペクトロスコピーであるマイクロ波ブロードバンド法の測定原理、測定装置について述べられており、実際の測定における留意点や問題点が具体例を示して説明されている。また、ブローバンド法では測定誤差が大きな問題となることを指摘し、誤差の影響の定量的な評価がなされるとともに、誤差較正法の改良について記述されている。

第3章では、従来超伝導体NbN薄膜に対する測定、解析結果が示されている。従来超伝導体の超伝導ゆらぎは非常によく研究がなされており、ゆらぎ伝導度の振る舞いもよく確立していることを背景に、NbN薄膜を用いた測定法・解析法についての検証が試みられている。そして、得られた結果が従来超伝導体に予想されるガウスゆらぎと一致したことから、ブロードバンド法によって伝導度の周波数依存性を測定し動的スケーリング解析を行うという手法が、超伝導ゆらぎの実験的測定に有効であることが確認されている。また、試料が不均一な場合や次元がクロスオーバーする場合には動的スケーリングが破綻することが実際に示されており、この解析法の適用範囲が明らかにされている。

第4章では、ホールドープ系高温超伝導体La2-xSrxCuO4薄膜に対する測定、解析結果が示されている。まず、不足ドープ組成で超伝導ゆらぎが観測されたの温度領域が擬ギャップの観測される領域より極めて狭いことから、擬ギャップの起源が超伝導ゆらぎではないと結論づけている。また、幅広いキャリア濃度の試料に対する測定から、La2-xSrxCuO4の超伝導ゆらぎが、最適ドープ組成近傍のみで3次元的、それ以外の組成領域では2次元的となることが示されている。膜厚依存性や磁場効果についても調べられており、観測された次元の変化が本質的なものであることが確認されている。そして、キャリア濃度によって超伝導ゆらぎの次元が変化する振る舞いが様々な理論モデルの立場から考察され、超伝導相のなかに"隠された量子臨界点"を仮定する理論モデルでのみよく説明できると結論されている。

第5章では、電子ドープ系高温超伝導体La2-xCexCuO4薄膜に対する測定結果が示されている。やはり幅広いキャリア濃度の試料に対する測定が行われており、La2-xCexCuO4の超伝導ゆらぎが全組成領域で3次元的となることが示されている。このことから、超伝導ゆらぎという観点ではホールドープ系と電子ドープ系が非対照的であることが明らかにされ、やはり"隠された量子臨界点"を仮定する理論モデルが適当であると結論されている。さらに、電子ドープ系では隠された量子臨界点が存在しないこと、超伝導の対形成の機構がホールドープ系では2次元的であるのに対し電子ドープ系では3次元的となり互いに異なることが示され、より詳細な議論が展開されている。このような次元性の違いはこれまで知られておらず、高温超伝導の理解に対して大きな情報を提供したと評価できる。

また、広範囲にわたる磁場中での測定結果も示されており、超伝導ゆらぎと磁束量子のダイナミクスとの移り変わりが定量的に議論されており、従来、"磁束液体相"と呼ばれていた領域の大部分で磁束量子の描像は明確ではなく、超伝導ゆらぎの影響が大きいことを明らかにしている。一方、転移転近傍や、より低温の広い範囲では、磁束量子の交流応答の平均場モデルが非常に有効であることを明確に示している。

最後の第6章では本論文の内容がまとめられ、得られた知見が総括されて結論が述べられている。

以上のように、本研究は、高温超伝導体の超伝導ゆらぎをキャリア濃度の関数として測定した初めての試みであり、古典的な描像では予想され得ないゆらぎの次元の変化を明らかにしたことは、高温超伝導の発現機構の理解に貢献するものであると評価できる。また、超伝導ゆらぎと磁束のダイナミクスの移り変わりを捉えた初めての実験的研究であり、今後の磁束量子の研究に対して礎となる結果であると評価できる。

なお、本論文中の第2、3、4、5章は前田京剛、北野晴久、藤巻朗、赤池宏之、塚田一郎、内藤方夫、束田昭雄、各氏との共同研究であるが、論文の提出者が主体となって遂行したもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。したがって、本審査委員会は博士(学術)の学位を授与するにふさわしいものと認定する。

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