学位論文要旨



No 124565
著者(漢字) 渡井,祥一
著者(英字)
著者(カナ) ワタイ,ショウイチ
標題(和) ネットワーク分析によるアウトバウンド・コールセンターにおける効果的営業手法の研究
標題(洋)
報告番号 124565
報告番号 甲24565
学位授与日 2009.03.23
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第6999号
研究科 工学系研究科
専攻 環境海洋工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 松島,克守
 東京大学 教授 坂田,一郎
 東京大学 准教授 増田,宏
 東京大学 准教授 武市,祥司
 東京大学 准教授 松尾,豊
内容要旨 要旨を表示する

企業における営業の課題は、営業生産性の向上策が確立されていないことである。一般的に売上増加策としては営業員を増加させることが行われている。売上げの増加手法として営業員を増加させるだけでは、販売管理費等も同様に増加する。従ってコスト増加を抑制して売上増加するためには、営業生産性を向上させる必要がある。営業生産性を向上させる手段としては、営業プロセスにおける顧客との信頼関係構築から案件を発掘して成約する割合を増加させること、また案件が発掘されてから成約にいたる期間を短縮すること、の2つの方法がある。

この課題を解決するための本研究における前提は以下のとおりである。まず営業プロセスの初期段階における対面営業による顧客訪問を、アウトバウンド・コールセンターから顧客へ架電することによって代替するプロセスに置き換えて生産性の向上を図る。アウトバウンド・コールセンターから顧客へ架電した会話の記録である「会話ログ」および「進捗管理指標」をデータベース上に記録する。営業プロセスにおいて進捗した案件はコールセンターからから対面営業へ引渡しを行う。

進捗管理指標は、営業プロセスにおける進捗段階の基準(以下Sales Stageという)とBANT基準の2つの指標を利用した案件の進捗管理を行うものである。Sales Stageは、営業プロセスにおける「案件登録」から、「案件発掘」、「購買意欲確認」、「案件認定」、「案件引渡日」、「提案」、「購買決定(成約)」の7段階の進捗管理基準のことである。また、BANT基準とは、以下の4つの指標を利用した営業プロセス進捗管理の基準のことである。これらは、Budget(顧客予算)、Authority(権限者)、Needs(ニーズ)Timing(時期)の4つである。具体的には以下のとおりである。Budget(顧客予算)は顧客における購買予算が確定されたかを示しており、Authority(権限者)は、アウトバウンド・コールセンターから電話をかけて会話をしている先は購買に関する決定権限者であるかを示している。Needs(ニーズ)は、課題を明確化してその解決策から購入意思を確認しているかを示しており、Timing(時期)は、導入時期を明確化しているかを示している。本研究では、これらの指標とアウトバウンド・コールセンターにおける会話ログを用いて分析を行う。

このような背景をもとに本論文は、アウトバウンド・コールセンターにおける新たな営業プロセスを活用して、クラスター分析およびその結果の可視化の手法による「成約率向上分析」および「成約期間短縮分析」の2つから発見された効率的な営業手法について論じたものである。本論文は6章から構成されている。

第2章では、手法の説明を行なった。ここでは、データの分類方法、特性分析、ネットワーク分析による手法について説明した。ネットワーク分析では、まずクラスター分析を行い、特性部分のデータをConnector/Hub機能を利用してグラフ化する手法を用いた。次にクラスター分析の結果に2次元の可視化の手法を加えることにより、各クラスターを構成するノードの連関においても客観的に把握できることを示した。

第3章では、成約率向上分析について述べた。ここでは基本的に営業成績の上位者の事例を成功モデルとし、下位者の事例をそうでないモデルとの立場をとった。ここでは、「各BANT基準による特性分析」と「BANT基準毎の特性分析とネットワーク分析」の2つに分けて分析をおこなった。

「各BANT基準による特性分析」では、作成した成約率向上分析用のデータテーブルから営業プロセスにおける進捗段階(Sales Stage)が異なる案件を抽出し、これを上位者および下位者に分類して、各BANT基準での特性分析をおこない全体を俯瞰した。

「BANT基準毎の特性分析とネットワーク分析」では、前項にて実施した「各BANT基準の特性分析」の結果を踏まえより詳細な分析を行った。成約率向上分析用のデータテーブルを営業成績にて抽出し、そのデータをBANT基準毎の進捗段階に分類して特性分析を行った。ネットワーク分析では、クラスター分析結果のConnector/Hub機能によるグラフ化に加えて、2次元の可視化の手法を用いることにより営業成績の上位者および下位者の行動特性の違いを分析した。

第4章では、成約期間短縮分析ついてのべた。基本的に短期成約の事例を成功モデルとし、長期成約の事例をそうでないモデルとの立場をとった。初めに工BANT基準毎の特性分析を実施した。ネットワーク分析では、特性部分のデータをConnector/Hub機能を利用したグラフ化と2次元の可視化により、上位者および下位者の活動特性を短期成約と長期成約という2つの視点で客観視した。

第5章の考察では、本論文の分析結果を活用して、アウトバウンド・コールセンターの管理者がどのように運用すれば効率的かを提言した。

成約率向上分析の考察では、クラスター分析の結果を考慮して、可視化の分析結果による考察を中心に行った。

すなわち本論文では、この手法を利用してアウトバウンド・コールセンターの管理者に対する成約率向上のための効果的運用方法ついて提言した。これは、営業成績の上位者および下位者の行動特性の違いが明確化されたネットワーク分析による可視化グラフを使い、コールセンターの運用を利用した営業プロセスにおける成約率の向上に関する効果的な手法について明らかにしたものである。

成約期間短縮分析の考察では、ネットワーク分析結果を考慮して、クラスター分析によるグラフを利用した考察を中心に行った。

すなわち本論文では、この手法を利用してアウトバウンド・コールセンターの管理者に対する成約期間の短縮のための効果的運用方法ついて提言した。これは、BANT基準毎に短期成約と長期成約の違いがほぼ明確化されたConnector/Hub機能によるグラフを利用して、アウトバウンド・コールセンターの営業プロセスにおける成約期間短縮のための効果的運用方法について明らかにしたものである。

第6章では、本論文の結論を述べている。

審査要旨 要旨を表示する

企業における営業の課題は、営業の生産性向上策が確立されていないことである。一般的に売上増加策としては営業員を増加させることが行われている。売上げの増加手法として営業員を増加させるだけでは、販売管理費等も同様に増加する。従ってコスト増加を抑制して売上増加するためには、営業生産性を向上させる必要がある。営業生産性を向上させる手段としては、営業プロセスにおける顧客との信頼関係構築から案件を発掘して成約する割合を増加させること、また案件が発掘されてから成約にいたる期間を短縮すること、の2つの方法がある。アウトバウンド・コールセンターからの架電では、「会話ログ」および「進捗管理基準」をデータベース上に記録する。営業プロセスにおいて進捗した案件は、アウトバウンド・コールセンターから対面営業へ引渡しを行う。

本研究では、これまでの研究では取り上げられていない組合せデータにおける新しさと貴重性、そしてそのデータから営業知識を取り出して明らかにするという一連の枠組みと得られた知見が特徴となる。

このような背景をもとに本論文は、アウトバウンド・コールセンターにおける新たな営業プロセスを活用して、クラスター分析およびその結果の可視化の手法による「成約率向上分析」および「成約期間短縮分析」の2つから発見された効率的な営業手法について論じたものである。本論文は6章から構成されている。

第2章では、手法の説明を行なった。ここでは、データの分類方法、特性分析、ネットワーク分析による手法について説明した。ネットワーク分析では、まずクラスター分析を行い、特性部分のデータをConnector/Hub機能を利用してグラフ化する手法を用いた。クラスター分析の結果に2次元の可視化の手法を加えることにより、各クラスターを構成するノードの連関においても客観的に把握できることを示した。

第3章では、成約率向上分析について述べた。ここでは基本的に営業成績の上位者の事例を成功モデルとし下位者の事例と比較した。まず特性分析を行い、その結果における理由を解明するためにネットワーク分析を行った。ネットワーク分析では、クラスター分析結果のConnector /Hub機能によるグラフ化に加えて、2次元の可視化の手法を用いることにより営業成績の上位者および下位者の行動特性の違いを分析した。

第4章では、成約期間短縮分析ついてのべた。基本的に短期成約の事例を成功モデルとし、長期成約の事例をそうでないモデルとの立場をとった。初めにBANT基準ごとの特性分析を実施した。ネットワーク分析では、特性部分のデータをConnector/Hub機能を利用してグラフ化し、上位者および下位者の活動の特性を短期成約と長期成約という2つの視点で客観視した。

第5章の考察では、本論文の分析結果を活用して、アウトバウンド・コールセンターの管理者がどのように運用すれば効率的かを提言した。

成約率向上分析の考察では、クラスター分析の結果を考慮して、可視化の分析結果による考察を中心に行った。すなわち本論文ではこの手法を利用してアウトバウンド・コールセンターの管理者に対する成約率向上のための効果的運用方法ついて提言した。

成約期間短縮分析の考察では、ネットワーク分析結果を考慮して、クラスター分析によるグラフを利用した考察を中心に行った。すなわち本論文では、この手法を利用してアウトバウンド・コールセンターの管理者に対する成約期間の短縮のための効果的運用方法ついて提言した。

第6章では、本論文の結論を述べている。

よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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