No | 124866 | |
著者(漢字) | 井村,昌義 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | イムラ,マサヨシ | |
標題(和) | 卵巣がん細胞株における既知がん関連遺伝子のDNAメチル化および遺伝子発現の解析 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 124866 | |
報告番号 | 甲24866 | |
学位授与日 | 2009.03.23 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第3286号 | |
研究科 | 医学系研究科 | |
専攻 | 生殖・発達・加齢医学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 卵巣がんは原発巣の多彩な組織像を反映して病理組織型・臨床像も多様性に富む。エピジェネティックな変化は発がんに深く関わっていると考えられているが卵巣がんでの報告はまだ限られている。そのような変化のうち、癌抑制遺伝子のプロモーター領域CpGアイランドにおける異常なメチル化はその遺伝子発現抑制の、また正常組織で同部位がメチル化されている遺伝子の異常脱メチル化は癌に特異的な蛋白発現の、それぞれ原因となる。本研究では、正常卵巣上皮由来細胞株HOSE6-3を対照として病理組織型の異なる臨床検体由来の13の卵巣がん細胞株における、18の遺伝子のプロモーター領域CpGアイランドのメチル化状態およびそれら遺伝子の発現との関係を調べた。 これら遺伝子の異常メチル化の頻度はRASSF1Aを筆頭に、ESR1, FLNS, HAND1, LOX, HRASLS, MGMT, CDKN2A, THBD, MLH1, CDH1, GSTP1の順に高かった。TERC, TIMP3におけるメチル化は部分的であり、またBRCA1においては全くメチル化を認めなかった。MAGE-A3, -B2, -A1における異常脱メチル化はそれぞれ8, 4, 3種の細胞株において見られた。非メチル化DNA分子を含まない細胞からの遺伝子発現は一貫して見られず、メチル化と発現との間に相関を認めた。異常メチル化は粘液性腺癌および低分化/未分化癌由来細胞株のMCAS, RMUG-L, RTSG, TYK-nuにおいて頻度が高く、漿液性腺癌由来株のHTOA, JHOS-2, OV-90においては低頻度であった。異常脱メチル化はOV-90, OVK-18, ES-2において頻度が高かった。異常なメチル化・脱メチル化ともに卵巣がん細胞株において高頻度に見られることが分かり、卵巣がんの発がん過程においてエピジェネティックな変化が深く関わっている可能性が示唆された。本研究は、今後の卵巣がん研究への重要な基礎情報を与えるものである。 | |
審査要旨 | 本研究は、卵巣がん発がんにおけるDNAメチル化異常の関与を明らかにするため、正常卵巣上皮由来細胞株HOSE6-3を対照として病理組織型の異なる臨床検体由来の13の卵巣がん細胞株における、18の遺伝子のプロモーター領域CpGアイランドのメチル化状態およびそれら遺伝子の発現との関係を調べたものであり、下記の結果を得ている。 1. 異常メチル化の頻度はRASSF1Aを筆頭に、ESR1, FLNS, HAND1, LOX, HRASLS, MGMT, CDKN2A, THBD, MLH1, CDH1, GSTP1の順に高かった。TERC, TIMP3におけるメチル化は部分的であり、またBRCA1においては全くメチル化を認めなかった。MAGE-A3, -B2, -A1における異常脱メチル化はそれぞれ8, 4, 3種の細胞株において見られた。非メチル化DNA分子を含まない細胞からの遺伝子発現は一貫して見られず、メチル化と発現との間に相関を認めた。 2. 異常メチル化は粘液性腺癌および低分化/未分化癌由来細胞株のMCAS, RMUG-L, RTSG, TYK-nuにおいて頻度が高く、漿液性腺癌由来株のHTOA, JHOS-2, OV-90においては低頻度であった。異常脱メチル化はOV-90, OVK-18, ES-2において頻度が高かった。 以上、本論文は、メチル化の異常が卵巣がん細胞株の少なくとも一部で高頻度に認められ発がんの重要な機構の一部を成している可能性があることを示していることを明らかにした。本研究は、卵巣がんに特異的な特異的なメチル化異常が発見されることにより、卵巣がんの早期発見・治療奏功・予後改善につながるような、卵巣がんエピジェネティック研究に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 | |
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