学位論文要旨



No 124151
著者(漢字) 朴,成鳳
著者(英字)
著者(カナ) パク,ソンボン
標題(和) 光演算のためのSi上に集積したGeフォトディテクター
標題(洋) Integration of Ge Photodetectors on Si for Optical Clocking
報告番号 124151
報告番号 甲24151
学位授与日 2008.09.30
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第6920号
研究科 工学系研究科
専攻 マテリアル工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 和田,一実
 東京大学 教授 吉田,豊信
 東京大学 教授 鳥海,明
 東京大学 准教授 近藤,高志
 東京大学 教授 中野,義昭
内容要旨 要旨を表示する

This thesis demonstrated integrated Ge photodetectors on Si waveguides by Ge selective epitaxial growth on Si via ultrahigh vacuum chemical vapor deposition. To that end, we demonstrated selective Ge mesa on oxide-patterned Si substrates. We observed morphological instability of a Ge mesa after in-situ annealing at 800oC. This problem can be alleviated by once cooling the sample to room temperature, followed by same annealing process. We fabricated Ge p-i-n photodiodes by blanket Ge growth on bare Si substrates. We utilized Si-cap to protect Ge layer from further fabrication processes. By shallow-implantation of phosphorous into Si-cap, we could insert an intrinsic Si (i-Si) layer between n+ Si and Ge layers. The presence of i-Si lowered dark current of the photodiodes using as-grown Ge up to ~10 mA/cm2, compared with ~400 mA/cm2 of dark current of photodiodes without i-Si. According to theoretical calculation of absorption coefficient change by tensile strain, we found that biaxial tensile strain resulted in larger absorption enhancement around 1550 nm of wavelength than uniaxial strain. Furthermore, localized strain measurement conclusively proved that a Ge mesa with lateral width larger than 1 μm was under biaxial tensile strain. Using this knowledge, we demonstrated Si-waveguide-integrated Ge photodetector under biaxial tensile strain on the underlying Si multi-mode interferometer structure. For these photodetectors, responsivity reached nearly theoretical maximum ~ 1 A/W when Ge length is longer than 30μm and 3dB cut-off frequency was over 1-2 GHz. We also demonstrated a prototype of H-tree structure for optical clocking. These techniques and knowledge are crucial to realize optical clocking system in Si microphotonics platform.

審査要旨 要旨を表示する

シリコン集積回路の性能指数を飛躍的に向上する新しい技術としてシリコンフォトニクスに対する期待が高まっている。シリコンフォトニクスはシリコンCMOS技術を電子回路のみならず光回路の製作に適用し、電子・光集積回路(EPICs, Electronics and Photonics Integrated Circuits)を実現する技術体系である。これまでに導光路、フィルター、などパッシプ素子に関する報告は多くすでに実用のレベルにあるといえるが、受光素子を初めアクティブ素子は研究途上の技術である。特に、シリコン上にモノリシックに集積することが不可欠な受光器についてはさまざまなアプローチが提案され、精力的な研究が進められている。この中でGeは直接遷移バンドギャップが光通信波長帯(1.55ミクロン帯)にあり、かつシリコンと同じ14族半導体であることから集積化がプロセスを汚染する原因とはならない特徴を有する。このため、シリコンフォトニクスの集積化受光器としてきわめて有望である。しかし、格子定数の不一致による欠陥が存在し、受光器の高性能化には多くの課題を残している。さらに、欠陥低減のためにエピ成長後に行う高温の熱処理はシリコン集積回路性能を劣化し、このためシリコン導光路とGe受光器の集積を困難にしている。言い換えれば、GeはIII-V族半導体受光器に無かったCMOS技術に互換性を有する材料であるが、電子光集積化に対しては今後さらにCMOSプロセスに関する互換性を持たせることが課題といえる。本研究の目的は以下の二点に大別される。

1.シリコン上へのGeのヘテロエピ成長、および受光器の製作・評価を進め、単体素子の高性能化を達成する。

2.最も単純なEPICsである光クロック配信回路を実現するため、シリコン導光路と受光器の集積化を実現する。

本論文はIntegration of Ge Photodetectors on Si for Optical Clocking(光演算のためのSi上に集積したGeフォトディテクター)と題し、上記二つの目的を達成するため展開した研究成果をまとめたものであり、世界に先駆けてシリコン導光路とGe受光器の集積化に成功した内容について述べている。全六章からなる。

第一章では研究の背景と研究の目的について述べている。第二章ではGe受光器の設計について、その素子性能の予測および材料の持つ課題について述べている。

第三章ではシリコン上のGeのエピ成長について述べている。超高真空気相成長装置と成長条件、全面成長と選択領域成長、および熱処理方法についてまとめた。特に、シリコンとGeとの格子定数の不一致により導入される転位と熱処理による低減について明らかにし、さらに選択成長Geに特有な現象である、熱処理時に生じるGeエピ表面の形態不安定化について報告している。

第四章ではシリコン上のGe受光器の製作と評価について述べている。先端知クリーンルームでの製作プロセスと得られた受光器特性を明らかにしている。さらに、素子特性のシュミレータによりシリコン上に理想的なGe受光器が製作できたこと、および転位が受光器の暗電流特性を支配することを明確化した。さらに、この解析結果から欠陥の影響を低く制御することにより、高温の熱処理が不要となることを提唱し、実証した。この結果はGeのCMOSプロセス互換化に大きく寄与するものである。

第五章ではシリコン導光路に集積化したGe受光器の製作と性能について述べている。導光路製作プロセスと受光器製作プロセスではさらに問題が発生すること、その解決策について述べ、光クロック配信回路の特性を明らかにしている。

第六章ではまとめと今後の提言について述べている。

以上述べたように、本論文はシリコン導光路上のGe受光器の集積化に世界で初めて成功したもので、そのエピ成長・プロセス基盤技術の構築と総合化に多大な寄与をしたと評価される。また、従来突破できていなかったCMOSプロセス互換性をGeに付与する素子構造を提案・実証し、大規模なEPICsの実現に向けた重要なマイルストーンをクリアしたものであり、本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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