学位論文要旨



No 124420
著者(漢字) 西野,玄記
著者(英字)
著者(カナ) ニシノ,ハルキ
標題(和) スーパーカミオカンデにおける荷電レプトンとメソンへの核子崩壊の探索
標題(洋) Search for Nucleon Decay into Charged Antilepton plus Meson in Super-Kamiokande
報告番号 124420
報告番号 甲24420
学位授与日 2009.03.23
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博理第5318号
研究科 理学系研究科
専攻 物理学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 坂本,宏
 東京大学 教授 蓑輪,眞
 東京大学 准教授 濱口,幸一
 東京大学 教授 相原,博昭
 東京大学 准教授 大橋,正健
内容要旨 要旨を表示する

Systematic searches for nucleon decays into a charged anti-lepton (e+ or μ+) plus a light meson(π0,π-,η,ρ0,ρ-,ω)were performed. Twelve nucleon decay modes were analyzed. The total exposure is 140.9 kiloton-year exposure which includes a 91.7 kiloton-year (1489.2 live days) of Super-Kamiokande-I and a 49.2 kiloton-year (798.6 live days) of Super-Kamiokande-II.

The number and the feature of candidate events are consistent with the atmospheric neutrino background expectation. We did not observe statistically significant evidence for the nucleon decay. Thus, the lower limits of nucleon partial lifetime at 90% confidence level were obtained for all the studied modes. The lifetime limit for the p→e+π0 mode is set to be τ/B(p→e+π0)>8.2×10(33) years, which is 5 times longer than the current best limit. For the other modes, their lifetime limits range from 3.6 × 10(31) to 6.6 × 10(33) years depending on the decay modes. The more stringent limits than the current best limits are set for ten modes in the twelve searched modes.

審査要旨 要旨を表示する

本論文は9章からなる。第1章はイントロダクションであり、本論文の構成について述べている。第2章は研究の背景の説明を説明している。ここでは核子崩壊の理論的動機付けと過去の実験のレビューに当てられている。

第3章では使用した実験装置スーパーカミオカンデについて詳細に解説している。

第4章では解析に使用したモンテカルロシミュレーションの内容、及びその予測の適用可能性について記述している。

第5章は実験データ解析の最初の手順である事象データの選択について、課した条件とその妥当性が述べられている。

第6章は得られた事象データからいかにして反応を再構成したか、そしてその再構成がどの程度正確であるかについて書いている。特に光電子増倍管表面でのチェレンコフ光の反射など詳細にわたって解析で評価をすることにより精密な解析が可能になっている。これらは論文提出者が新たに開発した手法である。そうして得られた結果について第7章で検討を加えている。背景事象がモンテカルロシミュレーションによってよく説明されていることが示されている。

第8章は得られた事象データが核子崩壊現象として判定できるかどうかをモンテカルロシミュレーションの結果と比較して検討している。陽子・中性子が、陽電子もしくはμ粒子と、フレーバーを持たない軽いメソン(π、ρ、ω、η)へ崩壊する12のモードについて、ρ及びηに関してはそれぞれ2つの崩壊モードに渡って調査し、系統誤差の検討も行った上、核子崩壊による寿命の下限を与えている。その結果、12の崩壊モード中10のモードについて過去の結果を更新している。この結果は重いゲージ粒子を介在する核子崩壊のモデルにより厳しい制限を与えるものである。

この研究はスーパーカミオカンデコラボレーションの共同研究であるが、フレーバーのないメソンへの核子崩壊の包括的な研究としては初めて行われたものであり、それはすべて提出者が主体となって行った。提出者の寄与はきわめて大きい。よって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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