学位論文要旨



No 123850
著者(漢字) 遠山,季美夫
著者(英字)
著者(カナ) トオヤマ,キミオ
標題(和) 中枢性甲状腺ホルモン応答における血液脳関門を介した甲状腺ホルモン輸送機構の役割
標題(洋)
報告番号 123850
報告番号 甲23850
学位授与日 2008.03.24
学位種別 課程博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 博薬第1277号
研究科 薬学系研究科
専攻 生命薬学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 杉山,雄一
 東京大学 教授 入村,達郎
 東京大学 准教授 紺谷,圏二
 東京大学 准教授 富田,泰輔
 東京大学 准教授 楠原,洋之
内容要旨 要旨を表示する

【序文】

脳は生理的な重要性から、血液脳関門および血液脳脊髄液関門という2つの関門により循環血から隔てられている。循環血から脳内への物質輸送には経細胞輸送が主要な経路となり、トランスポーターが選択的な物質輸送に重要な役割を果たす。当教室の杉山らは肝臓に発現する有機アニオントランスポーターのホモログであるOatp1c1が血液脳関門特異的に発現しており、有機アニオンよりも甲状腺ホルモン(TH)であるthyroxine(T4)に対して高い輸送活性を示すことを明らかにした(1)。

THは脳の発達・分化・機能維持に重要な働きをしており、胎児期・新生児期でのTHの不足は精神遅滞を引き起こすことが知られている。また、血中のTHレベルは甲状腺(T4,3,3',5-triiodothyronine(T3)の分泌)-視床下部(TRHの分泌)-下垂体(TSHの分泌)からなる角edback機構により厳密に制御されている。血中でのTHの主要成分であるプレホルモンT4は、脳内に取り込まれた後、活性化及び不活性化を行う脱ヨード化酵素(deiodinase;D2,D3)により制御を受けている。私は修士課程において、血液脳関門におけるT4輸送が飽和性を示すこと、また、阻害実験により少なくともその一部にはOatp1c1が関与していることを示唆する結果を得た(2)。本研究では、Oatp1c1および同じく血液脳関門に発現しているOatp1a4のノックアウトマウス(KOマウス)を用いて両トランスポーターの血液脳関門でのTH輸送における働きについて解析を行った。また、神経細胞に発現しているTHトランスポーターであるMCT8が血液脳関門に発現していることを見いだし、TH輸送における寄与率の推定をした。

【方法と結果】

1.KOマワスをいたOat1c1、Oat1a4の血液脳関門におけるTH輸送の解析Oatp1c1およびOatp1a4 KOマウスにおけるTHの脳内へのり込みの評価

成体マウスにおいてin situ脳灌流法により1251-T4,T3の脳内への初期取り込みクリアランスを測定した。Oatp1c1,0atp1a4の両KOマウスにおいて、T4の初期取り込みクリアランスは野生型の60%程度に低下していた。一方、同じくOatp1c1を含めたOatpの典型基質であるestradio1-17-β-glucuronideの初期取り込みクリアランスは変動していなかった。Oatpの阻害剤であるestrone-3-sulfate(E-sul)存在下で、野生型、KOマウスともに同程度まで初期取り込みが低下した。このことから、E-su1非感受性のトランスポーターの発現には影響はなく、E-sul感受性のトランスポーターとしてOatp1c1,0atp1a4はともにT4の脳内への取り込みに関与していることが示唆された。一方でT3の初期取り込みクリアランスは野生型と比べ若干減少したものの有意な差は見られなかった(図1)。

更に、in vivoにおける重要性を評価するために単回 i.v.投与後8時間における[125I]-T4,T3の脳内濃度/血漿中濃度比(Kp,brain)を測定した。成体のOatp1c1 KOマウスにおいてT4のKp,brain、が野生型の64%に低下していた(図3)。一方、Oatp1a4KOマウスではKp,brain、に野生型との有意な差は見られなかった。T3のKp,brainは、両KOマウスともに野生型と比べて有意な差は見られなかった。

発達過程におけるOatp1c1,Oatp1a4の発現プロファイル

脳においてTHの重要性が明らかになっている胎児期・新生児期での両トランスポーターの影響を調べるために、脳内でのOatp1c1,0atp1a4の経時的な発現変動を定量的PCR法により測定した。Oatp1c1はEI7から発現が見られ、生後一過的に発現が上昇していた。一方、Oatp1a4は生後経時的に発現が上昇していた(図2)。

Oatp1c1における新生児期での発現変動の影響をみるためにOatp1c1KOマウスにおいて胎児期(E17)および新生児期(PlO)での1251-T4のKp,brainの測定を行ったところ、E17においてはKOマウスのKp,brainに変化はなかったものの、P10においてはKOマウスにおいてKp,brainが野生型の45%に低下していた。これらのことからOatp1c1は新生児期、成熟期においてT4の脳内への分布に関与していることが明らかとなった(図3)。

脳内のTHレベルの評価

脳内へのT4の取り込みの低下による脳内のTH応答性遺伝子への影響を調べるために、脳内のTH活性化酵素D2と不活性化酵素D3のmRNA量および酵素活性を測定した。D2はTHにより負の制御されており、D3は正に制御されていることが知られている。両KOマウスにおいてD2,D3のmRNA量に変化はなかった。脳ホモジネートを調製し、in vitroで酵素活性を測定したところ、Oatp1c1KOマウスにおいてD2の酵素活性が2.7倍に増加し、D3の酵素活性に若干の低下がみられた。Oatp1a4 KOマウスにおいては、D2,D3とも酵素活性に野生型との有意な差はみられなかった。このことから、Oatp1c1KOマウスでは脳内のTH濃度が低下していることが示唆された。

Oatp1c1,Oatp1a4の機能欠損によるTHの恒常性への影響

両KOマウスにおける末梢でのTH作用への影響をみるために血清中T4およびTSH濃度をRIAにより測定を行った。いずれのKOマウスにおいても血清中T4濃度およびTSH濃度に野生型との有意な差は見られなかった。T4によるTSH応答性への影響を見るためにOatp1c1KOマウスにおいてT4負荷試験を行った。野生型およびOatp1c1 KOマウスに0.15%PTUを添加した低ヨード飼料を2週間与え、血清中TSHの上昇を惹起した(WT,KO:72,77ng/ml)後、T4(10,100ug/kg/day)を低用量から順次5日間ずつi.p.投与し、TSHの応答性を測定した。野生型、Oatp1c1 KOマウスはそれぞれ血清中TSHが51,1.3および54,1.1(ng/ml)と低下し、同程度の応答性を示した。Oatp1c1の機能欠損による脳内へのT4の取り込みの低下はD2の酵素誘導により代償され脳内のT3レベルには影響がみられないものと考えられた(図4)。また、Oatp1a4のTH輸送への関与は小さいかもしくはないものと考えられる。

2.血液脳関門でのTHの取り込みにおけるMCT8の関与

Oatp1c1,Oatp1a4だけでは脳内へのTHの取り込み機構を説明することは出来なかった。そこで、神経細胞において発現しているTHトランスポーターMCT8の血液脳関門での発現およびTHの取り込みへの関与について解析を行った

発達過程におけるMCT8の発現プロファイル

Oatp1c1 KOマウスにおいてEl7でのKp,brainが野生型において変化していないことから、El7において他のTHトランスポーターの発現上昇が考えられた。そこで、MCT8の発達段階での脳内での発現量を定量的PCR法により測定し比較した。MCT8は胎児期に一過的に発現が上昇していた(図5)。

血液脳関門でのMCT8の発現

血液脳関門でのMCT8の発現を調べるために、成体マウスの脳凍結切片を用いてマウスMCT8抗体による免疫染色を行った。脳毛細血管内皮細胞のマーカー蛋白としてP-gpとの共染を行った。MCT8のシグナルはP-gpのシグナルと一致した。また、抗原部位を含むC末端41アミノ酸融合GST蛋白を用いたところ、脳毛細血管内皮細胞でのMCT8のシグナルが消失した。このことから、MCT8は脳毛細血管内皮細胞に発現していることが明らかとなった。

血液脳門におけるTH送におけるMCT8の寄与の推定

Oatp1c1,Oatp1a4,MCT8 の cDNAを哺乳類発現ベクターに組み込み、それぞれをHEK293(Oatp1c1,Oatp1a4)、MDCK2(MCT8)に遺伝子導入し、安定発現系の構築を行った。各発現系においてT4,T3の取り込みクリアランスを測定した(表1)。発現系より算出された各クリアランスをin vivo に外挿するために、発現系および脳毛細血管での各トランスポーターの単位蛋白あたりの発現量をウエスタンブロット法により半定量的に測定した。発現系に対する脳毛細血管での各トランスポーターの発現量比を発現系より算出したクリアランスに乗じることで、各トランスポーター脳毛細血管での相対クリアランスを算出し、各トランスポーターのT4,T3の輸送における寄与率を評価した。その結果を表1に示す。血液脳関門におけるT4の輸送比はOatp1c1,Oatp1a4,MCT8はそれぞれ、30,12,58%、T3の輸送比はそれぞれ、6,7,88% であることが明らかとなった。

【考察・結論】

本研究により、Oatp1c1は脳内へのT4の取り込みに関与していることが明らかとなった。KOマウスにおいて脳内濃度の低下が示唆されたが、T4の濃度低下はD2の酵素誘導による局所でのT3の産生の増加により代償されているため、TSHのnegative feedback といった脳内でのTHの作用には影響が見られなかったと考えられる。Oatp1a4は初期取り込みには関与しているもののKp,brainに変化が無かったことから、実際の輸送に占める寄与は小さいものと考えられる。Oatp1c1,Oatp1a4に加え MCT8 が血液脳関門でのT4の取り込みに関与していることが示唆された。また、T3 についてはその大部分がMCT8によって担われていることが示唆された。このように脳内へのTHの輸送はOatp1c1,0atp1a4,MCT8により行われていることが明らかとなった。ヒト血液脳関門においてもこれらトランスポーターのホモログの発現が観察されたことから、ヒトにおけるTH輸送においても同様にこれらが関与しているものと考えられる。MCT8はすでに精神遅滞を引き起こす原因遺伝子として報告されており、MCT8による血液の関門を介したTHの輸送低下がその一因となっていることが推察された。

【謝辞】

本研究を遂行するにあたりご協力をいただきました油谷先生、水口先生、田中先生に深謝いたします。

1. Sugiyama D, Kusuhara H, Taniguchi H, et al. 2003 Functional characterization of rat brain-specific organic anion transporter (Oatp14) at the blood-brain barrier: high affinity transporter for thyroxine.J Biol Chem 278:43489-952. Tohyama K, Kusuhara H, Sugiyama Y 2004 Involvement of multispecific organic anion transporter, Oatpl4 (Slc2lal4), in the transport of thyroxine across the blood-brain barrier. Endocrinology 145:4384-91
審査要旨 要旨を表示する

脳は生理的な重要性から、血液脳関門および血液脳脊髄液関門という2つの関門により循環血から隔てられている。血液と脳細胞外液との間の物質の交換には、トランスポーターが重要な役割を果たす。当教室の杉山大介らは肝臓に発現する有機アニオントランスポーターのホモログであるOrganic anion transporting polypeptide lc1 (Oatplc1)が血液脳関門特異的に発現していること、in vitro輸送実験から有機アニオンよりも甲状腺ホルモンであるthyroxine(T4)に対して高い輸送活性を示すことを明らかにした。申請者の遠山は、修士課程において、血液脳関門におけるT4の脳取り込みが飽和性を示すこと、また、阻害実験により少なくともその一部にはOatplc1が関与している可能性があることを明らかにしている。甲状腺ホルモンは脳の発達・分化・機能維持に重要な働きをしており、胎児期・新生児期での甲状腺ホルモンの不足は精神遅滞を引き起こすことが知られている。また、血中の甲状腺ホルモンレベルは甲状腺(T4,3,3',5-triiodothyronine(T3)の分泌)一視床下部(TSHの分泌)一下垂体(TSHの分泌)からなるfeedback機構により厳密に制御されている。血中での甲状腺ホルモンの主要成分であるプレホルモンT4は、脳内に取り込まれた後、活性体であるT3へと変換される。T3の脳内濃度は活性化及び不活性化を行う脱ヨード化酵素(deiodinase;D2,D3)により制御を受けており、さらにD2,D3もT3により制御されている。脱ヨード化酵素と同様に、血液脳関門を介した甲状腺ホルモンの輸送機構は脳内の甲状腺ホルモンの供給および濃度維持を行っていると考えられ、血液脳関門に発現するトランスポーターに関する研究は注目されつつある。

本研究では、Oatplc1および同じく血液脳関門に発現しているOatpla4のノックアウトマウスを用いて両トランスポーターの血液脳関門での甲状腺ホルモン輸送における働きについて解析を行い、Oatplc1がT4の脳取り込みに一部関与していることを明らかにした。また、神経細胞に発現している甲状腺ホルモントランスポーターであるMonocarboxylate transporter 8(MCT8)が血液脳関門に発現していることを見いだした。更にin vitro評価系を用いた解析から血液脳関門を介した甲状腺ホルモンの脳取り込みにおける各トランスポーターの寄与率の推定を行い、血液脳関門におけるT4輸送についてはOatplc1とMCT8が、T3輸送についてはほぼMCT8が関与していることを報告し、甲状腺ホルモン輸送機構の全貌を明らかにした。

1.血液脳関門を介した甲状腺ホルモン輸送における有機アニオントランスポーター(Oatplc1,0atpla4)の役割

申請者はOatp1c1およびOatpla4マウスの作成を行い、表現系解析として、甲状腺ホルモンの脳内への輸送系および脳内での甲状腺ホルモン応答における両遺伝子の機能欠損の影響を解析した。Oatp1c1マウスでは血清中の内因性T4濃度に変化はないものの、T4の脳取り込みが30-40%低下していることから、脳内の内因性T4濃度の低下が示唆された。Oatp1c1マウス脳内でT4からT3への変換に関わる甲状腺ホルモン活性化酵素D2の酵素活性が増加していることを見出した。しかし、脳内のT3応答性遺伝子のT3とTRを介した転写制御に起因するに発現変動、feedback機構の異常、脳組織の形態異常は観察されなかった。これら結果から、Oatp1c1の機能欠損によるT4の脳取り込みの減少は脳内のD2酵素の活性増加に代償され、脳内のT3濃度は維持されていると考察している。さらに、発達の各段階でのOatplc1の機能欠損の影響を調べたところ、Oatp1c1は出生後、特に新生児期以降では、T4の脳取り込みに関与しているものの、胎児期での関与はほとんどなく、別のトランスポーターがT4の脳取り込みに関わっていることを明らかにした。また、Oatplclとは異なり、Oatpla4はT4,T3いずれの脳取り込みにおいて重要な役割を果たしていないことが明らかにした。

さらに、申請者は甲状腺ホルモン機能亢進症および甲状腺ホルモン機能低下症モデルマウスの作成を行い、血液脳関門を介した甲状腺ホルモンの脳取り込みが甲状腺ホルモン応答性を示さないことを明らかにした。

2.血液脳関門におけるその他の甲状腺ホルモントランスポーターの探索および寄与率の評価

Oatp1c1以外の甲状腺ホルモントランスポーターとして、申請者はMCT8に焦点を置き、研究を行った。免疫染色の結果から、マウスおよびヒトにおいてMCT8が脳毛細血管内皮細胞においても発現していることを明らかにした。更にIn vitro 評価系を構築し、成体マウスの血液脳関門において、MCT8は T4 の脳取り込みに60%、T3の脳取り込みに90%程度関与していることを推定した。この結果は、Oatp1c1およびOptp1a4マウスの結果から推定されるOatp1c1,0atpla4以外のトランスポーターの寄与率と一致している。発達段階での脳内のMCT8のmRNAレベルでの発現量を定量的PCR法により測定し、MCT8は胎児期に発現量が一過的に増加していることから、MCT8は、特に胎児期でのT4の脳取り込みに関与していることが示唆された。

以上のように、申請者は血液脳関門における甲状腺ホルモンの脳取り込み機構をin vitro、in vivoの実験により解析し、T4の脳取り込みにOatplc1が関与していることを明らかにし、MCT8が関与していることを示唆した。Oatplc1,MCT8のヒトホモログはヒト血液脳関門に発現しているおり甲状腺ホルモンを基質とすることから、ヒトでも両トランスポーターが甲状腺ホルモンの脳取り込みに関与していることが期待される。さらに、両トランスポーターは胎児期、新生児期、成熟後といった各段階で発現変動していることを明らかにした。D2,D3も発達段階において発現変動し、D2の発現が低い胎児期において、脳内でのT4からT3への変換経路の割合は低く、逆に新生児期以降ではその割合が高くなることが報告されている。また、OatplclはT4を特異的に輸送し、MCT8 はT4,T3を共に輸送することが報告されている。本研究結果とこれら知見をまとめると、脳内でのT4からのT3産生が出生後、新生児期において増加するのに併せて、Oatplc1,MCT8の発現変動により甲状腺ホルモンの脳取り込みがT3優位からT4優位に切り替わることが示唆された。甲状腺ホルモンは中枢神経系の発達に不可欠なため、このように脳内の甲状腺ホルモン濃度は各時期において厳密に維持されているのではないかと考察している。血液脳関門を介した脳内への甲状腺ホルモンの取り込み機構がそのロバストネスの一翼を担っていることが示唆された。

更に申請者は、厳密な甲状腺ホルモンの維持機構において、血液脳関門を介した甲状腺ホルモンの輸送系は甲状腺ホルモン応答性を示さないことを明らかとした。このことは、脳内への甲状腺ホルモンの取り込み機能が低下した場合、輸送能を制御することで対応できないという脆弱性を有していることを示唆する。甲状腺ホルモン機能異常患者を対象としたlinkage analysisの結果、その原因遺伝子として核内受容体であるTRβに加え、甲状腺ホルモントランスポーターMCT8が同定されている。OatplclはそのホモログOATP1C1がヒト脳毛細血管においても発現している。OATPlC1について、これまでのところ健常人においてアミノ酸置換を伴う変異は報告されていない。Oatp1c1マウスにおいて中枢機能異常に起因する表現型は見られなかったが、重篤な精神遅滞を引き起こすAHDSの原因遺伝子であるMC78マウスにおいても中枢機能異常に起因する表現型は見られていない。本結果はOATP1C1の機能欠損が疾患と結びつかないと結論づけることは出来ない。今後、TRβやMcT8といった既存の遺伝子とともにOATP1C1についても甲状腺ホルモン機能異常患者を小児科医等と共同してゲノムスクリーニングを行うことで、ヒトにおけるOATP1C1の重要性について検証する必要があると結んでいる。

本研究では、これまで肝臓や脳での有機アニオン系化合物の排出に関わっていること考えられてきたOATPの1つであるOatp1c1がむしろT4輸送に重要な役割を果たし、内因性基質の動態に深く関わっていることを初めて示した。さらに、血液脳関門における甲状腺ホルモン輸送機構の分子基盤を明らかにし、その研究意義は甲状腺ホルモン機能異常疾患のメカニズムの端緒を開く研究であると考えられる。よって、博士(薬学)の学位を授与するに値するものと認めた。

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