学位論文要旨



No 123641
著者(漢字) 石川,公輔
著者(英字)
著者(カナ) イシカワ,コウスケ
標題(和) GTP結合蛋白質DRGファミリーとその結合蛋白質の生理機能解明
標題(洋)
報告番号 123641
報告番号 甲23641
学位授与日 2008.03.24
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第2980号
研究科 医学系研究科
専攻 分子細胞生物学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 宮崎,徹
 東京大学 准教授 宮澤,恵二
 東京大学 准教授 神野,茂樹
 東京大学 教授 山本,雅
 東京大学 教授 村上,善則
内容要旨 要旨を表示する

本研究は真核生物の増殖機構において重要な役割を演じていると考えられてきたGTP結合蛋白質Drg1とDrg2より成るDRGファミリーの生理機能を明らかにするため、結合蛋白質の探索を行い、同定された因子との機能の協同作用を出芽酵母系の増殖解析にて行ったものであり、下記の結果を得た。

1.Drg1とDrg2にそれぞれ特異的に結合するDfrp1とDfrp2を同定した。Dfrp1とDfrp2は約60アミノ酸の領域に相同性を持つが、他の領域に相同性は無い。細胞を用いた免疫沈降による実験から、Drg1とDfrp1、Drg2とDfrp2がそれぞれ独立した複合体を形成していることが明らかとなった。

2.Drg1、Drg2の単独のタンパク発現が抑制される現象がこれまで見出されていたが、それぞれDfrp1、Dfrp2との共発現によってタンパク発現が安定化することが新たに見出された。これはさらにHeLaS3細胞におけるDfrp1とDfrp2のノックダウン解析によっても確認された。また、Drg2のノックダウン解析によって、Dfrp2が逆にDrg2に安定化されていることも見出し、Drg2とDfrp2複合体はお互いに安定化しあっている因子であることが示された。Dfrp1とDfrp2におけるDRGファミリーの結合相手との結合必須領域を同定し、それぞれDfrp1ノックアウト、Dfrp2ノックアウトにその必須領域の欠損変異体をレスキューさせる実験により、Dfrp1によるDrg1の、Dfrp2によるDrg2の安定化効果は結合を介している制御である可能性が示された。

3.Dfrp2に存在するRWDドメインを手がかりに、アミノ酸飢餓後の細胞の増殖メカニズムであるGCN経路へ制御を予想した。出芽酵母を用いて、Dfrp2がRWDドメインを介してGcn1と結合し、Gcn2を阻害することが示された。また、Drg2はDfrp2の活性を促進することが示された。

4.出芽酵母において、強度の高いGcn2活性化状態の元では、Dfrp2の抑制機能が細胞の増殖に有利に働くことが示唆された。

以上、本研究はDrg1/Dfrp1複合体とDrg2/Dfrp2複合体の安定な2つの高度保存制御因子群の存在を明らかにした。また本研究はアミノ酸飢餓ストレスの細胞増殖に与える影響を制御するメカニズムの解明に重要な貢献をなすと考えられる。

審査要旨 要旨を表示する

本研究は真核生物の増殖機構において重要な役割を演じていると考えられてきたGTP結合蛋白質Drg1とDrg2より成るDRGファミリーの生理機能を明らかにするため、結合蛋白質の探索を行い、同定された因子との機能の協同作用を出芽酵母系の増殖解析にて行ったものであり、下記の結果を得ている。

1.Drg1とDrg2にそれぞれ特異的に結合するDfrp1とDfrp2を同定した。Dfrp1とDfrp2は約60アミノ酸の領域に相同性を持つが、他の領域に相同性は無い。細胞を用いた免疫沈降による実験から、Drg1とDfrp1、Drg2とDfrp2がそれぞれ独立した複合体を形成していることが明らかとなった。

2.Drg1、Drg2の単独のタンパク発現が抑制される現象がこれまで見出されていたが、それぞれDfrp1、Dfrp2との共発現によってタンパク発現が安定化することが新たに見出された。これはさらにHeLaS3細胞におけるDfrp1とDfrp2のノックダウン解析によっても確認された。また、Drg2のノックダウン解析によって、Dfrp2が逆にDrg2に安定化されていることも見出し、Drg2とDfrp2複合体はお互いに安定化しあっている因子であることが示された。Dfrp1とDfrp2におけるDRGファミリーの結合相手との結合必須領域を同定し、それぞれDfrp1ノックアウト、Dfrp2ノックアウトにその必須領域の欠損変異体をレスキューさせる実験により、Dfrp1によるDrg1の、Dfrp2によるDrg2の安定化効果は結合を介している制御である可能性が示された。

3.Dfrp2に存在するRWDドメインを手がかりに、アミノ酸飢餓後の細胞の増殖メカニズムであるGCN経路へ制御を予想した。出芽酵母を用いて、Dfrp2がRWDドメインを介してGcn1と結合し、Gcn2を阻害することが示された。また、Drg2はDfrp2の活性を促進することが示された。

4.出芽酵母において、強度の高いGcn2活性化状態の元では、Dfrp2の抑制機能が細胞の増殖に有利に働くことが示唆された。

以上、本研究はDrg1/Dfrp1複合体とDrg2/Dfrp2複合体の安定な2つの高度保存制御因子群の存在を明らかにした。また本研究はアミノ酸飢餓ストレスの細胞増殖に与える影響を制御するメカニズムの解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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