学位論文要旨



No 123824
著者(漢字) 半矢,祐己
著者(英字)
著者(カナ) ハンヤ,ユウキ
標題(和) レペニンの合成研究と、コノフィリンの全合成及びその中間体への効率的変換法の開発
標題(洋)
報告番号 123824
報告番号 甲23824
学位授与日 2008.03.24
学位種別 課程博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 博薬第1251号
研究科 薬学系研究科
専攻 分子薬学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 福山,透
 東京大学 教授 海老塚,豊
 東京大学 教授 柴,正勝
 東京大学 教授 大和田,智彦
 東京大学 准教授 浦野,泰照
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1.レベニンの合成研究

【背景・目的】レベニン(1)は、1991年、キンポウゲ科トリカブト属ホナガウズより単離構造決定されたジテルペンアルカロイドである1。本化合物は高度に酸素官能基化された六環性化合物であり、その構造の複雑さから未だに全合成例は報告されていない。筆者は、分子内環化付加反応を利用したレベニン(1)の立体選択的全合成を目指し、本研究に着手した。

【逆合成解析】7位の立体を足がかりとする三段階の環化付加反応により立体選択的に基本骨格を構築することとした(Scheme 1)。レペニン(1)に含まれるアミン部位と10位20位炭素一炭素結合は、ニトリルオキシド2による1,3双極子環化付加反応により構築することとした。上部ビシクロ[2.2.2]骨格は3による分子内Diels-Alder反応によって、また、3は4による分子内Diels-Alder反応によってそれぞれ構築することとした。

【ラクトン11の合成】o-バニリン(5)を出発原料とし、フェノール性水酸基のベンジル化後、FAMSOを用いた一炭素増炭反応によりフェニル酢酸エステル6を合成した2(Scheme2)。続いて、アクリル酸エステルへの共役付加反応により炭素鎖伸長を行い、ベンジル基をメシル基へと変換することで7とした。得られた7のレブチルエステル部位を酸クロリドへと変換し、塩化アルミニウムを用いた分子内Friedel-Crafrs反応によりテトラロン8を合成した。続いて8をビニルトリフラートへと変換後、Stilleカップリングによるビニル基の導入を経て、ジエン9を得た。次にエステル基を水酸基へと還元後、DCCを用いたメタクリル酸との縮合反応により10を合成した。鍵となる一段階目の分子内Diels-Alder反応3は検討の結果、高希釈、ヒドロキノン添加条件下で良好に進行することを見出し、望みのラクトン11を得た。

【ビシクロ[2.2.2]骨格の構築と10位20位炭素一炭素結合形成の検討】ラクトン11を一当量の水素化ジイソブチルアルミニウムで還元しアルデヒド体へと変換した(Scheme 3)。続いてメシル基を加水分解で除去した後、メタノール中ジアセトキシヨードベンゼンを作用させるとo一キノンジメチルアセタール12が得られた。次に、鍵となる二段階目の分子内Diels-Alder反応を検討した。その結果、クロロジメチルビニルシランを用い水酸基のシリル化を行った後、加熱条件に付すことで速やかに反応が進行し、ビシクロ[2.2.2]骨格を有する13が得られることを見出した。得られた13のアルデヒド部位を水酸基へと還元後メシル化を行い14とし、ジメチルシリル基の除去を検討した。その結果、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いると良好な収率でアルコール体を合成することができた。続いて、水酸基をアルデヒドへと酸化後、ヒドロキシルアミンを作用させオキシム15を合成し、10位20位炭素-炭素結合形成に向けニトリルオキシド16への変換を試みた。酸化剤としてNクロロコハク酸イミド、次亜塩素酸ナトリウム、クロラミンーTを用いたが、ニトリルオキシドの発生は見られず、オキシム15が回収されるのみであった。

化合物19における分子内Mannich反応により、10位20位炭素-炭素結合を構築するルートも検討している(Scheme 4)。まず、17に対する酸素官能基の導入を検討した。その結果、一当量のmCPBAを作用させると、位置選択的なエポキシ化反応と、続くエポキシドの開環反応が速やかに進行し、望みの位置に酸素官能基を有する環状エーテル体を合成することができた。得られた二級アルコール体は、Swem酸化によりケトン体18へと導いた。今後は得られた18の酸素一炭素結合の還元的切断と窒素原子の導入、続く分子内Mannich反応の検討を行い、レペニン(1)の全合成を達成する予定である。

2.コノフィリンの全合成

【背景・目的】コノフィリン(21)、コノフィリジン(22)は1992年、Ervatamia microphyllaの葉から単離された抗腫瘍活性を有するビスインドール型アルカロイドである4。これらは中央部ジヒドロフラン環により上下二つのアスピドスペルマ型インドールユニットが結合している全く新しいタイプの構造を有しており、未だに全合成例は報告されていない。そこで、21、22の効率的全合成を目的とし、上下アスピドスペルマ型ユニットの合成及び、鍵となる中央部ジヒドロフラン環の構築法の検討を行った。

【下部ユニット37の合成研究】

上下ユニットを合成した後に合成の終盤でカップリングさせる収束的な合成計画を立て、まず、下部ユニット37の合成に着手した。合成は当研究室で開発されたルート5に基づいて行い、はじめにインドールユニット32の合成を行った。市販の26をニトロ化し、2つのフェノール1生水酸基を区別して28を得た。次にケイ皮酸誘導体29を経て、o-アルケニルイソシアニド30とした。続くラジカル環化反応は円滑に進行し、31を合成することができた。続いてStilleカップリングによりアクリル酸メチル部位を導入することでインドールユニット32へと導いた。

得られた32と別途合成したアミンユニット336を光延反応で縮合し35とした後、DNs基とBoc基の脱保護と続く環化6を行い、五環性中間体35を単一異性体として得た。続いて脱水反応を行うことで36とした。最後にTroc基による保護、立体選択的エポキシ化7を行い、下部ユニット37を合成した。

【上部ユニット39、41の合成】上部ユニットの合成についても、下部と同様にして合成した386を用い、コノフィリン、コノフィリジンそれぞれに対応する41、39を合成した。39は、38のフェノール基の保護基をメシル基からアリル基に変換することで合成した。一方41は、下部ユニットと同様に立体選択的にエポキシドを構築し7、Troc基の脱保護と、メシル基からアリル基への変換により構築した。

【ジヒドロフラン環合成法と全合成の達成】

21、22の合成に必要な上下ユニットが合成できたので、続いて鍵となるカップリング反応について検討した。その結果、Polonovski反応を用いた位置及び立体選択的反応を確立することに成功した。まず、37をmCPBAにより昂オキシド42とし、TFAA存在下、39あるいは41と反応させたところ、位置選択的イミニウム塩43の生成を経て立体的に空いているα面からの求核攻撃に基づく44または45を単一生成物として得ることができた。続いてアリル基を脱保護したところ、アリル基の除去と同時にエポキシドへの5一αo閉環反応が進行し46、47を得た。最後に、LDAによりメシル基の脱保護8を行ったところ、Troc基も同時に脱保護され、コノフィリン(21)、コノフィリジン(22)の全合成を達成することができた。

3.ビンドリンを原料とするメシロキシタベルソニンへの効率的変換法の開発

【背景・目的】メシロキシタベルソニン(38)は、抗腫瘍活性アルカロイド、コノフィリン4の部分構造である。38の合成法は当研究室で既に確立されているが6、誘導体化を視野に入れた場合その工程数の多さから必ずしも満足のいくものではない。そこで筆者は、容易に入手可能なビンドリン(48)を原料としたメシロキシタベルソニン(38)への効率的変換法を検討した(Scheme10)。

【結果】まず始めにビンドリン(48)のジオユル部位を二重結合へと変換した。すなわち、脱アセチル化後、チオカルボニルジイミダゾールによってチオノカーボネートへと変換し、Corey-Winterオレフィン化反応を試みた。その結果、ジアザボスホリジン試薬9を用いることで反応が円滑に進行することを見出し、49を得た。続いて、メチル基をメシル基へと変換し50とした後、脱亙メチル化を行った。検討の結果、過マンガン酸カリウムによる酸化により淋ホルミル化体とした後、酸性条件下ホルミル基を加水分解することで脱序メチル化体51へと良好な収率で導くことができた。続いて無水ベンゼンセレニン酸による酸化反応と炭酸水素ナトリウム水溶液による後処理により、アリルアルコール52へと変換した。最後に、酸性条件下シアノ水素化ホウ素ナトリウムを作用させたところ、生じた共役イミンに対する14一還元が進行し、目的とする38を得た。以上、9段階、通算収率39%にて、ビンドリン(48)から38への効率的変換法を開発することに成功した。

【参考文献】1) Uhrin, D.; Proksa, B.; Zhamiansan, J. Planta Med. 1991, 57, 390.2) (a)Ogura, K.; Tsuchihashi, G. Tetrahedron Lett. 1972, /3, 1383. (b)Ogura, K.; Ito, Y.; Tsuchihashi, G. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1979, 52, 2013.3) For a review,see:Takao,K.; Munakata, R.; Tadano, K. Chem. Rev. 2005, 105, 4779.4) (a) Kam, T.-S.; Loh, K.-Y.; Lim, L.-H.; Loong,W.L;Chuah, C.-H.; Wei, C. Tetrahedron Lett. 1992, 33, 969. (b) Kam, T.-S.; Loh, K.-Y.; Wei, C. J. Nat. Prod.1993,56,1865.5) Kobayashi, S.; Ueda, T.; Fukuyama, T. Synlett 2000, 883. 6) Yokoshima, S.; Ueda, T.; Kobayashi, S.; Sato,A;Kuboyama, T.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 2137. 7) Eles, J.; Kalaus, G.; Greiner,I; Kajtar-Peredy, M.; Szab6, P.; Keserd, G. M.; SzabO, L.; Szantay, C. J. Org. Chem. 2002, 67, 7255.8) Ritter,T.Stanek,K.; Larrosa, I.; Carreira, E. M. Org. Lett. 2004, 6, 1513. 9) Corey, E. J.; Hopkins, P. B. Tetrahedron Lett.1982,23,1979.

Scheme 1

Scheme 2

Reagents and Conditions: (a) BnBr, K2CO3, CH3CN, 96%; (b) MeSCH2S(0)Me, Triton B, THF, reflux, 88%; (c) HC1 gas, MeOH, 97%; (d) tert-butyl acrylate, K2CO3, DMF, 80C, 81%; (e) H2, Pd/C, EtOH; (f) MsCl, Et3N, CH2Cl2, 93% (2 steps); (g) TFA, CH2Cl2, reflux; (h) SOCl2, CH2Cl2; (i) AlCl3, CH2Cl2, 0C, 54% (3 steps); (j) Tf2O, 2,6-lutidine, CH2Cl2. reflux, 90%; (k) tri-tert-butyl(vinyl)stannane, Pd(PPh3)4, DMF, 80C, 80%; (1) DIBAL, CH2Cl2,-78 to 0C, 82%; (m) methacrylic acid, DCC, DMAP, CH2Cl2, reflux, 91%; (n) hydroquinone, o-dichlorobenzene (0.01 M), 160C, 89%.

Scheme 3

Reagents and Conditions: (a) DIBAL, CH2Cl2,-78C, 69%; (b) KOH, MeOH, reflux, 95%; (c) PhI(OAc)2, MeoH; (d) chloro(dimethyl)vinylsilane, 2,6-lutidine, DMF, rt to 80C, 53% (2 steps); (e) NaBH4, THF, 79%; (f) MsCl, Et3N, CH2Cl2; (g) TBAF, THF, 77% (2 steps); (h) TPAP, NMO, MS4A, CH2Cl2, 53%; (i) HONH2HCl, AcONa, MeoH, 50%.

Scheme 4

Reagents and Conditions: (a) mCPBA, NaHCO3, CH2Cl2, 0C to rt, 53%; (b) (CoCl)2, DMSO, CH2Cl2,-78C; Et3N; rt, 74%.

Scheme 5

Scheme 6

Reagents and Conditions: (a) HNO3, AcOH, rt; (b) TBDPSCl, 2,6-lutidine, THF/DMF, rt, 42% (2 steps); (c) t-BuOK, Me2SO4, THF/DMF, rt, 96%; (d) TBAF, THF, rt; (e) MsCl, Et3N, CH2Cl2, 60% (2 steps); (f) DIBAL-H, CH2Cl2, -78C; (g) TPAP, NMO, MS4A, CH2Cl2; (h) Ph3P=CHCO2Et, toluene, rt, 61% (3 steps); (i) Zn, AcOH, CH2Cl2; (j) HCO2H, Ac2o, CH2Cl2, 0C; (k) POCl3,Py, CH2Cl2, 0C, 65% (3 steps); (l) n-Bu3SnH, AIBN, CH3CN, reflux; I2, rt, 80% (2 steps); (m) DIBAL-H, CH2Cl2, 0C; (n) DHP, CSA, CH2Cl2; (o) Boc2O, DMAP, CH3CN, 94% (3 steps); (p) BnPd(PPh3)2C1, Cul, (2-furyl)3P, methyl 2-(tributylstannyl)acrylate, DMF/HMPA, 80C, 63%; (q) CSA, MeoH, rt, 98%.

Scheme 7

Reagents and Conditions: (a) PPh3, DEAD, benzene, rt, 76%; (b) TFA, Me2S, CH2Cl2, rt; (c) pyrrolidine, MeOH/CH3CN, 0 to 50C, 65% (2 steps); (d) PPh3, CCl4, 2-methyl-2-butene, CH3CN, 60C, 35%; (e) t-BuOK, TrocCl, DMAP, THF; (f) mCPBA, aq. HClO4, MeOH, 50C, 43% (2 steps).

Scheme 8

Reagents and Conditions: (a) 1 M KOH, MeOH, 50C; (b) AllylBr, K2COs, DMF, 82% (2 steps); (c) NaH, TrocCl, DMAP, THF/DMF; (d) mCPBA, aq. HClO4, MeOH, 50C, 80% (2 steps); (e) Zn, aq. KH2PO4, THF; (f) 1 M KOH, MeOH, 50C; (g) AllylBr, K2COs, DMF, 81% (3 steps).

Scheme 9

Reagents and Conditions: (a) mCPBA, CH2Cl2, 0 C; (b) 39 or 41, TFAA, CH2Cl2, it, 55% (2 steps to 44), 52% (2 steps to 45); (c) Pd(PPh3)4, pyrrolidine, CH2Cl2, rt, 72% 46, 76% 47; (d) LDA, THF, -78 to 0C, 67% 22, 72% 21.

Scheme 10

Reagents and Conditions: (a) K2CO3, MeoH, 60C, quant.; (b) TCDI, CH3CN, 80C, 86%; (c) 1,s-dimethyl-2-phenyl-l,3,2-diazaphospholidine, o-dichlorobenzene, 160C, 91%; (d) BBr3, CH2Cl2, -78 to 0C, 95%; (e) MsCl, Et3N, CH2Cl2, 0C, quant.; (f) KMnO4, H2SO4, THF/H20, -78C; (g) 1 M HC1, 1,4-dioxane, 60C, 90% (2 steps); (h) (PhSeO)20, benzene, reflux; aq. NaHCO3, 84%; (i) NaBH3CN, AcOH, MeOH, 60C, 69%.

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レペニン(1)は、トリカブト属ホナガウズより単離、構造決定されたジテルペンアルカロイドである。・本化合物は高度に酸素官能基化された六環性化合物であり、その構造の複雑さから未だに全合成例は報告されていない。半矢は分子内環化付却反応を利用したレペニン(1)の立体選択的全合成を目指し本研究を行った。

まず半矢は鍵中間体となるラクトン8の合成を行った(Scheme1)。o-バニリンより、増炭反応を経てフェニル酢酸エステル3を合成後、アクリル酸エステルへの共役付加反応により炭素鎖伸長を行い、ベンジル基をメシル基べと変換することで4とした。続いて分子内Friede1-Crafts反応によりテトラロン5を合成した後、ビニルトリフラートへの変換とStilleカップリングによるビニル基の導入を経てジエン6を得た。次にエステル基を水酸基へと還元後、DCCを用いたメタクリル酸との縮合反応により7を合成した。鍵となる一段階目の分子内Diels-Alder反応は検討の結果、高希釈、ヒドロキノン添加条件下で良好に進行することを見出し、望みのラクトン11を得た。

Scheme 1

ラクトン8を水素化ジイソブチルアルミニウムによりアルデヒド体へと還元後、メシル基の除去と続くジ'アセトキシヨ脚ドベンゼンにょる酸化でrキノンジメチルアセタール9が得られた(Scheme 2)。次に半矢は鍵となる二段階目の分子内Diels-Alder反応を検討した。その結果、クロロジメチルビニルシランを用い水酸基のシリル化を行った後、加熱条件に付すことで速やかに反応が進行し、ビシクロ[2.2.2]骨格を有する10が得られることを見出した。続いてTBAF.によるジメチルシリル基の除去法を確立し11の合成に至った。

Scheme 2

コノフィリン(12)、コノフィリジン(13)は1992年、Ervatamia microphylla の葉から単離された抗腫瘍活性を有するビスィンドール型アルカロイドである。これらは中央部ジヒドロフラン環により上下二つのアスピドスペルマ型インドールユニットが結合している全く新しいタイプの構造を有しており、未だに全合成例は報告されていない。そこで、半矢は12、13の効率的全合成を目的とし、上下アスピドスペルマ型ユニットの合成及び、鍵となる中央部ジヒドロフラン環の構築法の検討を行った。

まず半矢は、下部ユニット25の合成に着手した(Scheme3)。市販の14をニトロ化し、2つのフェノー・ル性水酸基を区別して16を得た。次にケイ皮酸誘導体17を経て、o-アルケニルイソシアニド18とした。続くラジカル環化反応は円滑に進行し、19を合成することができた』続いてStilleカップリングによりアクリル酸メチル部位を導入することでインドールユニット20へと導いた。

Scheme3

Scheme4

得られた20と別途合成したアミンユニット21を光延反応で縮合し22とした後、DNs基とBoc基の脱保護と続く環化を行い、五環性中間体23を単一異性体として得た(Scheme4)。続いて脱水反応を行うことで24とした。最後にTroc基による保護、立体選択的エポキシ化を行い、下部ユニット25を合成した。上部ユニットの合成についても、下部と同様にして合成した26を用い、コノフイリン、コノフィリジンそれぞれに対応する29、27を合成した(Scheme5)。27は、26のフェノール基の保護基をメシル基からアリル基に変換することで合成した。二方29は、下部ユニットと同様に立体選択的にエポキシドを構築し、Troc基の脱保護と、メシル基からアリル基への変換により構築した。

Scheme 5

12、13の合成に必要な上下ユニットが合成できたので、続いて半矢は鍵となるカップリング反応について検討した(Scheme 6)。その結果、 Polonovski 反応を用いた位置及び立体選択的反応を確立することに成功した。まず、25をmcPBAにより整オキシド30とし、TFAA存在下、27あるいは29と反応させたところ、位置選択的イミニウム塩31の生成を経て立体的に空いているa面からの求核攻撃に基づく32重たは33を単一生成物として得ることができた。続いてアリル基を脱保護したところ、アリル基の除去と同時にエポキシドへの5-exo閉環反応が進行し34、35を得た。最後に、LDAによりメシル基の脱保護を行ったところ、Troc基も同時に脱保護され、コノフィリン(12)、コノフィリジン(13)の全合成を達成することができた。

Scheme 6

更に半矢は、容易に入手可能なビンドリン(36)を原料としたメシロキシタベルソニン(26)への効率的変換法を検討した(Scheme 7)。その結果、9段階、通算収率39%にて、ビンドリン(36)から26へ導くことに成功した。

Scheme 7

以上のように、半矢は興味深い構造を有するレペニンの基本骨格の一部を立体選択的に構築する合成経路を確立し、その全合成への道を切り開いた。更に、誘導体化を視野に入れたコノフィリンの全合成ならびにその中間体への効率的変換法の開発に成功した。従って、薬学研究に寄与するところ大であり、博士(薬学)の学位を授与するに値するものと認めた。

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