学位論文要旨



No 124308
著者(漢字) 任,貞姫
著者(英字)
著者(カナ) イム,ジョンヒ
標題(和) ネットワーク空間における階層構造に関する研究 : 特許取得のための産官学の協調関係に見られる「核と周辺」の分析
標題(洋)
報告番号 124308
報告番号 甲24308
学位授与日 2009.03.16
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第6946号
研究科 工学系研究科
専攻 建築学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 藤井,明
 東京大学 教授 西出,和彦
 東京大学 教授 加藤,道夫
 東京大学 准教授 大月,敏雄
 東京大学 講師 今井,公太郎
内容要旨 要旨を表示する

他者との関係によって規定される人間の存在は、何らかの目的や衝動が働くことで他の人々との共同生活、相互援助の行為、相互協調の行為、相互対抗の行為などを派生し、いわば相互作用の状態に入る。これにより、人間は他者に作用を及ぼし、他者から作用を受ける相互作用の場を形成する。そして、この場に参加する人々は、統一体となって、ひとつのネットワーク空間を作り出すのである。これをジンメル(Georg Simmel,1917)は、「諸人間にうちにある相互作用によって存在する」空間という。

しかし、この空間では、それぞれの要素がもつ目的や動機によって発生しているにもかかわらず、他の要素との関係を受け入れることによって最初の目的を失い、いかに空間を構成すべきかを自らの関係性が決定する。したがって、ネットワーク空間では、もっぱら関係性のみが組織原理の根拠になり、またその原理が諸関係に一定の形式を与える。言い換えれば、その形式によってはじめてネットワーク空間の様相が把握される。

具体的には、ネットワーク空間では関係によって「分節」が行なわれ、一定の範囲をもつ領域が見出される。この領域は、関係の意義や関連性を頼りにして規定される。この際、分節を起こす関係は、空間的概念としては「境界面(interface)」であり、ソーシャル・ネットワーク分析(Social Network Analysis)では「弱い関係(weak ties)」に相応している。

本研究では、この弱い関係を特定する指標を提案する。これは、グラフ理論における「n-cycle」において測定される各エッジの通過数を、エッジに出現する単位領域の数と解釈するものである。この数が最も小さいエッジを「弱い関係」として捉え、そのエッジをネットワークから取り除くことで、部分グラフ=領域を特定する。この指標を、本研究では「出現回数」と呼ぶ。

しかし、「弱い」という言葉の性質から分かるように、どこを弱いと捉えるかは相対的である。弱い関係は流動的であるため、それに応じて領域も様々な大きさをもって出現する。この弱い関係の性質により、ネットワーク空間に「階層構造」が生じる。

それを捉えるために、弱い関係によって規定されるすべての領域(グラフ理論では部分グラフ)を、その大きさによって「核と周辺」に区分・序列化する。このとき、周辺を下位レベルに、核を上位レベルに位置づけることにより、階層構造が顕在化する。「階層は、決して互いに孤立し、独立したものではなく、互いに関連し、依存し、絶えず移行しあっている(平田清一 、2000)」のである。

以上のことから、次に示す概念が提案される。

提案1. n-cycleによって与えられる各エッジの数は、そのエッジの関係強度を測定する指標として用いて、その指標を「出現回数」と呼ぶ。

提案2.「出現回数」の小さいエッジは境界面であり、このエッジを取り除くことで、ネットワーク内には密な部分グラフ(cohesive subgraphs)が出現する。

提案3.「核と周辺」の構造は、小さい出現回数のエッジを順次に取り除くことで見出される。

これらの概念をもとに、本研究では、ネットワーク空間に見られる構造を記述するが、その対象は、特許庁の「特許電子図書館」に掲載されている「書誌」をもとに作成した「特許収得のための産官学間の協調関係」のネットワークである。この中身は、研究者たちの人的交流であり、この活動は主に企業のイノベーションのために行われたR&D(Research and Development)活動を収集したものである。

空間的範囲としては「日本全国」を定めている。これにより、ネットワークのパターンが地理的にどのように形成されているかを分析する。また、階層分析によって地域別の階層順位を調べているこれらの概念をもとに、本研究では、ネットワーク空間に見られる構造を記述するが、その対象は、特許庁の「特許電子図書館」に掲載されている「書誌」をもとに作成した「特許収得のための産官学間の協調関係」のネットワークである。この中身は、研究者たちの人的交流であり、この活動は主に企業のイノベーションのために行われたR&D(Research and Development)活動を収集したものである。

空間的範囲としては「日本全国」を定めている。これにより、ネットワークのパターンが地理的にどのように形成されているかを分析する。また、階層分析によって地域別の階層順位を調べている(階層の深さや地域の出現レベル、出現順位)。より上位レベルで、そしてより大きい階層をもつ地域を「核」として規定している。各階層それらの関係パターンなども分析する。また、 時間的範囲は「バブル崩壊の前後(1989、1991、1993年)」を対象として、ダイナミックな空間的変化を捉える。

これらの概念をもとに、本研究では、ネットワーク空間に見られる構造を記述するが、その対象は、特許庁の「特許電子図書館」に掲載されている「書誌」をもとに作成した「特許収得のための産官学間の協調関係」のネットワークである。この中身は、研究者たちの人的交流であり、この活動は主に企業のイノベーションのために行われたR&D(Research and Development)活動を収集したものである。

空間的範囲としては「日本全国」を定めている。これにより、ネットワークのパターンが地理的にどのように形成されているかを分析する。また、階層分析によって地域別の階層順位を調べている(階層の深さや地域の出現レベル、出現順位)。より上位レベルで、そしてより大きい階層をもつ地域を「核」として規定している。各階層それらの関係パターンなども分析する。また、 時間的範囲は「バブル崩壊の前後(1989、1991、1993年)」を対象として、ダイナミックな空間的変化を捉える。

これらの概念をもとに、本研究では、ネットワーク空間に見られる構造を記述するが、その対象は、特許庁の「特許電子図書館」に掲載されている「書誌」をもとに作成した「特許収得のための産官学間の協調関係」のネットワークである。この中身は、研究者たちの人的交流であり、この活動は主に企業のイノベーションのために行われたR&D(Research and Development)活動を収集したものである。

空間的範囲としては「日本全国」を定めている。これにより、ネットワークのパターンが地理的にどのように形成されているかを分析する。また、階層分析によって地域別の階層順位を調べている(階層の深さや地域の出現レベル、出現順位)。より上位レベルで、そしてより大きい階層をもつ地域を「核」として規定している。各階層それらの関係パターンなども分析する。また、 時間的範囲は「バブル崩壊の前後(1989、1991、1993年)」を対象として、ダイナミックな空間的変化を捉える。

これらの概念をもとに、本研究では、ネットワーク空間に見られる構造を記述するが、その対象は、特許庁の「特許電子図書館」に掲載されている「書誌」をもとに作成した「特許収得のための産官学間の協調関係」のネットワークである。この中身は、研究者たちの人的交流であり、この活動は主に企業のイノベーションのために行われたR&D(Research and Development)活動を収集したものである。

空間的範囲としては「日本全国」を定めている。これにより、ネットワークのパターンが地理的にどのように形成されているかを分析する。また、階層分析によって地域別の階層順位を調べている(階層の深さや地域の出現レベル、出現順位)。より上位レベルで、そしてより大きい階層をもつ地域を「核」として規定している。各階層それらの関係パターンなども分析する。また、 時間的範囲は「バブル崩壊の前後(1989、1991、1993年)」を対象として、ダイナミックな空間的変化を捉える。

これらの概念をもとに、本研究では、ネットワーク空間に見られる構造を記述するが、その対象は、特許庁の「特許電子図書館」に掲載されている「書誌」をもとに作成した「特許収得のための産官学間の協調関係」のネットワークである。この中身は、研究者たちの人的交流であり、この活動は主に企業のイノベーションのために行われたR&D(Research and Development)活動を収集したものである。

空間的範囲としては「日本全国」を対象に、ネットワークのパターンが地理的にどのように形成されているかを分析する。また、 時間的範囲としては、「バブル崩壊の前後(1989、1991、1993年)」を対象として、ダイナミックな空間的変化を捉える。

分析結果としては、「地域クラスター」の定義に基づいて、より高いレベルで出現し、階層が深い地域を「地域クラスター型」、より低いレベルで出現し階層が浅い地域を「分散型」、階層が比較的浅いが上位レベルで出現する地域を「その他」として関係パターンの分類を行っている(階層の深さや出現順位)。

本論文は、序、第 1~6章、および付で構成されている。「序」では、、本研究の概念、研究目的、論文構成を説明している。各章の内容については、下記の通りまとめている。

第1章と第2章では、それぞれ「ネットワーク空間」に関連する基礎概念を、空間論として、またネットワーク理論において考察し、第3章の分析手法を見出す根拠を求めている。そして、第4章では事例分析である「特許取得のための産官学の協調関係」に関連する「産業と空間的集中化」の理論を考察する。これにより、第5章の事例分析において論点を求め、その視点に立って分析を行っている。最後に、第6章では分析から得られた知見と課題、そして今後の展望について述べている。「付」では、分析結果から得られた関係の空間的分布を示した図と、それに使用されたプログラム・リストを掲載している。

本研究は、互いに「関係」する行為者たちが共存する空間において、その相互関係に応じて領域を規定し、その構造を導き出すことにその意義がある。そのために、ネットワーク空間の構造を分析する手法を提案しているが、近年、このような研究は「複雑ネットワーク科学」という研究分野で行われている。これは、現実世界に存在する巨大で複雑なネットワークの性質について研究する学問である。多数の要素が相互に影響しあうことでシステム全体の性質が決まるという点において、複雑系の一分野である。

現実世界の様々な現象を説明する新たなパラダイムとして、複雑ネットワークの科学は、ネットワークの問題が関連する多数の分野において、普遍性と重要性を増していくものと予想される。本研究で用いられた分析概念もこの延長線上にあり、中でもダイナミックなネットワーク構造を分析する研究に位置づけられる。

また、分析対象が経済活動を反映したものであり、その関係構造の分析は、産業の空間的集中化を分析する研究でもある。特に、経済地理学における「地域クラスター」や「地域イノベーションシステム」の理論で取り上げている、域内のイノベーションを創出する「地域と関係構造」の面から捉えている。本研究では、この理論で取り上げている論点に基づき、事例分析を行っている。その要点は、同類原則の独特な性質によって領域に閉じ込められがちな地域の関係構造が、イノベーションを創出するためには、よその領域との関係、つまり「情報の外部性」が求められるということである。これは、本研究で着目している「弱い関係」の概念と一致している。

このような論点に基づき、本研究では事例分析を行っている。新しい空間計画を提案するにあたって、まず現状の関係構造による領域規定が最も重要であると考える。また、地域経済政策や国土計画など、システム管理を目的とした空間計画においては、より客観的な分析手法を適用することが必要である。

したがって、ある程度必然性をもった現象を予測し、新しい空間計画を提案するにあたって、まず現状の関係構造による領域規定が最も重要であると考えられる。また、地域経済政策や国土計画など、システム管理を目的とした空間計画においてより客観的な分析手法を提供できると期待される。

審査要旨 要旨を表示する

産業界の協調関係について考えるに、情報化に伴い距離に対する比重が軽減しているが、その一方で、系列という従来からの枠組みも存続している。現代社会には、モノの移動により生じる物理的な流動性と、知的財産の共有という情報を介した結びつきとが混在し、産業界は非常に複雑なネットワークを形成している。複雑系と呼ばれるネットワークの重要性は、主に社会学の分野における、人と人とのコミュニケーションの研究過程で明らかにされ、"スモール・ワールド"に代表されるようなランダムグラフの理論として定式化されている。近年のコンピュータのめざましい発達により、計算速度と記憶容量の限界が消滅するにつれて、従来では考えられなかったような大規模なネットワークを実証的に解読することが可能になっている。本論文は、日本の産業界を対象に、その知的連携のネットワークがどのような構造になっているかを、階層構造の視点から分析したものである。データとして用いたのは、特許庁の「特許電子図書館」にある特許データで、特許として認められ、特許広報に掲載されたものである。このデータには、「発明の名称」、「特許の分類」、「特許権者」、「発明者」、「住所」などの情報が記載されているが、複数の特許権者からなるデータは、そこに記載されている会社あるいは団体間で共同研究が行われ、その成果が共同出願されたことを物語っている。したがって、この複数の特許権者を有するデータを分析することにより、日本国内において産官学がどのような協調関係にあるのかを知ることが出来る。本研究は、特許権者をノードとし、共同出願による結びつきをエッジとするネットワークを考え、その構造的な特性を階層構造として捉える手法を提案すると共に、日本の産業界における産官学の結びつきの実態を明らかにしたものである。

論文は、序および第1章から第6章で構成され、巻末に使用したプログラムリストが添付してある。

序では、本研究の研究目的、論文構成等を説明している。

第1章の『ネットワーク空間に関連する基礎概念』は、分析で用いる基礎的な概念や用語の説明である。領域あるいは構造に関する概念や、「中心と周縁」、「核-周辺」といった階層構造を説明するモデルを紹介した後に、複雑系のネットワーク分析によりこれまでに導かれたモデルについて解説し、共通する性質として、「スケールフリー性」、「スモールワールド性」、「クラスター性」を挙げている。

第2章の『ネットワーク分析における理論及び既往研究の考察』では、ネットワーク分析で用いる用語の解説に続き、"弱い関係"に着目した概念について説明している。また、部分グラフに関する既往研究についてレビューし、切断点と2重連結コンポーネントの重要性と、「核-周辺」の構造的な特性について述べている。

第3章の『「核-周辺の階層構造」の抽出手法』では、ネットワーク上でn-cycleを考え、エッジの出現回数から"弱い関係"をもつエッジを特定し、「核-周辺」の分離を繰り返すことにより、階層構造を抽出する手続きについて述べている。

第4章の『R&D経済活動に関連する研究動向』では、産官学の協調関係により形成される企業間の結びつきと、経済地理学でいう産業集積の在り方に関する理論を紹介し、柔軟なネットワークの重要性を指摘している。

第5章の『事例分析』では、先ず、分析で用いた特許データについて説明し、どのような属性がデータに付与されているかを検討した上で、最終的な時系列データとして、1989年、1991年、1993年のものを使用するとしている。次いで、データの取得からデータベース化に至る一連の作業について説明し、各年度のデータの統計的な特性について解説している。分析では、n-cycle(n≦4)を適用した際の出現回数に基づき階層構造を決定しているが、年度毎の階層のレベルと距離の関係、各レベルにおける地域の出現順位、階層の深さ等について調べている。また、技術分類にも着目し、技術別の割合や出現順位、階層の深さなどについて分析し、地理的な制約と特許の協調関係について考察している。まとめとして、時系列上での比較を行い、時代と共に距離の重要性が薄れていることや、東京中心の一極構造から次第に多核構造に変化していることを指摘し、最後に都道府県を階層構造の特性に基づき分類している。

第6章の『結論と展望』では、本論文で行った分析の成果として、n-cycleにおける出現回数に基づく「核-周辺」という概念による階層化が有効であることを示し、この理論を適用した特許取得のための産官学の協調関係の分析が、地域の産業の在り方を理解する上で有益な知見をもたらすと結論づけている。最後に、課題として残った問題点を整理し、今後の展望について述べている。

以上要するに、本論文は、極めて多数のノードとエッジからなる複雑系のネットワークに対して、その結合の強弱に基づき、ネットワークを階層構造に分解する手法を提案し、その有効性を確かめたという理論的な側面と、それを、現代の日本の産業界に適用し、特許の共同出願という観点から見た場合に、産官学がどのように連携しているかを明らかにしたという実務的な側面を有するが、前者に対しては、独創的で簡便なネットワークの分解手法を提示した点において、また、後者では、非常に複雑に絡み合い、その構造が不明瞭であった産業界の連携の実態を明らかにした点において優れた成果を挙げている。これらは、複雑系のネットワーク分析に新たな視点を導入するもので、その有効性は、事例研究に於いて実証されている。本論文の手法は、ネットワーク一般に対して汎用性があり、その適用範囲は広い。これは都市・建築の計画学の分野に新たな方法論を導入するものとして、その意義は極めて大きいと判断できる。

よって、本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

UTokyo Repositoryリンク