No | 123500 | |
著者(漢字) | 于,克鋒 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | ユ,ケフェン | |
標題(和) | 金ナノ粒子-酸化チタン系のプラズモン共鳴に基づく光電変換 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 123500 | |
報告番号 | 甲23500 | |
学位授与日 | 2008.03.24 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第6816号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 応用化学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本研究はプラズモン共鳴に基づく光電変換デバイスの開発に取り組んだ。 第一章では本研究の背景を説明するとともに、目的と意義を示した。 第二章では、金ナノ粒子―酸化チタン系における光電変換の金ナノ粒子サイズ依存性について調べた。その結果、粒子が大きいほど最大電流値が小さい、光電変換効率が良いがわかった。 第三章では、溶液電解質に代えてホール輸送剤を用いる全固体セルの作製方法を摸索し、その光電気化学的特性を検討した。その光電変換は金ナノ粒子のプラズモン共鳴に基づくことが確認された。ホール輸送剤を変えたときのセル特性はCuI > CuSCN > NPD > PVK > TPDの順になることが判明した。これらの特性の傾向に関して、HOMO、バレンスバンドレベルとの相関は明確ではなかったが、ホール移動度の影響が比較的大きいことがわかった。 第四章では、全固体光電変換デバイスの特性の金ナノ粒子形状に対する依存性について検討を行った。金ナノスフィア、金ナノロッド、金ナノ金平糖を用いたセルの特性を内部量子収率に基づいて比較した結果、金ナノロッド、金ナノスフィア、金ナノ金平糖の順番であることがわかった。 | |
審査要旨 | 本研究では、金ナノ粒子-酸化チタン系において見出された、プラズモン共鳴に基づく光誘起電荷分離を利用した光電変換素子の開発を進め、その特性を理解し、改善するとともに、全固体型デバイスに展開することを目的とした。 第一章では、プラズモン共鳴の原理と特徴、またプラズモン共鳴による光誘起電荷分離の、これまでに提案されている原理および応用について概要を示した。また関連する研究についても述べ、本研究の背景を説明するとともに、目的と意義を示した。 第二章では、酸化還元種を含む液体電解質を用いた、金ナノ粒子-酸化チタン系に基づく湿式光電変換デバイスの特性の、金ナノ粒子サイズ依存性について調べた。直径15 nm、40 nm、100 nmの球状金ナノ粒子(金ナノスフィア)を用いて、短絡光電流のアクションスペクトルを調べた結果、プラズモン共鳴に基づく吸収スペクトルとよく一致することがわかり、光電変換がプラズモン共鳴に基づくことが確認された。また各サイズの金ナノ粒子の担持量を変え、短絡光電流の変化を調べた。その結果、粒子が小さいほど最大電流値が大きいことがわかった。また、粒子が大きいほど内部量子収率が大きいことも判明した。金ナノ粒子が大きいほど、より少ない金の量でより効率の良い光電変換が可能なことを明らかにした。 第三章では、液体電解質に代えて有機ホール輸送剤や、その他の無機p型半導体などを用いて、プラズモン共鳴に基づく全固体光電変換デバイスの開発を行い、その光電気化学的特性について検討した。まず、プラズモン光電気化学に基づく光電変換素子を初めて全固体化することができた。また、その光電変換が金ナノ粒子のプラズモン共鳴に基づくことを確認した。またデバイスの開回路光電圧、短絡光電流の金ナノ粒子量との相関関係、光強度に対する依存性を調べた。ホール輸送剤を変えたときのセル特性はCuI > CuSCN > NPD > PVK > TPDの序列となることが判明した。こうした傾向に関して、有機ホール輸送剤のHOMOレベルまたは無機p型半導体の価電子帯レベルとの相関は明確ではなかったが、ホール移動度の影響が比較的大きいことが明らかにされた。 第四章では、全固体光電変換デバイスの特性の、金ナノ粒子形状に対する依存性について検討した。まずロッド状金ナノ粒子(金ナノロッド)を合成し、その粒子形状およびプラズモン共鳴に基づく可視光吸収特性を調べた。金ナノロッドを用いて作製した全固体デバイスの場合、金ナノスフィアを用いた場合より高い光電流が得られることがわかった。また、短絡光電流のアクションスペクトルを調べたところ、840 nmまで光電流が得られることもわかった。続いて、金平糖状金ナノ粒子(金ナノ金平糖)の合成法を開発した。従来の類似した粒子の合成法と比べ、より単分散で、サイズ制御も可能な合成法である。そのサイズとプラズモン共鳴吸収波長との関係について調べ、同じサイズでも、金ナノ金平糖は、金ナノスフィアより吸収波長がレッドシフトすること、またサイズの増加に対して、金ナノスフィアより金ナノ金平糖のほうがレッドシフト率が大きいことがわかった。さらに、Discrete dipole approximation(DDA)法を用いることで、金ナノ金平糖のプラズモン共鳴特性をシミュレーションすることにより、粒子の形状と光学特性の相関について理論的にも考察した。この金ナノ金平糖を用いて全固体光電変換デバイスを作製し、その特性について調べた。その結果、金ナノ金平糖を用いた場合もプラズモン共鳴に基づく光電流応答を示すことがわかった。金ナノスフィア、金ナノロッド、金ナノ金平糖を用いた光電変換デバイスの内部量子収率を比較すると、金ナノロッド > 金ナノスフィア > 金ナノ金平糖の序列であることがわかった。こうした結果と第二章で得られた結果に基づき、金ナノ粒子と酸化チタンとの接触面積の内部量子収率に対する寄与が大きいものと結論した。 第五章では、全体の総括と今後の展望について述べている。 本研究で得られた知見をもとに、プラズモン共鳴に基づく光電変換デバイスのさらなる発展が期待される。プラズモン光電気化学の研究に貢献するのみならず、金属ナノ粒子の研究・応用や、光電気化学全般にも寄与するものと考えられる。以上のように本研究は、光電気化学、材料化学などの進展に寄与するところが大きい。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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